俺たちには守護らねばならぬ自販機(レガシー)がある。愛と正義の熱血長編RPG『レトロ自販機クエスト』

自動販売機。略して自販機。
通貨などを投入し、対価を払えば自動で商品が購入できる便利な機械だ。現代においては、特に清涼飲料水、菓子類などを販売する機械としての印象が強い。

だが、さかのぼること実に40余年も前!
まだコンビニエンスストア(コンビニ)、ファミリーレストラン(ファミレス)などが台頭していなかった時代には、うどんにそば、ラーメン、トーストサンドなどを販売する「食品自動販売機」(以下、食品自販機)なるものも存在した!

いつでもどこでも出来立ての味を楽しめる食品自販機は人々の胃袋と心を満たし、ついにはそれらを複数台並べ、いつでも軽食が取れる24時間営業の「オートスナック」、「オートパーラー」などと呼ばれるコーナーが日本各地に拡大。国道、幹線道路沿いにも食品自販機を設置した24時間営業の「オートレストラン」が誕生し、ドライバーたちの安らぎの場所として親しまれた。

しかし、後のコンビニやファミレスの急成長、家庭用電子レンジの普及などの時代の流れと共に食品自販機は衰退。ひとつ、またひとつとして姿を消し、令和の現代では、僅か数台が現役で稼働されている絶滅危惧種に近い存在になっている。

そんな食品自販機に焦点を当てた、愛と正義の熱血長編RPGが令和2年11月8日に「RPGアツマール」で爆誕した。その名も『レトロ自販機クエスト』!

11月11日にはフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて、Windows、Mac対応のPCダウンロード版もブラウザ版とセットで公開されている。なお、ダウンロードに当たっては「ふりーむ!ID」の作成が必要となるので注意されたし。

レトロ自販機界の平和のため、騎士が立ち上がる!

さて、誰が呼んだか突然の埼玉県川口市!
総人口約60万人、埼玉県南端に位置し、東京へのアクセスも便利な日本の中核市である。そんな川口市唯一のオートレストラン「オートインかわぐち」より、この熱血長編RPGの物語の幕は開く!

「オートインかわぐち」を「心のオアシス」と謳う店の常連であり主人公の「サブ」は、いつものように食品自販機の料理を堪能しようとしていた。だが、そこにスーツを身に纏った男3人組が来店。

彼らは「Trend of the times.」……日本語に訳すと”時代の流れ”、その頭文字を取って「TOTTIS(トッティス)」を名乗る謎の企業の社員たちで、時代の流れから取り残された古き場所、古き物を破壊し、新しき時代の流れを打ち立てるため、「オートインかわぐち」の制圧及び破壊を始めようとしていた。この横暴極まりない行為に怒髪天のサブは店の外(※店内での揉め事はご法度です)で、3人組と”拳”で語り合った末に撃退。

だが、そこに3人組の上司である男が現れ、時代の流れを味方につけたTOTTISの圧倒的な力の前に敗北してしまう。かくして、「オートインかわぐち」はTOTTISの魔の手に落ちたのである。

このままでは愛するオートパーラーが……と朦朧とする意識の中で悔やむサブに、謎の声が語りかける。声の主はサブの食品自販機への想い、オートパーラーへの愛に感銘を受け、彼に「レトロ自販騎士(レトロナイト)」となる栄誉を与える。
そして、食品自販機に代表されるレトロ自販機の世界の平和を守るため、サブは各地のオートパーラー、オートレストランなどの破壊と制圧を目論むTOTTISたちとの激烈な戦いに(半ば無理矢理)身を投じていくことになるのであった……!

大変長くなったが、このようなオープニングと共に本作の物語は始まる!
もう既にお腹いっぱいかもしれないが、これで序の口だ!この後にはさらに超絶怒涛にして疾風迅雷、荒唐無稽の特濃こってり熱々の物語が描かれ、プレイヤーの腹と思考を限界までよじれさせていくぞ!詳しくは後ほど!

ゲームの解説に入ろう!前述の通りジャンルはRPGだ。それも拠点攻略型の構成を取ったRPGである。プレイヤーはサブとなり、関東1都5県のレトロ自販機が設置されたオートパーラー、オートレストランなど(以下、店舗)へと訪問。各所を占拠した「TOTTIS」の社員たちと戦闘し、彼らを追い払い、店を解放していくのだ!

店舗への移動及び訪問は、関東1都5県の全体像を表現した、いわゆるワールドマップ上で実施。サブの愛車である軽トラック(※ローン5年以上)を操縦しながら進み、店舗を発見しては訪問し、TOTTISとの戦闘を始めとするイベントの攻略に挑むだけである。うむ、分かりやすい!

しかも、イベントは店舗・店内に足を踏み入れれば早々に始まる。一部、移動の必要が生じたりするが、謎解きや探索要素は一切なく、テンポ良く進んでいく。店舗巡りだからな!いわゆる「ダンジョンマップ」も少ない。さらにそのような場所でも謎解きや探索要素は控えめだ。そんなのよりストーリーをどんどん進めたい、ってプレイヤーには嬉しくて涙ちょちょ切れる設計!拠点攻略型と書いたが、その実は旅情系、もしくはストーリー重視系とも称せる作りになっているのだ。店舗巡りがメインなので、これ以上ないほどベストマッチ!

戦闘も基本的にはコマンドを選んで行動を決めていく伝統的、もとい”レトロスタイル”だ。キャラクターの成長も経験値が一定数貯まるとレベルが上がる王道のものだが、少し変わっているのが強力な奥義の習得。これは店舗への訪問、関連イベントの進行に応じて身に付く。要は店舗を沢山訪れ、解放していくほど、サブが強くなっていくのだ。

そんな奥義改め「レトロ自販技(じはんぎ)」は、いずれも食品自販機ごとの料理と関連付けられている。例えば「トーストサンダー」ならトーストサンドと言った具合だ。これが何を意味するのかというと、関連付いた料理を食べれば技の威力が上がる。店舗各所の自販機で販売されている料理を食べるたび、技の性能が少しずつ上昇していくのだ。どんな仕組みだよ、って聞こえてきそうだが、細かいことは気にしちゃいけねえ!レトロ自販機への愛が成せる業なのだと思ってくれ!愛の前に理屈はない!

だが、同じ店で何度も食べればいい訳ではなく、色々な店で関連付いた料理を食べると上がる仕組み。結局は店舗を色々訪問していかなければならないのだ。何せ拠点攻略型という名の旅情系RPGである。旅は己を強くするとも言うではないか。

他に戦闘は全体マップ移動中にも発生(※ランダムエンカウント)するが、序盤の舞台となる埼玉県では一切起きず。その後訪れる、心にググっと群馬県から発生する形式になっている。また、ダンジョン系のマップでは移動するキャラクターに接触すると戦闘が発生(シンボルエンカウント)する形式。このような差別化が図られているのもちょっとした見所である。

もちろん、ゲームが進むとサブ以外の仲間が参加し、戦術の幅が広がる展開もあるぞ。

このように基本の作りは王道……レトロとも言うが、イベント戦中心、探索や謎解きも最小限と、店舗巡りが本題の設定にちなんだ割り切ったゲームデザインが図られており、サクサクと遊べるRPGになっている。
若干、アクションゲーム、オープンワールドスタイルのアクションアドベンチャー的な遊び心地もあるので、その手のジャンルが好きな人にも刺さる作りと言えるだろう。

で、本作の魅力だが……まあ、話すまでもないな。ストーリーだ。
あと、ものすごく起伏のある構成も挙げられる。

荒唐無稽の暴風雨!その末にアナタは感動を得る!?

オープニングのあらましが全てを象徴しているが、本作のストーリーは最初から最後まで、荒唐無稽に次ぐ荒唐無稽の横殴り暴風雨である!関東1都5県に点在するオートパーラー、オートレストランなどの店舗を軒並み破壊しようと目論む、おシャンティな名前の企業相手に昭和なおっさん主人公が「レトロ自販騎士」になって立ち向かう!

何がどうしてそんな設定に行き着いた!そう言いたくなる荒唐無稽さだ!
ごめん待って、理解が追い付かない……と困惑するのも無理はなし!
そんな風になるのが普通!
だが、本編は「そんなの知るか!」の超絶怒涛の勢い任せで展開!
そもそも、店舗に訪れるたびに目を疑うような出来事が相次ぐ!
謎めいたネーミングの「レトロ自販技」が使えるようになって、サブが強くなるのは序の口!

その技を習得する過程で食品自販機そのものが話しかけてきたり!

「どう見ても”如くの人”じゃねえか!」と言いたくなる相手と戦闘になったり!

訪れた店舗が実名だったり!(※許可済みのものに限定)

TOTTISに対抗するレジスタンスとの出会いがあったり!

破壊光線を照射するゴールデンな衛星兵器が起動したり!

軽トラックで戦車と戦うことになったり!

猫ちゃんが起きちゃったり!

もう、どこもかしこもツッコミどころの満漢全席なのである!
正直、一連の展開、キャラクターたちのやり取りを見るだけで(いい意味で)エネルギーとカロリーをギュンギュン吸い取られてしまいかねないほどだよ!
うーん、これじゃ自販機フードも食べたくなりますわね……。

一連の出来事に本編も呼応!さながら波打つごとき怒涛の起伏が描かれており、プレイヤーを一時たりとも退屈させない構成にまとめ上げられている!特に店舗ごとのイベントは決まって拳で語り合うだけに留まらない。

中には敵対する相手の設定を踏まえたミニゲームで戦うこともあるのだ。

一部、ダンジョン的なマップも登場する!前述の通り、探索と謎解き要素は最小限なのだが、その分、豊富な会話イベントと戦闘を用意!作りは単純ながら、飽きさせない構成になっている。

ストーリーにもその後の攻略に甚大な影響を及ぼす重大イベント多数。それによって、戦術と戦略の転換が強要されもする!なんてこったい!重大イベントの詳細は割愛するが、間違いなく度肝を抜く思いをするだろう。そして以降、止め時を失ってどんどん進めていってしまうはずだ。現に筆者はそうなった。いや、そんなまさか、嘘だろと思ったら、冗談ではなく、「ヤバいぞ、この旅……」との興味が爆発し、怒涛の勢いで時間を吸い取られてしまった。戦慄的としか言い様のない事件だったのだ……。

全体を見れば、荒唐無稽さが目立つストーリーなのは言うまでもない!だが、その完成度は非常に高く、単にネタに走っただけの内容に終わっていない。時にプレイヤーを驚かせ、笑わせ、果ては魂をも揺さぶるエンターテインメント性溢れるものに仕上がっているのだ。

また、レトロ自販機の魅力を語り、その秘められし価値を再発見する”温故知新”のテーマも込められており、それがサブの性格や決め台詞、途中から仲間として加わる謎の童女の正体に反映されている。一見、無茶苦茶に見えて、その裏に古き物を後世に語り継ぎ、大事にすることを説くそれらには、決して本作が生半可な思いでレトロ自販機を取り扱っている訳ではないという、作者の火傷するほど熱い思いを実感させられるだろう。

なにせ、実名の店舗が出てくるほどなのだから!(※ちなみにデータは2018年9月時点のものが使用されている。上記画像の埼玉県行田市の「鉄剣タロー」は残念ながら2020年5月31日を最後に閉店。だが、本作の世界では変わらず現役かつ、奥義のひとつになっている

他に店舗を訪れる度にサブが強くなる、TOTTISの支配圏ゆえ移動中に戦闘が発生する仕組みになると言った、ゲーム側にストーリーの設定を当てはめて説得力を作り出しているのも見事な部分だ。

どうしても荒唐無稽な部分に目が行くのは無理はない。だが、やればやるほど、その侮りがたき作り込みに唸ること間違いなし。そして、最初から最後まで全く退屈せず進む、見事な起伏が描かれた構成に本作のRPGとしての完成度の高さを思い知らされるだろう。

とは言うものの、荒唐無稽さが特徴のストーリー。そちらの勢いに気圧されてしまうのは避けられないだろう。また、最後の最後にはその集大成とも言わんばかりの空前絶後の展開が待っている。これも例によって詳細は割愛、見てのお楽しみだが、さながらギャラクシービッグバンダイナミックがすぎる事態と人類の奇跡、男のロマンと愛と正義が凝縮された展開の数々に内臓がよじれて裏返る地獄の苦しみを味わうことになるだろう。一片たりともお見逃しなく!そして、全てが終わった後、アナタはきっとこうなるはずだ。

自販機怖い!!……と。

俺たちには命を賭して守護らねばならぬ自販機がある!

ストーリーに関してはキャラクターも味方、敵共に魅力的な面子揃いだ。

特に主人公のサブは、食品自販機に対して熱すぎる愛を持ちながら根は常識人で、店内でのマナーを説いたり、仲間やTOTTISの珍妙な行動にツッコミを入れたり、うろたえたりする好感の持てるキャラクターになっている。男が惚れる漢(おとこ)とも言う。

本当に惚れられてしまうのだが。(え?)

敵のTOTTISも「お前、本当に社員?」とツッコミたくなる面々がいて面白い。いや、もう既に前述の”如くな人”で明らかだが、氷山の一角である。心して対峙し、退治いただきたい。中にはサブとの戦闘を通じ、友情が育まれるパターンがあるのも必見だ。

長編なりにボリュームも満点で、メインストーリーだけでも12~15時間以上。店舗ごとの自販機フードを食べつくすと言った寄り道要素、クリア後限定の高難易度のダンジョンも用意されており、それらも極めるとなれば2~3倍に膨れ上がる!また、難易度は低め。あまりレベル上げをせずとも、サクサク進めていけるバランスだ。ただ、中盤以降には若干、レベルを上げないと返り討ちにされるボスも登場するので、油断は禁物。

ひたすら勢いを重視した反動なのか、台詞において脱字や誤字が散見されたり、雑魚敵の戦闘でごく稀に強制決着する不具合があるのはちょっと惜しい。また、全体的にイベント戦闘が多く、それを通してキャラクターたちのレベルが上がっていくので、育成周りの面白さには期待してはいけない。他に前述の”事件”が起きた際、パーティに火力不足の問題が発生し、戦闘が長期化及びテンポが悪化するのも引っかかるところ。

ミニゲームにも一部、回避ゲームがあるのだが、ストーリー上の設定に準拠しているとは言え難易度が苛烈気味。最後の方の弾幕は自重して欲しかったように思う。

だが、いくらそのような難点があろうとも、本作が空前絶後の傑作にして、愛と正義の熱血RPGとの表現がこれ以上なく似合う作りである事実に一点の曇りなし!探索や謎解きが少な目ゆえのテンポのよさ、荒唐無稽に次ぐ荒唐無稽が繰り返されるストーリー、(いい意味で)やかましすぎる演出、そして食品自販機への並々ならぬ愛が注ぎ込まれた小ネタの数々は、記憶に残る体験になること間違いなし!少しでも興味を抱いたのであれば!或いは、実際に食品自販機を愛してやまない人であれば!言うことはただひとつ!
今すぐにでも遊ぶべし!2020年度史上最高のRPG、ここにあり!(※筆者の私見です)

[基本情報]
タイトル:『レトロ自販機クエスト』
作者:アフロマンサー
ロケ地:らっしゃい東京、夢色玉手箱 ときめき神奈川、おもしろ半島ちば、漫遊空間いばらき、彩の国さいたま、心にググっと群馬県
クリア時間:12~15時間(※やり込み要素コンプを除く)
対応OS:Windows、Mac
価格:無料
備考:PC版ダウンロードには「ふりーむ!ID」の作成が必須、実名店舗のデータは2018年9月時点のものを使用

※プレイはこちら(RPGアツマール)
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm16942

※ダウンロードはこちら(※要:ふりーむ!ID)
https://www.freem.ne.jp/win/game/24334


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