高難度アクション+クリッカー系?奇妙なローグライクアクション『Nongünz』に挑め!

アクション,インディーゲーム

高難度のアクションゲームは、もはやジャンルと呼んで差支えがないほどファンの多いものになった。プラットフォーマーや3Dアクション、ツインスティックシューターなどその内容は様々だ。だが、難しければ難しいほど挑戦し甲斐があると、その内容を問わず腕に覚えのあるゲーマーが集まってくる。歯ごたえのあるゲームが求められる時代なのかもしれない。

そうした高難度ゲームは腰を据えてじっくり長時間遊ぶ必要がある。しかし、現代人は何かと忙しいもので、高難度ブームとは裏腹にゲームの時間を取れない方も多い。そんな中で人気となのが、クリッカー系、放置系と呼ばれるゲームだ。ゲームを起動しっぱなしにして、自動で増えるポイントを貯める。こうしたプレイに腰を据えない放置スタイルが人気を博し、クリッカー系ゲームは様々な派生を生み出す一大ジャンルへと成長した。クリッカー系ゲームもまた、時代に求められたゲームなのであろう。

今回紹介する『Nongünz』はそんな相反する二つのジャンルをミックスした、とても変わった作品だ
 
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スペインのインディゲームディベロッパー「Brainwash Gang」が制作したゲーム『Nongünz』はゲーム配信プラットフォーム「Steam」にて698円で販売されている。開発中の段階から注目されていたようで、スペインのゲームメディアでは開発中の本作が何度も取り上げられていた。注目の集まる中、本作は2017年5月19日にリリース。その硬派なゲーム内容に評判は広まり、ヒット作となった。

海外のゲームなので、言語に不安を覚える方もいるだろうが心配ご無用。本作はゲーム内に言語が出てこない。ゲーム内容からオプションの設定項目に至るまで全て絵で説明している。この絵は何を意味しているのか?この設備は一体何をする場所なのか?こうしたゲームシステムをプレイヤーに考えさせる作りなのだ。言語の隔たりなく、世界の誰もがわからないゲームなのである。逆に、安心して遊ぶことができるだろう。

レビューに移る前に、断っておかなくてはならない。本作がそうやって言語を使わずあえてわかりづらくしているゲームシステムを、一部ではあるがこの先解説しようと思う。ゲームのレビュー上仕方のないことだが、それはゲームの謎を紐解くことに他ならない。ネタバレと感じる方もいるだろう。ご容赦いただきたい。

アイテムとポイントを貯めまくる!独特のゲームシステムで強くなれ!

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『Nongünz』は横スクロールアクションゲームだ。主人公である骸骨を操り、グロテスクなデザインのモンスターが蔓延るダンジョンを攻略する。道中にはショットガンや刀といった武器や、二段ジャンプやダッシュなどのスキルが宿った頭蓋骨、ステータスがアップするアイテムがある。これを集めることで骸骨はどんどん強くなっていく。いわゆるローグライクゲームと呼ばれるものだ。

本作の敵は雑魚キャラであってもかなり強い。なかなか倒せない上、攻撃を一回食らうだけで骸骨のHPはごっそり削れる。倒せば少しHPが回復するものの、強い敵と渡り合うための装備品は耐久がなくなれば壊れる使い捨てだ。さらに、ステータスアップアイテムの入った宝箱を開けるにはHPを消費しなければならない。まったく一筋縄ではいかないハードさだ。
他の多くのゲームと同様に、本作も敵の猛攻に敗れ死んでしまえば、これまで集めたアイテムは全てを失われてしまう。いくらハードとはいえ、本当にこの作品をクリアすることができるのか?
 
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クリアできないほど難しいなら、クリアできるくらい骸骨を強くすればいい。このゲームは、死ぬ前にダンジョンの窓から飛び出すと、なんと拠点に帰ることができる。拠点に帰ればどれだけ死にかけていたとしてもHPは全回復する。もちろん集めたアイテムは手元に残ったままだ。ダンジョンにはまた始めから挑まねばならないが、死んでこれまでの努力が消えてしまうよりはずっといい。
しかも、ダンジョンに行って帰ってくるを繰り返せばアイテムは貯め放題だ。たくさんアイテムを集めれば、あれだけ痛かった敵の攻撃も辛くないし、敵を楽に倒すことだってできる。拠点にはアイテムを保管するストレージ(棺桶)もあるので、アイテムを貯めに貯めて死んだときに備えることも可能だ。
 
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本作にはアイテム以外にも、プレイすると貯まっていくものがある。画面中央下部に表示されたポイントだ。これは自身が攻撃ボタンを押したり敵を倒すと増えるのだが、ゲームを進めるにつれステータスアップアイテムの効果とダンジョン道中で救った骸骨たちの祈りにより何もせずとも増えるようになる。クリッカー系ゲームの要領である
 
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このポイントは拠点で武器と交換したり、お店でステータスアップアイテムを購入したりするとても重要なものだ。あればあるほど骸骨を強くできる。これも死んでしまえば0になってしまうが、死なないように遊べばどんどん増えていく。
 
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もちろん何もせずとも増えるのだから、放置すれば大金持ちになる。本作はメニュー画面よりゲームを終了すると、『Nongünz』を遊んでいる人の部屋に画面が切り替わり、『Nongünz』を遊んでいる人を操作することができる。『Nongünz』を遊んでいるのは私たちのはずだが、この際そこはいい。『Nongünz』を遊んでいる人を操作する画面では、時計が高速で動いており、ゲーム内の時間が高速で流れてたくさんポイントがもらえる。要するに、ポイントを貯める間の放置用画面なのだ。クリッカー系ゲームは数あれど、放置用画面が存在するゲームは珍しい。なお、ダンジョン内でゲームを終了させると、いくら『Nongünz』を遊んでいる人が退席しただけとはいえ死亡扱いになるのでご注意を。
 
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腰を据えてプレイするときは何度もダンジョンを往復してアイテムを貯める。プレイできないときは放置だけしていればポイントが貯まって、結果アイテムがたくさん手に入る。プレイしようがしまいが、起動さえしていれば骸骨をひたすらファーミングできるのだ
ローグライクゲームと呼ばれる作品は数あれど、ここまで楽なファーミングを許しているゲームは珍しい。なにより強さに直結するポイントがクリッカー系ゲーム方式で貯まるというのも変わっている。ハードなゲームを楽しみたいが、何時間も腰を据えられない!という現代人にピッタリの作品だろう。

強化してもなお凶悪!難攻不落のダンジョンに挑め!

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これだけ楽に骸骨を強くできるなら、クリアも目の前!と思うだろう。だが、本作はそれでもなお難しい。数層にわたって広がるダンジョンは非常にいやらしい作りで、一つのミスが大ダメージにつながってしまう。さらに、各層の最後に待つボスは非常に厄介だ。
 
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それでもとことん骸骨を強化すれば、優位に立てると考える人も多いだろう。このゲームの武器と頭蓋骨には赤、青、緑の3段階のレベルがあり、高レベルの装備品は強力なパフォーマンスを持っている。ポイントを貯めて強力な装備を大量に揃えれば、敵を楽に倒すことはたしかにできるだろう。
だが、ダンジョンに持ち込んだ高レベル装備の数に応じ、ダンジョン内のモンスターもレベルが上がるようになっている。いくら強力とはいえ、大量に持ち込めば逆に環境は厳しくなってしまう。強化が逆に自分を苦しめるのだ。高レベル装備をたくさん持ち込むかどうか。装備品の持ち込み数はプレイヤーを常に悩ませる。
 
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さらにプレイヤーを悩ませるのがHP回復だ。本作にはHP回復アイテムが存在しない。先述の通り敵を倒して少しずつ回復することはできるが、それではピンチを脱することはできまい。どうしても今、回復しなければ死んでしまう!そんなときのため、本作には頑張って貯めたアイテムを砕いて消費することでHPを回復する緊急手段が用意されている
しかし、これはステータスを下げる諸刃の剣だ。ステータスを高く上げるアイテムほど、回復量は当然多い。どのステータスなら下げられるか?更に深くダンジョンを潜るのに、今ステータスを下げて本当に大丈夫か?リスクとリターンを天秤にかけたプレイヤーの決断が求められる。

いくら強化したとしても、ダンジョンは決して甘くない。プレイヤーの選択が、決断が、全て今後のプレイにのしかかってくる。非常にハードコアな作品といえよう。

説明を放棄した意味深な作風。プレイの果てに待つものとは……?

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ローグライクゲームにファーミングを持ち込んだゲームシステム、白と黒を基調としたクールなグラフィック、プレイヤーを躍起にさせるハードな難易度。本作の持つ魅力は濃厚だ。
何時間ものめり込んでプレイするもよし、短い時間のプレイを積み重ねて強くなるもよし。プレイスタイルを選ばない本作は多くの人にこの魅力が届くだろう。どんなプレイスタイルにせよ時間のかかるゲームだが、その価値のある作品だ。

さて、本作はゲーム本編とそれを遊ぶ人、その両方を操作するメタフィクション的な構造をしている。これは説明したとおり、クリッカー系ゲームの要素である。だが、本当にそれだけなのだろうか?ゲームが進むにつれ『Nongünz』を遊ぶ人にちょっとした変化が現れる。もしやこのメタフィクション構造にはなにか別の意味があるのでは……?

よくよく考えれば他にも謎はたくさんある。主人公は何者なのか?ダンジョンに挑む理由は何なのか?そして、このゲームのクリアとは一体何を指しているのか?それは自分で見つけ出すしかない。

一切の説明がない奇妙なゲーム『Nongünz』。時間を忘れてのめり込むなら今だ。

[作品情報]
タイトル: 『Nongünz』
制作者:Brainwash Gang(制作者様サイトはこちら)
対応OS:Windows 7 or later, Mac OSX Mountain Lion (10.8), Ubuntu 14.04 / SteamOS
プレイ時間:10時間以上
価格 698円:

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  • 洋ナシ(@younasi

    海外インディゲームの情報同人誌を作っているただのオタクですが、声をかけられゲーム記事を書くことになりました。人生何があるかわかりませんね。そういうことがあるのは、もっとこう絵がうまかったりマンガが面白かったりする人だけだと思ってました。他の執筆者の方のように輝かしい実績はありませんが、世界で初めてSurgeon Simulatorでペン回しに成功したという地味な実績があります。

    ブログ:http://tukedai.minibird.jp/blog/