進むのは横だが、迎え撃つのは縦(上下)。新感覚・戦略的ゆっくりシューティングゲーム『NebulasweeP』

シューティング,フリーゲーム

『NebulasweeP』(ネビュラスィープ)なるこのタイトルは、ゆっくりとしていながら戦略的な判断が適時、試されてくる作りをチャームポイントとする無料のWindows PC向けシューティングゲームだ。

このタイトル画面のビジュアルからは想像がつきにくいかもしれないが、実は当もぐらゲームスで過去に紹介したシューティングゲーム『わくわくダークライド』(紹介記事)の作者・どしが氏による最新作だ。

『わくわくダークライド』と言えば、かわいいキャラクターデザインと世界観からはいい意味でかけ離れた戦術的かつ、個性の強いゲームシステムを持ったシューティングゲームだった。そのことを踏まえれば、この『NebulasweeP』もそうなのかと言えば、答えはイエスだ。

その内容を端的に表すならば、“戦略的ゆっくりシューティングゲーム”である。なお、本作の世界観およびストーリー設定は、ゆっくりしているどころではないものとなっている。

横スクロールだが、撃てるのは縦!意表を突く仕組みの個性派シューティングゲーム

詳細なゲームの内容について紹介すると、ジャンルはステージクリア型のシューティングゲームだ。プレイヤーは長距離ワープアウトの障害により、銀河の深部へと迷い込んでしまった「オケアノス共和国」艦隊の宇宙戦艦を操作。銀河の深部で手に入れた窮地打開のカギ「エンシェント・ジェネレーター」の力を借りて敵対勢力などの襲撃を乗り越え、所属艦隊への合流を目指す。

本作には「STAGE SELECT」「ALL STAGE TOUR」の2種類のモードがあり、どちらも本編に該当。前者は1セクター(ステージ)単位で順番に攻略していくモード、後者は本編に用意された全7セクターを通しで攻略していくモードとなっている。

どのモードで進めるかはプレイヤーの自由。少しずつ進めていきたいなら「STAGE SELECT」、一気にやり通したいなら「ALL STAGE TOUR」という具合に選べばOKだ。ちなみに進捗率は2つのモードで共有される仕組み。例として、「ALL STAGE TOUR」で全7セクターをクリアしていれば、「STAGE SELECT」でも全7セクターが選択可能だ(逆に未クリアだと、最初のセクター1しか選べない)。

各ステージことセクターのクリア条件は、最後に現れるボスを倒すというシューティングゲーム伝統のものである。ただ、本作が特徴的なのは、自機が進むのは横でありながら、攻撃はそちら側に一切繰り出せないこと。

繰り出せるのは上か下のどちらかなのである。さらに自機は、画面中央に半透明で表示されたライン上しか移動できない。それ以外のところへは一切進入不能という、行動制限が敷かれているのである。そして、ライン外の上下の領域には敵が出現し、こちらへの攻撃を仕掛けてくる(逆にラインの中には侵入してくることはあっても、基本的に敵が現れたりはしない)。

つまり本作は、横方向に進みながら、上下に現れる敵を迎え撃ちつつステージを進んでいくのだ。かなり無理矢理例えるならば、『スペースインベーダー』などに象徴される固定画面方式のシューティングゲームが、そのまま左から右へと自動で流れ進んでいくような感じの作りとなっている。

また、本作は上下に敵が現れる関係から、攻撃も上か下かに切り替えるシステムを実装。この特に下方向へと攻撃を繰り出す仕組みは、1991年にPC-9801向けに作られた戦艦シューティングゲーム『Super Depus』をやや想像させるものになっている。だいぶ古い例えを出してしまったが、それでもシューティングゲームとして十分に個性の強い作りをしているのかは想像にかたくないだろう。

細かいシステム面でも、自機は3隻+αが用意されていて、それぞれが基本の「主砲」(ショット)に加え、「対空砲」「魚雷」を装備。「対空砲」と「魚雷」は専用ゲージ(自動回復式)を消費する装備で、前者はオレンジ色の弾をかき消す、後者は主砲が通用しない敵を倒したり、ボスなどに大きなダメージを与える効果がある。なお、アイテムによるパワーアップはない。

ダメージ制(シールド耐久値)が採用されているのもそのひとつ。そのため、被弾しても即撃沈とはならない。ただ、被弾と同時に「シールドダウン」が発生し、一定時間、戦艦が無防備な状態になる。この時に被弾してしまうと、いくらシールド耐久値が沢山残っていたとしても、問答無用で撃沈(ミス)となる。

このシステムは『わくわくダークライド』にもあったもので、それが本作にも引き継がれている感じだ。以上のように細かい面でも特徴的な工夫を凝らしていて、個性派シューティングゲームと豪語できるものに仕上げられている。

スローテンポゆえの遊びやすさと、間口の広い難易度がほとばしる!

その魅力も分かりやすく、固定画面と横スクロールが混ざり合った作りだ。

唯一の行動範囲となっている中央部を動き回り、上と下に現れる敵を迎え撃ちつつ、ステージを進んでいく。その見た目も遊びも個性がほとばしっており、今までありそうでなかったような新鮮な手触りを演出している。

行動範囲が制限されながら、意外に窮屈さを感じさせないのも見逃せない。確かに行動範囲は中央部だけとは言うものの、固定画面式のシューティングゲームのように左右の横にしか動けないようなことはない。ちゃんと上下左右斜めの方向に動ける仕組みになっている。とは言え、上下はその設定上の都合もあり、一般的な横スクロールシューティングゲームに比べると狭いが。

ただ、実際に遊んでみれば、見た目とは裏腹に窮屈さを感じさせない手触りと感覚を提供するものになっていて、意外に感じるだろう。それどころか、自機を見失いにくいというメリットの印象が勝るかもしれない。事実、行動範囲が制限されているのと、そこが半透明で可視化されていることも相まって、自機が現在、どこに位置しているかと見失うことが起こりにくい。

これに加えて、ゲーム全体がスローテンポなこともあって、ちゃんと動きを追っていけるのである。実はスローテンポというのは、本作の固定画面と横スクロールが混ざり合った作りに匹敵する大きな魅力のひとつ。

自機の移動に加え、スクロール、敵の動きに攻撃も速度が“ゆっくり”としていて、全体の状況を把握しやすくなっているのだ。しかも、“ゆっくり”とは言うものの、過度に遅すぎたり、手触りが鈍すぎたりはしない絶妙な塩梅。時には敵の攻撃が来ることを踏まえた事前行動が必要とされる場面も入れるなりして、変化をつける工夫もなされている。

状況への対処のしやすさと、それを踏まえた戦略的な行動も必要とされるバランスのスローテンポとなっているのだ。これがまさに調整の妙味とも言える仕上がり。遊びやすさと取っつきやすさ、それに加えて手ごたえも損ねないというまとまりを見せているのである。

▲一見、激しそうな場面だが、動きはそんなに速くないため、落ち着いて回避できる。

特にゆっくりであるゆえ、さまざまな状況に落ち着いて対処しやすくなっているのは、従来のシューティングゲームのテンポ感に苦手意識のある人には嬉しいところと言える。それでいて、優しすぎないところもあり、シューティングゲームに慣れたプレイヤーも確かな手応えを得られるように作られているのは特筆に値する。

スローテンポと言うと、モタモタするとか、手触りが鈍いなどのマイナスイメージが浮かぶ側面もあるが、本作はいずれのことからもほど遠い。実際に遊んでみないと分かりにくいのがもどかしくもあるが、とりあえずは騙されたと思って触れてみていただきたい。スローテンポであることが強みとして機能している仕上がりに唸らされるはずだ。

細かい部分でも、「STAGE SELECT」という通しプレイ以外の選択肢が用意され、クリアしやすくなっているのも良心的。進捗もちゃんと記録されるので、1日1ステージみたいなペースでもプレイ可能だ。

そんなステージことセクターも出現する敵とその攻撃、途中で現れる仕掛けなどで万全な変化をつけている。一部、古くからシューティングゲームを遊んでいる人なら思わずツッコんでしまうこと確実なネタが仕込まれているのにも注目である。

不穏な空気漂う世界観とストーリーも侮りがたい傑作シューティング

遊びやすくも確かな手ごたえが得られると記したように、全体的な難易度のバランスも非常によい。また、「ALL STAGE TOUR」に限り、難易度選択機能も用意されており、そちらでは打ち返し弾が必ず発生する高難易度「NOCTURNS」を楽しむこともできる。(※「STAGE SELECT」は「NOCTURNS」が選べず、標準難易度の「NORMAL」固定となる)

さらなるやり込み要素として、3機それぞれでのクリアと「ALL STAGE TOUR」だけの総合スコアランキングも用意。クリア後にもちょっとした隠し要素が用意されているなど、その盛りだくさんなボリュームにはいろんな意味で驚かされるはずだ。

グラフィックもほぼすべてがオリジナル。特に各ステージのラストで対峙するボスは、このゲームデザインならではのアイディアも凝らされた見た目になっているので注目だ。ほかに本作はストーリーも世界観を始めとする設定が細かく作られており、その情報がまとめられた「NOTE」なる読み物コンテンツも用意されている。

▲「NOTE」はステージを1つクリアするたびに新たな情報が追加されていく。

これを活かした演出もステージ開始前に用意。中でも終盤からエンディングにかけては、ちょっぴり意表を突く展開が待っている。そして、すべてを終えると「NOTE」に新たな情報が追加されるのだが……これはぜひ、実際に遊んで確かめていただきたい。きっと複数の意味で「うーん……」となってしまうかもしれない。

総じてゲームシステムから難易度、果てはストーリーに至る部分まで高い完成度を誇る本作。ただ、『わくわくダークライド』にもあった「シールドダウン」に関しては、筆者個人としては蛇足に思えた。難易度が遊びやすく、かつ適切な手ごたえを得られるバランスに収まっているからこそ、この要素は余分な辛味になってしまっている感じが否めなかったのだ。

システム面で十分に個性を出せているからこそ、単純に普通のダメージ制にするのがベストだったのではないか。遊んだ人によっては受け取る印象が異なるかもしれないが、ちょっとこのシステムに限っては必然性に疑問符が浮かんだ次第である。

他にも3隻の自機それぞれの違いのインパクトが弱いなどの気になる部分もあるが、単純に遊ぶにおいては些細なレベルである。

いずれにせよ、この個性の強いゲームシステムとスローテンポながらも遊び甲斐のある難易度に、なんらかのときめく思いを抱いたのなら、ぜひ遊んでみていただきたいゲーム。作り込みの細かさもあって良作以上とも評せる出来である。

ゆっくりとした速度で進みながらも、戦略的な判断と行動が試される戦いに挑め!

[基本情報]
タイトル:『NebulasweeP』(ネビュラスィープ)
作者:どしが
クリア時間:30~40分
対応プラットフォーム:Windows
価格(価格):無料

◇ダウンロードはこちら
・フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/shooting/game_13187.html

・ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/33380

  • シェループ(@shelloop

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