伝説的名作STGにオマージュを捧げつつ、独自のやり込む面白さを備えた意欲作『SPOLOUS』

シューティング,フリーゲーム

おお、なんという見覚えのあるタイトルロゴ。
これは間違いなくシューティングゲームだろう。
それも横スクロールで、アイテムを取った後に対応するボタンを押せば、画面下にあるゲージの光っている箇所のパワーアップが自機に反映されるシステムを持つ、あの伝説的名作をオマージュした作品なのだろう。そうに違いない。

そんな感じに上記スクリーンショットを見て、主にゲーム歴の長い人は推察したかもしれない。答えはズバリ、その通りでございます。本作『SPOLOUS(スポラウス)』は、あの伝説的名作シューティングゲームにオマージュを捧げたフリーゲームである。2020年10月24日、フリーゲーム投稿サイト「unityroom」でブラウザ版として公開。後にWindows PC向けダウンロード版も「itch.io」、「ふりーむ!」それぞれで公開されている。

今風の配慮も凝らした、懐かしの横スクロールシューティングゲーム

内容は言わずもがな。横スクロールのステージクリア型シューティングゲームだ。襲い来る敵をショット攻撃で撃墜しながらステージを進み、終盤に登場するボスの討伐を目指す。ボスを倒せばクリアとなって次のステージが始まり、以降はその繰り返し。もはやこのジャンルにおいては定番中の定番とも言える構成だ。

システム面も前述の通り、伝説的名作のオマージュ。パワーアップシステム以外にも、ゲームスタート前に自機のパワーアップパターンを選択する機能など、プレイ経験のある人に強烈な既視感を抱かせるものが網羅されている。

ただ、本作特有の仕様とシステムも。ひとつに自機。オマージュ元の伝説的名作同様、本作も敵の攻撃に被弾、ステージ上の障害物、地面に接触すると問答無用で撃墜となり、残機が1つ失われる。
しかし、その後の復活及び再開は撃墜された場所から即座に実施。伝説的名作は撃墜された場所から少し戻された所より再開される”戻り復活”だったが、本作は”その場復活”の仕様を採用している。

また、「イージースタート」なる機能がゲームスタート時に選べる。通常の「スタート」では、撃墜されると残機のほか、それまで習得したパワーアップも一部を除いて全て消失してしまうのだが、この「イージースタート」では残機以外何ひとつ失われない。強化状態が維持されたまま、ステージ攻略を続けられるのだ。さすがに残機が0の時に撃墜され、コンティニューした後にはパワーアップが全て失われてしまうが、それでも通常の「スタート」よりかは緩くて遊びやすい設計。主にシューティングゲーム初心者、肩の力を抜いて楽しみたい人には嬉しい機能になっている。

そんな残機を全て失った後のコンティニューも選択形式。撃墜されたその場から、ステージの最初から、或いはそのままゲームオーバーの3つが選べる。そして、コンティニュー時には「クレジット」が消費される。古くからシューティングゲームに慣れ親しんでいる人なら挑戦権、もしくは数値分だけやり直せることを示す指標を想像するかもしれない。

だが、本作は違う。噛み砕くなら、ゲームをプレイするたびに貯まる「ポイント」なのである。具体的にはゲームオーバー、ゲームクリア時にこれまで獲得した総合得点に基づくポイントの合計が「クレジット」へと変換され、蓄積される。

つまり、貯めれば貯めるほど、コンティニューできる回数も増える。いわゆるRPGのお金に該当する、稼ぎプレイを実現する要素になっているのだ(※ただし、コンティニューを繰り返すたび必要クレジット数が増える点に注意)。しかも、クレジットが一定量貯まっていれば、パワーアップの新パターンも追加可能。

本作には最初から解放済みのもの以外にも、クレジットを支払うと解禁される秘密のパターンを複数用意。選べる数を増やせるのだ。いずれも必要なクレジット量は高めで、そう簡単には解禁できないのだが、その分、大胆な効果を自機に与えるものが揃っている。もちろんそれらを使うことで、今までとは違う戦術を駆使したステージ攻略も楽しめる。

こう言った要素が備わっているのもあり、本作は繰り返しプレイが熱い作りになっている。

加えて、それを引き立てる要素として「ルート選択」も用意。AからCの3つのルートのどれかを選ぶことで、それぞれに用意された独自のステージを巡る展開が楽しめるのだ。パワーアップパターン同様、ゲームスタート時に決め、流れも1本道ゆえ分岐の仕掛けはないのだが、特定のルートでしか遊べないステージが盛り沢山なので、必然的に遊びたくなる魅力に秀でた要素になっている。また、単純にステージの数も多い。15以上もある、というだけでもシューティングゲームとして規格外な密度を誇っていることが察せるかもしれない。

伝説的名作のオマージュなので、基本の手触りはほぼそのまま。だが、クレジットシステムにルート分岐、自機の復活形式などの違いが多々あり、全体としては似て非なる遊び応えを持つ作品に完成されている。言うなれば、(システム的な)”もしも”の伝説的名作。「この部分がこうだったら?」という見所を持つオマージュになっているのだ。

幅広い攻略を可能とし、底まで深くするやり込み重視の設計

魅力は言わずもがな、伝説的名作の圧倒的なオマージュ具合。
だが、それを上回る部分でやり込む面白さがある。

特に「クレジット」がそれを引き立てている。何せ、繰り返しプレイして稼いで貯めるほど、力押しという名の突破口が広くなるメリットが得られるのだ。よりよい状態(という名の貯蓄)を求め、自然に遊び込む気持ちになる。さながら、RPGのようにお金を可能な限り貯め込んでは、強力な装備を一気に整え、本番に挑むのに近い楽しさがあるのだ。

しかも、繰り返しプレイするからこそ、敵の出現パターンやステージの構造も覚えられ、同時に自機の立ち回りも洗練されていく。攻略を楽にするため取り組むことが、そのまま腕前の上達へと繋がるのである。加えて、挑戦が決して無駄にならない。ゲームオーバーになろうとも、クリアできようとも、確実にクレジットは得られる。必ず何かしらの成果が手元に返ってくるのだ。

別にこの要素自体に斬新さも何もなく、RPGだと一種のお約束にして定番だ。しかし、本作ではそれがシューティングゲームの醍醐味を引き立てるよう活用されている。やり込む面白さというものを、目に見える形で堪能させてくれる要素として機能しているのだ。特にシューティングゲームに慣れ親しんだ人ほど、その活用法には唸ること間違いなし。救済機能としても申し分なく、自由で幅広い攻略法を許容しているのもお見事の一言だ。もちろん、前述の「イージーモード」経由でもクレジット稼ぎは可能。きちんとシューティングゲーム初心者、苦手な人をフォローする姿勢にも感服するしかない。

「ルート選択」もそんなやり込む面白さを魅力溢れるものにしている。本当に3つのルートそれぞれで違うステージ、ボスが登場し、果ては音楽などの演出面も僅かに異なるので、実質3本分のシューティングゲームが遊べるに等しい充実感があるのだ。各ルートが伝説的名作のネタに富んでいるのも大きな見所。その詳細は見てのお楽しみだが、何かしらのシリーズ作を遊んだ経験があれば、きっと「わーお」となってしまうだろう。特にルートAとルートCの終盤が露骨なので要チェックである。

他にクレジットで解禁できる隠しパワーアップも個性豊か、かつ種類が豊富。全部を解禁する際、相当なやり込みと時間が必要になるなど、ボリューム面が膨れ上がるのも面白いところだ。そもそも前述でも少し触れたが、本作のボリュームはかなり多い。1プレイは20分~1時間程度と短めなのだが、全要素を楽しむとなれば、その数十倍は費やすのが約束されるほど。なぜ、それほどの時間を要すことになるかは、パワーアップの数、いずれかのルートをクリアした時に現れる”何か”を見れば察せるだろう。場合によっては、面食らってしまうかもしれない。

オマージュ作品なりにネタ目的で遊んでも相応の満足感は得られる内容になっている。だが、本作の真髄はやり込みの面白さとそれを引き立てる要素(仕掛け)の数々にあり。既存のものを組み合わせ、繰り返し遊びたくなる魅力と中毒性を備えた独自の作品に仕上げられているのである。そこに関しては本当に本作にしかない面白さが詰まっているので、シューティングゲームの好みを問わずに味わってみて欲しい。底知れぬ沼を目撃するだろう。

やり込む度に沼に”スポッ”とハマる恐怖の良作?

ただ、若干気になる箇所も。ひとつに残機アップ(エクステンド)の規定値。10万点を取ると1つ増えるのだが、その次が50万点なのはさすがに開きすぎの感が否めない。クレジットの存在も兼ねての設定なのかもしれないが、過度なシビアさ、全消失しやすい環境を作り出してしまっていることから、大体30万点、50万点の目安で残機が上がる設定にして欲しかった限りだ。

また、どのルートも後半の難易度が苛烈気味。具体的には雑魚敵(主に天井、地上を走る敵)の増援が多く、弾幕が厚くなりやすい。終盤ゆえに難しくするのは適切だが、残機の件を踏まえると、多少自重願いたかったところ。伝説的名作を意識してか、初見殺しの罠や場面も目立つ。特に急いで行動しないとミス確定になる罠には、警告表示の演出が直前にあればと思ってしまった

別の所でも「イージースタート」の残機初期値が低くて「スタート」との差が感じにくかったり、ルートAは(元ネタを思えば適切だが)ボスに使い回しが多すぎる部分が気になる。ただ、本作は公開後も難易度調整を始めとするアップデートを継続的に実施しているので、今後、挙げた箇所が改善される可能性もある。筆者個人としては、残機アップの規定値は緩くした方がより遊びやすいバランスになるように感じたので、将来的にメスが入れられることを望む次第だ。

色々指摘してしまったが、現バージョンでもシューティングゲームとしての出来は盤石で、オマージュ作品ながらも独特な遊び応えと圧倒的なやり込み甲斐を持ち合わせた良作に完成されている。基本ルール、操作も単純であることに加え、伝説的名作由来のシビアさは取っ払っているので、シューティングゲームが苦手な人、初心者にも優しい作り。もちろん、手慣れた人にも見所満載の内容なので、ぜひ機会があればプレイいただきたい。そして、とことんやり込んで欲しい。沼にスポッとハマッちゃいましょう。

[基本情報]
タイトル:『SPOLOUS(スポラウス)』
作者:すっぽん(Studio Skomb)
クリア時間:20~1時間(1周)
対応OS:Windows
価格:無料

プレイはこちらから(ブラウザ版)
https://unityroom.com/games/spolous100

ダウンロードはこちら
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/24605

※itch.io(ブラウザ版あり)
https://suppon.itch.io/spolous

  • シェループ(@shelloop

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