”狂い咲く”熾烈な戦闘が魅力の探索型アクションにして、東方Project二次創作作品『Touhou Luna Nights』

『ファラオリバース』

©2018 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会

『この素晴らしい世界に祝福を! 復活のベルディア』。

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『真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUE』。

これまで、オリジナルから著名な作品とのコラボも含めた様々な探索型アクションゲームを制作してきた個人ゲーム開発者のkrobon氏及び、氏が率いる開発チーム「team ladybug」。

その新作として2018年8月20日にアーリーアクセス版としてお披露目され、2019年2月26日に製品版がリリースされたのが『Touhou Luna Nights』だ。本作は個人サークル「上海アリス幻樂団」制作の弾幕シューティングゲーム作品群たる「東方Project」を題材とした二次創作作品。企画兼開発協力として株式会社バカー、販売をPLAYISMが担当している。
購入はPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」で行える。

また今後、追加要素を実装したNintendo Switch版のリリースが予定されている。

かすり+時間操作で戦う探索型アクション

本作の主人公を務めるのは「東方紅魔郷」、「東方文花帖」などのシリーズ作品に登場するメイドの「十六夜咲夜(いざよい さくや)」。ある日、彼女は紅魔館の主である吸血鬼「レミリア・スカーレット」により、幻想郷とは似て非なる異世界へと送られてしまう。さらに自らが持つ特殊能力である「時を操る程度の能力」も封じられてしまう。見知らぬ場所へ不意に送り込まれた咲夜は、襲い来る妖怪を倒しながら前へと進む。果たして、レミリアの目的とは。このような物語と共に本編は始まる。

内容としては探索型の横スクロールアクションゲーム。迷路のように入り組んだ広大なマップを探索し、時に行く手を阻む妖怪を手投げナイフで撃退しながらストーリーを進めていくというものだ。

システム周りは、ladybugの前作に当たる『真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUE』を踏襲。いわゆる『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』以降のシリーズに象徴されるアクションRPGスタイルのゲームデザインで、経験値取得によるレベルアップ、敵が落とす宝石を換金してのアイテム購入、「MPゲージ」を消費する形での特殊アクションを特色としている。

また、東方Projectの二次創作作品として、同シリーズの象徴的な要素「グレイズ」を採用。いわゆる”かすり”。敵弾に近いギリギリの距離で避けることにより、ボーナススコアを得られるハイリスク&ハイリターンのテクニックだ。

本作はこれを探索型アクションゲームへと翻案。敵弾のほか、敵本体に接触ギリギリの所まで近づくことで、体力(HP)、MP、TIME(後述)の回復が行えるという、非常にリスキーなシステムになっている。厳密にはグレイズには「青」と「赤」の2種類がある。青は”普通に”敵弾、敵に接近した際に得られるグレイズとなっている。

対し、赤は「時間静止」の能力を使った際に得られる。これも本作のシステム面の特徴のひとつ。主人公の咲夜にちなんで、時間を操る特殊能力が使えるのだ。そのひとつが「時間静止」。文字通り、咲夜以外の全ての動きを止める。

この状態で敵弾、敵に接近すると赤グレイズが得られるのだ。だが、赤は回復量が青よりも少ない。さらにHPの回復がない。MPとTIMEしか回復できないのだ。このため、効果的に回復したいなら青狙いが推奨される。一応、消費型のアイテムを買って使う手段も用意されているが、本作はこのシステムを採用している関係でか、値段が高めで買い貯めが難しい。究極的にはグレイズを狙った方が安くつくのだ。

かなり厳しそうな感じだがご安心を。それを少しだけやりやすくする2つ目の能力として「スネイル」がある。3秒間、時間の流れを遅くする特殊技だ。使うに当たってボタンを長押しする必要があるため、連発はできないが、普通に近づくよりかは安定してできるようになる。こう言った危険を冒すことに抵抗を抱くプレイヤーにも配慮した措置も用意されていて、シビアな設定とは裏腹に間口の広いシステムになっている。なお、念のため。敵弾や敵に接触しても一発でやられはしない。探索型アクションゲームらしく、ダメージ制なので、心配ご無用だ。ダメージ制じゃなかったらドエライコッチャだ。

このような東方Project、そして「十六夜咲夜」というキャラクターに焦点を当てたなりの工夫が凝らされた仕上がりで、弾幕シューティングのスリルを内包した探索型アクションとも言わんばかりの作品に昇華されている。
ちなみに前作に当たる『真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUE』も弾幕シューティングこと『斑鳩』の「属性」にインスパイアされたシステムを採用した探索型アクションゲームに仕上がっていた。続く形で出た本作が、別アプローチの内容になったのにはちょっと興味深いものを感じる次第だ。

グレイズによる手に汗握る駆け引き

そして、本作の魅力は「グレイズ」による駆け引きの熱さである。
昨今、著名なシリーズに留まらず、インディー界隈でも多種多様な探索型アクションゲームが発売されているが、本作はそれらの中でも群を抜いて戦闘パートが熱い作品になっていると断言する。

その熱さが迸る勢いで出ているのがボス戦。弾幕シューティングのギリギリを避けて反撃を決めるスリル、アクションゲームのキャラクターを動かす楽しさが融合を果たした、秀逸な仕上がりになっている。

何より、どのボスも攻撃が苛烈。画面を覆いつくすレベルの弾幕が展開されるようなことはないが、それでも結構な弾や特殊技が画面内を飛び交い、紙一重のタイミングでの回避を試してくる。それもあって、立ち止まっている時間がほとんどない!少しでも動きを止めたら押し込まれかねない、一進一退の攻防が最初から最後まで展開されるのだ。

そして、グレイズが時にピンチを救う形勢逆転を生み出し、絶望的な状況に追い込まれても打開できる余地を確保!もう体力が僅かしかない、次のが命中したら負ける……と思っていた最中、青グレイズが決まって体力が一気に回復し、状況が覆された時はテンションが爆発的に上がる。そのまま相手にダメージを与え続け、無事倒すこともできれば、してやったり感大噴出。思わず、窮地を潜り抜けたプレイヤー自らを褒めたたえたくなる興奮と強烈な達成感に襲われるのである。

まさにドラマティック。あるいはスタイリッシュ。素晴らしいスリルと先行きの分からない展開、乗り越えた際の強烈な達成感が際立つ非常に印象深い戦闘に仕上がっているのだ。アクションゲームのボス戦の中では取り分け強敵を表現しやすい人型のボスを中心としているのも、熱さへのこだわりが現れている。実際、機敏な動きで攻め込んでくるだけあって強敵感は申し分なく、それでいて攻撃の数々が派手でカッコイイので、ついつい熱くなってしまう。

東方Projectが長く愛され続ける魅力のひとつでもある、音楽へのこだわりも見事だ。これで熱くならないのなら嘘だ、と言わんばかりにどのボス戦でも相応の楽曲が流れては、プレイヤーのテンションを上げに上げる。相手ごとに専用の曲もちゃんと設定されていて、その点もシリーズファンなら「分かっている」と唸るはず。

細かい部分では、レベルアップによる成長ボーナスも低めに設定されているのに加え、先も触れた通り、回復アイテムの定価が高いので容易に買い貯めできないのも、元の熱さに水をかけないための工夫として機能している。

探索型アクションゲームは成長要素の関係で、アクション周りの難易度は抑える傾向がある。中には例外もあるが、手に汗握る本格的なアクションや強敵との戦いを楽しみたいなら、温くする要因は縛るのがある種の解になっている。

だが、本作は各種システムと調整により、縛らずとも本格的なアクションが楽しめる。そして、熱くなれる。まさにアクションゲームとしての部分にこだわり尽くした、痛快な探索型にまとまっているのだ。

探索型はボス戦に物足りなさが……と、何かしら不満を感じているのなら、ぜひ本作を体験いただきたい。東方Project抜きで、だ。その先にまさに”狂い咲き”と言わんばかりの驚きの世界を見ることになるだろう。

ちなみに戦闘だけでなく、探索も無駄な寄り道を発生させないテンポ重視のマップデザインが光る仕上がりで、侮りがたい魅力を醸し出している。さながらステージクリア型を遊んでいるような感覚の遊び心地、道中に仕掛けられた「時間」に関係した個性的な仕掛けの数々には、きっと心躍る気持ちになってしまうだろう。

ただ、終盤は陰湿な動きをする敵、致命傷を与えるトラップを多く登場させ、セーブポイントと回復ポイントを見落としやすい場所に置くと言ったやりすぎている所も。正直、セーブポイントぐらいは進行ルート上に置くぐらい配慮してもよかったのではないかと思う。そんなに長くないのがせめてもの救いだが。

探索よりも戦闘を欲する者へ送る力作

また、購入システムもアイテムの高さもさることながら、純粋に使い勝手が悪い。特にメニュー周りがこなれておらず、選択肢がフォントサイズの小さな英単語で表現されてたり、ボタンキャンセルに対応していなかったりと、地味にストレスがたまる。

何より、換金アイテムの宝石にステータスを僅かに上昇させる補助効果があるのが余計に購入意欲を殺ぐ。しかも、このシステムが説明されるのがゲーム終盤近くになってからと遅いのも意地悪な印象が否めない。

ただ、ストーリーを踏まえると、意図的にやっている可能性もあるので、完全にダメとまでは言い切れないのだが。けど、せめてボタンキャンセルぐらいは可能にして欲しかった。それがあるだけでも、多少印象が違っただけに、もう一歩突き詰めていただきたかったところである。

そんなメニュー周りは残念な感じだが、基本の操作性は抜群に良い。グラフィックも各キャラクターの細かい動きまで丁寧に描き込まれているほか、攻撃を決めた際のポーズがいちいちカッコイイので楽しい。

ボリュームも1周3~4時間程度と探索型アクションとしては平均的で周回プレイがしやすいほか、クリア後のEXステージ、そしてボス戦だけを集中して遊べる専用モードも用意されているので極め甲斐は抜群。特にボス戦だけを遊ぶモードの楽しさは、元の良さもあって魅力も相応だ。

ある種、当然のことだが東方Projectの前提知識が必要とされる箇所もあって、未経験のプレイヤーには若干、抵抗を覚える所も多少ある。
だが、単純にひとつの探索型アクションゲームとして楽しめる出来で、中でも戦闘を何よりも重視するプレイヤーにイチオシの1本に仕上がっている。ladybugの新作としても、これまでの作品の集大成的な所があり、今や配信終了となった『真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUE』の続編的な味わいもある。東方Projectのファンはもちろん、探索型アクションゲーム好き、そしてボス戦の楽しいアクションゲームのファンにも声を大にしておすすめできる傑作だ。熾烈な戦いに挑み、歓喜の瞬間を掴め。

© 水野良・グループ SNE/KADOKAWA/Team Ladybug・Why so serious?

また、余談として、「team ladybug」最新作にして、ファンタジー小説『ロードス島戦記』原作の探索型アクション『ロードス島戦記ーディードリット・イン・ワンダーラビリンスー』アーリーアクセス版の配信が2020年3月12日より、Steamで始まっている。これまでのladybug作品を遊んできたプレイヤーはもちろん、探索型アクション好き、そしてロードス島戦記ファンなら要チェックだ。

[基本情報]
タイトル:『Touhou Luna Nights』
制作者: team ladybug、株式会社バカー(販売元:PLAYISM)
クリア時間: 3~4時間
対応OS: Windows
価格: ¥1,840

※購入はこちらから

© 上海アリス幻樂団 © Team Ladybug/Vaka Game Magazine . Licensed to and published by Vaka Game Magazine, Inc./ Active Gaming Media Inc.


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