公式開発者会議「Oculus Connect」参加レポート。明らかになった新型Oculus Rift「Crescent Bay」の実力とは?

Oculus Rift DK2,イベントレポート

先月、9/19(金)から9/20(土)の2日間にわたって、アメリカのハリウッドでOculus Rift の販売・開発を行う Oculus VR社による初の開発者会議「Oculus Coneect」が開催されました。開発者会議は企業が主催する、開発者のための独自のイベントです。AppleはWWDC、GoogleはGoogle I/Oといったイベントを毎年開催しています。その中でもKeynoteと呼ばれる基調講演は非常に注目され、企業の今後の方針や、新しいサービス・技術の発表があります。

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会場となったハリウッドのLows Hollywood Hotel

会場の様子はWeb上でも配信され、現在はYouTubeで基調講演の様子を見る事ができます。

https://www.youtube.com/user/oculusvr

今回は、Keynoteの話の内容を中心に、会場の様子やロサンゼルスの様子を交えてレポートします。

Oculus 初の開発者会議

2012年にKickstarterで資金調達を開始からわずか2年で開発者会議を実施することになったOculus VR社。わずか2年の間で10万個以上の開発者キットを出荷したとのことです。この驚異的な伸びには、ジャイロセンサーや液晶パネルの価格を安くおさえられたというハードウェアの状況や、Unity、Unreal Engineといったコンテンツの開発環境が充実してきたことだけでなく、VRのコミュニティが支えてきたことも大きく貢献しています。

Oculus Connectの会場でもウェルカムパーティやプールサイドでの交流会もありました。筆者もOculus VR社の創設者パルマー・ラッキーと会場近くのボーリング場に行ったりなどしました。Oculus Connectの様子からも特に開発者コミュニティを重視していることが分かります。

Keynoteについて

Keynoteは、Oculus VR社CEOブレンダン・アイリブのやCTOのジョン・カーマックによるセッション、そしてパルマー・ラッキーを始めとする主要メンバーによる「The Future of VR」というテーマのパネルセッションがありました。

その中でも特に印象的で大きな発表だったのは、一番最初に行われたOculus VR社のCEOであるブレンダンと製品開発の責任者であるネイトのセッションでした。このセッションではコンシューマ版のプロトタイプであるCrescent Bayの発表がありました。

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Oculus Connetで発表されたCrescent Bay

このCrescent Bayの発表が今回のOculus Connectの目玉でした。どんな特徴があるのか基調講演の内容を簡単にご紹介しましょう。

VR体験中の酔い(VR酔い)を軽減し、没入感を深めるために、Oculus VR社の考える5つの重要な要素を実現するのが、Crecent Bayです。
その5つの要素とは、

1.トラッキング…360度ヘッドトラッキング(頭の位置を360度認識する)
2.レイテンシー(遅延)…20ms以下に
3.パーシスタンス(描画速度)…90hz以上のリフレッシュレートが必要
4.解像度…片目だけで1000 ×1000
5.視野角…90度以上

DK2ではまだ十分ではなかったということでしょうか。全ての点で性能が向上しています。

さらに驚くべきことに、写真を見るとわかりますが、Crescent Bayには3Dオーディオ(ヘッドホン)が含まれています。

ここまではブレンダンが登壇し発表しました。ここまでの発表を通して、Crescent Bayの大まかなスペックが予想できそうですね。

そして引き続きブレンダンの前職からの同僚でもあり、片腕でもある技術部門のトップを務めるネイトの発表が続きます。

まずは、Oculus Platformの発表です。その一つであるOculus Homeはヘッドマウントディスプレイを装着しながら、コンテンツをダウンロードし、アクセスできます。既にサムスン社が年内に発売するGear VRに組み込まれます。

そして、スマホ向けにもかなり力を入れていく模様。Gear VR用のMobile向けSDKは現在開発中だそうです。

そして基調講演の最後に、ゲームエンジンであるUnityとパートナーとなり、Unity5ではOculus Riftをサポートする予定との話がありました。これまで、Unityでは有料版でしか開発ができませんでしたが、無料版でもOculus Riftの開発が可能となることになりました。

このように、内容が盛り沢山な基調講演でした。

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写真はKeynote後の様子。左からチーフサイエンティストのマイケル・アブラッシュ、CTOのジョン・カーマック、CEOのブレンダン・アイリブ、製品開発のトップを務めるネイト・ミッシェルです。Oculus VR社を支える主要メンバーで記念撮影。

その他のセッションですが、特にマイケル・アブラッシュとジョン・カーマックのセッションは基調講演の段階でかなり技術的な話でした。
基調講演を含むセッションの詳細について興味のある方は @WheetTweetさんのブログのOculus Connectに関する記事を参照することをお勧めします。
非常に丁寧にまとめられており、Oculus Riftに携わる人は必読です。

Oculus Connectの記事リンク一覧
http://magicbullet.hatenablog.jp/entry/OculusConnect_LinkAll

衝撃のCrescent Bay

Oculus ConnectではCrescent Bayのデモを実際に体験することができました。残念なことに、写真撮影が禁止されていたので、文章から雰囲気を感じて頂ければと思います。

Crescent BayのデモはBrendanのKeynoteの中で発表があり、Oculus Connectのスマホアプリからデモの申し込みを行う方式でした。

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筆者は幸運にも前日にパルマー・ラッキー氏から「事前にアプリをインストールしておいた方が良いよ」と教えて貰っていたので、スムーズにデモの申し込みが出来ました。

Crescent Bayの体験ブースでは、それぞれパーティションに案内され2メートル四方程度のマット上に立たされます。簡単なレクチャーを受けCrescent Bayのヘッドセットと3Dヘッドホンを被せてもらいました。
デモは連続に約10個のアプリケーションがそれぞれ2分程度、連続で再生される形式でした。その中で特に印象的だったものが4つあります。

1つ目はビルの屋上から大都市を見下ろすデモ。某漫画の鉄骨渡りを彷彿させ、本当に背筋がざわざわする体験をしました。

次にシムシティのような模型の街を眺めるデモですが、ポジショントラッキングの性能の良さを生かしており、カメラの初期位置が高めに設定されているので、模型を覗き込みたくなるような仕組みになっていました。

3つ目は博物館のような所で正面から恐竜が迫ってくるデモです。L字形の角で何かが迫る音が聞こえると半端ない恐怖です。そして、自分自身の目の前に恐竜が止まるので、自分自身がVR空間内に居ることを忘れるくらい引き込まれました。

そして最後が、一番有名なデモで、映画のワンシーンの中に入ったようなShowdownという物です。特殊部隊の人と巨大なロボットとの戦闘シーンをスローモーションで見ながら前進するだけの内容なのですが、ゆっくり飛んでくる弾丸や爆発などの細かな演出が素晴らしかったです。ShowdownのデモはYouTubeに動画がアップされているのでご覧ください。


Unreal Engine4で作成された美麗なデモ

Crescent Bayはとにかく本当に凄かったという一言に尽きます。解像度はDK2やGear VRよりも高く感じ、自分がヘッドセットを付けていることも忘れてしまうほどでした。装着した際、ヘッドセット自体も軽量化されていると感じを受けました。ポジショントラッキングの性能もかなり向上されており、床に顔を付けたり、ジャンプしても大きなズレも発生しませんでした。カメラの性能が向上したことも考えられますが、カメラが2m程度の高い位置から見下ろす形で設置されていた事が要因だったのかもしれません。ブレも一切無く、没入感はこれまで以上に増していました

1つ残念に感じたのが3Dサウンドのヘッドホンです。3Dサウンドはヘッドトラッキングと連携し、実際に向いた方から音が出るように聞こえる仕組み事態は完成されていたように思えたのですが、90度くらいで音がぶつ切りされたような印象を抱きました。3Dサウンドについてはコンシューマ版のリリースまでに性能が向上することに期待したいです。

コンシューマ版のリリースは諸説がありますが、海外の掲示板などでは様々な議論がされており来年5月のGDCで発表され、年末商戦に販売が開始されるのではないかと予想されたりしています。Oculus Connectでは様々な発表がありましたが、今後、どのような展開があるのか非常に楽しみです。