短編フリゲSRPG『マリィと賢者の森』 “何かが足りない魔法少女”と“ヘンテコ仮面精霊”の悩める旅路

魔法を使わない人間達との交流が上手くいかない、人前で魔法を使ってはならない制約に苦しむ、辛いことや悲しいことを抱える癖に悩まされる、他の仲間達のように箒で空を飛べない…などなど。魔法少女というものは、常に悩みを抱え、それに苦しめられることが多い。

酷いものでは望みもしない魔力を手にして、家族など周囲から忌避されて人生に絶望し、自ら進んで人身売買にかけてしまうケースもあるぐらいだ。後にその人物は、遠い国に住まう不思議な魔法使いの弟子にされたようだが、これ以上は今後の為にも語らないでおこう。

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そして、ここにまた一人、悩みをかかえた魔法少女がいた。

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そんな彼女の物語を描いたのが今回紹介する『マリィと賢者の森』だ。個人開発者のしのゆ氏によって制作された短編シミュレーションRPGで、2017年10月8日にフリーゲームとして公開された。制作には『ヴェスタリアサーガI 亡国の騎士と星の巫女』、『エリーニュエス』と言ったフリーゲームで知られる、サファイアソフトの「SRPG Stduio」が用いられている。

雇った精霊によってその後が変わるシミュレーションRPG

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悩みを抱えた魔法少女の名前は「マリィ」。魔法学校に通う見習い魔法使いだ。彼女は教師から「あなたには足りないものがある」と指摘されるも、具体的にどこを指しているのかは示されず、更に彼女自身、自覚できる部分が多いのもあって頭を抱えていた。

一体、何が自分には足りないのか?考えあぐねいた彼女は学校の季節休みを利用し、賢者が住まうとされる森へ向かい、彼から知恵を借りようと足を踏み入れる。

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そこで出会った仮面を着けた精霊「クリュセイス」と共に、イタズラ好きの精霊達を退けながら賢者の元へ向かう…というのが、大まかなあらすじだ。

教師が具体的に教えてやればいいだろうに、と突っ込みたくなったかもしれないが、気にしてはならない。自力で己の欠点が何であるか見つけ出してこそ、人というのは成長するのです……って、説教臭くなってしまった。ゲーム本編の話に入ろう。

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内容はターン制のシミュレーションRPG。カーソルでユニットを動かしてマップを駆け巡り、迫りくる敵を退けたりしながら、クリア条件の達成を目指すというものだ。
どうして賢者の元に向かう物語なのにシミュレーションRPG?……と、違和感を抱いたプレイヤーが少なからずいるかもしれないが、この理由は実際に遊んでみればよくわかる、とだけ言っておこう。「迷わず行けよ、行けばわかるさ」だ。

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システム周りではユニットロスト制を採用。戦闘でダメージを受け、体力がゼロになってしまうと、そのユニットは永久離脱となる。復活させる手段は用意されていない。
しかし、毎ターン開始時にセーブが可能なので、やり直しは容易。更にゲーム開始時には難易度も選べ、「やさしい」であれば戦闘時に得られる経験値が倍増するほか、敵のステータスも下方修正されるので、力押しが効きやすくなる。

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また、ロストの対象は「精霊ユニット」に限定されている。
本作ではマリィ、クリュセイス以外の味方ユニットはいわゆる「傭兵」で、戦力を増やすに当たっては「雇用」を実施していく形になるのだ。

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雇用はマップ攻略開始前の出撃準備画面から行える。基本的に雇用した精霊ユニットは体力がゼロにならない限り、その後のマップでも二人の仲間として参戦してくれる。もちろん、戦闘を通して成長するので、育てれば育てるほど強くなる。

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また、雇える精霊ユニットにはランクも設定されていて、高ランク「精鋭」の精霊ほど前線を任せられる活躍を見せてくれる。中には三人一組の部隊で参戦するタイプもいて、一人雇うだけで戦力を倍増できる恩恵を得られたりも。

逆に低ランク「雑魚」の精霊を雇えばマリィ、クリュセイスのメインユニット(いずれも非力で、やられてしまうとゲームオーバー)を主力にして攻略していく形になり、「手ごわいシミュレーション」が繰り広げられるようになる。

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このようなプレイヤーの選択による難易度コントロールを可能にしたシステムに完成されており、シビアな仕組みとは裏腹の自由度の高いマップ攻略を楽しめる作りになっている。

ほんの僅かなお金から究極の選択を導き出せ!?

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そして、雇用だけあって彼らを雇う際には当然、お金を消費する。

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お金は基本、マップを一つクリアする度に手に入る。
だが、その額、たったの20~30ゴールド。非常に少ない。

しかし、精霊を雇うのに支払う額はランクが高かろうか、低かろうが一律10ゴールド。
並盛、中盛、大盛だろうが値段変わらずの財布に優しく、お腹もいっぱいになれる、とても良心的でアメイジングな設定になっている……が、しかし。

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お金は消費型アイテムを購入するのにも用いる。
こちらもどんなアイテムだろうが、一律5ゴールドとリーズナブルだが、一つ買う度に雇える精霊の数は減る。三つ買ってしまえば3×5。仮に現在の所持金が30ゴールドであれば、雇える精霊は一体だけになってしまう。

仲間を増やすか、アイテムを買って保険を付けるか。どちらを選ぶかはプレイヤー次第。まさに究極の選択、民族の結束を強固にする為の虐殺に加担するか、しないかに匹敵する判断が求められるのだ。例えが大げさすぎるのは否定しない。

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こうした選択肢の狭さから、その後の攻略過程も変化するので、プレイヤー独自の攻略スタイルが確立される。そして、今回選んだのはこの精霊だったけど、次はこの精霊にしよう……という具合に周回プレイへの意欲を刺激するのだ。単純ではあるが、このような設定が凝らされているのもあって、見た目とは裏腹に頭を使い、やり込み欲を刺激するシステムにまとめられている。

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また、雇える精霊達も愉快。基本的にマップごとに雇える精霊のメンバーは変化するのだが、何かしら突っ込み所を持ったメンツが数体紛れ込んでいる。

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同様に敵の精霊にも妙な輩が。荒らしてごめんなさい。

ヌルリと遊ぶも、マゾを求めるも良し

冒頭で”短編”と称した通り、ボリュームも少なめ。一周するだけでも2~3時間程度だ。しかし、マップの密度は濃く、攻略し甲斐のある内容にまとめられている。

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戦闘もマップ上で実施される簡易仕様なのもあり、テンポも抜群。
また、グラフィックは有償の素材が用いられているが、緑豊かで神秘的な森の雰囲気が見事に表現されており、思わず息を飲むビジュアルを確立している。

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ストーリーも登場人物少なめながら、一つの物語として綺麗にまとまっている。先の精霊に象徴されるようにネタ要素も豊富。特にエンディングは必見だ。一体、マリィは賢者からいかなる知恵をもらうのか。是非、ご覧になっていただきたい。きっと開いた口が塞がらなくなるかもしれない。筆者は「魔法少女って……魔法少女って……」となった。お察しください。

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シビアながらも気軽に遊べ、工夫次第では手ごわくもできる懐の広いゲームバランス、リソース管理の面白さ、ネタに富んだストーリーと世界観など、短編ながらも侮りがたい密度とやり応えを誇る本作。シミュレーションRPGが苦手な人から、得意な人、更にはマゾを求める人にまで、幅広くお薦めできる良作だ。悩める魔法少女とヘンテコな仮面をつけた口うるさい精霊による、不思議で頭を使い、お金の使い所にも悩まされちゃう旅を追体験してみよう。

[基本情報]
タイトル: 『マリィと賢者の森』
制作者:しのゆ(Planetarium)
クリア時間: 2~3時間(※難易度「やさしい」であれば更に短縮可)
難易度:初級~上級者向け(※上級者は難易度「ふつう」推奨)
備考:一部イベントにおいて、暴力・出血表現あり
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちら
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