フリーホラーゲーム『204に眠る』 自らの存在をさぐりつつ、無人の世界から脱出する

フリーゲーム,ホラーゲーム

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閉じ込められた空間から脱出する「脱出系」のゲームは、いつでも根強い人気があるものとなっている。今回は、そんな脱出系のゲームとして、2017年初頭に発表された『204に眠る』を紹介する。フリーゲームでありながら声優付きの、豪華な短編だ。

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主人公の「メグミ」は気がつくと、自分の部屋の床に横たわっていた。「もうこんな時間」とリビングに降りると、父も母も、飼い猫のシーもいない。玄関も内側から開かない。家を探索すると、変なところにアイテムや隠し階段があり、尋常な様子ではない。

少女メグミの、脱出劇が始まる。

と、ここまではよくある脱出ゲームだけど、このフリーゲームはそれだけにとどまらない。一言で言うと、自分の妹を名乗る明らかな人外の存在から逃げつつ、商店街、学校、そして病院の仕掛けを解いていくゲーム、になる。

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この妹、狂暴につき注意!
 
この子の名前は「ユウ」ちゃんという。主人公の妹を名乗るだけあって、姿も声もそっくりな女の子だ。

主人公の手に触れるとその手に呪いがかかったような文様を浮かび上がらせ、しかも見つけると執拗に追いかけてくる特性を持つ。やっかいなことに足も速い。

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彼女の最初の攻撃をかわせた、そんなあなたはニュータイプです。

「見つけた~」
「そこにいたか~」

そんな、可愛らしいボイスで死をお届けにやってくる女の子。ちょっとしたトラウマものだ。彼女からはただ逃げるしかなく、隠れてやりすごす工夫さえも必要になる。

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幸いユウちゃんは頭(AI)がそんなに「高性能」なわけではないので、遮蔽物を利用して直線に逃げたり、真後ろからちょこちょこ後をつけて出口に近づいたらダッシュする、といったやり方が可能だ。

というか、こういった手を使わないと、彼女を振り切るのはむずかしい。特に店のほとんどが閉まっている商店街では、カギで開けられる店を求めて、ヘタしたら数分間彼女と追いかけっこをするはめになる。

と、ここまで書いたが、この物語の目標は決して彼女から逃げることではない。閉鎖空間から脱出することだ。

このゲームの醍醐味は、謎を解いていくと過去に主人公に何があったのかがわかるところだ。それは床に落ちている「日記」の断片だったり、「しおり」をめぐる思い出だったりする。

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どうやら、メグミには過去に経験した「二つ」の重大な事件があって、そのため閉鎖空間にいて「妹」に追われているのだ。

「一つ」の事件を解いていくゲームはあるけれど、「二つ」となると、それらをまとめる作者の技量も必要になってくる。その点『204に眠る』は、シンプルでわかりやすい演出とコンパクトなシナリオにより、ゲームとして上手く短編に落とし込むことに成功している。

演出の面でもう一つ付け加えるなら、BGMの使い方が印象的だ。通路を歩いている時はおどろおどろしいBGMが流れているのに、部屋に入ると一転して時計とかの効果音のみの空間になる。単純なようだけど、こういった演出を物語の世界観にあうように設定するのは、なかなか難しいと感じる。

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で、最大の山場となるのが学校だ。仕掛けが多く、建物は複雑で、妹の追撃が頻出する。筆者はここでもっとも手こずった。

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なお、このゲームには時間制限がある。正確には「歩数制限」で、15,000歩以上を歩くとめでたくタイムオーバーだ。

妹の追撃から逃げ回るときも、もちろん歩数はカウントされる。ただクリアを目指すのではなく「効率よくクリアする」プレイングが必要だ。そのため、複数のファイルに分けての小まめなセーブを推奨する。

いちおう救済策として、妹から逃げるイベント発生直前に、オートセーブが施される。場所は20番目のファイルだ。

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これで、ニュータイプではない画面の前のあなたも安心なわけだ。

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妹を避け、商店街、学校と抜けると、いよいよ物語は最終局面だ。まるで歩数をかけさせようとしているような長い森を抜けた先にある、意味深な病院へとたどり着く。もちろん安定の無人状態だ。

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パスワードが散らばっている本の数だったり、人形に包帯を巻いてドアを開けたり、首のとれた地蔵をもとに戻したりとしていると、さすがにこの空間が実在する世界ではなく、一種の心像世界だということがわかってくる。明らかに、幼い子どもの目線で構成された閉鎖空間に、主人公は閉じ込められたわけだ。

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一体誰がこの世界を作ったのか? 少女はなぜ閉じ込められたのか? 妹とは何か? 「204」の意味とは?

秘められた世界の謎と過去の真相は、あなたの手で解決して欲しい。

『204に眠る』。少し暗い雰囲気で、最後には明るい演出もある。「ホラーは好きだけどバッドエンドは苦手」という人もプレイできるし、心臓が弱い人も安心だ。

毎晩の寝る前に「家」「商店街」「学校」「病院」とクリアしていってもいいし、雨の日の休日に一気にやってもいい、そんな良作ホラーアドベンチャーだ。

【基本情報】
タイトル 『204に眠る』
制作者 sIVA氏
キャラクターデザイン・CV えをん
製作ツール WOLF RPG エディター
クリア時間 50分~2時間半
対応OS windows
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/14070
 
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  • もぐらゲームス編集部