謎解きサスペンスホラーADV『狂い月』 積み重なった狂気を解く、「月」を巡る脱出劇

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『狂い月』は2016年1月に公開された直後から、ネットの各所で話題になった作品だ。謎解きを重視したシナリオと、丁寧にツボをついたホラー演出、そして全ての謎が解かれたときのカタルシスによって、多くフリーゲームプレイヤーを驚かせた。ファンイラストも多数描かれている。
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主人公「神崎満」は、クラシック曲「月の光」ばかり聞いているおとなしめな高校生だ。ある日の学校で、幼なじみで活動的な「新岡梓紗」から、天体観測ついでにお月見をしないかと誘われる。彼女は天文部に所属しているのだ。

ところが、現実社会でもよくあるように、話しが盛り上がる。ちょうど友人の「皆川進」たちが話していた「幽霊屋敷に行こう」の計画と合体し、「幽霊屋敷の近くで天体観測をしよう」という企画にミラクルフュージョンを果たす。幽霊屋敷は裏山の上にあり、「山は空気が澄んでるから、星がキレイに見える」だそうだ。

しぶしぶと、友人たちと共に屋敷の下見へと向かう主人公。

これが、惨劇の始まりであった・・・
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下見もそこそこの所で、まるで魔術のように降り出す雨。導かれるように屋敷の中へと避難する主人公たち。そして、お決まりのように開かなくなるドア
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もちろん、携帯電話も圏外と抜かりはない。

主人公たちは脱出を果たすべく、広大で複雑な屋敷を手分けして探索する事になる・・・

ここで、屋敷に閉じ込められた五人の人間を紹介しよう。
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渡 康平
冷静で霊感体質。特に隼人と仲が良い。一度気になったことは突きつめる性格で、個人行動が多い
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海道 隼人
お調子者で、トラブルメーカー。幽霊屋敷探索の発案者。メンタル面に若干の難がある。
 
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皆川 進
満の幼なじみで、響也とは中学時代からの同級生。ガラと口が悪く、満とも「ある事件」をきっかけに仲が悪くなった。いざとなったら守りに入ってしまうタイプ
 
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速水 響也
満のクラスメイトにして、中学時代からの同級生。二面性を持つ優等生キャラ。幽霊屋敷は、名目上彼の一家の管理になっている。
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神崎 満
主人公。記憶喪失、情緒不安定な母親、別離した弟と、人生の困苦にこと欠かない。その境遇ゆえ「ぼっち」でいることが多い。

さて、屋敷を探索すると、この屋敷が尋常でないことがわかる。妙な仕掛けが多すぎるのだ。
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あちこちの部屋は鍵がかかっており、仕掛けを解かないと先へ進めない。崩壊している場所も多く、ここが無人だと改めて認識させられる。本棚にあった屋敷の記録を紐解くと、明治3年に建築され、大正時代には学生寮として使われたこともあったようだ。学生寮時代に、大量殺人事件が起こっている。

不気味な雰囲気に飲まれつつも、探索は続く。そして・・・
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ここで簡単にゲームシステムについて説明しよう。

ジャンルはサスペンスホラー系の脱出アドベンチャーゲームで、アイテムを使い、謎を解いて屋敷の行ける範囲を広げつつ、「過去に何があったか」を解いていく。アクション要素は少なめだが、その分「がっつりとしたシナリオ」に、取り組む形になる。
 
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次々と手に入る、過去の人物達の日記帳
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明らかに惨劇のあと
 
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出没する弟「翔」の影
 
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憔悴する仲間たち
 
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ついに悲劇が・・・

『狂い月』が優れているところは、まず「シナリオの完成度の高さ」だろう。

「主人公満に関するもの」と「かつて屋敷で起こった出来事」、この二つが交差していて、それが徐々に明るみになる構造になっているのだが、その情報の出し方がうまい。

過去の日記、かつて屋敷で起こった出来事の幻覚、そして不意に思い出される失った記憶など、情報を伝える手段としてはオーソドックスなものの、それを適切なタイミングで適切な量を知らせるのは、かなりの熟考と手腕が必要だ。

そしてすごいのは、それら「なぜなに?」がゲームの完全クリアでほぼ解消される点だ。「どうしてここはこうなんだろう?」という「もやもや」が残らず、非常に大きな満足感を、得ることができる。

また、プレイ中の細かい配慮がなされているところもいい。
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例えば、「思考する」というコマンド。ゲームの進行具合ごとに、次に何をしたらいいか「ヒント」を出してくれる。ゲームを作る際に、いちいちこのイベント設定をするのは「とんでもなく面倒くさい」はずで、頭が下がる思いだ。

テキストスキップが実装されていたり、東西に別れた屋敷内の地図が常時参照できたりする。何よりも主人公の移動速度が速いのは、細かいようだが重要なポイントだ。これらはフリーゲームにおいて、どうしても手の届きにくい「かゆい」ところだが、『狂い月』ではしっかり配慮されている。

作者の3色ぱん氏は、このゲームが始めて制作したアドベンチャーゲームだそうだが、そうだとは思えない完成度を誇っている。アドベンチャー初心者にもおススメだ。

ただ、注意点を一つ言っておくと、謎解きがややむずかしいところがある。

「ヒントが少ない」とか「理不尽にむずかしい」とか、決してそんなことはないのだが、謎の出し方に「独特のクセ」があって、慣れないと手こずる。

例を一つ出すと、この画像。
 
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ただの絵ではない。謎を解くためのヒントなのだが、初見だと「?」と思ってしまうかもしれない。

もう一つ出す。
 
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「なにか重要な仕掛けだ」とはわかるけど、さまざまな文字や文様から、一見して難しさを感じる。筆者はここで一番苦労した。
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なお、しっかりとゲームオーバーもあるので、油断は禁物だ。

この作品には、「ノーマルエンド」と「トゥルーエンド」がある。全ての謎を解決したことによって見られるトゥルーエンドは専用のムービー付きで、「こう来たか!」と思わず息を呑む。

いったい屋敷で何が起こったのか? 幽霊の正体とは? 満の記憶は戻るのか?
「狂い月」の意味とは?

書きたいことはたくさんあるけど、緻密な構成のためネタバレを意識するとほとんど書けない、そんな作品だ。

とにかく、「とりあえずプレイしてみてくれ」と言うより他ない。

今までホラーゲームのプレイ動画を見るだけだった初心者の人や、またある程度やりこんでいる人にも、ぜひプレイして欲しい。多少の脅かし・流血表現・残酷描写など、一部ショッキングなシーンがあるが、ホラーゲームとは「そういうゲーム」だ。

「クトゥルフ神話」の、とくに大正時代や現代の日本を舞台にした作品が好きという人も、好んでくれると思う。恐怖の組み立て方に、それらと通じるものがある。

【基本情報】
タイトル 『狂い月』
制作者 3色ぱん氏
製作ツール WOLF RPG エディター
クリア時間 1時間~5時間
対応OS  WindowsXP/VISTA/7/8/10

価格無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/11038

制作者サイトはこちらから
http://3colorsbread.web.fc2.com/kuruiduki/

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改めて見ると、このタイトル画面もすごく意味深なカット。


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  • 加古台

    「ポケモン」と「遊戯王」が発売されたとき小学生だった世代。日本全国のいろんなところに住んだことがあり、名前もその地名から取った。フリーゲームは「VIPRPG」から入った。友人の数は極端に少ないが、TRPGもたまにやる。