標識の中の小さな冒険。棒人間アクションパズル『The Pedestrian』

道路の脇にポールを立てるなどして取り付けられ、そこを通る通行者へ向けて交通ルールを掲示する「標識」。生活の身近な場所のいたるところにあるものなので、自動車の運転免許の講習中でもなければ強くは意識しないかもしれない。今回はそんな何気ない「標識」の見方が変わる作品を紹介したい。

『The Pedestrian』はアメリカ・オハイオ州に拠点を置く開発チームSkookum Artsの制作によるアクションパズルゲーム。2014年にチームが結成され開発が始まり、2017年のKickstarterでのクラウドファンディング実施を経て、2020年1月30日にSTEAMにて本リリースされた。

ウォーキング・ピクトグラム

本作のタイトルになっている”pedestrian”(ペデストリアン)とは「歩行者」の意味。『The Pedestrian』は、交通標識に描かれた「歩行者」となり標識の中の世界を渡り歩くアクションパズルゲームとなっている。道路で、工事現場で、カフェーで、町中のあらゆる場所で本来動かない標識や看板の中身が動き回るビジュアルはインパクト抜群。一目見て興味を惹かれること請け合いだ。

また、標識が題材となっているが為に、言葉によらず「絵で見て判る」ようになっている点も本作の特徴のひとつと言える。操作方法やルールの説明はステージの中に貼られた付箋紙などの形で提示され、標識の世界の雰囲気を崩さない形で挿入されている。海外で制作された作品だが外国語に悩む心配は無用なので、苦手な人も安心してプレイしてほしい。

標識を入れ替え繋ぎ変え先へと進もう

ステージとなる標識内には、ロックされているドアとそれを開けるための鍵、触れればひとたまりもないレーザー、リフトやジャンプ台、仕掛けを動かすためのスイッチや電線とプラグなどが配置されており、歩行者の行く手を阻んでいる。

先へと進むために重要となるのが標識間の接続の繋ぎ変えだ。モードを切り替えて標識内に存在するドアやハシゴの間に線を結ぶことで、歩行者が線を結んだドアなどを通じて標識と標識の間を移動することができるようになる。

標識間の接続を行う際の注意として、まず角度が付きすぎているとうまく接続されない。それに加えて、標識間を一度通り抜けるとスイッチのON・OFFや箱・鍵などのオブジェクトの持ち出しの状態が記録され、標識間を通過した後からその接続を繋ぎ変えようとすると、状態が不整合となりリセットされてしまう。このため、さながら一筆書きのごとく標識をs進む順番を考える必要があり、頭を悩ませてくれる。

パズルとしての歯ごたえはバッチリ。最初のうちはお茶の子さいさいと思っていても、順を追って仕掛けが追加され、先へと進むごとに難易度がじわじわと上がってくるようになっている。

標識変われば世界も変わる?

パズルを解くために配置を入れ替えた標識は、そのまま位置を入れ替えた状態でその場に残されていく。現実世界のエレベーターやシャッターが開くのに合わせて、標識の中のゲートも開く。たびたび登場する携帯ゲーム機風のマルチメーター(電流計)の画面の中で電池などのオプションパーツを接続すると、マルチメーター本体にも対応するオプションパーツが増設されていく。

交通ルールという世界の取り決めを表している物であるはずの標識が、標識の中から世界のほうを変化させていく。こうした標識の中の世界と外の世界との連動、シンクロニシティは本作の演出面での醍醐味といえる。そしてこのシンクロニシティはラストステージにおいてひとつの結実を向かえることになる。それは”2.5Dスタイル”を標掲する本作ならではのものであり、月並みな言葉ではあるが、その展開に筆者は驚きを隠すことができなかった。その内容は是非プレイして確かめてみて欲しい。

[基本情報]
タイトル: The Pedestrian
制作者: Skookum Arts
クリア時間:  3〜4時間
対応OS: Windows , Macintosh , Linux
価格: ¥2050

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    真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。