フリーゲームRPG・ADV『Qualiaシリーズ』サイバーパンク世界にて、人間とアンドロイドが織りなす物語

Qualia(クオリア)という用語をご存じでしょうか。あいまいな概念ですがここでは「何をどう感じ、思うのか」という主観的な意識体験を指すものとします。屋外で何か景色を見たとして、きれいな光景だと感じるかあるいは良い風が吹いていると思うかは人それぞれでしょう。ある事象に対して自分自身が認識する感覚や思考そのものと捉えてもらえたらいいかと。

今回は、その「クオリア」をテーマとしたシリーズ作品、マルチシナリオ型サイバーパンクRPG『Qualia-盲唖の歌姫-』と続編のサイバー・スローライフ・RPG『QualiaNext-道を照らして-』を紹介させて頂きます。公式はジャンルをRPGとしていますがADV要素も強い作品群となっています。RPGツクール2000製で、制作者はすぎやん氏。

Qualia-盲唖の歌姫- 序盤の行動により物語が大きく4つに分岐

時は25世紀。ネットにサイバー兵器が発展し、高層建造物が増殖しまくり、重酸性雨や重金属混じりの雪が降るほど高度な科学技術が進化した世界では違法な電脳とサイバネティックを悪用した電脳犯罪が多発していた。このような世の中で電脳犯罪を取り締まる組織が『電脳局』。その電脳局第四課長リッカーマンが本作の主人公です。刑事気取りのシブい老人が主人公というだけでも珍しいのに、さらに電脳局の所属メンバーも個性派ぞろいで最初から強烈な印象を受けます。そんなある日、電脳局第四課オフィスに勤務するリッカーマンのもとに昔なじみのサイバー憲兵部隊長マルコが歌姫誘拐予告事件の話題を持ちかけてきます。舞台は電脳とサイバネティックとプライドが渦巻く遊覧船「ローレライの涙号」へ……船内で起こる事件の解決を目指す物語になります。


リッカーマン課長。若いころに四世紀以上も昔の映画を観て「足で稼ぐシブい刑事」に憧れ、いい意味で時代遅れの“ステレオ刑事(デカ)”に

なんとこのゲーム、序盤のリッカーマンの探索内容(プレイ時間にして10分~30分程度)により物語が4つに分岐します。「盲唖の歌姫」に焦点を当てたAルート、相棒マルコとともに黒幕を追うBルート、「Q.V.(Quiet Volt / 静かなる電位)」社の社長レオンを掘り下げるCルート、高難易度かつ大きな盛り上がりを魅せるDルートからなり、どのルートも2~3時間くらい映画鑑賞をしているかのような濃厚な体験ができます。サイバーパンクな舞台設定におけるリッカーマンのエセ刑事らしいシブい捜査手腕に加え、遊覧船の乗員・乗客・アンドロイドたちとの人間ドラマが見どころです。


選択ルートによってはこんな場面も。どのルートかは実際にプレイしてのお楽しみ!

戦闘はリッカーマンとアンドロイド「スレアK-Ⅲ」が2×2のマス目の範囲内を移動して戦うサイドビューで、行動ゲージがたまると優先的に行動できるCTB(カウントタイムバトル)方式となっています。武器や技によってどのマス目に攻撃できるかが決まっており、攻撃時の位置取りが重要になってくるシステムです。また画面上部には電子回路のような図が配置されていて敵の攻撃時に光点が高速で流れてきます。タイミング良く決定ボタンを押してこの光点を特定の枠内に停止させると被ダメージを軽減可能。慣れるまで大変ですがスリルある戦闘が楽しめます。


戦闘画面では敵味方ともドット絵が適度にアニメーションする。背景は抽象的ながらその敵を象徴した美しいアート表現となっている

QualiaNext-道を照らして- ある大学生による一夏の物語

前作に引き続き25世紀、夏休み。大学生のライカ(主人公名「ライカ」は変更可能)は、電脳工学の先人として名高いソラ博士のもとでバイトすべくわざわざ骨董品のボートで独り、とある辺境の地へ向かった。博士の住む建物の名は『光の家』。そこでライカは不思議な力に目覚める。ソラ博士のワガママに振り回されながらアンドロイドたちと交流を深め、のんびり田舎生活を満喫し……そして不思議な力の謎に迫っていく物語になります。


(上)ソラ博士。天才研究者がなぜ不便な田舎にこもり続けているのか?
(下)光の家周辺はサイバーな世界観とは例外に自然たっぷり! ときどき釣り等のミニゲームが入ることも

上記あらすじの通り、田舎が舞台ということもあり前作から打って変わってスローライフな雰囲気の作品です。でもちょっぴりホラー。ソラ博士の他に何機かアンドロイドも生活しており、彼女らと仕事しながら共同生活を送っていきます。ここから先はネタバレになりかねないため詳細を伏せますが、ライカが目覚めた不思議な力とは何か、光の家で過去に何があったのかといった少しずつ謎を解き明かしていく展開の連続によって物語の先がとても気になり、筆者は一気にクリアしました。前作が刑事ものアクション映画なら、本作はライカの一夏の成長と内面を描いた連載小説・漫画といったプレイ感でしょうか。もっとも終盤は前作の作風に近づいて映画的にみても大いに盛り上がるのですが。


光の家に住むアンドロイド。三者三様に個性あふれる彼女たちと気ままに交流しよう

戦闘はライカが直線6マスの範囲内を移動して戦う1対1のサイドビューとなっています。本作は行動ゲージにあたるSPが2段階以上あり、技を放つためには「集中」コマンドでさらにSPをためる必要があります。タイミング良く決定ボタンを押して光点を特定の枠内に停止させると被ダメージを軽減するシステムについては続投。前作と比べてシンプルな戦闘システムであり、攻撃時の位置取りや前述のSPをためるタイミングなど敵との駆け引きが重要です。


本作の戦闘もドット絵アニメーションあり。ライカの戦い慣れていないかのようなモーションがかわいい

ほぼ全てのキャラ、マップを手打ちのドット絵で作製する職人芸が光る

以上、2作が本記事を執筆した2020年6月現在公開中です。

ここからはQualiaシリーズ共通の特徴である、すぎやん氏による自作グラフィックをご紹介。ふりーむの記載から引用すると『盲唖の歌姫』は「グラフィックの大部分を自作」し『道を照らして』に至っては「キャラクターは勿論、マップチップも全て手打ちのドット」とのことでドット絵に対するこだわりがうかがえます。下記にいくつか印象に残ったシーンの画像を用意しました。RPGツクール2000の低解像度をあえて活かした温かみのあるグラフィックでサイバーパンク世界の空気感をイチから表現されています。サイバーな雰囲気だけでなく和風グラフィックも随所に盛り込まれており、どこか懐かしさを感じる場面も。


(左)盲唖の歌姫 (右)道を照らして。手打ちドットで彩られるサイバーパンクに古風な和のテイストが加わり、未来のはずがなぜか郷愁をかき立てる

オリジナルBGMは要所を作曲のぬまたろう氏が担当し、サイバーかつ和風な楽曲が作品と非常にマッチしています。オリジナル以外のBGMは『RPGツクール2000サンプルゲーム』や『デジファミ音楽堂』などツクール2000黎明期のゲームを知る人にとって懐かしい楽曲が随所に流れます。遙か未来の物語なのに懐かしい、作中の表現を借りると「懐古趣味」なシリーズです。

機械にQualia(クオリア)はあるか?

人工知能が進化して人間とさほど変わりない思考回路のアンドロイドが開発されたとします。それ(it)が屋外で何か景色を見たとして、そのとき感じたことは唯の電子回路のアウトプットに過ぎないのでしょうか? それとも……? 難解な哲学的テーマではありますが難しく考えずプレイしてみてください。『盲唖の歌姫』と『道を照らして』どちらも人間とアンドロイドの関係を丁寧に描いた物語としてお勧めです。

最後に、もしQualiaシリーズを気に入っていただけたなら関連作品の『Emera.1_Reboot -Rest in Peace-』(電脳局に入る前のシャンが主人公)もプレイするとより世界観への理解が深まります。これを機に、すぎやん氏の創るサイバーパンクな世界にどっぷり浸かってみませんか?

[作品別基本情報]
タイトル:『Qualia-盲唖の歌姫-』
制作者:すぎやん
クリア時間:ルート1つあたり2時間~3時間くらい
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/15647

タイトル:『QualiaNext-道を照らして-』
制作者: すぎやん
クリア時間:6時間~8時間くらい
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/23014


  • writer-icon-reminder_89

    追憶(@reminder_89

    RPGツクール2000をこよなく愛し、特にサイドビュー戦闘RPGが好みのレトロなフリーゲーマー。システム重視のRPGをよくプレイする傾向にありますが、RPGなら幅広く手を出します。頭がバグっています。

    サイドビュー戦闘が好きすぎて作ったフリゲ:http://vipgw2020.tubakurame.com/?id=7