二人の少女に二つのシステム。タッグならではの戦術と緩急あるバトルを楽しめるフリゲRPG『セツナステップ/ナユタドライヴ』

RPG,フリーゲーム

RPGにおけるパーティメンバーの人数は戦闘のコンセプトにも関わってくる要素だが、パーティとして成立する最小単位である「二人」を採用しているゲームは、一人が受け持つ役割の多さなどからいい意味で尖ったシステムになりやすい印象だ。今回紹介するフリーゲーム『セツナステップ/ナユタドライヴ』もその一つ。二人で二つの独自システムを持つことにより、戦術性の高いバトルを楽しめる作品に仕上がっている。

異変の原因を探るため、北へ向かって旅立つ二人の少女達

本作の舞台となるのは、とある寂れた島。そこで観測された大きな魔力の乱れを調査するため島に来た旅の術師のナユタと島に住む新米狩人のセツナ、二人の少女の出会いから物語は始まる。島の北にある山に原因があるとみた彼女達は、協力して北を目指す旅へと出ることになる。

島へ来たナユタを偶然助けたセツナは、そのままナユタの旅へ同行することに

ゲームは北へ向かって森や砂漠、廃砦などとさまざまなマップを踏破していく形で進行。各マップの最後にはボスが待ち受けるほか、フィールド上にも任意で戦える中ボス的な敵が点在している。いずれも強敵揃いで敵によってはギミックも凝っており、歯応えのあるバトルを楽しめるようになっている。

北へ向かう二人へ、謎の女性が立ち塞がる場面も

セツナとナユタでそれぞれ別システム!ちょっと無法なムーブができる仕掛けも……?

二人で旅するセツナとナユタは、戦闘においても二人パーティで戦うことになる。大まかに物理アタッカー兼タンクのセツナ、魔法アタッカー兼ヒーラーのナユタという役割分担となっており、システムやスキル構成などの面からもタッグでの戦いが演出されている。

本作の戦闘システムはターン制のコマンド選択型だが、セツナとナユタ、それぞれ異なる独自のシステムを採用しているのが最大の特徴だ。まずセツナの場合は、スキル発動用のポイントであるSPが足りる限り、攻撃スキルをコマンド選択中、つまり敵が行動する前に即時発動し続けることが可能。デバフ効果のあるスキルのあとに威力の高いスキルを叩き込んだり、範囲攻撃と単体攻撃を併用したりと、自由自在に立ち回りを組み立てられる。

一通り動き終わったら、自分の狙われ率を大幅に上げることでナユタを守りつつ被ダメージをカットできる「ガード」や次ターンの攻撃の威力を50%上げられる「チャージ」といった、SP消費のない「一連の行動を締める用のコマンド」を使うという形だ。SPはターンごとに一定量が自動回復するほか、ガードやチャージでも上げられるようになっている。

たとえば全体に防御デバフを撒けるスキルを使ったあと、SPが足りなくなるまでランダム連続攻撃のスキルを複数回使う、といった立ち回りが可能

一方でナユタの独自システムは「イグニッション」。発動するとそのターンの消費SPが2倍になる代わりに、攻撃や回復の威力も2倍になる。使用タイミングなどに制限はなく、いつでも何度でも使うことが可能だ。

イグニッションは制限なくいつでも発動可能で、発動すると炎のアイコンで示される。やっぱりやめたいという場合はもう一度発動コマンドを選択することでキャンセルも可能

このようなシステムにより、敵の攻撃を凌いだりギミックに対処しながらSPを溜めて、ここぞという場面でデバフをかけつつ一気に火力を叩き込む……といった緩急のついた立ち回りが可能になっている。

さらにナユタのイグニッションにはちょっとした仕掛けが。ここからは若干、戦術のネタバレになってしまうのだが、本作の戦闘の面白さを伝えるにあたってはどうしても触れておきたいのでご容赦いただきたい。前置きはこのあたりにして具体的には、ナユタのスキルには一部「1ターン後に魔法攻撃」といった遅延発動するものがある。

さてこのスキルを使ったあと、実際に発動するターンにイグニッションを使ったらどうなるか。システムをそのまま当てはめるなら「SPは前のターンに消費済みなので2倍消費は関係なく、威力2倍という結果だけ得られる」ということになるが、そんな無法が許されていいのか……結論としては、なんと許されてしまう。SPの追加消費分については、RPGプレイヤーならみんな大好き(諸説あります)コストの踏み倒しができてしまうというわけだ。

前のターンに仕掛けた遅延発動スキルとそのターンに発動するスキルをまとめて威力2倍にして畳み掛けてもいいし、なんならアイテム使用などSPを消費しない行動をすれば、一切の追加負担なく恩恵だけ受けることもできてしまう。こういった仕掛けも利用して自分なりのコンボを組み立てていくのが、本作の戦闘の大きな醍醐味となっている。

ぱっと見は注意点のような印象を受けるが、実際はむしろメリットになり得ることに気付くと「うまいこと活用しちゃってね!」としか読めなくてふふっとなるチュートリアル

ドロップ装備品の組み合わせでスキル構成をカスタマイズ

セツナとナユタがそれぞれ使用するスキルのカスタマイズにも特色がある。一部、立ち回りの基本となるようなスキルはレベルアップで習得していくのだが、それとは別に敵を倒すとドロップする「ソウル」を装備することで、ソウルごとに設定された2~3個のスキルを使用可能になるという仕組みだ。ソウルを装備できるスロットはセツナとナユタそれぞれ3つずつあり、各スロットごとに装備できるソウルの色が決まっている。

ソウルで使用可能になるスキルは、セツナが装備できる黄色なら状態異常やデバフ系、ナユタが装備できる緑なら回復系というように、色ごとにある程度の傾向が決まっている。やりたいコンボや敵のギミックなどに応じて、3色のソウルをどう組み合わせてスキル構成を決めるかが要点となっている。また、どんなスキルを入手できるのかという期待が、新たな敵と戦うモチベーションにも繋がっている。

ソウルの装備により、使用するスキルの組み合わせをカスタマイズすることが可能

コマンドバトル好きにオススメ!旅を通じて距離を縮める少女達の物語も魅力

ここまで紹介したように本作は、スキル構成をカスタマイズし、独自システムを駆使して強敵の数々を倒していくのが楽しいゲームなのだが、これからプレイする方への参考として「序盤の若干のとっつきにくさ」には触れておきたい。

本作は雑魚戦もそれなりに手応えのあるバランスで、戦闘システムの仕様からも特定コマンドの連打でさくっと終了とはなりにくい。もちろんそこが面白い点ではあるのだが、レベル上げやソウル集めのために数をこなそうとすると、ほんのり重めのプレイ感にはなっている。強力な範囲攻撃など戦力が充実してくる中盤以降はこのあたりも緩和されるのだが、そこに至る前の最序盤が一番大変とも言える。雑魚戦をいっぱいやるのが大好き!という人でなければ、ちょっとここでつまづきそうになることはあるかもしれない(経験談)。

序盤さえ越えれば相対的にかなり軽めのプレイ感にはなるので、そこまでは先への期待を糧に乗り切っていただきたい。また一方で雑魚点をこなす際にありがたい要素もあり、本作はHPが戦闘後に全回復、SPは戦闘開始時に一定値に固定となるため戦闘後の回復の手間は一切ない。さらに戦闘不能のキャラクターにも経験値が入るため、とにかくどんな形でも勝利さえすればOKだ。

2024-06-27追記:本日公開されたアップデートにより、ゲーム序盤~中盤までに登場する敵について攻撃性能がわずかに下げられ、また一部敵グループの敵出現数が変更された。そのほかソウルのドロップが確率から確定になったり、敵からの逃走も確率だったのが確定で可能になるなど、さまざまな調整が施されている。上述した序盤のとっつきにくさは緩和されたと見てよいだろう。)

ちなみに本作には難易度を下げる機能があるのだが、率直な私見としては本作のような戦術性の高いRPGを好むプレイヤーはそうした緩和措置の利用を避けたがりがちという感触がある(経験談)。ただ、難易度変更といっても敵の弱体化ではなく自分が強くなるタイプなので抵抗がなければレベル上げ代わりに使うのもありだし、好きなタイミングで切り替えられるのでなんなら序盤だけ難易度を下げるとか、あるいは雑魚戦時だけ下げてボスはしっかり歯応えのあるバトルを楽しむ、といった使い方もありだろう。

難易度の緩和は「キャラクターを大幅に強化するパッシブスキルの追加」という形で行われる。敵が弱くなるわけではないので、攻略の楽しみは比較的保ちやすい方式だろう

少しでも最後まで辿り付く人が増えてほしいがゆえに少々面倒なことも書いてしまったが、そのくらいお勧めしたい作品だ。とくにRPGのコマンドバトルが好きならぜひ触れてみてほしい。

また、メインストーリーや道中の会話イベントなどで、セツナとナユタが旅を通して距離を縮めていくさまが描かれていくのも見どころ。公称プレイ時間5時間前後の短~中編作品ながら、クライマックスにはなかなかアツい展開も待ち受ける。一つの舞台における物語としてはしっかり完結しつつ、「少女達の出会いの物語」として余韻も感じさせる作品となっているので、今後の作品展開などにも期待したい。

旅を通してお互いを知り、共に戦うことで距離を縮めていく二人の物語も見どころ

[基本情報]
タイトル:セツナステップ/ナユタドライヴ
制作者:ハンペン
対応環境:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_12280.html

  • 中村友次郎(@finalbeta

    RPGのプレイと紹介がライフワーク。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。商業で一番好きなゲームメーカーは日本ファルコム。運営型では原神にハマってます。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。