斧を投げ捨てて宇宙人を刺身にするのですわ!アリーナ型“おアックス”アクション『マドモアゼル・フランシスカ』
「斧は投げ捨てるもの」なる箴言がある。
なぜ斧は投げ捨てるものなのか。答えは簡単だ。投げ捨てることで幸運に恵まれるからに他ならない。
この真理を最も象徴的に表すのが、かの有名なイソップ物語「金の斧 銀の斧」である。正直な木こりが斧を泉に落としたことにより、彼は3つの斧を手に入れることができた。
他方、欲深い男は嘘をついたせいで、元の斧ただひとつしか得られなかった。だが、両者には共通点がある。斧を投げ捨てるように扱ったからこそ好機に恵まれたのだ。

(『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』 ©Konami Digital Entertainment)
ゲームにおいても、斧を投げ捨てるように扱う利点は多々証明されている。シミュレーションRPGであれば、超強力で超便利な斧を入手する機会をもたらし、アクションゲームなら通常武器では届かぬ場所にいる敵への攻撃を容易にして戦闘を有利にしてくれる。
直接振るうだけでも斧の威力は言わずもがな高いが、投げれば素晴らしい活躍と恩恵をもたらす。実際にそれを証明する例を見ると、改めてこの格言の説得力の高さというものを感じる次第である。
そんな「斧は投げ捨てるもの」の格言を新たな形で体現する作品が颯爽とご登場だ。
その名も『マドモアゼル・フランシスカ』。マドモアゼルの名が示すとおり、本作で斧を投げ捨てるのは気高きお嬢様。そして、彼女が扱うのはタイトルにもなっている「フランシスカ」——5世紀から8世紀にかけ、フランク族が投擲武器として愛用した戦斧だ。
この気品高き“おアックス”で立ち向かうのは、外宇宙より襲来した侵略宇宙人どもである。さあ、お嬢様の優雅なティータイムを台無しにした無礼者どもに「斧は投げ捨てるもの」の神聖なる洗礼を浴びせてやるのですわ〜!
続々と現れる侵略宇宙人に無限に投げ捨てられる“おアックス”の嵐を!
改めて本作『マドモアゼル・フランシスカ』の基本的な内容をご紹介しよう。本作は2025年7月より「フリーゲーム夢現」「PLiCy」にて配信中のWindows PC、ブラウザ向けフリーゲームである。
ジャンルとしてはステージクリア型のアクションゲームとなる。プレイヤーはお嬢様を操作し、“おアックス”を投げ捨てながらステージ内に次々と現れる侵略宇宙人を撃退していく。
ステージの構造は上から見下ろしたトップビュー形式で、1画面内にカッチリと収まった固定型になっている。この限られた戦場で、あちこちから現れてはお嬢様に襲い掛かる宇宙人の大群に「斧は投げ捨てるもの」の洗礼を浴びせていくのが基本の戦闘スタイルとなる。
格言のとおり、お嬢様は決して敵に近づいて野蛮に斬りかかったりはしない。優雅に、かつ距離を保ちながら斧を投てきするのが流儀となっている。
しかも、投げられる斧の本数に制限など存在しない。シューティングゲームのように無限連射が可能なのである(しかも対応するキー、もしくはボタン押しっぱなしによるオート連射も完全サポート)。まさに「斧は投げ捨てるもの」の真髄ここにあり。投げても素晴らしい活躍をしてくれる斧……もとい、“おアックス”の醍醐味を堪能できる。
このような気品高き戦闘スタイルで挑む各ステージのクリア条件はボスの撃破である。ボスは「ボス登場おスコア」なるボーダーラインとして設定されたスコアに達すると出現し、戦闘が始まる。
そして、ボスの猛攻を掻い潜りつつ、“おアックス”を投げに投げまくって撃退できれば勝利である。逆にこれはボスが出現していない時もそうだが、宇宙人に接触したり、彼らが放つ敵弾に当たってしまうと即ゲームオーバー。ステージの最初からやり直しになってしまう。
ただ、本作はステージを順番に通しで攻略していくのではなく、ステージを1つずつ選んで攻略していくセレクト方式のため、大幅に巻き戻される心配はない。さらに各ステージの攻略時間も2〜3分程度で、最初からのやり直しになる負荷も小さい。ミスに対するペナルティは厳しいが、プレイヤーを過度に苦しませる意図はなく、遊びやすさを重視した設計になっている。
武器周りにも独特の工夫が凝らされている。お嬢様の基本武装はもちろん“おアックス”だが、ステージ攻略中には別の武器アイテムが出現することがある。これらを獲得すると、使用する武器がそちらに切り替わる。
用意されている武器は全6種類で「レイピア」「盾」「ナイフ」「ピストル」「弓」「メイス」がラインナップされている。一部、明らかに防具があるが、あえて力を込めて言わせてもらう。
武器だ。
これらの武器は取得すると同時に戦闘スタイルも変化。レイピアとメイスなら近接攻撃になり、そのほかは“おアックス”と同じく遠距離ながらも効果範囲、威力などに違いが出る。
また、一連の武器には重要な制約がある。それは「パワーアップチップ」による「P効果」が適用されないこと。
「P効果」とは「パワーアップチップ」を5枚集めると発動する武器強化なのだが、その恩恵を得られるのは“おアックス”だけ。ほかの武器は対象外なのである。なぜか? それはズバリお嬢様の愛用武器(マイウェポン)だからに決まっているだろう。
他の武器も登場し、使える点においては「斧は投げ捨てるもの」を体現する作品においては「ゆゆしき!」と思われるかもしれないが、心配ご無用である。様々な武器が登場するとは言え、その頂点に君臨するのは“おアックス”様なのだ。
しかも、ほかの武器を使用中でも“おアックス”様は武器アイテムとして登場し、獲得すれば手持ちに戻せるのとセットで5000点のスペシャルなボーナスが得られる。“おアックス”以外の武器に関してはすべて5分の1の1000点である。
この優遇ぶりもまた、本作が「斧は投げ捨てるもの」を体現する“おアックス”の偉大さを物語るゲームであることの確固たる証拠と言ってもいいだろう。
“おアックス”があれば戦いも有利に……え?なんでギリギリな戦いが続くんですの!?
本作の魅力は思いのほか歯応えのある難易度である。お嬢様が“おアックス”で宇宙人と戦う設定からして、コミカルで気軽に楽しめる内容を想像するかもしれない。だが、実際はプレイヤーの集中力と反射神経を試す本格的なアクションゲームになっている。
序盤のステージこそ、“おアックス”の圧倒的投げ捨て力もあって、そんなに手ごわく感じないかもしれない。だが、ステージ4からその状況が一変。ステージ内に現れる宇宙人たちの数が増え、ボスの攻撃も激しくなって、段々と“おアックス”の圧倒的投げ捨て力が通用しにくくなっていく。むしろ、ギリギリまで追い詰められる状況に直面しやすくなるのである。
具体的には敵の襲撃を受けない安全地帯の確保と、弾を的確に回避する立ち回りが求められる感じだ。なぜ、こんなギリギリな状況が生まれるのかの諸AXEの根源はボスにある。前述の紹介した感じだと、ボスが出現するとそれまでステージ内に現れていた雑魚敵の宇宙人たちの出現が止み、1対1の戦いになる流れを想像したかもしれない。
実際はボスが出現しても、雑魚敵の宇宙人たちの出現が止むことはない。そんなのお構いなしに現れてはお嬢様に攻撃を仕掛けてくるのだ。
その物量が件のステージ4から増え、数を最小限にまで減らすのが難しくなる。結果、ステージ上は雑魚敵とボスの攻撃と進撃のフィーバー状態になる。そんな状況下で迂闊に長く立ち止まりでもすれば、どんな憂き目に遭うかは想像に難くないだろう。
ゆえに常に安全地帯を求めて動き続け、“おアックス”による攻撃も仕掛けるなりして雑魚の宇宙人たちを倒しつつ、ボスの撃破を目指さなくてはならない。まさにギリギリに次ぐギリギリの戦いが繰り広げられるのだ。
さすがに弾幕シューティング並みに過激な状況になることはないものの、その異様な慌ただしさには本作プレイ前に抱いた先入観が“薪割りダイナミック”されること間違いなし。特に終盤のステージは、ギリギリ感の極致とも言える体験が凝縮されるので、怖いもの見たさで挑んでみてほしい。複数の意味で満腹になってしまうだろう。
ギリギリになりやすいのに、理不尽さがないのも魅力的。敵の数と攻撃が激しくなるとは言え、前述したように弾幕シューティング並の混沌とした状況は生まれないので、見た目の威圧感は弱い。また、敵弾などの着弾地点はあらかじめ予告されるほか、一部の敵は攻撃時に決まって事前動作を見せる。
こういった公平性を尊重した工夫がされているのもあって、ミスしたとしても納得感があり、「こう動けばよかったのかも?」と次回以降の対策になる。ギリギリの戦いというのには正直、難易度的なマイナスイメージを持ってしまうのも否めないかもしれないが、実は意外にもそういう嫌らしさはない。むしろ、「なんとかしてやる!」とのやる気を奮起させる感じだ。
このバランス調整と配慮の上手さも本作の魅力のひとつであり、遊べば遊ぶほどギリギリの戦いが面白くなってくると同時に、これこそ本作でしか得られない栄養だとの確信も持ってしまうだろう。え? それってMに目覚める引き金になるのではないの? そ、それは人それぞれだと言っておくのですわ……。
ギリギリを詰めることで、高得点のチャンスが得られるのもやり込み欲を刺激する。実際、それを狙ったスコアアタックも用意されていて、ハイリスクハイリターンな快感を得られたりもする。それなりの集中力と覚悟が試されはするが、腕に自信があるならば全ステージで限界を突き詰めてみるのも一興だ。
なお、ハイスコアを目指すに当たっては、時々“おアックス”以外の武器に浮気するのも重要な戦術のひとつとなっている。突拍子もないが、事実なのだから仕方なし。
そんなプレイヤーの“おアックス”への思いも試されたりするので、斧に対する異様な愛情か何かを抱いている人も試してみると貴重な知見が得られるかもしれない。いや、知見じゃなくてより深い斧への愛を手にするかもしれない。
でも、深めたからと言って某パワーワードを咆哮するのはおよしなさいな。
厳しい局面であろうと、宇宙人はシバかねばならんのですわ!
なお、ボリュームに関してはステージ数が6つと少ない。ただ、後半ステージにおけるギリギリな難易度と激闘を体験すれば、これでちょうどいいと感じるかもしれない。
また、クリア後のやり込み要素は充実している。本編以上のギリギリ感を味わえる「EXステージ」なるエンドレスモードのほか、上級者向けの特定条件下での戦いを強いるモードが2種類用意されている。
特にとあるモードに関しては、設定的に「お、おアックスは!?」と戸惑ってしまうこと請け合い。同時にその条件ならではの、さらにギリギリな戦いが味わえるので、気になったならぜひチャレンジいただきたい。ボリュームの少なさとは裏腹すぎる濃密なひと時が得られるだろう。
ほかにストーリー性はほとんどないに等しいのだが、各ステージの戦闘中には画面下部にお嬢様の暴言……もとい、セリフが挿入されたり、メニュー画面で毒づいた一言が炸裂する見所がある。戦闘中のセリフは、本編の慌ただしさもあり、なかなか目を向けにくいのがタマにキズだが、印象深い罵倒……じゃなくてセリフが多いので、隙を突いて確かめてみてほしいところだ。
細かい面でもボタン長押しによるオート連射に対応した快適な操作性、世界観と設定にマッチした楽曲のチョイスといった優れた部分が存在する。逆に一部、欲を言えば……な気になる箇所も。特にモードに関しては、全6ステージを通しで遊べる「アーケードモード」的なものもあれば、さらにやり込み甲斐のある内容となっていたと思うだけに惜しい。
ボスも攻撃パターンこそ違えど、容姿は全ステージほとんど使い回しなのが新鮮味を削ぐ。とは言え、攻撃パターンを変えることによる差別化は効果的に機能していて、最終ステージはその真価を発揮したものになっている。どんな真価を発揮するかはぜひ、その目でお確かめいただきたい。
いくつかの小さな難点があれど、総じて申し分なくまとまった「斧は投げ捨てるもの」の真理を詰め込んだ良作である。ギリギリの戦いになるスリルと、理不尽さの軽減を図ったバランス調整、そして圧倒的な“おアックス”優遇な設計は個性バリバリだ。
優雅なるティータイムを邪魔した侵略宇宙人に対する情けは無用です。ヤツらに“おアックス”を投げ捨て、刺身にして平穏を取り戻すのですわ。
[基本情報]
タイトル:『マドモワゼル・フランシスカ』
作者:どしが
クリア時間:20~30分
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格(税込):無料
◇ダウンロード・プレイはこちら
・フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/action/game_13801.html
・PLiCy(ブラウザ版)
https://plicy.net/GamePlay/209630

































