愛と狂気の世界へようこそ!フリゲRPG『AN EARTH』

RPG,インディーゲーム

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平和な街に忍び寄る影! 立ち上がれ少女たち!

とある地球に存在する平和な街「ビギンズ」、物語はここから始まる。

無口な主人公ドープェルと明朗すぎる少女プリス、二人は友人であるジョンが、ここ最近ずっと家に閉じこもっていることを疑問に感じていた。プリスは言った。

「きっとひとりでなにか楽しいことをしているのよ!」
「それか、死んでるか!」
「あー、わくわくしてきた!! 早く行こう!」

……友人、だと思う。たぶん。

ジョンの家までやって来た二人。ずっと放置されているらしいポストからは手紙が溢れている。人の生活している気配はしてこない。
凶暴そうな番犬をやり過ごし、ドアの前まで来るが、静かすぎる。やはり何かがおかしい。

二人が家の中へ入ると、はたしてそこにジョンはいた。しかし何やら様子が変だ。二人の姿を見るなり襲い掛かってきたのだ。致し方なく反撃を試みるが、攻撃を加えるとジョンの身体がどんどん崩れていくではないか……なんとジョンはロボットだったのだ!
 
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もうこいつはジョンじゃない! やるしかないんだ…!
 
戦いの末、ジョンを破壊した二人。

「ジョンがロボットだったなんて!!」

無残な姿に成り果てたかつての友人を前に、さすがに驚きを隠せないプリス。

平和な街を突如襲った奇怪な事件。森へ落下するUFOを目撃した住民もいる。
人知れず蠢く大きな陰謀の気配。この星で何かが起きているのは間違いない。
さあ、安穏とした日常に別れを告げる時が来た。
大切な場所を守るため。愛する者を守るため。

立ち上がれ、少女たち!
 
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地球の危機だ! 戦え! ポストで警察をぶん殴れ!

『AN EARTH』の世界では、普通は拾えないような物も拾えてしまう。例えばそれはポストであったり、消火栓であったり、犬のエサ皿であったり。「そんな物拾わないでくれ!」と思わずプレイヤーが突っ込んでしまう物まで様々だ。

拾った物は武器として装備したり、そのまま敵に投げて攻撃することが可能だ。なりふりなど構っていられない。地面からポストを引き抜いて振り回せ。そこらへんに落ちてるスコップを投げつけろ。放置してあるゴミ袋で思いっきりぶん殴れ。それがこのゲームでの戦い方であり、礼儀なのだ!
 
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役に立たない警察を殴り倒して経験値を稼ごう!
 
また、拾える物は家へ入るなどしてマップを切り替えると復活するので、その気になればいくらでも入手することが出来る。そして拾った物は意外にも高く売れる。……ここまで言ってピンと来た方もいるだろう。そう、このゲームは開始直後から金などいくらでも稼げるのだ!

ちょっと小腹が空いたのでハンバーガー屋に立ち寄ったが手持ちがない、そんな時どうするか、簡単なことだ、そこらへんの柵をもぎ取って売ればいい。4つもあればハンバーガーが買えるだろう。消火栓なら2個、ポストなら1個で出来たて熱々のハンバーガーが食べられる。素晴らしい。これが本当の“ジャンク”フードか。
 
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開始10分ほどで「街中から拾い集めた物で生計を立ててる人」みたいになってしまっている。

襲い来る狂人たち! 何かに似てても気にするな!

『AN EARTH』を象徴する個性豊かな敵たち。本作はシンボルエンカウント方式を取っているのだが、ほぼ全てのシンボルがそれぞれ違った敵という凝りようだ。さらに残りHPによって姿が変化する敵もいて、そんなことしてるから気付けばそのバリエーションは130種類以上にもなってしまっている。あの世界的に有名なポケットな怪物RPGの初期の頃に迫る勢いだ。すごい!

本作オリジナルはもちろん、中にはどこかで見たことのあるような奴らもいるが、しかしそれは他人の空似だ。気にするな。
 
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そんな艶めかしい足ついてたっけ?
 
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例えで言ったのに本当に出てくるやつがあるか!
 
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頼むから他の星でやって下さい!
 
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ここまでの流れからすると逆に安心する!

暴言!不意打ち!放送禁止用語!個性的な技で敵を黙らせろ!

本作では各キャラごとに「スペシャル」が用意されている。スペシャルとはアレだ。特別な技だ。いわゆる魔法的だったり必殺技的だったり、殆どの場合なんとかポイントを消費して繰り出すやつだ。

どれもこれも他のゲームではちょっと見られないクセのある技ばかり。ここでは本作に登場する4人のメインキャラの個性が爆発した、とっておきの技の数々をご覧に入れよう。
 
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これが地球を守る為にほぼ成り行きで集まった4人の勇者たちだ!
 
ドープェルのスペシャルは「メモリー」。「ジョンアタック」で亡きジョンへ思いを馳せながら敵全体を攻撃したり、「ミラー」で受けたダメージを反射するし、「応援」でHPを回復しつつ攻撃力を上げることもできる。主人公らしく攻撃・防御・補助とバランスが取れている。
 
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謎の攻撃「かりう」を繰り出すドープェル。敵は使ってこないので安心して欲しい。知らない人は調べよう
 
プリスのスペシャルは「トーク」。「燃える話」や「泣ける話」など話術を駆使した攻撃には、それぞれ炎・水といったように話のテーマに沿った属性が付与される。「怖い話」で敵を驚かせ行動不能にすることも可能だ。最終的には「放送禁止用語」だって飛び出す。まさに口撃である。
 
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敵をびっくりさせて行動不能にするプリスの「怖い話」。意外にも話術の才能はあるのかもしれない。
 
デッカーのスペシャルは「外道奥義」。警察の「国家権力」を惜しげもなく振りかざし、「不意打ち」によってターンを消費せず一方的に敵を攻撃し続け、状況が危ういと見れば仲間を「おとり」にしてやり過ごす。まさに外道オブ外道。
 
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子供相手に全力で不意打ちを仕掛ける警察官デッカー。清々しいくらいの外道である。
 
エイトのスペシャルはプリスと同様の「トーク」だが、アイドルである彼女は自慢の歌声を武器に「ハッピーチョコミント」や「スーパーグリンピース」などの持ち歌で味方を回復する、まさにパーティの癒し系ポジションとなっている。しかしアイドルとて人間。重圧や過密スケジュールにより積もりに積もったストレスは、相手に「暴言」を浴びせる側面も併せ持っている。たぶん彼女を見る限り元々の性格なんだろうけど。
 
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世の中には暴言を浴びせられることで体力を回復してくるタイプの敵もいるから気をつけろ!

そろそろお腹いっぱい? 黙れ! こいつを喰らえ!

『AN EARTH』のポテンシャルはまだまだこんなものではない。
ここではテーマから外れてしまうので紹介したくてもできなかった内容を、せっかくだから無理矢理ねじ込んでみた!
もう何も怖くない! ここまで来たからには最後まで全力で突っ切らせて貰う!
筆者のターン!!
 
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EXコンテンツである「きょうわくなエナミー」と接触! ひたすらレベルを上げて物理で殴ろう。
 
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タイトル画面を抜けると、そこはエンディングだった。ここから先は君達の目で確かめてくれ!
 
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当然ケモノも完備! だがこいつらは見た目ほど正気じゃないぞ!
 
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こんな げーむおーばーがめんに まじになっちゃって どうするの
 
そういえば(これは主にコンシューマの話になるのだが)貴方はゲームの取扱説明書を読む派だろうか、それとも読まない派だろうか。

筆者は取説をあまり熱心に読む方ではなかったが、それでも往年の取説には特別な思い入れがある。やたら分厚い物や、遊び心溢れた装丁、ゲーム内では語られない設定なんかもよく書いてあった。しかし昨今はご存知の通り紙製の取説はもちろん、電子版さえ存在しないタイトルも多くなってきた。もはやゲームの取説はその役目を終えようとしているのかもしれない。

そんな少し寂しい気持ちになっている人は、ぜひ『AN EARTH』の取説に目を通して頂きたい。ささやかだが、きっと元気になれるはずだ。

退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! これがオススメRPGだ!

開幕早々に刺激的なタイトル画面を叩きつけてノンストップで紹介してきた。きっと本作の魅力が十分に伝わったであろう。こう見えてこの『AN EARTH』、例年通り今年も開催された第9回「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」において総合5位に入賞した折り紙付きのタイトルなのである。そういうことは最初に言っておけと思ったであろうが、全くその通りで、最初に言っておくべきでした、ごめんなさい。

そしてここまで見てきて、恐ろしく勘のいい読者は既に気づいているかもしれないが、本作はあの名作RPG『MOTHER』を大いに意識して作られている。ビジュアルだけではなく、『MOTHER』をプレイしたことのある人にとっては色々な意味で「やられた!」と感じる仕掛けが随所に仕込んであるので、ぜひ楽しんで頂きたい。なお作者は一度も『MOTHER』シリーズをプレイしたことがないと公言している。筆者がその衝撃の事実を知ったのはこの原稿を執筆している最中だったので、慌てて内容を修正する羽目になった。

またゲーム内のとあるシーンで唐突に絶賛され始める「ココイチのカレー」についても、ゲーム制作時の段階で作者は一度もココイチに行ったことがないことが判明している。ゲーム同様、作者も容易には推し量れぬ人物である。
 
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ココイチを愛する筆者は当然復唱した。念の為に言っておくと違うゲームの画像が紛れ込んだわけではない。
 
この通り内容は遥かにぶっ飛んだゲームだが、回復&セーブポイントである電話がこれでもかと言うくらいこまめに設置してあったり、イベント戦闘でない限りは確実に逃げることが可能なことに加え、戦闘中はボタンを押しっぱなしで高速化してくれたりと、ゲームプレイを通してのストレスはほとんど感じない設計になっている。まるで札付きの不良が雨の日に捨てられた子猫に傘を差し出している光景を目撃してしまったかのような心持ちである。

ゲーム開始直後から怒涛のパロディ、ブラックユーモア、ナンセンスギャグがプレイヤーの脳髄にマシンガンから放たれた銃弾の如くぶち込まれる。そのノリについて来られるのなら、『AN EARTH』はきっと貴方に濃密な体験を提供してくれるだろう。初回プレイでも2~3時間あればクリアできるボリュームなので、どうか気軽に手を出して笑いながら底なし沼に沈んでいって欲しい。

だが忘れないで貰いたいのは、本作のキャッチコピーが「愛と狂気のオススメRPG」ということである。狂気は語った。愛はどこだ。その答えは旅路の果てに見ることになるだろう。どこまでも「ズルい」のである、このゲームは。

さあ、『AN EARTH』の世界へ旅立つ準備は出来たであろうか。
常識など不要だ。そんなものは不燃ゴミと一緒に捨ててしまえ。
見たものを感じ、あるがままに受け入れよう。
そうすればもはや貴方の楽しみを邪魔するものはない。
怖いものなどない。
 
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…あれ、なんでまだこの記事続いているの?

そう、実はまだ終わらないのである。本来なら上記の通り筆者がドヤ顔でタイピングした文章で綺麗に落として終わるつもりだったのだが、この記事が諸事情により公開待ちになっている間にとんでもない事件が起こった。

なんと! 『AN EARTH』に追加要素が加わったスペシャルエディションが配信されてしまったのだ! なんてことしてくれたの! おかげでまた最初からプレイして原稿を加筆修正しなきゃいけなくなったじゃないか! 最高!

『AN EARTH ‐SpecialEdition‐』の主な追加要素は以下の通り。

・脳味噌が溶けるような強烈なテキスト満載! 倒した敵が登録される「バケモン図鑑」!
・新キャラ! 新マップ! 新ストーリー! こいつは必見「新規エピソード」!

特に新規エピソードは絶賛開発中である「AN EARTH2」へ繋がる重要なものだ。既に無印をクリアした人も、2をプレイする前に是非とも体験しておきたいところ。
え、2なんて作ってたの?(そもそもこれ読んでるからまだ1すら未プレイなんだけど…)という人。うん、作ってたんだよ。本当だったら無印のエンディング後にその告知画面が出るのでそこでサプライズとして受け取って欲しかったからそのつもりでこの原稿も書いてたのに、作者がこんな感じでもう全面的に解禁しちゃってるから筆者も開き直ってバラさざるを得なかったんだよ。

なお、『AN EARTH ‐SpecialEdition‐』が配信されている「SYAKERAKE」は投稿型PCゲーム販売サイトとなっているが、ゲームは無料でダウンロードが可能だ。しかしもし貴方が本作を遊んでみて何かしら感じ入るものがあったのなら、ぜひお捻りを投じてみて欲しい。

というわけで、今度こそ本当に最後。色んな意味できっと貴方の心にも突き刺さる『AN EARTH』、作者も筆者もオススメのRPGである。なにはともあれ体験して頂きたい。

[基本情報]
タイトル:『AN EARTH』
ジャンル:RPG
製作者:スパイ03氏(製作者様サイトはこちら
クリア時間:2~3時間
対応OS:Windows
価格:無料(スペシャルエディションは任意の値段で支払い可能)

ダウンロードはこちらから
https://www.syakerake.jp/28

無印版はこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/15682

  • ロッズ(@rods_skyfish

    広く、浅く、ゲームを楽しむ人。守備範囲が広いため毎日のように積みゲーが増えて、最近は嬉しい悲鳴が断末魔に変わってきた。面白いゲームが多すぎるのも困ったものですね。