”今年遊んだ中で最も革新的”とのレビューが蔓延するFPS『SUPERHOT』の何が革新的なのか?

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発売前から高い期待を受け、今年の2月に発売されるとみるみるとウィルスのように海外サイトなどで「今年遊んだ中で最も革新的なシューターだ」というレビューが海外を中心に溢れた『SUPERHOT』。今回は何が”最も革新的”だったのかを書いてみたいと思う。”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT”

映画とゲームプレイを結びつける”バレットタイム” その最先端

”全編が基本、スローモーションであり、自分が動くのと同じだけ周りの敵や銃弾も動く”という『SUPERHOT』。まずなにが革新的であるかというと、ここ15年ほどで発達した「あるゲームメカニクス」をピックアップしていることだ。これはたぶん、だれでも見たことがあるはずだ。すこしそのメカニクスについて振り返ってみよう。

さてビデオゲームをプレイして特に思うことがある。映画を観る感覚と自分でゲームプレイする感覚というのは一致しているように思い込んでいるけど、実際はほとんどバラバラであることだ。ゲームはあの手この手で観賞メディアである映画に近づこうとするけど、ゲームプレイの持つ感動と一致してくれることは、実はとても少ない。

映画の持つダイナミズムをビデオゲームにどう組み込むかというのは長い歴史があるだろう。実写映画に近いリッチなヴィジュアルを作り上げることはもちろん、凝ったカットを繋げることや、プレイヤーを緊迫感あるシチュエーションに置くレベルデザインにすること、いまだ賛否の分かれるQTEなどなど様々な試みがなされてきた。だが、視覚的に楽しめる部分とゲームとして遊べる部分が両立することはまれで、ほとんどの場合は映像を観るダイナミズムとゲームプレイのダイナミズムは分離したままだ。

だがわずかに両立したケースがある。それが”バレット・タイム”だ。これは映画でスローモーションになりカメラがぐるりと移動しながら高速で放たれた銃弾を交わすシーンなどに使われる演出のことを指している。古くは『ワイルドバンチ』や『男たちの挽歌』、そして『マトリックス』を代表とするアクション映画をはじめとして広まっていった。

ゲームにおけるバレットタイムを簡単に定義して”アクション中、スローモーションがかかった状態で操作できる”とすれば、調査したところ(リンク先英語記事)90年代から存在していたのだが、2000年代の初めから培われてきたバレットタイムを組み込んだRemedyの『Max Payne』あたりからこのメカニクスは明確に定義されてくる。

バレットタイムがその数少ない両立をできていると思う理由は、映像を観賞する感覚とゲームプレイすることがほぼ不可分になっていることだ。たとえばQTEを思い出してみよう。あれは目で観る映像の中でダイナミックなことをしていても、実際のゲームプレイはタイミングに合わせてボタンを押すという単純なもので、おまけに押すボタンも通常のゲームプレイでの「ジャンプ」や「銃発射」の操作ボタンの割り当てすら違うボタンを押させるだったりすらあったりするくらい、バラバラな印象が強かった。

対してバレットタイムはスローモーションがかかるその瞬間、映像として鮮やかであると同時に、プレイヤーはゆっくりと次の戦略を立てたり、丁寧に敵の攻撃を交わし、銃の狙いをつけることができる。”主人公のアドレナリンが上昇し動きがスローに見える”という作品世界のシーンを観ることと、ゆっくりと動く中で余裕を持って敵に狙いをつけたりと次の行動へ移るゲームプレイとの乖離はほとんどない。だから映画的な方向を持つゲームは、こぞってこのメカニクスを導入していった。

そこから15年以上が経った。すでに映像を観賞する鮮やかさと戦略的に動くゲームプレイのダイナミズムを融合させたこのメカニクスたるバレットタイムは『GTAV』から『MGSV』『Fallout4』などなど、映画的な方向性の強いAAAタイトルのほとんどに採用されるほどになり、映画を観賞する感覚とゲームプレイとの融合に大いに役に立つようになった。中には映画のバレットタイムの立役者のひとりである『男たちの挽歌』の監督であるジョン・ウーまでもが、チョウ・ユンファを主演にMidway gamesと手を組み『ストラングルホールド』を作ったくらいだ。

ここまで発展したことでもう一つの可能性も生まれる。「ではいったいどこまでをゲームから削っていって、純粋なゲームとして成立するのか」という特に映画的なビジュアルやシナリオを追い、進化してきたビデオゲームは、その一方で映画とは本質的に伝え方が異なることに気付いていくことの繰り返しだった。

なので、よりゲームでしか成立しない可能性を追うアプローチが生まれる。それがストーリーでもゲームメカニクスでもいいが、何らかのピュアなゲーム体験を掘り下げる場合、引き算に引き算を重ねるデザインは必須だ。たとえば登場人物すべてを幾何学にしたアクションアドベンチャー『thomas was alone』を思い出したってそうだ。リアリティだけでゲームは成立してるわけじゃない。抽象化したり、ミニマリスティックにするアプローチから、ゲームでしか成立しない何かを探るのだ。

映画的な意匠の強いバレットタイムで、「では映画的な要素を徹底的まで削り、バレットタイムならではピュアなゲーム体験とはなんなのか?」とミニマリスティックにしたデザインが『SUPERHOT』だと考えている。それが第一に革新的な点である。

『SUPERHOT』のピュアなゲーム体験とは

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これまでのFPSやTPSなどで『Half-Life』シリーズのmodやインディーゲームでもう一つの可能性を追ったデザインをする場合、『Portal』のようなパズルや『Stanley Plable』のようなウォーキング・シミュレーターの形式になることがほとんどだった。

『SUPERHOT』も、一見してミニマリスティックなヴィジュアルとゲームコンセプトを前に、過去のこうしたスタイルのゲームの先入観があった。ゲームを開始した当初だってまだ先入観は抜けない。過去のPCを模したインターフェースから本作がプレイヤーにシェアされてくるという導入や、立ちふさがる赤い人間たちを始末していくことの意味は?プレイヤーとゲームの関係は?と問いただしていく展開からして『Stabley palable』的なメタフィクションに近いし、コンセプト重視のアートっぽい作品とも思ってしまう。

だが、進めていくうちにはっきりしてくることは、そんなゲームの構造を問いただすようなことが目的では全くなく、まったくのピュアなFPSであることだ。そのゲームとプレイヤーの関係を問いただすようなコンセプトもストーリーも、ひねくれたように見せかけながらただひとつ、バレットタイムのピュアな体験に行き着かせるように出来ている。理由はない。物語もない。ただスローモーションの中でスーパープレイを生み出していく体験そのものに辿り付かせるように出来ている。

序盤こそバレットタイムを使った3Dパズルっぽさはかなり感じるのだが、敵が増えプレイヤーが戦術を理解したころにはもう完全に別物になる。いや、周知のFPSの立ち回りにどんどん戻っていくといっていい。

ステージをクリアすると”SUPER HOT”のフレーズが繰り返されながら、バレットタイムではないリアルタイムではどのような形で動いていたのか?のリプレイが流れるのだが、これはそこまでFPSが得意じゃない僕からするととても感動的だったりする。なぜなら、まるでそれが『Counter-Strike』などのスーパープレイのように見えるからだ。

FPSのスーパープレイは動画サイトなどでシェアされることなんて当たり前のことだ。トッププレイヤーのゲームプレイなどが参考にされたりするだろう。『SUPERHOT』はおそらくそうした面すら含めてデザインしており、公式がKillstagramという一連のゲームプレイをアップロードし、シェアするサービスまで行っているくらいだ。

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ゲームが進み、メインシナリオが展開されていくことではっきりするのはたったひとつだ。誰もFPSのスーパープレイヤーになることができ、そして誰もが「これ凄いプレイになったんじゃあないのか?」と思わせ、killstagramに動画をアップロードさせるゲームプレイのピュアな体験へと意識を導いていくことだ。メインシナリオはあくまでチュートリアルでしかないし、本質はおそらく中毒的なバレットタイムのメカニクスで、エンドレスモードやチャレンジモードをクリアし、その鮮やかなゲームプレイに意識をゆだねることそのものだ。

まとめよう。革新的なところはこうだ。『SUPERHOT』は映画とゲームプレイを繋ぎ合わせるバレットタイムをミニマルに仕上げ、知的であると同時にピュアなゲーム体験に辿り付くよう出来ていることである。最後まで遊ぶ中で物語もコンセプトもアート的アプローチも本質ではなく、最終的にバレットタイムからスーパープレイを叩き出し、シェアしていくというピュアなゲーム体験だけが残るように出来ていることである。最後まで遊んだ人間に”今年遊んだ中で最も革新的なシューターだ”とSNSをはじめ、SteamやGoGのレビュー欄で呟かせ、動画をKillstagramに上げ、この作品を蔓延させようと出来ていることである。ひとは真にピュアな体験を前に言葉を無くし「○○はいいぞ」と呟き、作品を蔓延させる存在になることをとある劇場版アニメが教えてくれたのと同じように、蔓延させようと出来ていることである。”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT” ”SUPER” ”HOT”…

[基本情報]
タイトル 『SUPERHOT』(公式サイトはこちらから
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