フリーゲームを「連載する」とは?特集『LiEat』夏休みに遊びたい短篇集

ゲーム連載という新しい形式

ゲームが漫画のように連載される――こう聞いて、意外に思う人はいるだろうか?
もちろんコンシューマゲームでも、続きモノの作品は存在する。ただ、それらは続編ではあるが物語的な繋がりはなく、短期間の連作形式でない作品が多いと思う。

一方、フリーゲームでは現在、1時間で遊べる短編で、作品ごとに物語の繋がりを持っている。という連作形式のゲームが出てきた。しかも1作品1ヶ月半ほどのペースで、まるで月刊の漫画連載のような形で連続公開されたのだ。
今回は、そんな全3作からなる連作短編ゲームとして注目を集めている『LiEat』シリーズを紹介しよう。

image13

『LiEat』は、いま開催されているニコニコ自作ゲームフェス4にもエントリーされているので、こちらも見てはどうだろうか。

濃厚な短編をサクサクと楽しめる『LiEat』の魅力

『LiEat』は、以前にも記事で取り上げたように、人気アドベンチャー『Alice mare』を製作した△○□×(みわしいば)氏の手がける新作RPG。また△○□×氏はニコニコ動画で20万再生をしているPV作品など、ゲーム以外のジャンルも手がける多彩な制作者だ。

【以前の紹介記事】
人気ADV『Alice mare』の制作者が贈る新作フリーゲーム 『LiEat-嘘喰いドラゴンと朱色の吸血鬼-』

『LiEat』は3話完結の連作RPGで、プレイ時間は1話につき1時間。全話を遊んでも3時間ほどの短編。だがこの短い時間の中に、ひとつひとつの物語の起承転結が詰められているから驚きだ。

物語としては、詐欺師の青年「レオ」と、「嘘」を見抜けるドラゴンの少女「エフィーナ(通称エフィ)」のコンビが、行く先々で事件に巻き込まれる。そこでエフィの能力を駆使し事件を解決していく…という筋書き。ここで3作品それぞれのあらすじを紹介しよう。

1作目:『LiEat -嘘喰いドラゴンと朱色の吸血鬼-』

ある街へとやってきたレオとエフィ。そこで顔なじみの少女「ロザリー」や、この街にたったふたりだけ住む兄妹「キース」「レイチェル」たちと出会い、「吸血鬼の伝説」を聞くことになる。伝説の真実を突き止めるため、街の秘密をさぐることになったレオとエフィは、ひとつの殺人事件に巻き込まれていく…。

image19
人間の吐いた「嘘」を食べるドラゴン少女「エフィ」

image11
エフィの保護者代わりの詐欺師の青年「レオ」

image06
街で突然起こる惨劇…!!

image17
殺人事件を調べる「警騎隊」のニール(右)とブレット(左)

image12
レオの顔なじみの女性「ロザリー」に聞く事件の情報

image15
悲しき真相を暴くため、事件の黒幕と対峙する…!

2作目.『LiEatⅡ -嘘喰いドラゴンと紺碧色の夢喰い-』

「アジュールタウン」に、エフィと同じドラゴンがいるとの情報を手に入れた二人。同じドラゴンに話を聞けば、エフィについても何か分かるのではという思いもあり、警備員の服を奪い街に侵入、ドラゴンの情報の聞き込みを行う。そうして町の娯楽施設を探索する中、ある事件に遭遇することになる。事件の中、レオの秘めた過去も少し垣間見えて・・・

image16
警備員に変装するレオ

image23
ムチを持った娯楽施設のマスター「ソフィア」
ソフィアの傍にたたずむドラゴンの「ウィリアム」

image05
遊び人すぎる男「ルーカス」

image11
ミステリアスな雰囲気の「オリヴィア」

image08
事件を探る中、ハル(レオの偽名)の秘めた過去に・・・

image19
そしてなぜかカードゲームの勝負に巻き込まれた二人は・・・!?

3作目.『LiEatⅢ -嘘喰いドラゴンと黄金色の怪盗-』

知り合いの少女ロザリーに代わり大富豪のパーティーに出席する事になった二人。そこでは、ある宝を狙って怪盗「バタフライ」から犯行予告状が届いていた。大勢の警備隊をものともせずに姿を現したバタフライだが、相手はレオの過去を知っていた。立ちはだかる最強の敵を前に、レオはついに、自分の過去と、自分の「嘘」に向き合うことになる・・・。

image10
プロローグにて垣間見えるレオの過去

image03
街に入るたびに偽名をつけるレオ

image00
怪盗に備えやってきた警騎隊の少女「アイリス」

image07
レオの過去を知るという、謎の怪盗「バタフライ」

image02
バタフライの手により異質となった屋敷を舞台に謎を解く

image04
3作全てに出演する警騎隊の過去も語られる

image09
そしてレオとエフィの二人を待ちうける運命とは・・・!?
この先は君の目で確かめてくれ!

以上が『LiEat』3部作のあらすじだ。これらの作品は1話完結の連作形式。作品ごとの小さな謎が3話目に明らかになる、という構成もエレガントだ。

「キャラクターの魅力」が光るゲームデザイン

『LiEat』の魅力はなんだろうか。たとえばSNSなどで検索をかけてみると、『LiEat』のプレイヤー層は、「難しいRPGを攻略する!」というRPGユーザーの楽しみのひとつとはまた違った楽しみ方が見えてくる。

image21

そこでは、過去作の『Alice Mare』とともに、「絵」「キャラクター」に注目した感想が目立つ。「ゲームシステムの攻略」という面白さよりは、最大限に引き出された「キャラクター」の魅力や、彼らが織り成す「物語」が楽しまれているのだ。

『LiEat』は、画像や音楽などほとんどの素材が自作されている。一方、これまでゲームにとって重要と思われてきた「ゲームシステム」は開発ツールに元々入っているデフォルトのものを使っているのが対照的だ。

プレイヤーの感想でも、システムに触れているものはほとんど見ない。RPGの中心であった「戦闘」などのゲームシステムが、いまでは「物語」を楽しむための補助輪になっているとも考えられる。こういった作品が増えてきたのは興味深いところだ。

世界中で楽しまれる日本のフリーゲーム

『LiEat』をフリーゲームという枠でみた場合に、もうひとつ興味深いことがある。これは先ほどとおなじ、SNS上の『LiEat』のプレイヤーの感想だ。

image20

こうしてみると、海外のプレイヤーからの感想が多いことに驚くかもしれない。しかしこれには理由がある。フリーゲームは、プレイヤーが無償のファン活動で行うローカライズが非常に活発となっているのだ。

特に『LiEat』は、なんと公開3日後という驚くべきスピードで翻訳され、1作目は6言語で翻訳されている。筆者は『LiEat』の1作目公開後すぐにプレイしたが、数日後にはすでに海外からの感想であふれていた。

フリーゲームの翻訳に関して言えば、『魔女の家』や『霧雨が降る森』のように、いま小説化・漫画化されている作品の多くも翻訳されているのが現状だ。

ゲームエンジンの流行で開発の門戸が開くフリーゲーム

『LiEat』は「WOLF RPGエディター」というゲームエンジンで製作されている。また制作者の△○□×氏は、主にイラスト・漫画などを制作してきた方だ。イラストを主として創作してきた方が、ゲームエンジンを利用してゲームを作りはじめる、という状況を個人的にも興味深く思い、日頃からフリーゲームをプレイする現役のゲームプランナーや、メディアの方数人にお話を伺った。

そこで共通して聞けたのは「ゲームエンジンが発展するなかで利が大きいのは、アーティスト、特にグラフィック・イラストに携わる方々なのではないか」という話だ。

たしかに、フリーゲームでよく使われるゲームエンジン「RPGツクール」や「WOLF RPGエディター」に関しては、基礎的な戦闘システムなどは既に完成されている。
また『LiEat』のようにアドベンチャーに近いRPGには「自作の素材を使える」「キャラクターを動かせる」「演出が出来る」といった要素が重要と考えられる。
そのため、ゲームによっては戦闘部分などは既存システムを変える必要が無く、素材の製作に注力できるという面があるのかもしれない。
ゲームエンジンの発展することで様々なバックグラウンドを持つ方がゲーム開発をしやすくなるということは、とても素晴らしい状況だと感じる。

おわりに

今回は『LiEat』という注目の短編を紹介した。連作と短編といえば、インディーズゲームの販売サイトPLAYISMでも頒布されている『ふしぎの城のヘレン』などを輩出したVIPRPGというコミュニティなども見逃せない。日本のフリーゲームが培ってきた独特の形式を垣間見てきた筆者として、今後もフリーゲームに関する特集をしていきたい。

[基本情報]
タイトル
1作目『LiEat -嘘喰いドラゴンと朱色の吸血鬼-』
2作目『LiEatⅡ -嘘喰いドラゴンと紺碧色の夢喰い-』
3作目『LiEatⅢ -嘘喰いドラゴンと黄金色の怪盗-』
制作者 △○□×(みわしいば)
クリア時間 1時間程度(全作プレイで3時間程度)
対応OS Windows2000、XP、Vista、Windows7
(「WOLF RPGエディター」の動作環境に準拠)
価格 フリーウェア

ダウンロードはこちらから
『LiEat』作品ページ → http://lieat.ifdef.jp/index.html


もぐらゲームスでは現在ライター・編集補助を募集しています。 フリーゲームやインディゲームの記事執筆・編集部作業等にご興味ある方はこちらよりお気軽にご連絡ください。 (ご連絡全てにお返事をさし上げることができない旨、ご理解いただければ幸いです。)
  • RRhrKuW3

    poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。