まだ見ぬ地上と水を求めた、元女暗殺者と奴隷少女の挑戦の物語。硬派なフリゲローグライク『カクタスガール』

地下に広がる都市「アンダウンタウン」。

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この世界は、99階層で構成されるダンジョン「地下塔」から採取される貴重な水資源を独占する「水道局」による圧制が敷かれていた。だが、いつしか水資源が枯渇し始め、局のアドバンテージは崩れつつあった。

そんな中、水道局が管理する「超自然教室」なる施設から一人の少女が逃げ出す。局員の調査により、逃亡後、少女が奴隷商に捕まったことが判明するも、彼らが違法な集団だったために出庫記録が存在せず、以降の足取りを掴めずに行き詰まっていた。

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同じ頃、件の奴隷商をせん滅する依頼を受けた一人の女暗殺者が単身、アジトへと潜入。数人の”処理”を果たした末、捕らえられた少女「サナ」を救出する。だが、サナはすぐにでも”終わる”ことを望んだ。彼女はこの世界で特に金のかかる病気「水を飲まなければ死ぬしかない病気」にかかっていたのだ。そして、その病気は暗殺者こと「キリエ」も患っていた。

不思議な縁を感じたキリエは、枯渇しつつある水資源の現状から、最後の賭けとしてサナと共に綺麗な水が存在するとされた地上を目指すことを決意。所属していた暗殺ギルドを辞め、忌々しき「地下塔」へと挑む。
果たして、その先に地上と綺麗な水は存在するのか。幻に終わるのか。

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このようなストーリーと共に始まる『カクタスガール』(作者:アブラノ氏)は、階層に踏み入れる度に構造が自動生成されるダンジョンを進み、アイテムや装備品を調達しながら最上階を目指すローグライクゲーム。2019年2月18日、Windows PC用フリーゲームとして、同ゲームの配信サイトである「ふりーむ!」にて公開された。

古典的なローグライクを元に構築されたゲームシステム

「ふりーむ!」の作品紹介ページ、本編チュートリアルでも解説されるが、本作の内容を端的に表せば『不思議のダンジョン』である。しかし、システム周りは同作とやや異なる。

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▲チュートリアルで『不思議”な”ダンジョン』と記されるが、正しくは『不思議”の”ダンジョン』なので(※”な”は派生作の名称)、この記事ではそれで通します。

一つに行動順序。ローグライクはプレイヤーが一歩動けば、相手(敵)も一歩動く「ターン制」のシステムが定番だ。本作もそれを採用しているが、「速度」が高いほど有利に立てる仕組み。プレイヤー側が勝れば二回連続で動け、敵が勝ればこちらは一回しか動けない、と言ったようにターン制の原則から外れる展開が生じるようになっている。

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二つにダンジョン構造。本作では階層に降り立った時点で、部屋と通路、階段の位置と言った全体像が判明する。そして、狭い。早々に探索を終えられる。階段にも一階層進む「青い階段」のほか、二階層分進む「赤い階段」、さらに同じく二色の「下り階段」が存在。一気に進むことも、引き下がることもできる。このため、進行テンポが早め。探索も一瞬の内に終えられるので、敵との戦闘、アイテム回収に時間を割かれやすい設計になっている。

三つにゲームオーバーによるペナルティ。例によって、本作もダンジョン内で体力が空になれば、それまでのレベル、獲得したアイテム全般が全てリセットされる。だが、難易度が選べ、簡単な「優しい」であれば、リセットを認めて拠点マップ(アンダウンタウン)へ戻るか、事前の記録から再開するかの二択ができる。

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反面、「難しい」では読み込めば消えてしまう中断セーブ及びロードしかできない、ローグライクの基本に準じた仕組み。いずれもバランスが全く異なるため、実質、二本分のローグライクが楽しめると言っても過言ではない作りをしている。しかも、難易度の変更はゲーム中、自由に行える。厳しいままで挑むも、優しくして安全策へ方針転換するのも思うがままなのも、本作の特徴の一つとなっている。

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他にダンジョン内では「ユニークモンスター」なる場違いなほど強い敵が現れる要素、階層ごとに「耐性」を付けているか否かで難しさが上下するなどの特徴がある。

ここまでの紹介で、古くからローグライクを嗜んでいるプレイヤーは察せた通り、本作は『Angband』に代表される、いわゆるband系と言われるタイプのローグライクになっている。厳密には本作の解説書(readme.txt)にも記されているのだが、『Angband』派生の『変愚蛮怒(へんぐばんど)』を元にしている。

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そのため、先に例に出した『不思議のダンジョン』をイメージしてプレイすると、細かな違いに戸惑うこと確実だ。難易度も低くない。「耐性」を付けているか否かで極端に上下するので、安易に力任せで突き進むと、ものすごい勢いで返り討ちにされる。さらに「優しい」に限れば、どこでもセーブできるのは詰みパターンが作られる可能性があることを意味する。それでも脱出用アイテムが……と言っても、件のアイテムは数ターン経過しないと効果を発揮しないので、その間に敵に襲われ、力尽きてしまえばアウト。

このことからも階層ごとに応じた戦略、攻め時と引き際の見極めが大きく問われる。そしてそこに、一歩動く度に値が1減り、0になると体力が減少し始め、回復せず放置すると力尽きてしまう「空腹度」こと「TP」の存在がのしかかってくる。

刻々と迫りくる、喉の渇きと水の枯渇の恐怖

本作における「TP」は「喉の渇き」を指す。そのことから明らかな通り、回復には「水」のアイテムを用いる。だが、ここで本記事冒頭で紹介しているストーリーを読み返して欲しい。舞台となる世界において、水は枯渇し始めている。

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つまり、貴重品(レアアイテム)。滅多に手に入らない代物なのだ。しかも、主人公は「水を飲まなければ死ぬ病気」を患っている。水を摂取しないと、体調悪化と共に攻撃力が下がってしまうのである。

絶対に水を飲まなければならない訳ではなく、「酒」でも回復は行える。だが、あくまでも回復だけで、攻撃力低下は防げない。しかも、酒を飲めば「混乱」の状態異常が付加。このため、混乱を防ぐ「酔い止め薬」なるアイテムを飲んだ上で摂取することが求められる。

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▲特殊能力こと「スキル」に混乱を防ぐ「狂耐性」があれば、薬を飲む必要はない。

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そして、追い討ちをかけるように水の枯渇は階層を潜る度に進行。最初は低い階層で取れたものが、段々と強敵揃いの高い階層でしか取れなくなっていく。一応、本編の進みに応じてなので、昇りすぎなければ低い階層で採取できるままでいられる。だが、高い階層にいけば強力な装備品が手に入るので、そのまま進まずにいるわけにもいかない。

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さらに水は貴重品ということで、店では高値で売れる。そうすることで高い装備品が買えるようになるが、代償として攻撃力低下が進行し、当面は厳しい戦いを強いられることに。
このような仕掛けがあるため、本編攻略に重くのしかかるシステムとなっている。

水と同じくらい装備品の入手も重要。先の通り「耐性」が備わっているか否かで大きく上下する難易度のため、それがあらかじめ備わった武器をいかに早く獲得できるかで、その後の難しさが変わる。大抵の耐性付き装備はダンジョン内で手に入るので、場合によっては敵を倒しやすい階層で延々と狩る(ハック&スラッシュに興じる)展開になったりも。

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だが、それに応じて水の枯渇も進み、攻撃力も下がるので、見極めが必要。こう言った制約が存在することからも、簡単なゲームではないのが察せるだろう。それが自由にセーブ可能な「優しい」でも共通なのであるから、推して察するべし。

その分、システムを完全に理解し、突破できた時の快感は格別。枯渇していく水もストーリーの背景と見事にリンクしていて、主人公達の切迫した状況を感じ取れるのも魅力的だ。

非常に癖が強いのは否定しないが、その分、悩みと楽しさを提供してくれる設計。こう言った要素も『不思議のダンジョン』とは言いがたい本作のローグライクとしての個性を現していて、一筋縄ではいかないやり応えに富んでいる。

この挑戦の果てに、求める”地上”と”水”はあるのか……?

戦闘も睡眠状態の敵を攻撃すると大ダメージを与えられる、暗殺者の主人公という設定を活かした「ステルスキル」の要素があり、いかにして相手を起こさずに近づくかを考える、独特な緊張感に富んでいるのが面白い。敵もユニーク種含めて膨大なほか、倒した敵が図鑑に記録される機能もあるので、積極的に倒しにいきたくなる。

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ストーリーも、病気を患った主人公一行が綺麗な水を求めて地上を目指す、分かりやすくもロマン溢れる内容が光る。圧制を敷く水道局、主人公との因縁を持つ別の暗殺者、そして謎の病気と関連した「超自然教室」なる謎の施設など、設定周りもユニークで、いずれも断片的にしか語られないのもあり、背景を考察したくなる魅力に富んでいる。PlayStation 2の”人を選ぶ傑作”として名高い『ブレスオブファイアV ドラゴンクォーター』のオマージュと思しきネタが見られるところにも、同作経験者ならニヤリとしてしまうはずだ。

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ただ、実はギャグ7割シリアス3割、茶番そこそこに加えて下ネタも満載な作風で、結構好みが分かれる。特に主人公のキリエは女性としてその台詞はどうなの、と言いたくなることを度々口走る。引いてしまう類の発言も多々あるので、少し覚悟が必要……かもしれない。

他に操作はキーボード前提で、ゲームパッドでは使えないボタンが沢山出てしまう難点も。元々想定していないためなのだが、ゲームパッドで遊びたいプレイヤーには、不便を感じるかもしれない。それとは別に、斜め左右上に方向を変えようとしたら移動してしまうなど、一部、疑問符の浮かぶ調整も引っかかる(※6月4日追記:6月3日にリリースされた「Ver 1.09」で修正)。難易度も特に中盤以降、速度ステータスの上下で極端に左右される難易度になっているのが引っかかるところだ。

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色々、硬派な作りのため、万人にお薦めできるものではない。だが、それ相応の凝ったシステムと難易度でたっぷり楽しませてくれる一本。ボリュームもエンディングを目指すだけでも25~35時間は余裕で費やすことになる密度に加え(※「難しい」なら、さらに増す)、登場する敵の全撃破、クエストと言ったやり込み要素も満載。腰を据えて楽しむローグライクをお求めであれば、要チェックの力作だ。深刻な病を抱えた女暗殺者と共に、幻の地上を目指そう。

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その道はあまりにも険しいが、辿り着いた時、相応の光景が目前に広がる……かどうかは挑戦してみてのお楽しみ。

[基本情報]
タイトル:『カクタスガール』
制作者: アブラノ
クリア時間: 25~35時間
難易度:上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19581

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