キーボード操作非推奨の90年代風ドット絵アクションSTG『Bot Vice』。絶対に息をついてはならない銃撃戦がそこにはある。

スーパーファミコン世代で、16ビット風のドット絵を目にすると、心がときめいてしまう事はないだろうか。今回紹介するのは、そんなときめくドット絵で彩られたアクションシューティングゲーム『Bot Vice』である。スペインのインディーデベロッパー・DYA Gamesが制作した作品で、2016年7月11日にゲーム配信プラットフォーム「Steam」でリリースされた。

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ボットシティの女性警察官エリン・セイバーは半年前、相棒と共にサイコパスのサイボーグ傭兵四人を筆頭に構成された犯罪集団「ワイルドボット」を追っていた。しかし、彼らの返り討ちに遭い、相棒は死亡。エリンも右腕を失う重症を負い、任務は失敗に終わった。後にエリンは近接・遠距離に両対応した特殊武装「バイオニックアーム」を装着する手術を受け、右腕を取り戻す。
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同じ頃、ワイルドボット達は街のシンボルであるビル「トミナカ・プラザ」を消滅させようと目論む男に雇われる。そして男は電波ジャックを実施し、街への襲撃とビル消滅を予告。放送を見たエリンはワイルドボットへの復讐を果たし、トミナカ・プラザ消滅を阻止すべく、単身で敵地に乗り込む。

どことなく映画『ダイ・ハード』を髣髴とさせるストーリーが展開される今作は、懐かしさ溢れるビジュアルのみならず、その時代を髣髴とさせる手強さも色濃く現れた作りとなっている。

息つく暇すら与えない、東奔西走なアクションシューティング

ゲームは主人公のエリンを操作し、右腕のバイオニックアームに搭載された銃火器で迫り来る敵を撃ち倒し、最後に現れるボスの撃破を目指す、王道のステージクリア方式で展開。一つ一つを順に攻略していく、アーケードスタイルとなっている。

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ステージは2Dのトップビュー(見下ろし)視点で構成。プレイヤーのエリンは画面下、バリケードで区切られたスペースに位置し、左右に動き回りながら次々と現れる敵を迎撃していく。

行動範囲こそ限られているが、バリケード付近に来た敵に大ダメージを与える「ソード」による近接攻撃、一瞬だけ無敵時間が発生する緊急回避のローリング、敵に狙いを付けるロックオン、そしてバリケードの影に隠れるなど、できるアクションは豊富。敵への攻撃時に用いる銃火器も初期装備のハンドガンのほか、マシンガン、スプレッドガン、ロケットランチャーと言った個性的な武器が六種類用意されている。

ただ、ハンドガン以外の武器は弾数が有限。更に最初から使う事もできず、ステージ攻略中に現れる特定の敵を攻撃した際に落とすアイテムを取得すると、それに対応した武器が使えるようになる仕組みとなっている。

そんな複数の銃火器を使い分け、限られた行動範囲内で多彩なアクションを駆使して敵を迎撃するのが基本のプレイスタイル。アクションシューティングの言葉通りのらしさを突き詰めたゲームデザインが図られている。
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身も蓋も無く言うと、トップビュー視点に置き換えた『タイムクライシス』である。そこに1990年にアーケードゲームとしてリリースされた『NAM-1975』、1994年にスーパーファミコンで発売され、2016年にはプレイステーション4向けにリメイク版も発売された『ワイルドガンズ』の要素を複数足し合わせ、アクション性を強める設計を施している。開発のDYA Gamesもそれらの作品を公式サイト上で挙げており、まさに90年代のガンシューティングゲーム、アーケードゲームへの敬意を込めて製作された集大成的な内容になっている。

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しかし、その手触りは新鮮で、独特のスリルに満ちている。特に辛口な難易度によって演出される、スピーディで戦術性に富んだ展開が最大の特色。ガンシューティングゲームとアクションゲーム双方の最も激しい部分を抽出、融合させた慌ただしい戦闘が繰り広げられる。

今作でプレイヤーがやることは単純明快だ。画面上の敵を全滅させ、ボスを倒すだけ。しかし、これが易々といかない。というのも、敵の耐久値が高めに設定されていて、1~2発弾を撃ち込んだとしても倒せない。そして、彼らは常に集団で現れる。一体倒すのに時間をかけてたり、耐久値の高い敵を相手にし過ぎていると、それ以外の敵から数の暴力で押される危険が増し、追い詰められていくのだ。

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その為、攻略中は一切立ち止まらず、様々な敵に目標を切り替えながら銃火器を撃ち続け、時に回避行動を取るのに徹する事になる。何もせず、立ち止まる瞬間は一切訪れず、動き続ければならない。アクションゲームならではのキャラクターを動かす遊び、ガンシューティング特有の順序立てて敵を素早く倒していく戦術性をミックスした、息つく暇を与えない戦闘が繰り広げられていくのだ。

なので、1ステージごとの内容が非常に濃い。何処も順序立てて敵を倒し、回避行動を取っていく事が要求されるので、プレイヤーの集中力と戦況を読んで対処する判断力をフル活用して挑む事になる。そんなバランスが徹底されているから、クリアを目指すだけでもてんやわんや。上記のゲームプレイトレイラーでも、銃撃にアクションと激しく立ち回っている様子が紹介されているが、本当にその通りの機敏な動きがプレイヤーに求められ、画面いっぱいに慌ただしい戦闘が展開されていくのである。

そして、こうも辛口な難易度の内容ながら、リプレイ性に優れているという特筆すべきところがある。

短くもネタを凝縮したステージが演出する遊び易さと激戦に次ぐ激戦

それを演出するのが、短くまとめられたステージ。実は今作、一つのステージをクリアするのに5分以上の時間がかかる事がほとんど無い。長くても2分半。早ければ1分以内で、長時間プレイヤーを縛り付けず、僅かな時間でもゲームの醍醐味を味わい尽くせるようにするレベルデザインが徹底されているのだ。

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それもあって、激しい戦闘が繰り広げられる構成ながら、クリア時に襲い掛かる疲労が重くない。ミスした時もまた然り。やられてしまうと、ステージの最初からやり直しになるのだが、クリアするのに必要な時間がほんの数分なので、モチベーションが殺がれ難い。それどころか、「今度こそ!」という気持ちで再トライしたくなるのである。

ゲームバランスもその魅力を際立たせる為、やればやるほどに絶望的と思えた敵の攻撃の突破口が見えてくる、トライ&エラーの醍醐味を抑えた調整が施されていて、モチベーションの維持に貢献。プレイヤーの腕前の上達が目に見えて現れる、狙い澄ました設計が成されているのだ。

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このような工夫が凝らされているのもあって、手強いステージであっても何度も挑みたくなる面白さがある。もし、これでクリアに5~10分以上がかかる構成だったら、バランスの悪いゲームに収束してしまっていたのは明らかだ。そのようにして玄人向けのゲームにしないよう、ギリギリ辛さを感じない程度に抑えているのが見事。

万人向けと言うには程遠いが、辛さと優しさを絶妙な塩梅で両立させた作りで、製作者のゲーム性と遊び易さに対するこだわりを実感させられる仕上がりになっている。

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短時間での攻略を自然と意識させる仕掛けが凝らされているのも秀逸。実は今作にはゲーム全体で制限時間が設定されていて、ステージを一つクリアする度に、攻略までに費やした時間分が差し引かれていく。例に出すと、制限時間が30分の時、一つのステージを1分30秒でクリアしたら、残り時間が28分30秒に減る感じだ。そして、この制限時間が0になると、最終ステージに進めなくなってしまう。その前のステージで足止めとなってしまうのだ。

そうならないよう、どのステージにおいても短時間で攻略する事が最優先で求められる。悪く言うと、プレイヤーを急かす取り決めだが、これもトライ&エラーの負担軽減に貢献しており、ゲームの遊び易さとリプレイ性の高さを引き立てている。

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制限時間自体も基本、最終ステージを解禁させる為の条件でしかなく、例え経過してしまったとしてもゲーム終了にはならない。最後のステージだけが遊べない状態になるだけだ。それに、一度クリアしたステージで新しい最速タイムを出せれば、制限時間に記録されていた以前のタイムが新しいタイムに差し代わり、時間を巻き戻すことも可能だ。 

そんな目標の達成を失敗したプレイヤーを突き放さない措置が凝らされているのも良心的。スピード感のある展開と併せて、製作者の遊び易さへのこだわりを実感させられるだろう。

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短い構成なのにネタがギッシリ詰まったステージの作りも見逃せない。基本、雑魚敵との戦闘とボス戦を繰り返すだけだが、ステージごとに固有のトラップが登場するのに加え、敵のバリエーションも多彩で、一体一体が奇抜な攻撃でエリンに攻め込んでくる。また、先の制限時間と直結したタイムアタックのほか、プレイヤーランク、ライフMAXクリアと言ったやり込み要素も完備。一度クリアしただけでお終いとしないことにも妥協が一切無く、浅いゲームに終わらせない本気の作り込みを感じ取れるだろう。

キーボード操作非推奨の絶対に息をついてはならない戦い

色鮮やかなドット絵で彩られたグラフィックの完成度も高く、スーパーファミコン世代なら、懐かしい気持ちに浸れること請け合い。音楽もスーパーファミコンのゲームを意識したPCM音源風味の作りとなっていて、それも同世代のノスタルジーを喚起する。ステージ全てに固有の楽曲が用意されているのも驚きだ。

▲Youtubeでは作曲者Dominic Ninmark氏による試聴動画も公開中。

ボリュームもクリアするだけなら2~3時間程度と短いが、先のやり込み要素のほか、クリア後に用意された膨大な量のスペシャルステージ、実績が用意されているので、極めようとなれば長く遊べる。

難易度選択機能も完備。更に基本、簡単な難易度の「イージー」でも普通にエンディングまで行ける設計になっている。更にイージーに限り、制限時間が取り除かれ、プレイヤーのペースに応じて本編を進めていくことも可能。このような90年代のテイストを特色としたゲームほど、ノーマル以上の難易度でないと遊べないステージがあるなどの縛りを設けがちだが、そのような事を一切せず、現代風の配慮を施しているところには好感が持てる。

演出周りもイベントデモシーンはフルボイス(英語)で、これまた現代風。声優もいい演技をしており、特にラスボスのニヒルな声は良くも悪くも耳にこびり付いてしまうだろう。

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細かく配慮されてはいるが、基本的な難易度は「イージー」であっても高め。全編、激しい立ち回りが要求されるので、アクションゲームが苦手なプレイヤーには気軽におすすめできない。しかし、好きで得意なプレイヤーなら遊んでみる価値はあり。短めとは言え、確かな手応えと充実感が得られる良作アクションシューティングとなっているので、ぜひチャレンジしてみて欲しい。

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ただ今作、キーボードでのプレイは推奨されていない。それを象徴するかのように、ゲーム起動後間もなく「キーボードでプレイするのはおすすめしません」との警告メッセージが表示されるほどだ。なので、プレイする際は必ずゲームパッドを準備されたし。

[基本情報]
タイトル: 『Bot Vice』
制作者: DYA GAMES
クリア時間:2時間~3時間(※やり込み要素のコンプリートを除く)
対応OS: Windows、Mac OS X、SteamOS + Linux
価格: ¥1180


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