『TinyWar high-speed』 むらがる8ビットのユニットが楽しい短期決戦型RTS

インディーゲーム,シミュレーション

『TinyWar high-speed』は、建物を配置するRTS(リアルタイムシミュレーション)だ。

その建物からは軍隊が無限に湧いてきて、敵の中心地を占領するまで前進をやめない。また、建物には防御系のものもあって、破壊されるまでひたすら敵を迎撃する。ウォーシミュレーションゲームによくある弾薬や燃料の概念はない。極限までそぎ落とされたシステムで、惑星での戦いを勝ち抜く。

ウォーシミュレーションゲームというのは、古くからある人気のジャンルだ。そもそも、古代エジプトから連綿と続くゲームの歴史は、軍隊の机上演習から始まったと言われている。もちろん、ここで言うのは画面とコントローラーを使うゲームのことだが。いわゆる「テレビゲーム」の黎明期である、ファミコンの時代にはすでに複数のタイトルが販売されていた。

その名もズバリ『ファミコンウォーズ』や、今ではスマホにまで進出した『ファイアーエムブレム』だ。

ウォーシミュレーションはその後、スーパーファミコン、ゲームボーイと次世代機ごとに誕生し、様々な種類が生まれた。

操作するユニットも、騎士からスーパーロボットまで多種多様になり、システムも一つの戦場を争う戦術級のものから、補給の概念を扱った戦略級のものまで幅広くなる。

時代がくだり、パソコンとサーバーの能力が向上すると、ネットワーク対戦を実装し、かつ数百のユニットが同時に動くゲームも登場し始めた。むしろ、ゲームのオンライン化の最大の恩恵を受けているのが、シミュレーションゲームと言えるかもしれない。

そんな、生まれた時からパソコンがあり、ゲームボーイが電池で動くことすら知らない世代の増えた2018年。個人サークル「るてんのお部屋」が、8bit風RTS『TinyWar high-speed』のSteam配信を開始したのだった。Steam配信なので、原則としてパソコンでプレイすることが前提だ。しかし前述のとおり、このゲームに複雑なルールはない。

死んだユニットがそのセーブファイルでは二度と使えなくなることなんてないし、物資輸送の計算のためリアルでペンとメモ用紙と電卓を使わされる、なんてことはまちがってもありえない。

数で迎撃し、数で押す。基本はこれだ。
 
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赤いのが味方ユニット。まさにアリの兵隊
 
実はこのゲーム、個人的にプレイするのがかなり楽しみであった。

幼いころ「ゲームボーイウォーズ」にはまっていて、こうゆうグラフィックになつかしさを感じていたのだ。
 
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訓練=チュートリアルがないだと? 上等だ! やぁぁぁってやるぜ!!
 
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ぎにゃあああ

一戦目こそ後れを取ったものの、二戦目以降は順調に勝ち進むことができた。

このゲームのジャンルであるRTSとは、「リアルタイムストラテジー」の略で、日本ではシミュレーションの一つとして扱われることが多い。

敵も味方も常時待ったなしで動き回るので、気がつけば拠点を攻め落としたり攻め落とされたりしている。

なので、初見こそは面食らうし、慣れない人はなかなか慣れないかもしれない。

ただ、この『TinyWar high-speed』は、前述したとおり、シンプルで直感的に操作できるので、一回数分の戦闘を数回こなせばゲームを習熟することができる。

なお、操作はマウスで行うことができる。コントローラーは必要ない
 
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わかりやすい敵
 
このゲームの基本的なユニットは5種類。

「歩兵」「戦車」「自走砲」「戦闘機」「爆撃機」の5種類で、生産系の建物もこれにあわせて5つとなっている。迎撃系の建物は3種類で、価格の安い「塔」、価格は高いがHPも高い「要塞」、そして飛行系ユニット迎撃用の「対空ミサイル」だ。

RTSや、ウォーシミュレーションをやりなれた人からしたら、数が少なくてびっくりすることだろう。けれど、これがなかなか奥が深い。序盤から敵が押し寄せるため、迎撃系の建物を配置しなければならない。しかし、塔や要塞では相手の領地を攻めることはできないので、ユニットを生産する建物にも気を配る必要が出てくる。

だが、ここで「資金難」という、古代エジプトから続く人類のやっかいものが立ちふさがるのだ。資金は一定時間ごとに増えていくシステムなのだが、このバランスが絶妙に調整されている。

景気よく左クリでポチポチと要塞を作っていると、あっという間にジリ貧になり、時間ばかりが立ち、苦労して生産系の建物を作っても相手の(特に自走砲)などで破壊される。領土が増えないから収入も増えず、そのころには要塞も破壊され、結局はどうしようもない戦況に陥る。

しかし、心配する必要はない。このゲームには「お助けキャラ」的なものがある。結構強力で、うまく使えば戦闘を有利に進められるだろう。
 
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なお、マップクリア後には報酬があるのだが、この「お助けキャラ」も、マップで使える「スペシャルパワー」として追加できる。

報酬で使えるようになる「スペシャルパワー」は他に「自軍の生産速度のアップ」や、「資金を○○○○G増やす」、「相手の建物を隕石で破壊する」などがあり、後半は戦況にあわせ、これをテンポよく使っていくことが重要になってくる。

もちろん、これらを使わない選択も可能だ。結論を言えば、スペシャルパワーを使えばさくさく進める軽快なゲーム、逆に使わなければ手ごわいシミュレーションとなる。

このゲームは、昔、ファミコンやスーパーファミコンで古き良きシミュレーションをやっていた人にはお勧めできる。ファミコンで使用可能な色だけで描かれた8bit風ドットグラフィックや、飽きないピコピコBGM、シンプルながらも奥が深いシステムなどは、ほぼまちがいなく30代になっているファミコン世代にはうってつけだろう。

逆に、RTSをやったことがない若い世代にも、入門用としてちょうどよいと思う。9段階のスピード調整で、相手の動きをゆっくりにも早くにもできるし、実はいざとなったら「タイム」のボタンもある。タイムしているあいだにじっくり考えられるわけだ。

1ステージ5~15分ほどでクリアできる点も、忙しい人や初心者にも利点になるところだ。『TinyWar high-speed』の初出はコミックマーケット93。そのときのタイトルは『TinyWar』で、そこで好評を博した。

Steamの他に、DLsite.comなどでもダウンロード販売が行われている。

[基本情報]
タイトル:『TinyWar high-speed』
ジャンル:8bit風RTS
製作者:Masakazu Yanai氏(製作者様サイトはこちら
1マップ当たりのプレイ時間:5~15分
対応OS:Windows7以降
作成ツール:JavaScript+Electron
基本価格:¥1000

ダウンロードはこちらから
・steam
http://store.steampowered.com/app/797020/TinyWar_highspeed/

・DLsite.com
http://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ215886.html

  • 加古台

    「ポケモン」と「遊戯王」が発売されたとき小学生だった世代。日本全国のいろんなところに住んだことがあり、名前もその地名から取った。フリーゲームは「VIPRPG」から入った。友人の数は極端に少ないが、TRPGもたまにやる。