よるしかあそべない、ふしぎなあーるぴーじー『ヨルダケ』 こんやも、さまようあにをおいかけます。

人、動物の睡眠規則が乱れることに起因して生じる睡眠障害の一つに、「睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)」がある。別名「夢遊病(むゆうびょう)」と呼ばれるこの病気は、睡眠中に発作的に起こる異常行動で、無意識の状態で起き、歩いたり、何かを行った末に再び眠りに着くが、その間の出来事の記憶がない状態ことを言う。その時間は数十秒から30分以上に及ぶことがあり、特に子供によく見られる。

しかし、成人して以降もこの症状を発するケースも少なくなく、昨今ではドラマ『踊る大捜査線』の新城賢太郎役などで知られる俳優の筧利夫氏が関西テレビの某番組にて告白したことがニュースとなった。

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今回紹介する『ヨルダケ』の作者でイラストレーターのじゃむさんっぽいど氏も、夢遊病ではないかと疑惑をかけられた過去があるという。更に毎晩夢を見ることも多かったとのことで、それらの経験を元に本作を個人的に作るに至ったようだ。

2018年9月25日より「ふりーむ!」にて、PC(Windows)用フリーゲームとして配信されている。

あそべるのは、よるだけです。ことばもわかりません。

内容は探索に重点を置いたロールプレイングゲーム。

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ある所に「ヨル」と「オセ」の双子の兄弟がいた。
ここ最近、兄の「ヨル」は毎晩、外へと虚ろな目で出かけて行ってしまうようになった。
そんな兄を心配した弟の「オセ」は、その後を追いかける。

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兄を追いかけた先に待っていたのは、異様な景色が広がる地下世界だった。辿り着いて間もなく、兄が奥へと進んでいく姿を目にしたオセは、引き続きその後を追う……というのが、物語のあらましだ。

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本編は横にスクロールするマップを進み、何かに導かれるように地下世界の奥へ向かう兄を追いかける形で進む。ただし、行く先々には様々な障害が待ち受けており、それらを潜り抜けたり、時にはオセに襲い掛かる敵と戦ったりしていくことになる。

更に本作はタイトルの通り、”夜だけ”しかプレイできない。ゲーム側に制限がかけられていて、午後21時から午前3時以外にゲームを進めることができないのだ。一応、ゲーム本体の起動はできるが、最初から遊ぶ、途中から遊ぶのどれを選択しても本編をプレイすることはできない。特殊なメッセージが表示される、主人公が就寝中の姿が映し出されるだけとなる。

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まさに名は体を表すがごとく。あまりにも革新的な仕掛けとなっている。

更に続けて、本作では台詞、インターフェース周りのテキストが日本語、外国語ですらない、独自言語で記述されている。なので登場人物の会話、インターフェースの表示共に何を言っているのか、何が書いているのかを理解することができない。

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一応、各文字は日本語の五十音順に基づいて関連付けられているほか、ヒントも散りばめられているので、それを見出せば分かるようになっている。だが、根気が求められるのは言うまでもなく。紙とペン無しでは、ほとんど不可能に等しいほどだ。

とは言え、言語を理解していないと分からないのはストーリーだけ。ゲームを進めるだけなら、理解する必要は無い。ただ、どうしてこんな展開になったのかが分からず進むので、モヤモヤとした気持ちにさせられる。特に行く先で出会う敵が襲い掛かってきたり、寄り添ってくるのか分からないのは、不気味さすらある。

この二つの特色だけでも、本作が特異なRPGであることは容易に察せるだろう。夜しか遊べない上に、ストーリーも言語の法則を解読しないと分からない。プレイすれば誰もが「なにこれ…」と、困惑すること間違いなしの作りになっているのだ。

ふしぎなちかのせかいです。でも、こわくはないんだよ。

夜だけしかプレイできないだけあって、世界観もそれ相応に不気味。

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イメージ的には深海をモチーフにしていて、背景には海洋生物が行き来しているのだが、いずれも概念的な存在のように描かれているのに加え、図書館、街、森など、海の中に不釣り合いなロケーションが広がる。

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オセの行く手に現れる、住民達の姿も異様だ。序盤に出会う白い大蛇は序の口。更にその先に進むと、継ぎ接ぎだらけの店の主、二人の人間を合体させたかのような”何か”が登場し、世界の歪さが露わになっていく。

詳細はプレイしてからのお楽しみということで伏せるが、料理店の光景とそこで出会う住民は非常にショッキングだ。人によっては、背筋が凍る恐怖を覚えるだろう。

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ドット絵で描写されたグラフィックも世界観の不気味さを絶妙に表現しており、「いけない世界に迷い込んでしまった」という気持ちを高める。住民と出会って間もなく戦闘が発生することを始め、唐突な展開と演出が多々用意されていることも、一刻も早く兄を見つけ、この世界から抜け出したいとの焦燥感を煽り立てる。

このように心地よさなど何一つない夢をモチーフとした雰囲気作りが徹底されている。特に居心地悪さは圧巻で、実際に現実生活で見る夢に近い生々しさが滲み出ている。
ゲームのみならず、アニメ、漫画などで登場人物達が見る夢というのは、基本的に言葉通りに楽し気な世界として描写されがちである。しかしながら、実際に睡眠時に見るのはいいものばかりではない。時には現実に起きて欲しくない光景が広がる、恐ろしい夢を見せつけられたりもする。筆者も風邪を引いて熱を出すと、決まって自らが手打ちうどんにされる、地獄のような夢を今も昔も見せられる。

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そう言った夢の現実、或いは暗黒面を体感させるかのような世界観だけあって、インパクトは絶大。それも、夜にしか体験できないという制限付き。これがどれほど強烈な印象を残すものなのかは語るまでも無いだろう。

だが、先述の独自言語の法則を見出すと、実はそんな世界ではないという、意外な真実が明らかに。特にイベントが発生する住民達の会話は驚きの連続で、第一印象が根底から覆されるのだ。

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どのような内容なのかはぜひ、言語の法則を見出して自ら解き明かして頂きたい。そして、印象の逆転に身を委ねて欲しい。人によっては、もっとこの世界に入り浸りたい気持ちにさせられるかもしれない。

きょうも21じをまちます。おやすみなさい。

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紹介が遅れたが、本作は行く先々で戦闘も発生。システム周りはコマンド選択型だが、基本的に一対一で相手に語りかけ、ハートゲージを満タンにすれば勝利という、一風変わったものになっている。更にレベルの概念はないほか、こちらの体力はハートの数で示され、受けたダメージは戦闘終了後に回復、別途回復手段は限定されているなどの特徴的な仕様がある。極めつけに戦闘で敗北すると……これ以上は実際に体験して確かめて頂きたい。

ボリュームはエンディングまでなら大体1時間ほどで辿り着ける。難易度もそれ相応に控え目にされているが、体力管理と探索によるアイテムの獲得次第で上下。また、エンディングも二種類用意されていて、全てを見る場合はより入念な探索が求められるので、やり応えも増す。

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他にマップの構造、謎解きにちなんだ仕掛けもシンプルながら個性に富んでいて、特に後者は終盤にて、独自言語を採用したなりの推理力が問われる展開を楽しめること請け合いだ。

居心地の悪い世界観を表現するため、意図的に快適性を犠牲にしているところもあり、主にメッセージ送りの遅さ、先述では伏せた戦闘敗北後の仕様にはストレスを感じるかもしれないが、それも含めて唯一無二の体験を提供する作品に完成されている

この新鮮なプレイ感は本作でしか味わえないものがあるので、興味のある方はぜひ、プレイしてみて欲しい。言葉通りの「夜だけにしか遊べないRPG」にして、類まれなセンスに満ち溢れた逸品だ。ただし繰り返しになるが、本作がプレイできるのは午後21時から午前3時まで。プレイする際は、体調が万全である時に留めるようにしましょう。

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それでは、良き夜のひとときを。

[基本情報]
タイトル:『ヨルダケ』
制作者: じゃむさんっぽいど
クリア時間: 1~2時間
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:出血、ホラー描写あり(※推奨年齢:12歳以上)

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18573

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