フリーゲームをはじめよう。「第4回 フリーゲームに彩りを添える素材の世界」

フリーゲーム,連載

これまでの連載ではフリーゲームの魅力について作品を通してお伝えしてきましたが、今回はフリゲにとって無くてはならない、「素材」について書いていこうと思います。

個人でゲームを作るとき、イラストレーションや音楽などゲームに必要なあらゆるコンテンツを自前で用意するのは非常に困難です。『RPGツクール』や『WOLF RPGエディター』などのゲーム制作ソフトには最初からデータがいくつか用意されていますが、制作者が自分の世界を表現するにはいささか足りない場合が出てきます。そういった時、インターネット上で配布されている「素材」は、制作者達の大きな助けになります。

配布される素材はゲーム制作者だけでなく、ゲームを遊ぶ人にとっても魅力あるコンテンツです。例えば「フリー素材」として配布しているものは無料だから完成度が低いわけではありません。それぞれが作者の特徴を活かして自由に作り上げているので、素材としてのバリエーションは豊かです。有料素材も金額相応以上の精巧な作りをしているものが沢山あります。フリーゲームを遊んでいる最中気になった曲を調べてみたら、その作曲者さんのファンになってしまうのもよくあることです。

ならば、実際にどのような素材が配布されているでしょうか。大まかな分類では、「グラフィック関連の素材」「サウンド関連の素材」「スクリプト関連の素材」に分かれます。グラフィック素材はキャラクターの立ち絵や歩行グラフィック、アイコンのような細かいものまであります。音声素材はゲーム中に流れるBGMや効果音、環境音が挙げられます。スクリプト素材はゲームを製作しないユーザーには聞き慣れない言葉でしょうが、ゲームシステムを改良・変更するプログラムのことです。主にRPGツクールシリーズで使われるもので、例えプログラミングの知識がなくても、ゲーム画面や内部システムを全く違うものに変えることが出来る優れものです。完成度の高いフリーゲームが配布される背景には、こういった素晴らしい素材があるのです。

さて、これら素材配布サイトの中から、グラフィック・サウンドに絞っていくつかご紹介したいと思います。

※素材は各配布先ごとに使用するためのルールが規定されています。例えフリー素材でも著作権そのものは制作者にあり、二次配布は原則禁止です。素材として使用する前に必ず規約を読み、自分の使用方法に問題がないか必ず確認をしてください。

『ねくらマップチップ』

フリーゲーム 素材
 
有償素材の中でもひときわファンの多いものといえば、ねくら氏が販売している『ねくらファンタジーマップチップ素材』が挙げられます。マップチップ素材とは、2D見下ろし型のゲームに向けて作られたグラフィックのことです。ファンタジーと名前が付いているように、洞窟や砂漠や異空間など、様々なエリアに対応しています。色彩が美しいだけでなく、マップに置ける小物も精巧な作りです。無償版や追加マップチップもあるので、興味があれば一度サンプル動画を見るのをオススメします。

素材販売元(DLsite)
素材販売元(BOOTH)
制作者様サイト

『臼井の会』

フリーゲーム 素材
 
フリーゲーム 素材
 
「ふりーむ!」でRPG関連のジャンルを見ると、よく目にするキャラクター達がいます。彼らはRPGツクールやWOLFRPGエディターに最初から入っているものではなく、香月清人氏が制作したキャラクター素材です。表情の差分などが充実しているため、シーンに合わせた感情表現が出来るのが魅力のひとつです。現在はクリエーター支援サービス「Enty」にて随時更新しており、月100円以上の支援登録を行うことで利用することが出来ます。現在キャラクターの立ち絵は100種類近く用意されています。

素材配信先(Enty)
制作者様サイト

『シアンのゆりかご』

フリーゲーム 素材
 
フリーゲーム 素材
フリーゲーム『歪者行進曲』より
 
RPGにおける華である戦闘を盛り上げるモンスター素材。マゼラン氏の『シアンのゆりかご』では、特にダークな世界観によく合うモンスター素材を多数配布しています。「北欧神話」「ソロモン72柱」「クトゥルフ神話」など、世界各地の神話や伝承をベースにしたものが多く、それらが現代的なイラストでリデザインされているのが特徴です。フリー素材として配布されていますが、他にもテーマで統一した素材集も販売されています。

素材配信先(制作者様サイト)

『魔王魂』

フリーゲーム 素材
 
サウンドのフリー素材の大手と言えば、やはりKOUICHI(森田交一)氏の『魔王魂』が挙がります。BGMや効果音のバリエーションは幅広く、BGMだけでも「ロック」「サイバー」「ヒーリング」などジャンルが充実しているので、用途に合わせた使い方が出来ます。フリーゲームだけでなく、スマホのインディーズゲームや動画などでもよく使われているので、誰もがどこかで魔王魂のメロディーを耳にした事があるでしょう。作曲依頼も受け付けているので、本格的なゲーム制作にも対応しています。

素材配信先(制作者様サイト)

『効果音ラボ』

フリーゲーム 素材
 
様々なサウンド素材を取り扱うところがある一方で、「効果音」に重点を置いて配布しているサイトもあります。Killy氏の『効果音ラボ』もそのひとつです。「ドアのノック」や「ガスコンロの点火」のような生活音から、「マシンガンの射撃」や「薬莢の落下」のような戦闘シーンまで用意されています。さらに「足音」ひとつ取っても、草むらからプールサイドまで幅広くカバーしています。音響自体のクオリティも高く、ゲーム制作関係なしにただ聴いているだけでも十分に楽しめます。フリー素材であることとダウンロードが分かりやすいおかげで、初心者でも扱いに困ることはないでしょう。

素材配信先(制作者様サイト)

このような素材は、インターネットの普及とともに大きく広がりました。ネット上のあらゆる創作は彼らの下支えがあって作られています。フリーゲームが多くの人に愛される様になったのも、彼らなくして語ることは出来ません。もちろん紹介した以外にも数多くの素材屋さんが存在します。ぜひ自分で調べて素敵なサイトに辿り着いてください。

さて、連載は次で最終回にしようと思います。最後ということで、「フリーゲーム制作の始め方」で締めたいと思います。ぜひ次回もご期待ください。

  • ノンジャンル人生(@nongenre_zinsei

    普段からRPGの考察と『メイジの転生録』の話ばかりしている人です。2016年にはもぐらゲームスにて連載「フリーゲームをはじめよう。」を寄稿し、近年はVR・VTuberの記事なども執筆しました。noteでは「一期崎火雀」名義でゲーム関連のコラムを書いています。

    自身もRPGを制作中。

    note:一期崎火雀(ノンジャンル人生)