死闘を題材にしたゲーム2作を開発したインディースタジオが送る、魂の救済を描く異色のADV『Spiritfarer』

非業の死を遂げたヴァイキングの女戦士となり、ヴァルハラの戦士の館に入る資格を取り戻すため、途方もない試練へと挑むアクションアドベンチャーゲーム『Jotun: Valhalla Edition(※邦題:ヨトゥン ヴァルハラ版)』。

「抵抗せよ、あるいは受け入れよ」
放浪の戦士「エシ」となり、呪われた運命を振り払うため、旧世界の廃墟を舞台に異形の存在との死闘に挑む探索型アクションRPG『Sundered(サンダード)』。(紹介記事

これらを製作したのが、カナダ・モントリオールに拠点を置くインディーゲームスタジオ「Thunder Lotus Games」である。2作続けて戦いを題材にしたことから、将来的な新作も恐らくその路線に沿ったものに……と思いきや。

現れたのは迷える魂を新たな世界へと送り出す、穏やかなアドベンチャーゲームだった。

そんな訳で、これより紹介するのがThunder Lotus Gamesの新作『Spiritfarer』(スピリットフェアラー)である。2020年8月にSteamのPC(Windows、Mac、Linux)版、Xbox One版が先行発売された後、2020年9月29日にNintendo Switch、PlayStation 4版が発売された。日本語ローカライズは架け橋ゲームズが担当。

また、Xbox One版はマイクロソフトの定額サービス「Xbox Game Pass」の対象にもなっている。

さまよう魂に奉仕し、旅立ちを見届けるマネジメントアドベンチャー

主人公の女性「ステラ」と相棒の猫「ダフォディル」は小舟の上で目覚める。
そこは「エバードア」と呼ばれる不思議な場所。
そして、小舟にはローブを纏った人物「カロン」が同乗していた。
カロンは自らをさまよう死者の魂を世話し、導く存在「スピリットフェアラー」だと名乗る。そして、次のスピリットフェアラーとしてステラが選ばれたことを語り、使命を伝えて消えてしまった。

ステラに与えられた使命は、島々を巡ってさまよえる死者の魂を自らの船に乗せ、彼らの世話をし、運命を受け入れた魂の”旅立ち”を見送り届けるというもの。かくして、不思議な世界を巡る航海の旅が始まるのだった。

端的、かつ某邦画になぞってまとめるなら”魂のおくりびと”とも言えるストーリー。過去2作に渡って、死闘を体験させるゲームを作ってきたスタジオとしては異例の内容になっている。

ゲーム的には「マネジメントアドベンチャー」を呼称している。
率直に申して、その内容をひと口で表現するのは難しい。何故ならば。

船上、島々の移動及び探索はステラを直接動かして進める横スクロールアクション。

航海は、船室内の海図上で航路を決めて実行に移すシミュレーション。(移動は全自動)

魂たちとの交流は彼らに直接話しかけ、コマンドを選んで要望に応えるテキストアドベンチャー。

そして、魂たちの客室、新たなアイテムを作り出す施設を造る際は建築シミュレーション。

……と、色んなゲームの要素を内包した作りになっているのだ。
ひと口で表現するのが難しいのは大体、察せたかと思う。

さらにゲームを進めていると様々なイベントも発生し、そこにはお約束(?)の戦闘も。ただ、あくまでもミニゲーム的な位置付けで、難易度もそんなに苛烈ではない。また、ステラのアクションが増えていくという『Sundered』にもあったアップグレード要素もあるが、アクションの大半は移動を楽にするものが中心。

それも全ては、本作のキモが「魂たちとの交流」であることに由来。会話したり、食事を作って食べさせたり、時折出されるお願い(依頼)に応じるなりして、奉仕していくのだ。

最終的に思い残すことなく、死後の世界へ旅立つ覚悟が決まった魂が出たら、その入り口がある「エバードア」へ。そのまま彼らの旅立ちを見送ってお別れする。
以降はまだ旅立っていない魂との交流を続けたり、島々の探索を通して出会った新たな魂を乗客として迎え入れたり、新たなアクションの習得や船の強化を重ねて探索・航海範囲を広げ、再度訪れる旅立ちの瞬間に同行することの繰り返しとなる。

このような流れを基本に本編を進めていく形となる。開発元の前2作を遊んだ経験のあるプレイヤーなら、思わず困惑するのは言うまでもない。戦闘での”勝利”ではなく、一人ひとりを”救済”するため行動していくのが主な目的だからだ。

それもあって、作風的に異例も異例。
どこか穏やかながら、重いテーマを取り扱ったゲームに仕上がっている。

ゲーム部分との強い結びつきにより描かれた、心揺さぶる”別れ”

魅力もまた明瞭。様々な別れの形を描いたストーリーである。

特に魂それぞれの持つ過去は現実味の強いものが多く、プレイヤーの心を静かに抉り、同情を誘ってくる。ゆえに後悔なく旅立てるよう、ご奉仕しなければ……と、強い使命感を抱かせつつ、彼らがどのように旅立ちを決意するのかを見届けたい関心を促す、訴求力の強い内容にまとめられている。

それがゲーム部分と強く結びつき、別れの瞬間をひと際印象深いものにしているのも大きな見所だ。実のところ、魂それぞれを見送るまでにはかなりの時間を要する。一筋縄ではいかぬお願い(依頼)を出してくるのだ。今の時点で手持ちになく、航海範囲をより広げないと入手できない食材を使う料理を作って欲しい、船体を強化しないと行けない場所にある島へ向かって欲しいなどは序の口。一定段階まで進むと高級な美術品を設置するよう要求するなど、ほぼワガママに等しい依頼までこなすことになるのだ。魂も皆が皆、好意的とは限らない。中には横暴な態度を取る者もいて、依頼もステラ(プレイヤー)を無駄に右往左往させるものを出してくる。こういう魂を相手にしている時は思わず、「ウザッ……」と苛立ってしまうかもしれない。

だが、そのおかげか、別れの時には何とも言い難い喪失感が襲い来る。それに、旅立ちに至る過程が必ずしも未練を無くすことに繋がる訳ではない。中には辛い現実を受け入れ、旅立ちを決意する魂も居る。そんな彼らを送り出す瞬間のほろ苦さたるや、もし、次の人生があるならば幸せになって欲しいと願いたくなるだろう。

こう言ったゲーム部分の工夫、魂それぞれの個性付けも相まって、どの別れもひと際印象深く、心揺さぶるものになっている。台詞もあまり説教臭さがなく、やや断片的、かつ穏やかな調子で語りつつ、死生観を問うものになっており、別れを経験する度に未練なく生き、旅立つにはどうしていけばいいのかと考えさせられる。

ある意味、それを最も色濃く描いているのが最後に別れを告げる魂なのだが……これは実際にその目で確かめてみていただきたい。何人もの別れを経験した後だからこそ、取り分け強烈な印象を残す場面になっている。同時にこのストーリーが”ステラのための物語”だったことも思い知らされるはずだ。そのあまりに胸打つ背景と最後の一瞬には、人によっては目が潤むこと確実。主に年齢層の高いプレイヤーほど、このご奉仕主体の内容は心へ大いに響き渡るだろう。要チェックだ。

ゲーム部分の”できることの多さ”も見所。料理を作るのに必要な野菜や果物を育てて収穫したり、木材などを加工したり、釣りをしたりなど、ご奉仕のために色々なことをしなければならないため、一つひとつをこなすだけでも結構な時間を吸われる。しかも、一部の作業はミニゲームと共に行うスタイル。これもあって、船が目的地に到着するまでの時間潰しにもなるなど、あまりプレイヤーを待たせて退屈させないための配慮として機能しているのが面白いところだ。一部の作業を自動化させるような要素も無し。そのため、船が大きくなった時は結構、動き回る手間が増す難点があるのだが、退屈さを払拭するための措置として機能している所もあるので、一長一短である。

航海も時には前述の戦闘にて紹介しているドラゴンのような生物が現れたり、雷雨や隕石(!)が降り注ぐなどのイベントが沢山用意されている。島もかなりの数。全部を発見するだけでも入念な航海が試されるだろう。

何気に本編の進め方が序盤を除き、プレイヤーの自由に委ねられているのも見所。決まった攻略順序というのはなく、好きなように進めていけるのだ。かと言って、次の目的が分かりにくくなる……などもなし。現在受注中の依頼をまとめた画面が用意されているので、不便さは皆無だ。

こう言った遊び応え、充実感にもこだわっており、単に雰囲気を味わうゲームではない侮りがたい魅力を醸し出している。この辺は『ヨトゥン』、『Sundered』とやり応えのあるタイトルを作ってきたスタジオの持ち味が活かされている感じだ。ボリュームも大きく、エンディングを迎えるだけでも25~30時間。コレクション収集などのやり込み要素も用意されている。その盛り沢山な内容には、前2作のプレイ経験がある人なら、穏やかなゲームでもThunder Lotus Gamesはいつも通りだったとの安心感を得るかもしれない。

ボリューム満点、中毒性抜群の穏やかな傑作ADV

また、グラフィックも前2作同様に手描きアニメ調。イラストがそのまま動くかのような滑らかなアニメーション、キャラクターそれぞれの細かいリアクションは圧巻の出来栄えだ。特にステラの相棒として終始、活躍する猫のダフォディルの可愛らしい動きには、猫好きほど骨抜きにされるかもしれない。

そして、別れの時などに見られるハグ。
これも何とも微笑ましいものになっているので要チェックだ。

操作性も非常によく、思うがままにステラを動かせる。ただ、(Nintendo Switch版の場合)Aボタンで決定、Yボタンでキャンセルという不可解な設定のメニュー操作は違和感バリバリ。Nintendo Switch版に限り、携帯モードプレイ時、一部テキストの文字サイズが極端に小さくなってしまうのも厳しい難点だ。オプションにサイズの設定が用意されていないのが惜しまれる。

他に航路の設定、料理などで使う装置をチェックする際、調べられる対象か否かを光の輪郭で表現した、視覚的に分かりにくいものになってしまっているのも気になる。調べられる対象は色を変えたり、アイコンを表示するなりしても良かったように思う。

そんな一部、遊びやすさの面で難はあるが、総じて雰囲気ゲームとしても、マネジメント系ゲームとしても非常に完成度の高い作品に仕上がっている。
前2作で死闘を体験するゲームを作ってきた所が急にどうしちゃったの、というギャップの凄さも素敵な本作。ストーリー設定に少しでも興味を抱いたのなら、ぜひ遊んでみていただきたい傑作だ。魂をお世話し見送る、楽しくも考えさせられる仕事に従事してみよう。別れの時は辛いかもしれないが、この経験は間違いなく次への一歩に繋がるはず。

[基本情報]
タイトル:『Spiritfarer』
発売・開発元:Thunder Lotus Games(※日本語ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間:25~30時間
対応OS:Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PC(Windows、Mac、Linux)
価格(税込):¥2,980(Nintendo Switch、Steam)、¥2,970(PlayStation 4)、¥2,950(Xbox One)
CERO:B(12歳以上対象)

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※Nintendo Switch
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000020668

※PlayStation 4
https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP2388-CUSA20182_00-0000000000000000

※Xbox One(Xbox Game Pass対応)
https://www.xbox.com/ja-JP/games/spiritfarer

※Steam


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    シェループ(@shelloop

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