たった1人で制作されたメトロイド系探索アクション『Axiom Verge』はファミコン時代へのラブレター

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ファミコンのようなグラフィックが目を引く『Axiom Verge』は、探索型の2Dアクションゲームです。いわゆる”メトロイドヴァニア”(『メトロイド』と『キャッスルヴァニア(悪魔城ドラキュラ)』を合わせた造語)と呼ばれるジャンルですね。といっても、『ドラキュラ』要素はほとんどないので、ほぼ『メトロイド』です。

驚くべきことに、『Axiom Verge』 は、なんとたった1人(!)の手によって制作されています。ゲームデザインだけでなく、グラフィックからプログラム、音楽に至るまで、すべてがTom Happ氏によるものなのです。

彼はゲームメーカーで開発者として働きながら、2010年より本作の制作を開始。5年の歳月を経て、2015年3月にPS4版がリリース(海外のみ)、続く5月にはPC版がリリースされました。初回プレイでクリアするまでに10時間ほどかかったのですが、このクオリティとボリュームをたった1人で作り上げたというのだからアメイジング。

ゲームの舞台は2005年のニューメキシコ、とある研究施設からはじまります。科学者の主人公・Traceは実験中の爆発事故に見舞われ、目を覚ますと、そこはまるで異星のような世界。すべてが謎に包まれたまま、頭に響く声だけを頼りに、Traceの探索がはじまるのです。

『メトロイド』を彷彿とさせる探索型2Dアクション

『Axiom Verge』 は探索型の2Dアクションです。ジャンプとショットを基本としたオーソドックスなアクションで、未知の世界を探索します。探索中に入手した武器やガジェットを使って新たな進路を切りひらいていく様は、まさに『メトロイド』。

目的地を示すマーカーは存在せず、自分の足で歩き回って探索していくことになります。部屋の数は900以上もあり、探索範囲が広がっていく後半になればなるほど、次の目的地を探して右往左往することになりがちですが、迷っている間にも武器やアイテムが見つかるので、探索そのものを楽しめる作りになっていますね。

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ファミコン風の見た目どおり、難易度は易しくありません。といっても、極端なムズかしさはなく、ほどよいムズかしさです。敵の動きやマップのレイアウトなど、非常に丁寧に作り込まれているため、理不尽な死はありません。死んでしまってもセーブポイントに戻されるだけで、大きなペナルティもないですから、じっくり攻略していけます。

『メトロイド』といえば、『スーパーメトロイド』がスピードランの代名詞的な存在ですが、本作ではタイムアタックに最適化された『スピードランモード』が搭載されています。オンラインのランキングもあり、上位には40分ほどでクリアしている猛者が名を連ねています。最短ルートの模索やボスのスピード撃破なども『メトロイド』の醍醐味でしたから、やり込む人にはうれしいモードでしょう。

ワイヤーからヨーヨーまで~懐かしのアクション満載

本作で注目したいのが、ファミコン時代の2Dアクションゲームの再現です。ファミコン風なのは見た目だけではなく、主人公のアクションや敵の動きなど、細やかな点に至るまでさまざまな点であの時代が再現されているのです。

たとえば、最初に出会うザコ敵。ブロックの上下左右に張りついて周回しているのですが、サイズが小さくて立ちショットが当たりません。もう完全に『メトロイド』じゃないですか。往年のファンにとっては、これだけでもニヤリとさせられることでしょう。もちろん、『メトロイド』っぽい部分は他にもたくさんあり、開発者・Tom Happ氏の『メトロイド』への愛が伝わってきます。

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Tom Happ氏の愛情は『メトロイド』だけにとどまりません。どのゲームへの愛情も、かなり直球ストレートに表現されているため、『メトロイド』かと思ってプレイしていると「これって○○じゃねーか!」という場面が何度も訪れます。

本作では、ガジェットを入手することでアクションが増えていくのですが、中盤で入手できるワイヤーアクションは『ヒットラーの復活』そのもの。ワイヤーの扱いがちょっとムズかしいところまでしっかり再現されているのがニクイですね。

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また、主人公・Traceはサムスのように丸まって狭い場所を通過できないかわりに、小さなドローンを操ることができます。これは『超惑星戦記 メタファイト』の戦車からパイロットを降ろして探索するシステムでしょう。カタカタ歩く小さなドローンは『攻殻機動隊』のフチコマっぽくてかわいいところもポイント。

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他にも、巨木の並ぶ山岳地帯にやたらと硬い敵が配置されているところなどは『アルゴスの戦士』を彷彿とさせます。さらには、ヨーヨー型の武器まで用意されています。残念ながら、このエリアでヨーヨーはあんまり有効ではないのですけれども。

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グロテスクで巨大なボスはまるで『魂斗羅』のよう。『メトロイド』と違って初期ショットの射程は長いので、バトルの基本が『魂斗羅』っぽいところがありますね。攻撃がヒットしたときの効果音も『魂斗羅』っぽいというか、あの時代のコナミっぽい音なので、プレイ感が似ているのかも。

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こんな感じで『Axiom Verge』には、ファミコン時代の2Dアクションゲームの再現が数多く含まれています。どうしてこのようなタイトルのラインナップなのかといえば、おそらくTom Happ氏のお気に入りだからなのでしょう。自分の知っているゲームが出てくると、なんだか親近感を覚えてしまいますね。

裏技のようで裏技でない、ちょっと裏技なゲームシステム

ファミコン時代のゲームといえば、“裏技”がつきものでした。当時の裏技といえば、開発者が意図的に仕込んだ隠し要素というよりは、意図しないバグを利用したテクニックでしたね。『Axiom Verge』には、そんな裏技のような要素が、正式なゲームシステムとして搭載されているのです。

たとえば、敵や地形を別のモノに書き換えてしまう『Address Disruptor』というガジェットがあります。浮遊する敵を足場に変えたり、地形を破壊したりできるのですが、書き換えた物体の見た目が”バグった”感じになるのがポイント。ファミコンのカセットを揺らしてしまったときに出る、ガビガビのアレですね。もちろん、本当にバグっているわけではなく、そういう演出です。壁がチラついて表示されるのも、非常にファミコンっぽいのですよね。

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他にも、壁をすり抜けるガジェットとか、集めたメモからパスコードを入力して隠し扉を出すとか、ファミコン時代の裏技を思わせてくれる演出が用意されています。もちろん、本作においては裏技でもなんでもないのですけれども、なんだかちょっとイケナイことをしているような、開発者の裏をついてやったような、あの気持ちが蘇ってきます。

当時のゲームは裏技も含めて攻略であり、それが楽しいところでもありましたから、レトロゲームとは切っても切れないモノです。あの時代のゲームを愛しているからこそ、ゲームの一部として取り入れられているのでしょう。まったく新しいプレイ感を生み出しているわけではありませんが、裏技のような演出を正式なゲームシステムとして昇華しているのは、なかなかに大胆かつ斬新。

ラブレターの宛先は過去だけじゃない

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いつか見た光景にどこかで触ったアクション。本作に詰め込まれた数多くのファミコン要素は、どこか懐かしい感覚を呼び覚ましてくれます。それでいて、丁寧な作り込みに裏付けされた快適なプレイ感は、非常に現代的ともいえます。

『Axiom Verge』は、1人の開発者によるファミコン時代の2Dアクションゲームへのラブレターなのかもしれませんが、その宛先は過去だけに向けたものではありません。ファミコン少年だったおじさんたちはもちろん、今時のゲームキッズも含まれているのでしょう。老いも若きも楽しめる現代のファミコンゲーム、それが『Axiom Verge』なのです。

[基本情報]
タイトル
 Axiom Verge(日本語版なし)
制作者 Thomas Happ Games LLC
クリア時間 10時間くらい
対応OS Win XP以降/Mac OS X 10.6.8以降
価格 ¥ 1,980

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    シバ山(@ShibayamaCoffee

    ゲームおじさん。ゲームばかりやっていてはいけないとブログを作ってみたら結局ゲームの話題ばかり書いているおじさんでもあります。おかげさまで今日もゲームが楽しいです。
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