異世界転移したおっさんとショットガンは“伝説”になる。アクションアドベンチャー問題作『Shotgun Legend』

アクション,インディーゲーム

現実世界に生きる人間が何らかのトラブルに巻き込まれ、剣と魔法のファンタジー世界に送り込まれてしまう「異世界転生(異世界転移)」の題材は昨今のみならず、過去においても漫画、アニメ、ゲームで扱われ、多種多様な名作・怪作が生まれた。

ただ大抵、異世界に送り込まれる人間というのは少年か少女。
中年男性……”おっさん”が送り込まれるケースは稀だ
 
image1
 
今回紹介する『Shotgun Legend』は、そんなおっさんの異世界転移を題材にしたアクションアドベンチャーである。本作は2017年6月8日にゲーム配信プラットフォーム「Steam」でPC用早期アクセスタイトルとして配信。それから半年間に渡ってアップデートを重ね、2018年1月16日に製品版がリリースされた。制作は個人開発者のJonathan Tindel氏。ゲームを起動すると間もなく、その御姿を拝むことができる。(御自身のTwitterでも拝める)
 
image4
 
なにを咆哮しているんだこの人、と思ったかもしれないが気にしてはならない。

異惑星から脱出せよ。トラック用タイヤのリムで。

とにもかくにも、物語を紹介しよう。
本作の主人公は「ユージーン」というおっさん。ある日、彼はトラック用タイヤのリムを探そうと廃品置き場に訪れた。だが、一つのリムを拾い上げたその瞬間、空に穴が開いた。いわゆる「ポータル」である。お約束通りに彼はそれに吸い込まれてしまい、気付いた頃にはエイリアンとそれに惨殺された屍が跋扈する異世界……もとい、異惑星の島に降り立っていた。
 
image11
 
かつては人間達が生活を営んでいたこの島だが、過去に血も涙も良心もないエイリアン達が天より襲来。瞬く間に住民達を虐殺し、地上を支配してしまった。今も人間達は僅かな数が生き延びているが、ほとんどは地下で暮らしており、地上を歩くこともままならないという。

しかし、そんなのユージーンにとってはどうでもよい話。
彼にとって重要なのは一刻も早く地球に帰ること。そんな訳で自身と一緒に異惑星へ持ち込まれた「ショットガン」を手にこの世界の探索を始めるのだった。

なんとも勢い任せな物語だが、気にしてはならない。
異世界を題材とした物語に強引さは付き物なのだ。多分。
 
image10
 
さて、この惑星からどのようにして脱出するかだが、その為には件のリムが必要となる。
リムは世界各地に点在する地下迷宮(ダンジョン)にあり、その最深部に待ち構えるボスを倒すことで入手できる。そして、これを10個集めると地球へと帰れる「ポータル」を作り出せる……らしい。そんな訳でプレイヤーはユージーンを操作し、フィールドを歩き回ってダンジョンを探し出し、内部に潜ってリムの回収を目指すのが大まかな流れとなる。至ってシンプルなルールだ。

だが何故、異惑星からの脱出にリムが必要なのかという大いなる謎が付きまとう。
それについてはシンプルに「気にしたら負け」と言っておこう。繰り返しになるが、異世界を題材にした物語に強引さは付き物なのだ。なんでもありなのだ。多分。きっと。おそらく。

ところで、ここまでゲームプレイの様子を紹介していなかった。
改めて以下に載せよう。
 
image5
 
このように2Dの見下ろし視点で繰り広げられていく形となる。このフィールド上を歩き回り、行く手を阻むエイリアン達を撃退しながらダンジョンを探っていく。

おいこら、ちょっと待て。
これってどう見てもゼル……と口を出しそうになったそこのアナタ。

Yes , That’s right.」だ。

https://www.youtube.com/watch?v=r6qNzew_ZyI

本作『Shotogun Legend』の「Legend」が示すものとは『レジェンド・オブ・ゼルなんちゃら』、或いは『ゼルなんちゃらの伝説』である。故にゲームシステム、ゲームデザインの骨子も一言でまとめてしまえば「レジェンド」。まごうことなき”オマージュ”なのだ。
(制作のJonathan Tindel氏も、本作を”レジェンド”へのトリビュートであるとTwitterにて発言している)
 
image3
 
だとしても、これはあまりにもレジェンド過ぎる、そのまんま過ぎるだろうと物申したくなるかもしれないが、そもそもレジェンド……伝説というものは人によって様々な姿形になって語り継がれていくものだ。本作で語られるユージーンという男が体験した怪紀行を再現するのに最適だったのが、30年の長き歴史を誇り、日本のみならず世界で愛されるレジェンドスタイルだったのだろう。
それならば、似ているのも仕方がないのだ。そういうことにしておこう。しておいてください。

懐に飛び込む勇気はあるか。ショットガン独自の戦闘スタイル

そうも見た目が大変にレジェンドな本作だが、ちゃんと独自要素もある。それが「ショットガン」。ユージーンが転移と同時に持ち込んだ、エイリアン撃滅用の武器にして標準装備だ。

ショットガンと言えば、数発の鉛弾(或いは鉄弾)が一瞬の内に放たれる大型携行銃だ。故に近距離であれば致命傷を与えられる一方、距離が広がるほどに命中精度は落ち、相手に与えられるダメージは落ちる。また、特殊な大型弾を用いるだけに連射性能に劣り、弾を装填する際も一弾一弾を手作業で込めなければならない。一発の威力は大きいものの、使うに当たっては距離を詰めないと効果を発揮しない。そんなテクニカルな戦術が要求されるのがショットガンという武器である。
 
image6
 
本作のショットガンも現実のショットガンと同じだ。近距離なら威力は絶大な一方、遠距離だと威力が落ちる。故に行く手を阻むエイリアンとの戦闘は近距離勝負に持ち込むことが重要で、懐に飛び込む勇気が試されるようになっている。遠距離で戦う戦術も取れるが、相手に与えられるダメージは極小。一番弱い雑魚敵を倒すだけでも結構な時間がかかる。
しかし、遠距離なら遠距離で敵と接触する危険に晒される心配はない

早期決着を狙って懐に飛び込むか、或いは距離を取って安全重視で戦うか。この二択が常に求められるのが本作独自の魅力であり、雑魚敵と戦う時でもスリリングな駆け引きを楽しめるのだ
 
image9
 
「リスクとリターン」の概念が詰まった武器として描かれているのも見所。
接近すれば敵を瞬殺できるメリットがある所がまさにそれだ。それもあって、ダンジョン最深部で戦うことになるボス戦はその醍醐味が詰まった内容にまとまっている。ショットガンの威力が上がるアップグレード要素もあるが、連射性能だけは一切上がらないのも件の概念を尊重したものになっていて、独特な戦闘スタイルを崩さないことへのこだわりが現れている。
 
image2
 
このように武器に独自の個性付けが図られているのもあって、戦闘の展開は本作ならでは。非常にレジェンドでありながら、タイトル名通りの独特な体験を提供してくれるのだ。
 
image7
 
ちなみにショットガン以外にも弾数制限のある武器をダンジョン内にて手に入れることができる。
しかも、いずれもショットガン以上に高火力で、強敵相手に活躍してくれる

……って、それじゃショットガンの意味がないじゃないかと思うかもしれない。
そこは安心して頂きたい。

最後にはやっぱり(ショットガンの)愛が勝つ。

どういう意味かは実際に本編を進めて行けば、おのずと分かるだろう。

かくして、ショットガンとおっさんは伝説となっていく。

隠されたリムを探し出す「ダンジョン」も謎解き最小限・戦闘重視のコンセプトで構成されていて、ショットガンで戦うスタイルを存分に生かした設計が図られている。
 
image12
 
謎解きが最小限なりにテンポも非常によく、一つのダンジョン攻略にも数十分程度しかかからない。裏を返せば全体のボリュームは少ないのだが、サクサク進むので、止め時を失ってハマってしまう程度に熱中度は高い。歩行速度も速く、ボス戦前に自動でセーブが行われる体力完全回復の救急箱を設置するなど、プレイヤーに負担を与えるような要素を取り除く配慮が徹底されているのも特筆すべきところ。難易度選択機能も実装されていて、セーブ無しでクリアを目指す「ハードコアモード」なるものも用意していたりと抜かりない。
 
image8
 
あまりにもレジェンド過ぎる本作だが、ショットガンの個性が滲み出た戦闘スタイルとゲームバランスは唯一無二。大型ボスの戦闘難易度が荒っぽかったり(特にラスボスは運任せな展開になることが…)、演出が質素と、昔っぽいゲームなりの粗もそれなりだが、アクションアドベンチャーとしての作りは盤石で、いい意味でそれを裏切る面白さがある。アクションゲーム好きはもちろんのこと、主人公じゃなくて御姫様の名前を指すレジェンドをやり込んだプレイヤーにも遊んでみて頂きたい問題作だ。ショットガンとおっさんが真の意味で伝説となる瞬間を見届けよう

[基本情報]
タイトル: 『Shotgun Legend(ショットガン レジェンド)』
制作者:Jonathan Tindel
クリア時間: 3~4時間
難易度:中級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: ¥520

購入はこちらから
※PC(Windows)版

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence