フリゲ長編RPG『Mystic Star』。SFC期を彷彿とさせる、「王道」と呼ぶに相応しい冒険譚

RPG,フリーゲーム

今回は往年のRPGファンにオススメしたい長編RPG『Mystic Star』を紹介します。本作は2015年初めに発表されたもので、制作者は過去にRPG『Labyrinth Star』を制作した砂川赳氏。
このゲームはグラフィック・音楽・システムがオリジナルで制作されており、「これってスーパーファミコンで発売されていたソフト?」と思わせるほど完成度が高いです。見た目だけでなく、戦略性の高い戦闘や自由な育成を楽しむことができ、様々なRPGの操作感やシステムの良い点を踏襲しているため誰でも簡単にプレイ出来ます。長編なだけあって内容が盛り沢山なので、じっくりとこのゲームの魅力を紐解きたいと思います。

邪悪な野望に立ち向かうため、少年達は世界を駆ける

本作はメルシア王国の英雄の息子である主人公「ハルト」が、王位継承の試験が嫌で森に逃げた王子「ロビン」を探し出す所から始まります。ロビンを何とか説得し無事試験を終わらせたのも束の間、王都が魔物たちの襲撃に遭い、アスダイン帝国の救援を求めるために旅立つことに。途中の町の領主の孫「イナーシャ」の助けもあり、無事帝都へと辿り着くハルト達。しかし事態はやがて思わぬ展開を迎え、「七星珠」を巡り世界中を渡る彼らの冒険が始まります。

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RPGのお約束通り、王からの依頼が物語の序章となる。最初は小さな冒険だったが、物語が進むと共にハルトは壮大な運命に身を投じてゆくことになる

物語はRPGのオマージュがふんだんに盛り込まれた、まさしく「王道」な内容。RPGファンなら少しだけ懐かしいような展開がされ、思わず熱くなったりニヤリとする場面も。登場するキャラクター達も個性豊かで、毒舌な魔族の少女「メア」、豪胆な海賊「グレン」、ちょっとマヌケなスケルトンの「スケさん」など、冒険に華を添えてくれます。シリアスさとコメディさが上手く両立しているので、最後まで飽きることなく物語を楽しめます

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各地で度々邪魔をしてくるユーモラスな敵キャラ「スケさん」。だが終盤になると判明する彼の生き様が胸を打つ

冒険の舞台となる世界はとても広く、ダンジョンも「氷の魔王の城」や「竜の住む火山」などバリエーションが豊富。序盤は物語に沿って新たな街やダンジョンに向かいますが、船を手に入れる中盤以降は自由度が上がり、好きな順で目的地に行けるようになります。また、フィールドはSFCの『ドラクエ』や『FF』のようなランダムエンカウントを、ダンジョンでは『サガ』シリーズのようなシンボルエンカウントを採用しているのも特徴です。

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本格的なダンジョンも本作の魅力。ただし油断しているとあっという間に負けることも

快適さ・派手さ・奥深さが揃った戦闘が楽しい!

レトロ風のRPGと聞くと、操作が簡単で取っ付きやすかった半面、理不尽な戦闘バランスのゲームがあったことを思い出す人もいると思います。しかしこのゲームは近年のRPGの良い所をしっかりと受け継いでおり、SFC期のシンプルさと現代の快適さが上手く融合しています

戦闘画面はSFCの『FF』や『サガ』シリーズのようなサイドビューで、行動の速さを表すパラメータである「速力」の高いキャラから優先的にコマンドターンが回ってくるのが特徴です。『FFⅩ』のCTB(カウントタイムバトル)のように、行動が素早いキャラほど待機時間が少なくなり、より多くの行動を行なえるシステムとなっています。キャラクターの行動にはそれぞれ通常攻撃や防御などの他に「魔法」「特技」「奥義」など、戦況を有利にすることが出来る特殊な行動が用意されています。モンスターやエフェクトもしっかりと作りこまれ、手軽な操作で派手な戦いが行えます。

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ドット絵の美しいグラフィックで描かれたモンスター達。熱いBGMと共に戦闘を盛り上げてくれる

キャラクターにはMPとTPのパラメータが存在し、「魔法」を使うにはMPを、「特技」を使うにはTPを消費します。また「魔法」を使うとTPが、「特技」を使うとMPが、武器による「攻撃」を行なうと両方が回復します。闇雲にどちらかを連発すると簡単に枯渇するので、回復量をしっかりと考えながらコマンドを選ぶことが求められます。上手くやりくりすると、MPとTPをほとんど消耗することなく雑魚戦を終わらせることだって出来ます。

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キャラクター達にはそれぞれ得意不得意がある。主人公ハルトは「魔法」「特技」が共に強い万能キャラ

また、敵は後半にかけて雑魚・ボス共に強くなっていきます。そんなときに役に立つのが必殺技とも言える「奥義」です。キャラごとに「青奥義」と「赤奥義」の2種類があり、それぞれのゲージを貯めると使用可能になります。その効果は強力無比で、戦況を大きく変える上、早いペースで使用可能です。戦闘もより楽しくなるので積極的に使いましょう。

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青奥義はダメージ重視だが、赤奥義はキャラごとに効果が大きく異なる。奥義でパーティメンバーを選ぶのもひとつの手

他にも状態異常がボスにも有効だったり、属性攻撃で大ダメージを狙ったり、「陣形」を組むことでパーティの戦い方を変えたりと、戦術の幅は広いです。強敵にも試行錯誤すれば必ず勝てる点が、本作の戦闘バランスの良さを教えてくれます

じっくり考え自由に育成出来る「魔珠」「習得」システム

戦闘だけでなく、自由な育成も本作の魅力です。キャラクター達にはRPGでお馴染みの「装備」だけでなく、「魔珠」や「習得」によるカスタマイズが可能です。

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魔珠は『FFⅦ』のマテリアのように装備して使う。プレイヤー次第で自由なカスタマイズが可能。

こちらは「魔珠」の装備画面。所持している魔珠をキャラクターごとにセットすることで、魔法を使えるようになったり、ステータスを上昇させることが出来ます。例えば、攻撃力重視なら「攻撃」の魔珠に「会心」や「反撃」の魔珠を組み合わせる、回復魔法重視なら「光魔法」や「水魔法」の魔珠に「慈愛(回復力を上げる能力値)」を組み合わせるなど、セットの仕方でキャラの役割が大きく変わるのが特徴です。魔珠を手に入れるには戦闘でモンスターを倒したときに手に入る「魔石」を店で交換します。

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スキル習得画面。覚えられるスキルはキャラごとに大きく違う。

次に、もうひとつのカスタマイズ機能である「習得」。戦闘で勝つと手に入る「SP」を使って「スキル」を手に入れ、キャラクターを強化することが出来ます。出来ることは「特技」「奥義」の習得や強化、「魔珠」や「防具」の装備数の増加、能力値や「MP」「TP」の回復量の強化などです。習得の幅は広い上、SPを自分で振り分ける必要があり、どう育成するか考える楽しさがあります。ちなみにSPが足りなくても次に習得したいスキルを「予約」し、戦闘後SPが溜まったらすぐ習得できる便利機能もあります。

『Mystic Star』はRPGの魅力を見直せる最適の一本

世間では市販のゲームや同人ゲームの枠を超え、多くのRPGがリリースされています。「グラフィックが美しいもの」「オンラインで離れたプレイヤーとも遊べるもの」「短時間で手軽に遊べるもの」など、プレイヤーのニーズに応えた多種多様なRPGが生まれました。でも、世界中を冒険しながら少しずつ強くなり、最後の敵を打ち倒して大団円を迎えるRPGは少なくなってきたように感じます。今回紹介した『Mystic Star』はRPGの面白さが原点回帰されています。もしもあなたが「自分が勇者だった頃」を思い出したいのであれば、間違いなくオススメできる一本です。もちろん初めてRPGをプレイする方にも最適な作品です。とても間口の広いゲームなので、ぜひプレイしてみてください。

[基本情報]
タイトル
『Mystic Star』
制作者 砂川赳(制作者様サイトはこちら
クリア時間 30時間ほど
対応OS Windows XP/Vista/7/8
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.vector.co.jp/soft/dl/win95/game/se509140.html

  • ノンジャンル人生(@nongenre_zinsei

    普段からRPGの考察と『メイジの転生録』の話ばかりしている人です。2016年にはもぐらゲームスにて連載「フリーゲームをはじめよう。」を寄稿し、近年はVR・VTuberの記事なども執筆しました。noteでは「一期崎火雀」名義でゲーム関連のコラムを書いています。

    自身もRPGを制作中。

    note:一期崎火雀(ノンジャンル人生)