ハイテンポ同時ターン制SRPG『ビジラテリス』何度も復活し、やり直して闇堕ち勇者を討て!

戦略シミュレーション(ストラテジー)、シミュレーションRPG(SRPG)において定番のシステム「ターン制」。中でも「交互ターン制」と称される、自軍と敵軍それぞれの「フェイズ」こと、駒を動かす手番を交互に繰り返す枠組みは、ジャンル全体の象徴にすらなっている所がある。だが、中には特殊なターン制を採用したタイトルもある。著名な例では『タクティクスオウガ』(1995年:スーパーファミコン)の装備重量と敏捷性などを合計した値でユニット単位の行動順が決定・指定される「ウェイトターン制」がある。

もうひとつが「同時ターン制」。出撃ユニット総数の比率に応じて順番が配分され、味方と敵が一手ずつ出し続けるものだ。「ウェイトターン」と似ているが、動かすユニットはプレイヤー側が任意で決められ、全ユニットの移動が終わると1ターン終了になる点が大きな違い。採用例では、『ベルウィックサーガ』(2005年:PlayStation 2)が有名だ。

また、フリーゲーム界隈にも2018年公開のSRPG『ハイアブザード』(紹介記事)の難易度「パラレル」で、同時ターン制が採用されている。他の難易度は交互式となっており、同作は実質、2種類のターン制を選んで遊べるタイトルでもあった。

そんな『ハイアブザード』の作者・熱帯魚氏が新たに作ったのが『ビジラテリス』。先んじて内容を明かしてしまえば、同時ターン制SRPGである。

何度でも復活・やり直し可能な同時ターン制SRPG

ある世界に全てを滅ぼし尽さんとする魔王が現れた。
王国の姫君は魔王を倒すため、異界から勇者を召喚する。
それも、沢山いた方がいいとの考えに基づいて10人以上を召喚した。

結果、勇者たちによって魔王は倒された。
だが、なぜか勇者全員が魔王軍に寝返る戦慄の緊急事態が発生。しかも彼らは普通の人間を超越した力を持つため、魔王以上に凶悪。以前にも増して事態が悪化してしまった。

この危機に死霊術を操る「デジェ」とその使役霊と化した剣士「ツヴァイ」が立ち向かう……というのが大まかなストーリーである。
乱暴にまとめるなら、闇落ち勇者を全員ぶっ殺せである。
乱暴すぎだろと言われても、事実なので仕方がないということでひとつ。

前述の通り同時ターン制が採用されており、自軍・敵軍・同盟軍のユニット総数の比率に応じて「Section」、駒の動く手番が配分。それに準じて行動し、全Sectionが終了すれば1ターンが経過する仕組みになっている。

何体のユニットが動かせて、その後に敵ユニットが何体動くかは画面右下の「Section Info」で表示。「ACTIVE UNIT’S」が自軍で動かせるユニットの数で、「NEXT ENEMY’S」が自軍を動かした後、何体の敵が動くかを示す情報となる。例として「ACTIVE UNIT’S:2」、「NEXT ENEMY’S:3」と表示されていれば、自軍のユニットが2体動いた後、3体の敵ユニットが動くという感じだ。

基本、この順番に沿ってユニットを動かしてマップを移動したり、敵に戦闘を仕掛けるなりして勝利条件達成を目指す。流れ自体はSRPG伝統のキャンペーン(マップクリア)形式だ。

とは言え、ターン制が同時方式だけあって力押しは全く通用しないバランス。そもそも、味方敵共に体力(HP)の最大値が10と少ない。単騎で突撃すればあっという間に返り討ちだ。さらに以下の特殊なシステムもある。

EPと疲労状態

ユニットそれぞれに与えられた行動力を指すステータス。基本的に敵を攻撃したり、逆にこちらが攻撃を受けると消費。20を下回るとユニットが「疲労」状態になってペナルティが課せられる。

ペナルティは「攻撃ができなくなる」、「杖が使えない」、「相手の攻撃が絶対命中」、「必殺の一撃を受ける」の4つ。必殺だけは「必殺無効」のスキルを持っていれば防げるが、それで踏み止まれるのかと言われると……。

死霊化

本作のユニットはデジェ以外の全員が死霊。そのため、戦闘で敗北してもユニットは絶対に失われない。さらにターン終了後、デジェによりHPが全回復した状態で復活。また復活時はデジェに融合した状態になる。マップ上に復帰させる場合はその状態を解除すればいい。解除時にターンは消費されない上、憑りついた状態でデジェが強くなるメリットもないので、さっさと解除してしまうのが吉。

なお、デジェが自動的に復活させてくれるユニットは1体のみ。敗北したユニットが複数体いて、その中から復活させたい場合はデジェの持つ「招来の杖」で呼び出せる。この杖で復活させた場合はデジェとは融合せず、マップ上に現れる。例によって、回数制限があるため復活できる人数は有限。ご利用は計画的に。

タイムリープ

デジェ以外が死霊ゆえ、デジェがやられればゲームオーバー……にはならない。「タイムリープ」が発生する。本作はターンごとに自動セーブが行われ、デジェがやられた時にはそのセーブした所から再開できるのだ。ちなみにセーブが発生するのはターンの始め。また、コマンドメニュー画面からも「タイムリープ」は行える。使うことによるペナルティもない。

もし、デジェがやられてタイムリープしない場合は事実上のゲームオーバー。ただ、戦闘中に得られた「ボーナスポイント」、ユニットそれぞれのレベルは維持されたまま、マップの最初から再開となる仕様なので、リスクはほとんどない。

ボーナスポイント

敵を倒すと得られるポイント。これをマップクリア後、出撃準備画面もしくは1ターン時限定のコマンドメニューを選ぶと現れる「経験値配分」にて経験値へと変換し、それぞれのユニットに与えてレベルアップを図る。

基本的に誰に経験値を与えるかは任意だが、マップクリア時だけはそれまで溜まったポイントが自動的に配分される仕組みになっている。(※環境設定で任意形式にすることも可能)

霊デッキとキャパシティ

本作では初期の出撃ユニットが基本、マップごとに強制で固定されている(途中から変更可能になる)。他に出撃させたい控えのユニットは「霊デッキ」へと登録する必要がある。その名の通りにカードゲームの「デッキ」に相当するもの。ユニットがカードに当たる感じだ。

登録できるユニット数は「キャパシティ」の数値によって決定。ユニットにはそれぞれ「コスト」が設定されていて、これが「キャパシティ」を上回らない範囲で選別する必要がある。

「霊デッキ」に登録した控えのユニットを出撃する際は、敗北ユニットの復活にも用いる「招来の杖」を用いる。前述の通り回数制限があるため、敗北ユニットが出てしまっている場合は計画的な判断が重要。

また、初期出撃メンバーは「デジェ」のコスト内に収まるユニットと、キャパシティの数値以上に選別範囲が狭くなる。例えば「3」なら、コスト2のユニットを選ぶと、後はコスト1のユニットしか選別できなくなる感じだ。
なお、「招来の杖」で呼び出すユニットはデジェのコスト無関係に呼び出せる。あくまでも対象はマップの最初から出撃するユニットだけだ。

この他にもユニットそれぞれが持つ「スキル」、コスト上昇を犠牲に基礎ステータスを底上げする「グレード」、背負うや憑りつくなどのコマンドを実行したユニットの能力を対象ユニットが使えるようにする「フュージョン」といった特殊なシステムがある。

緩くて取っ付きやすい、されど歯応えありの絶妙なバランス

ここまでの解説の通りだと、ハードルが高そうなSRPGだと思うかもしれない。

ただ、各種システムはゲームの進行に応じて解禁、ストーリーイベント上で説明されていくので、事前知識なしでも問題なくプレイ可能。何よりマップサイズが小さい、動かすユニットも少ない、そして数値が全体的にデフレ設定だけあって計算が簡単。同時ターン制のSRPG入門編としてこの上ない、取っ付きやすい作りになっているのだ。

何より、全員「死霊」ゆえに復活し放題のユニット、「タイムリープ」によるリトライの容易さと言った、ゲームとしてのハードルを引き下げるシステムの存在が大きい。これのおかげで直感の赴くがままユニットを動かしては、あの手この手を実践していける。SRPGに不慣れな人でも、取りあえず目に見える敵は全部倒せばいいとの思いで遊べてしまうのだ。しかも、例えタイムリープで挽回不能な状態に陥っても、レベルやボーナスポイントは引き継いでマップの最初からやり直せるので、決して1プレイが無駄にならない。前述では紹介しなかったが、クリア後のマップも後から再度プレイできるので、そこでボーナスポイントを稼いでは貯め、ユニットのステータスを可能な限り上げる手も取れるようになっている。何かしらの手を尽くせば、必ず突破口が開いていく作りになっているのだ。

それでいて、SRPGとしての遊び応えも抜群なのが素晴らしい。ハッキリ言って、毎ターンユニットが復活、容易なリトライ共にSRPGのゲームとしての醍醐味を潰しかねないシステムだ。特にターンが経過するたびにユニットが復活するなど、ジャンル特有の戦術・戦略を練る楽しさ、それがピタリとハマッた時の快感を無意味なものにしかねない。そもそも、それはゲームなのだろうか、と物申せざるを得ないものだ。ましてやターンの度にユニットが復活し続けること自体も、考えてみれば不自然極まりない。

だが、本作はユニット全員が「死霊」、いわゆる幽霊で、彼らを操る術師が主人公という設定によって復活し続ける仕組みの不自然さを取っ払っている。さらに力押しを封じる施策が万全。少ない体力、行動時に消耗するEP、それが一定値を下回るとユニットを大幅に弱体化させる「疲労」、復活できる数の制限によってSRPG特有の戦術・戦略を練る楽しさはきちんと保たれているのだ。

SRPG好きから見ると、各種仕様には首を傾げたくなるところはある。そもそも、ゲームになっているのかと。単刀直入に言えばなっている。それもこのシステムを前提にした手応えに満ちた、新しいSRPGに完成されている。

厳密にはレベルアップ時の強化項目の少なさ、デフレな数値もあって、ストラテジー寄りな所もあるのだが、育てるにつれてスキルが追加されたり、職業(クラス)が変わるユニット、「勇者」を討伐する際の特徴を踏まえた戦術の実践など、RPGらしさもちゃんと残っている。何より、どう見ても緩そうなのに確かな手応えがあるバランスには唸ること間違いなし。クリア後のマップが再プレイなことを踏まえたやり込み要素も備わっているので、申し分ないひと時を過ごせるはずだ。

もちろん、SRPGが苦手な人も全体的な緩さもあって遊びやすい。それでいて、いい意味で返り討ちにされる。同時にSRPGの戦術・戦略を練る醍醐味、同時ターン制によって表現された駆け引きの面白さも分かって、沼に落ちていくのだ。

まさに徹頭徹尾間口の広さを通し切った仕上がり。そして、SRPGのゲームとしての根底を覆しかねないシステムも工夫次第でここまで独自の遊びを描けることをも思い知らされる、ゲームデザインの妙味が炸裂した作品にもなっているのだ。数に乏しい同時ターン制のSRPG、ストラテジーだが、紛れもなく本作は入門編に相応しい。その深淵を知るには本当に打ってつけなのだ。

本編以上に長い「おまけ」も見所の同時ターン制SRPG入門作

また本作、実は短編でもある。本編クリアに要する時間は早くて4時間、じっくりプレイしても5~6時間ほどなのだ。これはゲーム全体のハイテンポな作りが影響している。最小限の会話デモ、マップ上で実施される戦闘、迅速なユニットの移動速度と、ストレスなく遊べるようにした工夫が全体的に徹底されているのだ。さらに広いマップもないので、移動に割く時間も発生しにくい。

逆にボリュームを求める人には物足りなさそう……と思いきや。最小ターン数を狙う特殊条件の達成、ゲームクリア後に解禁される特別マップなど、やり込み要素が豊富。さらに全クリアに30時間以上要する驚愕の「おまけ」が用意されている。

本編よりも「おまけ」が長いとはこれ如何にだが、それぐらいのボリュームがあって当然のものになっている。その正体が何であるのかは、上記のスクリーンショットから察していただきたい。恐らく一部の人は分かったはずである。そう、”あれ”である。この記事でも言及している”あれ”だ。これ以上は何も言わない。悪夢の世界への一歩を踏み出そう。

ストーリーはあれどメタフィクションネタ多め、畳みかけるように新要素が紹介されるので深く理解する際には「ヘルプ」側との併読が必須など、気がかりな箇所も幾つかある。
また、「招来の杖」で復活できるユニットは自動式、プレイヤーが任意で選択できない形式が初期設定されているのも首を傾げる箇所だ。「環境」のメニューから任意方式へも変更できるのだが、こっちが初期設定として妥当ではないだろうか?

「自動式」はSRPG経験者向けの色合いを強く感じるので、初期設定にするのは止めて欲しかったように思う。なので、これからプレイされる方は必ず件の設定を任意式に変更して1周目を開始することを強く推奨する。自動式はやり込みとして、興味があればチャレンジいただきたい。

とにもかくにも、総じて独創的な試みと手応えが光るSRPGに完成されている。短編でもあるので、空き時間にちょいとプレイするスタイルにも完全対応。SRPGは長時間費やすのが……と、抵抗のある人にも優しい設計だ。

慣れるまでは多少の困惑は避けられないが、やればやるほどに面白味が増していく仕上がり。この手のターン制を採用した新作SRPGが出ないことにお嘆きのSRPG好きの心も満たしてくれるので、ぜひプレイしてみていただきたい。

[基本情報]
タイトル:『ビジラテリス』
作者:熱帯魚
クリア時間:5~6時間(本編)、25~30時間(おまけ)
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/22858


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