出したいカードも出せないこんな世の中じゃ……カードゲーム『ポイズン』レビュー

ライナー・クニツィア。ドイツアナログゲーム界の巨匠である。1990年にデビューして以来、数百タイトル以上のアナログゲームを発表しているゲームデザイナーだ。クニツィア氏の作るゲームには「あちらを立たせばこちらが立たず」というようなジレンマが盛り込まれており、彼の名をとって「クニツィア・ジレンマ」とも呼ばれる。

(なお、クニツィア氏の日本語でのインタビューは下記のサイトに掲載されている。是非興味のある方にはご覧いただきたい記事である。)

ドイツの天才ゲームデザイナーがボードゲームの未来を語る! ライナー・クニツィアにインタビュー【前編】(KOTAKU)

ボードゲームを500タイトル以上作り出したデザイナーが、アイデアを生む秘訣を語る! ライナー・クニツィアにインタビュー【後編】(KOTAKU)

そんなクニツィア氏が制作したゲームで、2014年11月に日本での発売が開始されたのが今回紹介するカードゲーム『ポイズン』だ。

ポイズン(毒)の名の通り、カードには何となく毒々しい薬のような図柄が印刷されている。また、使うコンポーネント(付属品)も、魔女が秘薬を作る時に用いる毒々しい大釜のようなデザイン。

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そう、このゲームは簡単に言えば大釜で秘薬を作り出すゲームなのだ。そこに、ゲームのタイトルである「ポイズン」つまり毒薬のカードが混じることにより、ゲームにさらに戦略性が生まれるのだ。

ゲームルールは至ってシンプルで覚えやすい

それでは、ゲームルールを紹介していこう。非常に単純で覚えやすいゲームとなっている。

カードを配られたプレイヤーは、自分の番が来たら手札から1枚ずつカードを釜に投入する。各色のカードには1,2,5,7の数字が書かれている。

釜にカードがひとたび投入されると、その釜は投入されたカードの色の釜となる。つまり、青のカードをいれた釜なら、以降は青のカードしか入れられなくなる。さらに、色は赤、青、紫の3色しか存在しないので、2つの釜の色が決まった時点で、残り1つの釜の色は残りの1つの色になる。

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上の写真では、釜に青、紫がそれぞれ投入されているので、残りの釜の色は自動的に赤になる。

ただし、緑の「ポイズン」カードだけは例外的にどの色の釜にも入れることができる。

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ポイズンカードは後述するように、最終的に相手にダメージを与えられるカードなので効果的に使うのが重要だ。

釜に投入された数字の合計が、14以上になるとバーストだ。最後に投入したカード以外のカードをペナルティとしてもらわなければならない。

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例えば上の写真の場合、青の5を出したところで数字の合計が14以上になってしまっているので、バーストだ。プレイヤーは自分が出した青の5のカードを釜に残し、青の7と毒薬の4のカードを自分のペナルティにする。なお、取ったカードは再利用できない。

カードを全員出し切ったらラウンド終了。その時点で、持っている薬カードの枚数(数値ではない)分がプレイヤーのマイナスポイントとなる。ただし、各色の薬を一番多く持っているプレイヤーは、その色のマイナスポイントを受けない。従って、「食らわば皿まで」という勢いで、もし青のカードを入手してしまったなら以降は青のカードばかり集めるのも手だ。

また、得意な色の時に取ったとしても緑の「ポイズン」カードはペナルティとなる。しかも、1枚で2枚分のペナルティが加算される

これを1ラウンドとし、人数分のラウンドを終えた時点で一番ペナルティの少なかったプレイヤーの勝ちだ。

シンプルだが、ジレンマが利いている作品

しばらくプレイしているとわかるのだが、このゲームもこれまで紹介してきたアナログゲームと同様、非常に奥深いゲームだ。勝ちに行くのであれば当然薬は取りたくないわけで、「いかにあふれさせないか」を考えることになる。ただし、一番多く取っている色についてはペナルティがゼロになるというルールがある。そこで、まず考えつく基本戦略は、「得意な色を作り、バーストするときはその色を取っていく」という戦略だ。

しかし、この戦略を崩すことができるのが「ポイズン」のカードなのだ。ポイズンカードは、得意な色の釜から取ってこようが、2枚分のペナルティになる。従って、プレイヤーは相手の得意な色に毒薬を放り込むことによって相手がホイホイ得意な色をバーストさせるのを防ぐことができるわけだ。

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こんな状況も発生する。赤は既に13でバーストぎりぎり、他の釜は毒にまみれているが、このプレイヤーは青を集めているので泣く泣くダメージの少ない青の釜をバーストさせた。

本当は特定の色をバーストさせ、得意な色ばかりを集めたいが、毒があって出したいカードを出せないという状況が発生する『ポイズン』の仕掛けは、さすがジレンマ構築を得意とするクニツィア作品ならではと言ったところである。

さらに、手札の色のバランスもうまく考えて出していかなければ、どれかの色の手札がゲーム後半になると切れてしまい、どんどんバーストさせてペナルティが増えるという事態もありうる。

また、得意な色なら取っても良いという意識で全員が薬をホイホイバーストさせていると、得意な色競争に負けた結果大量のペナルティを取得することにも成りかねず、注意が必要となる。ここにも抑止力が働いていてまるでゲーム理論の例題のような美しいジレンマ設計だ。

ルールは単純だが、非常に戦略性のあるゲームに仕上がった『ポイズン』。クニツィア・ジレンマを楽しんでみては如何?

[基本情報]
タイトル ポイズン
制作者 ライナー・クニツィア
プレイ人数 3~6人
プレイ時間 30分~60分
価格 1,800円(税別)。店頭のほかAmazonでも販売

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    通称のあP。「もぐらゲームス」エグゼクティブプロデューサー&共同編集長。ゲームをする人。「ゲームのちからで世界を変えよう会議」の中の人。経営戦略(ゲーム産業)と金融が一応専門分野。 MMORPG「リネージュ」の元プレイヤー(8年ぐらい、10,000時間ほどプレイ)。長らく一つのゲームをやりこむ派でしたが、最近は雑食気味にいろんなゲームをプレイしています。思い出に残っているゲームはリネージュ、ティアリングサーガ、勇者のくせになまいきだ。or2など