「戦闘」の無いフリゲRPG『なれのはてのものがたり』。魔王を倒した勇者は、真実を探す旅に出る。

「RPG」と聞くと、どういったゲームを思い浮かべるだろうか?
敵と戦い、お金や経験値を稼いで、さらなる強敵と戦う。そして、最後に待ち受けるラスボスを倒して、ハッピーエンドを迎える…。オーソドックスなRPGとしては、このように「敵との戦い」という要素を切り離せないものとしてイメージする人が多いかもしれない。

しかし、今回紹介するフリーゲーム『なれのはてのものがたり』は、「戦わないRPG」というジャンルを掲げ、RPGでありながらも「敵との戦いが一切無い」という異色の短編だ。

そんな本作の魅力は、ゲームの世界観にマッチするレトロ風のキャライラストや8bit風の音楽、そして何より、RPG、ひいてはゲームという媒体の「お約束」をうまく利用した演出が光る物語となっている点だ。詳しく紹介していきたい。

勇者の死の真相を巡る「戦わないRPG」

このゲームを開始すると、まず「RPG」という言葉についての説明が表示され、それが終わると洞窟のような場所のベッドからスタートする。そこで背中に翼の生えた女性「ネメ」と出会う。ネメは倒れていた主人公を見つけたらしいが、どうやら主人公は記憶をなくしているらしい。

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ゲーム開始直後の説明場面。このゲームでは「RPG」という言葉の持つ意味が重要であることを感じさせる

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主人公を介抱した女性「ネメ」。背中に翼が生えている

主人公の身元の頼りになるのは、持っていた剣に書かれていた「ブレン」という名前だけ。ひとまず外を散歩してみてはどうか、というネメの提案を受け洞窟を出てみると、そこはなんと「魔物」たちの集落だった。

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可愛げのある魔物の子供。このゲームでは冒険中に魔物に出会うことがあるが、「戦う」ことは一切ない。

魔物たちの集落で、魔物の子供たちと話すブレン。一通り集落を見回ると、子供たちが歓迎会をしたいと言う。子供たちの好意に応えようとするブレンだが…。

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ブレンの歓迎会をしたいという、魔物の子供たち。ほほえましい光景だが…

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子供たちの方向へ向かうと、突然謎の空間に放り出されてしまうブレン。先ほどのほほえましい光景の欠片も無い、冷たさを感じさせる

この謎の空間を抜け出すと、先ほどの平和な集落に戻る。しかし再び子供たちの方へ向かうと、同じく謎の空間に投げ出されてしまうため、集落の外を目指すしかなくなってしまう。外を目指すブレンに、ネメは旅の役に立つと言い「くろいほん」を渡す。

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外を目指すブレンを見送るネメ

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旅の役にと「くろいほん」を渡してくれる

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ブレンのパートナーとなる「くろいほん」。旅の相談相手になってくれるほか、いつでもセーブなどを行ってくれる

持っていた剣に刻まれた「ブレン」という名前。これだけの手がかりを頼りに、ブレンは自分の正体を確かめるため、旅に出ることになる。

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ブレンは「ココロ」と「キオク」という2つのパラメータを持っている

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「くろいほん」は、行く先々でブレンの相談役として活躍してくれる

旅の途中、「魔王」を倒した「勇者」が死んでしまったという話を所々で聞き、勇者の故郷である「さいはてむら」に向かうブレン。そこで、ブレン自身が実は死んだ勇者ではないか、ということが仄めかされる。

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魔王を倒した勇者が死んでしまった理由とは?そして、いまも生き残る仲間たちは…

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勇者の故郷に「ブレン」の名前の刻まれた墓が…

はたして、ブレンは本当に勇者なのか?そして、魔王をも倒した勇者が死んだ理由とは…?いまも生き残る仲間たちを、ブレンが訪ねる旅が始まる…。

かつての仲間たちの抱える秘密、そして世界の謎。

自分の名を刻んだ墓を見つけたブレンは、かつての仲間たちに会い記憶を取り戻すための旅を始める。勇者の仲間は全部で3人おり、別々の場所にいる彼らを訪問することになる。最初に訪問するのは、臆病な魔法使いの少女「ハーティー」。彼女の口から語られる、勇者の死に関する話を聞いたブレンは、ある驚くべき選択肢を突きつけられる…。

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勇者のかつての仲間の1人、魔法使いの少女「ハーティー」。彼女の持つ秘密とは…

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アニメーションのような形で語られる、ハーティーの回想シーン。そして…

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全てを話し終えた少女に向けられる、驚くべき選択肢。一体、何に対する「だんざい」なのだろうか…?

ハーティーを訪問した後は、同じように残り2人の仲間の話も聞いていくこととなる。本作の面白さは、こういった仲間たちなどの登場人物の話を聞くことで、勇者の死、そしてこの世界そのものについての謎が段々と明かされるという部分だ。

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ブレンが世界を旅して記憶を取り戻すたびに、「キオク」のパラメータが回復する

ここからは、そんな本作の「物語の真相を掴む面白さ」を削ぎ落とさない程度に、物語の展開をダイジェスト形式で紹介していきたい。

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つらい記憶を忘れるという「ワスレソウ」。どういった場面で使うべきなのだろうか

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RPGの「お約束」であるレベルを自覚的なものとして扱った演出

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勇者のかつての仲間、盗賊の「フィリン」が知る秘密とは

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真相を知ってしまったブレンを心配する「くろいほん」

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ネメの過去には何があったのだろうか

「勇者の死の真実」を求めて旅をする「戦わないRPG」という異色の本作は、2~3時間ほどで遊びきれる短編でありながら、濃密な物語体験を提供してくれる作品になっている。真相を徐々に暴いていくという探索要素はもちろんだが、終盤では、この作品が「RPG」であることを意識した巧みな演出を見せてくれる。ブレンの行く末、そして物語の結末を、ぜひとも見届けてほしい。

[基本情報]
タイトル 『なれのはてのものがたり』
制作者 ハネダ
クリア時間 2~3時間
対応OS win XP/VISTA/7
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/9023

VR体験施設の検索サイト「taiken.tv」
  • RRhrKuW3

    poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。