長編フリゲRPG『デイドリームリバー』。一つの凄惨な事件を機に幕を上げる、恐怖と混沌の宴。

石川県金沢市「香林(こうりん)中学校」。
夏休みを間近に控えたこの学校である朝、一人の男子生徒の死体が発見された。

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学校中が騒然となる中、死亡した生徒と同じ学年の籏崎健斗(はたざきけんと)、伊沢京介(いさわきょうすけ)は前日の深夜、彼から電話がかかってきていたことに気付いた。留守番電話を再生すると、そこには彼が死に至るまでの様子を生々しく伝える音声が残されていた。只ならぬ気配を感じた二人は、部活動の先輩である岡梨優也(おかなしゆうや)の協力も得て、深夜に学校へと忍び込む。そこで彼らを待っていたものとは…。

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『デイドリームリバー』は2018年11月23日にフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にてリリースされた、Windows用長編ロールプレイングゲーム。作者は「莞爾の草(かんじのくさ)」氏。「RPGツクールVX Ace」で制作された作品であり、プレイに当たっては同ツールの専用RTPのインストールが必須となる。(ダウンロードはこちらから)

真夜中の学校を舞台に繰り広げられる学園ホラーRPG…?

本作は男子生徒の死の真相を明らかにするため、真夜中の学校を探索していく。ホラーアドベンチャーっぽくあるが、内容はRPG。マップを歩むと敵との戦闘がランダムで発生し、勝利すれば経験値が入り、一定量に達するとキャラクターのレベルが上がって強くなる、純然たる作りになっている。

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なので、探索中に”なにか”が襲い掛かってきても、戦闘を通して退けられる。しかも、本作の登場人物達は皆、炎、氷、雷などを自在に操る超能力を”当たり前のように”所持。特定の人物に至っては、傷を治す回復の能力も持ち合わせている。

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また、戦闘に勝利すると経験値とは別に「パッシブポイント」なるものも獲得。メニュー画面にある「パッシブ」で、特定のステータスを底上げしたり、耐性を備え付ける「パッシブスキル」との交換ができ、個々のキャラクターの強化も図れる。

ここまでの説明で、心の奥底から言いたくなったと思われる。

どんな世界観だ、と。

そして、超能力が使える者達が探索するなら、あまり怖くなさそうとも思うかもしれない。

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だが、実際はその逆。登場人物達が万能な力を持つ分、太刀打ちできない”なにか”が次々と襲い掛かっては、プレイヤーを恐怖へと陥れていく。

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不意にドキッとさせる仕掛け、出血・身体欠損を始めとする残酷な表現も豊富。特に後者は鮮烈で、”なにか”によって登場人物が見るも無残な姿にされる様子が、一枚絵の演出と共に克明に描かれる。劇画調で歪みも表現されたキャラクターデザインも、それらのシーンをより不気味且つ、印象深いものにしていて、嫌でも目に焼き付いてしまうインパクトに満ちている。

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当然ながら、戦闘を通しても退けられない”なにか”も存在。
そのような者から逃げなければならない展開も発生する。

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極めつけで謎解きにも、手順を間違えれば、恐るべき事態へと至るものが。

RPGらしい仕組みの数々から、舞台設定から連想される怖さは薄そうも思うかもしれない。だが、実際は薄いどころか濃い目。例え退ける力を持っていようが、人でない存在に歯向かうのは容易ではないことを痛感させられる、独特な体験が得られる内容になっている。

そして面白いのが、ここまでのパートが全体の一部でしかないことだ。

混沌の様相を呈する濃厚なストーリー。

実は本作、狭い空間を舞台にした、ホラー系RPGではない。
あるタイミングを境に真夜中の学校の探索が終わりを迎え、以降は街中などの広範囲が舞台となる、ジュブナイル系RPGへと一変するのである。

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同時にストーリーも思わぬ方向へと進んでいく。少しネタバレすると、学校探索が終わりに差し掛かる頃、ある大きな事件が起きる。しかも、その事件には一見、無関係に見える男子生徒の死、真夜中の学校でうごめく”なにか”も絡んでいることが示される。登場人物達は一連の出来事の関係を明かすため、街中などで調査を繰り広げていき、やがては巨大な陰謀の渦へと巻き込まれていくことになるのだ。

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そのようになって以降のストーリー展開たるや、真夜中の学校探索が小さく見えてしまう程度にスケールが大きい。しかも親と子、いじめ、共依存、現世と常世、資本主義と共産主義などのテーマも入り混じって、複雑な様相を呈してくる

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▲折り返し点に来る度、歴史上の人物が遺した名言が表示されたりも。

それでいて驚くべきは、これほど複雑な内容になろうとも、ストーリー全体の勢いが落ちないどころか、加速すること。各々のテーマの掘り下げが浅くなったり、語りすぎて中だるみすることもなく、テンポ良く繰り広げられていくのである。

沢山のテーマを盛り込んだストーリーというのは得てして破綻を招きやすい。また、一部のテーマが掘り下げられる反面、残りが浅くなる弊害も生じる。本作はそのようなことがほとんど起きることがなく、最後の最後まで全てのテーマにまつわるイベントがバランスよく展開。プレイヤーをくぎ付けにし続けるのだ。圧巻としか言い様がない。

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構成も素晴らしく、二転三転する事態が矢継ぎ早に発生するので、(いい意味で)止め時が作りにくい。それどころか、全てが終わったと思われた後にも驚愕の展開が。そこから予想だにしない結末へと行き着く流れも、唖然となってしまうインパクトがある。

勢いを重視したあまり、登場人物達が当たり前のように超能力が使える設定の解説タイミングが遅く、序盤は世界観に入り込みにくい、雰囲気の緩和を意図して入れたとされるギャグが余計に感じてしまうなどの難点もある。
また、これは苦手なプレイヤーへの配慮を踏まえ、あえてネタバレするが、本作はハッピーエンドとはならない。非常に心苦しい締めとなる。先の通り、ホラー演出も容赦なく、あるタイミングで克明に描かれるいじめの表現も、苦手な人なら胸糞必至だ

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しかしながら、中だるみがほとんどないこと、綺麗ごとで終わらせず、ご都合主義にも逃げずに描き切った作りは素直に引き込まれるものがある。

RPGにはシステム以上に記憶に残る濃厚なストーリーを。それを求めるプレイヤーなら、本作が要プレイの作品であるのは、言うまでもないだろう。

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かと言って、マップやシステムの作りも甘くない。特に前者は謎解きあり、チームに分かれての探索ありなど、工夫を凝らした作りになっていて飽きさせない。あるマップに至っては、戦闘の発生がランダムから、敵との接触(シンボル式)へと変わるという、システム的に凝った仕掛けまで用意されているぐらいだ。

ボリュームもメインストーリーだけでも15時間以上と盛り沢山。寄り道のサブクエストも用意されていて、それらの攻略も含めれば30時間は超過する。

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どうしてもストーリーの濃さに目が行ってしまうが、ちゃんとストーリー以外を求めるプレイヤーの欲求にも応えてくれる。ただ、どちらが最も魅力的かと言われれば、圧倒的にストーリー。それほどまでに濃い。強烈な印象を残すものになっているのだ。いい加減、しつこく感じてしまうかもしれないが、実際にプレイすれば、何度も繰り返す理由がきっと分かるだろう。

まさに混沌の宴。白昼夢のごときストーリーの結末を見届けるべし。

難易度はレベルを上げての力押しが効く部分のあることから低め。ストーリー展開の都合でチーム分け、単独行動を強いられる場面も頻繁にあり、回復アイテムをどれだけ持っているかで難しさが大きく上下する部分もある。さすがに行き詰まるほどの難しさはないものの、縛りを強調した調整は好みが分かれるかもしれない。

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戦闘システムも王道のコマンド選択型ながら、ターンごとに参加メンバー、装備の変更を自由に実施できるなど、戦略の立て直しがしやすい作りになっているのがユニーク。リング状のコマンドインターフェース、強力な技を仕掛けた際のカットインなど、デザイン面でも独自の工夫が満載。キャラクターも特定のステータスが際立って高いなど、分かりやすい個性付けが図られていて、状況に応じて最適なメンバーを考えて実行に移す楽しさがある。

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全体的にホラー、残酷な表現が豊富にあるため、人を選ぶ作風ではある。そのことから12歳以上対象の推奨年齢が設定されているが、筆者の主観では17歳以上対象が相応しいのでは、と思う。やや演出過剰なところもあり、中でもフレームレートが落ちるマップ移動中の拡大表現は余計に感じてしまう。

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そんな粗さも目立つ出来ではあるが、終始、勢いを保ち続ける濃厚なストーリー、起伏に富んだマップで楽しませてくれる本作。まさに怪作というに相応しい一本だ。この「混沌の宴」と言うに他ないストーリーに身を委ねてみよう。
きっとそれは、あらゆる意味で忘れられない体験として残る……はず。

[基本情報]
タイトル:『デイドリームリバー』
制作者: 莞爾の草(かんじのくさ)
クリア時間: 15~20時間(※サブクエスト攻略込み:35~40時間)
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:ホラー、出血・暴力表現あり(推奨年齢:12歳以上)※筆者の主観では17歳以上推奨

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18952

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