ブラウザフリーゲーム『イニシエダンジョン』。ハクスラの「爽快感」とローグライクの「緊張感」

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『イニシエダンジョン』は、自動生成されるダンジョンを攻略していくローグライクと、敵を倒し、アイテムを手に入れ、キャラを強くしていくハック&スラッシュという二大人気ジャンルの要素を組み合わせたような作品だ。操作形式は、多くのハック&スラッシュのゲームが採用しているアクションRPG形式で、大勢の仲間を引き連れて敵をなぎ倒し、そしてダンジョンを攻略したときの快感は何にも変えがたい。

しかし、そういったハクスラの爽快感だけでなく、緊張感を両立していることがこのゲームの絶妙なバランスを生み出している。このゲームでは、ダンジョンの中でキャラクターが倒されると、装備・お金を全て失い、そしてなんとキャラクター自体もロストしてしまう。一度死んだキャラクターは、二度と復活できないのだ。大切に育てたキャラクターが、一瞬にして消えてしまうという絶望感……ブラウザでお手軽に楽しめるゲームでありながらも、この「取り返しの付かなさ」という特徴が、絶妙な緊迫感を打ち出している。そんな注目のゲームを早速紹介していきたい。

なお、筆者はいったんのゲームクリアとされる階層までクリアすることが出来た。その段階までは、ゲーム攻略の苦手な人でもなんとかクリアできる難易度となっていると感じた。一方で、クリア後に待ち受けるダンジョンもあり、さらなるやりこみが可能な作品となっている。

ハクスラとローグライクの面白さを一度に楽しめる

ゲームを開始するには、まずはキャラクターを作成する。最初は戦士である「ファイター」のクラスが選べる。耐久力に優れた前衛タイプのクラスなので、初心者でも扱いやすい。

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キャラクターの作成画面。まずはここからスタートだ

舞台はアルメナンド国、この国に存在するダンジョンの奥にあるという、不死身の身体になれる「不老不死の水」。それを求め、多くの冒険者たちがやってくる地だ。プレイヤーもそんな冒険者の一人として、ダンジョンの奥深くに潜っていくことになる。

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舞台となるアルメナンド国。町には装備やアイテムを取り揃えた施設や、冒険者を仲間に出来る酒場がある

ローグライクというとターン制を想像するかもしれないが、本作はターン制ではなく、自由にキャラを動かせるアクションRPGの操作形式となっている。ダンジョンでは、次々と現れる敵を倒しつつ、アイテムを集めキャラを強化しながら進んでいく。

このゲームの特徴といえるのが、なんといっても大人数のパーティで無数の魔物を打ち倒していくハック&スラッシュの爽快感だ。序盤は数こそ少ないものの、深い階層に行くほど大量の敵が出現し、激戦が繰り広げられる。もちろん大量の敵からは経験値やアイテム、お金がドロップし、レベルやお金はどんどん上昇していく。倒して入手した装備をつけて、さらに強い敵を倒しにいこう。

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ダンジョンには多くの敵が現れる。序盤は数が少ないものの、地下に進むにつれて現れる大量の敵をなぎ倒す爽快感が魅力だ

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大規模な戦いの1シーン。気を抜くとキャラクターの状態が分からなくなるような、激戦が展開される!

ダンジョンで入手できる武器には、武器ごとに技が設定されており、MPを消費して武器に応じた技を発動することが出来る。技は使用後にチャージ時間が必要なので、チャージ完了までは連射することは出来ない。

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装備した武器ごとに、攻撃・回復・補助…さまざまな技が使用できる

また、装備には、名前の右側に「+」がつくこともあり、その場合には、攻撃力やHPが追加UPするなどの特殊効果が追加される。一見普通の武器でも、補助効果が凄まじい装備も存在するので、ダンジョンにもぐりながら、さらに強いアイテムをコレクションするというローグライク的な楽しみがある。

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特殊効果の組み合わせによっては、非常に強力な装備になることもある。コレクション好きの人は思わず集めてしまいたくなるだろう

「死んだキャラは二度と生き返らない」という緊張感

ローグライク、ハック&スラッシュという2つのジャンルの根本的な楽しさの詰まった本作。しかし、なにより特徴的なのは、冒頭でも紹介したように「死んだキャラは二度と生き返らない」というポイントだ。たとえば、ローグライクで有名な『不思議のダンジョン』シリーズでは、ダンジョン内で倒されると、装備やお金はなくなるもののキャラクターがロストすることはない。しかし、本作ではキャラクターまでもがロストしてしまう。それがこの『イニシエダンジョン』のルールなのだ。

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操作しているキャラクターが死んでしまうとゲームオーバーとなり、タイトル画面に戻されてしまう。そしてキャラクター自身も失われてしまう……

そのため、新しいエリアに到着した際には、敵の行動などを調査しながら進むことが重要になる。新種の敵の攻撃で一気にパーティが壊滅させられる危険もあり、その緊張感が楽しくもある。

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新種の敵キャラに突然襲撃されることも。自分の作ったキャラクターが死んでしまうと、ダンジョンの中に墓が立つ

筆者もダンジョンの奥にたどり着くまでに何度もキャラをロストしてしまった。しかし、キャラクターを育てるための経験値は豊富に手に入るため、なんとか冒険者を育てなおして再挑戦したい気分にさせてくれるゲームとなっている。

そんなダンジョンの攻略では、奥深く進むごとに強い敵が現れ、一定の階層ごとにはボスも存在する。ボスは強力な特殊攻撃を持つものも存在するので、まずは行動のパターンを観察してから攻撃に移っていこう。そうしないと、キャラクターが一瞬にして倒されてしまうということも起こってしまう。

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ダンジョンの中にはイベントやボスが存在する。特にボスは強力な攻撃を行なってくるので、行動のパターンに要注意だ

ダンジョン攻略中には、プレイヤー以外の冒険者に出会うことがある。なかには困っている冒険者を助けるためのクエストも発生することがある。冒険者を助けるごとに、プレイヤーの作れるキャラクターの職業が増えていく。ダンジョンの奥に進み、作れるキャラを増やしていくことも楽しみの一つだ。

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ダンジョンの10Fにて、巨大な魔物にとらわれていたハンターの女性「リサ」。遠距離の弓攻撃を得意とする職業だ。彼女を助けると、プレイヤーも「ハンター」のキャラを作ることが出来るようになる

また、冒険者はプレイヤーがお金を払い雇うことでパーティに加入させることが出来る。貴重な戦力となるので、可能なかぎり加入させていきたい。冒険者はプレイヤーが作ったキャラと違って、死んでもロストすることはなく、町で再び雇うことが出来る。

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仲間にした冒険者はメンバーの一員として戦ってくれる。冒険者ごとに特徴があるので、様々なキャラを連れて行こう

ゲーム序盤の攻略のコツとしては、回復・支援などが得意な職業「プリースト」をメンバーに入れることを意識することだ。特にメンバーのHP回復が可能な技「ヒーリング」を使用できる武器「クラブ」を持たせるなどして、回復役は最低一人は確保したいところだ。もちろん。町の冒険者にもプリーストはいるため、補助約が足りないときは積極的に雇っていこう。

今回紹介した『イニシエダンジョン』は、ハック&スラッシュの敵をなぎ倒す爽快感と、ローグライクのダンジョン探索・アイテム収集。そして「死んだら生き返らない」という緊張感。これらの要素が絶妙に組み合わさった魅力的な1作となっている。ブラウザで遊べるためゲームのダウンロードも不要となっている。ぜひ一度触ってみてほしい。

[基本情報]
タイトル 『イニシエダンジョン』
制作者 おまる工房(制作者様サイトはこちら
クリア時間 約5時間~(一旦のエンディングまで)
必要動作環境 公式サイトのプレイガイドにて掲載
価格 無料

ゲームプレイはこちらから
http://inishie-dungeon.com/

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。