第14回ウディコンで発見!ユニークな戦闘を楽しめるフリゲRPG3選

フリーゲーム,特集

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毎年7月から8月にかけて開催されている、ゲーム制作ツール「WOLF RPGエディター」製フリーゲームのコンテスト「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」。第14回となった今年は昨年を上回る、70作品以上の力作が集まった。

今年のウディコンは「RPGが多い」ことがちょっとした話題となっていた。何を当たり前な……と思いきや、“RPGエディター”を謳いつつも2Dゲーム全般の制作が可能なWOLF RPGエディターでは、制作されるゲームのジャンルは幅広く、ウディコンの傾向も毎年異なっている。

RPGという枠の中でもさまざまなタイプの話題作が生まれる中、本記事では筆者がピックアップした、独自のシステムや調整によりユニークなバトルを楽しめる作品を3本ご紹介する。あくまで広大なウディコンの世界の一側面を筆者の視点で切り取った形となるが、いずれも気軽に手に取れる短編~中編なので、気になる作品があればぜひ触れてみていただければ幸いだ。

昨年の記事:第13回ウディコンで発見!独自システムが光るフリゲRPG3選

カードカプラーアリス

アリス・ソロコワ率いるホワイトハッカー集団“チームアリス”の仮想世界での戦いを描くRPG。ノンフィールドで進行するエリアを攻略しながら物語が展開する。戦闘がカードバトルとなっているのが大きな特徴だ。

戦闘ではあらかじめ20枚のカードで構築されたデッキから毎ターン一定枚数のカードが引かれて手札となり、カードごとに設定されたコストを消費して使用していく。この手のカードバトルRPGとしては比較的オーソドックスな作りで、UIもわかりやすく、使いやすく練られておりプレイしやすい。

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戦闘画面は必定な情報が過不足なくまとまり、各種機能へのアクセスも良好。威力の計算式が複雑なカードも予想値を表示してくれる

チームアリスから攻略に参戦するのは4人で、個別にデッキを構築可能。エリア攻略は二人一組で行い、戦闘中以外の任意のタイミングで交代ができるため道中担当、ボス担当といったデッキの使い分けができる。各メンバーは能力値やパッシブスキルのほか、そのキャラクターだけが使える専用カードで個性が表現されており、最大HPが高く守りを固めることが火力アップにも繋がるため手堅く戦えるアリスや、その友人で状態異常の扱いがポイントとなるフラウなど、それぞれ異なるスタイルでの戦闘を楽しめる。

カードは敵を倒すことでもドロップするが、攻略の拠点にあるショップの品揃えも比較的充実しており、お金が足りる限り好きなカードを自由に購入可能。ランダム入手のカードを中心に随時デッキを作り替えながら進むのではなく、エリア攻略の開始前にあらかじめデッキを完成させておく方式だ。攻略済みエリアの再探索でドロップ限定のカードを集めることもできるので、カード間のシナジーやコンボなどを考えて理想のデッキを作り込んでいけるのが醍醐味となっている。

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デッキ編集は拠点で行える。特定キャラクター専用のカードもあり、これとパッシブスキルなどによりキャラクターごとの個性が表現されている

総じてジャンルの定番を丁寧に押さえた遊びやすい作品に仕上がっているが、加えてゲーム進行に応じて、一部キャラクターについて「覚醒モード」とでも言うような能力強化版を使用可能になったり、ターンごとに消費できるコストの上限が上がったりと、強いカードの入手以外にもプレイヤー側に強化が施され、よりダイナミックに、爽快なプレイが楽しめるようになるのも見どころだ。

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ゲームを進めていくと、一部キャラクターの能力強化版の解禁や消費コストの上限アップなどにより、高コストのカードも活用したダイナミックな戦闘を展開できるようになっていく

シナリオ面では、最初は「新人ハッカーチームの歓迎会として彼女達の仮想世界に合意の上でハッキングを仕掛ける」という軽めのノリで始まりつつも、ある事態を転機にハッカーとしての矜持がぶつかり合うような展開も待ち受けている。個性的なハッカー達の軽妙な掛け合いと、サイバーパンクSFとして熱い物語の両立が見どころだ。こうしたシナリオを盛り上げるBGMも、ボスごとにテーマ曲と言えるような個別のBGMが用意されるなど、既存の素材曲ながらこだわりを感じる選曲で独自の世界観を作り上げている。

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物語は新人ハッカーチームとの交流試合めいた軽いノリで始まりつつも、中盤以降はサイバーパンクSFとして熱い展開も

公称プレイ時間は2~4時間とボリュームとしては中編程度。チュートリアルが丁寧で難易度も4種類用意され、この手のカードバトルRPGが未経験でも比較的とっつきやすいだろう。それでいて進めれば進めるほど戦闘もシナリオも熱中できる、ノンフィールドならではの密度の濃い作品に仕上がっているので興味があればぜひプレイしてみてほしい。

[基本情報]
タイトル:カードカプラーアリス(CARD COUPLER ALICE)
制作者:とうがらし
公称プレイ時間:2~4時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_10496.html

悪魔の本を捲りて

結界によって外界との繋がりを完全に断った世界を舞台に、その世界の平和を維持する組織「結界守護」のメンバー3人の戦いを描くRPG。ゲームはノベルパートで物語を読みつつ、展開に応じてイベント戦闘が発生といった形で進行する。

本作の大きな特徴は、自由度が高く、かつ何度でもやり直せる戦力のカスタマイズだ。ゲームを進めることで入手できる「素材値」というポイントを振り分けて、アクティブスキル・パッシブスキルの習得や、ステータスの増加、戦闘に持ち込むアイテムの設定を行える。

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アクティブスキル・パッシブスキルの習得、ステータスの増加、戦闘に持ち込むアイテムの設定と多様なカスタマイズを素材値という1種類のリソースの振り分けで行うのが特徴

こうしたカスタマイズはノーコストで素材値へと戻して、また別の項目へと再振り分けが可能。読み進めるシナリオを選択する画面では戦闘が発生する場合、敵の各種耐性や主な行動といった攻略情報が表示されるので、これをもとに戦略を立て、戦力をカスタマイズして挑むのが本作の基本的な流れだ。

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ゲームは本のような画面からシナリオを選んで進行。戦闘のあるシナリオでは攻略情報が表示される

一方戦闘システムの面では、ターン制だが1ターンに行動するのは3人のうち一人だけ、HPはパーティ全体で共有、敵も1体のみと、比較的シンプルにまとめ上げられている。それでいて、行動したキャラクターは「Risk」の値が上がって他のキャラクターは下がり、Riskが高いと被ダメージが増えるといったこのシステムならではの独自要素もあり、一味違う戦術性を生み出しているのが面白い。

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HPをパーティで共有、1ターンに行動するのは一人というシステムにより、戦闘中に管理する要素をシンプルにしつつ独自の戦術性も生み出している

攻略情報が表示されることもあって、それに沿ってしっかり対策を組めば比較的サクサク進められる印象だが、終盤以降や一旦のゲームクリア後の追加ボスなどは、それまでのプレイで培ってきた戦略・戦術をフル活用するようなやり応えのある敵も待ち受けている。また、イベント戦闘のみのシンプルな進行である裏返しとしてザコ戦での素材値稼ぎといった概念はなく、限られたリソースをさまざまな項目へどう振り分けるか?というのが悩ましくも楽しい。

シナリオ面では、怪物を生み出し結界をも歪める力を持つ「悪魔の本」を巡って各章でさまざまな事件が展開しつつ、結界と世界の真相にも迫っていく。物語とイベント戦闘にフォーカスした作品となっているのでRPGではとくにこのあたりを楽しみたい人、また限られたリソースの範囲で戦力をカスタマイズするという仕組みに燃える人にはとくにお勧めしたい。

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結界に強い思い入れを持つ少女ラトス、苛酷な地で生き抜いてきたルーブン、結界を研究していた学者の経歴を持つヤーレーという3人の出自と、各地で起きる事件が絡み合って物語が展開していく

[基本情報]
タイトル:悪魔の本を捲りて
制作者:ケイ素
公称プレイ時間:約4時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/28852

突撃そのへんの遺跡

「遺跡見つかった」「行っちゃう?」「行こ行こ」(※オープニング原文ママ)という軽いノリで始まるRPG。4体の敵(実は3体でもいい)を倒すと遺跡の最奥への道が開かれ最後の戦いになるという、短編ボスラッシュ的な構成だ。

戦闘はどれも敵の行動やステータス、特殊な行動制限などにより特徴付けられており、こうしたギミックへの対策を考えていくのが醍醐味。また、戦闘システムは3人パーティのターン制コマンド選択型だが、スキルは使用にリソースを必要とせずクールタイム等の制限すらなく、スキルの性能やメンバー間のシナジーなどによって自然と使い分けが促進されるなど、バトルの調整自体も練られたものになっている。

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まず戦うことになる4体の敵との戦闘では、どんなギミックか最初に敵自身がヒントをくれる。それに対する3人のリアクションもちょっと面白い

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スキルは使用に必要なリソースもクールタイムも存在しない。スキルの性能自体や味方とのシナジーなどにより自然と使い分けが促進される

短めの台詞によるテンポのよい掛け合いと、ちょっと気の抜けるようなゆるいノリも魅力。戦闘中も会話があるが、敵に勝てないでいると攻略のヒントっぽい会話が見られるなど実は丁寧な作りも伺える。最大でも全5戦、公称プレイ時間30分~1時間ほどと気軽に遊べつつ、RPGのギミック系バトルの面白さをしっかり楽しめる小粒ながら粋な作品だ。

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シナリオはとにかく軽妙でテンポがいい。このテンポ感を誌面でお伝えするのは難しいが、オープニングで遺跡が見つかった話を家でしていて「じゃ。行こっか」から決定キー1回でこのシーンという所から察していただきたい

[基本情報]
タイトル:突撃そのへんの遺跡
制作者:rute.
公称プレイ時間:30分~1時間ほど
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/28864

  • 中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。運営型ゲームはメギド72をPvPメインで、あとは原神など。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。