敵を撃たずとも、射撃は面白い。3D”スポーツ”シューティング『シューターズ レディ!』
もし、この見出しを見て「本当か?」と疑念を抱いたのであれば、ぜひ即座に回れ右して本作をプレイしてみて欲しい。筆者がまさにこの疑念を抱いたまま本作に触れ、それを見事なまでに打ち砕かれたからだ。シューティングゲームには「敵」が付き物である、そんな概念を覆すだけのパワーを本作からは受け取れるはずだ。
『シューターズ レディ!』はサークルおこめたべたべずが制作したファーストパーソン・シューティング(FPS)ゲーム。2025年3月28日よりSteamにて配信が開始されている。
撃つことは、スポーツだ。
本作『シューターズ レディ!』では、銃を使った架空の射撃競技「スポーツシューティング」に挑戦する。「スポーツシューティング」のルールは、標的の置かれた部屋の中に入り、全ての標的を射撃で倒して進み、制限時間内に規定数の部屋を突破できればゴールとなるというもの。
ただ的に弾を当てるだけならなんてことはない、と思われるかもしれないが、本作では銃のコントロール自体が難しくなっている。右クリックによる「構え」をしない状態で銃を撃てば、ちゃんとあらぬ方向に弾が飛ぶのである。「構え」ていても次は「手ブレ」との戦いとなり、銃身を動かしているうちに銃の上部の凹凸型照準器(フロントサイト)が合わなくなるのはエアソフトガン等に触れたことがあればリアリティを強く感じられる部分だろう。そして発砲すれば当然、火薬の激発による強烈な「反動」で銃身が跳ね上がり、次の射撃の狙いを定めることを困難にする。
また、スポーツシューティングがクレー射撃等の実存する射撃競技と異なる点として、「走る」要素が含まれる点が挙げられる。部屋の中を走り抜けるのにも当然時間は掛かるが、移動しながら射撃しようとすれば狙いの安定度は落ちる。一方で無理矢理に遠くから標的を狙う必要はなく、射撃を確実に当てられる距離まで近づくことも時として有効なので、制限時間の中で瞬時に戦略を判断する必要がある。
癖のある「手ブレ」「反動」を制御していき、いかに「正確に」「素早く」標的を射抜いて駆け抜けるか。自分の身体を上手くコントロールできるようになっていくことの楽しさが本作の魅力となっている。2024年開催のパリオリンピックにおいてトルコの射撃選手ユスフ・ディケチ氏が装備を排したスタイルで話題になったことは記憶に新しいが、本作を通じて銃をコントロールする事の難しさと、それを各種補助なしに行う氏の優れた体幹の一端を垣間見たように感じられた。
射撃競技に打ち込む女子高生たちの青春ストーリー
本作は主なゲームモードとしてストーリーモードとアーケードモードが用意されている。ストーリーモードでは、群馬の山奥に引っ越してきた女子高生「吉本 恵那」が、3つの学校合同の「射撃部」に入部し、部長の「飯田 茜」、副部長の「瑞浪 芽衣」らと共にスポーツシューティングの全国大会を目指す模様が繰り広げられる。
3人の少女がスポーツシューティングを通じて抱く楽しさや悔しさ、葛藤や決意が描かれ、その様子はまさしく青春。ストーリーの進行に応じて彼女たちの射撃の腕前の上達がプレイ上の操作感覚にも反映されていく点も心にくい演出となっている。
プレイ時間にして1時間程度と駆け足気味ではあるが、満足感のあるストーリーが楽しめるだろう。
アーケードモードでハイスコアに挑戦せよ!
アーケードモードでは5部屋を1ステージとして10ステージを突破するまでに獲得した得点を集計し、ハイスコアを目指すことになる。性能がそれぞれ異なるキャラクターと銃を自由に組み合わせることができるほか、高得点を取るためには標的の頭部に当てる「ヘッドショット」や、弾を外さず連続で標的を倒していく「コンボ」などの要素が重要になる。
また、1ステージ突破ごとに制限時間を消費して3択方式でのアップグレードを取得することができる。加えてステージ毎に難易度選択ができるようになっており、難しいステージに進んで得点アップのチャンスを狙うか、簡単なステージに進んで制限時間を蓄えるか、先の先を見据えてのアップグレードも含めた取捨選択が悩ましい。残り時間わずかとなった極限状況からどれだけ冴えわたる射撃を繰り出せるかも白熱できるポイントだ。
FPSジャンルにつきものとなっている残虐表現が存在しないため、そうした表現が苦手な人にも安心して推薦できる、一汗掻いたような爽やかさが味わえる作品だ。
[基本情報]
タイトル:シューターズ レディ!
制作者:おこめたべたべず
クリア時間:90分~
対応OS:Windows
価格:¥580
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