特撮の戦隊ヒーローがTV番組を作るSRPG『Chroma Squad 』 地球を守るのはみんなの力だ!

RPG,インディーゲーム

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『Chroma Squad』は、色鮮やかな5人のヒーローが一丸となって悪の怪人と戦う、いわゆる「戦隊モノ」を題材にしたタクティカルなSRPGです。誰もが心を熱く燃やした日曜の朝が、ゲームになりました。

いかにも日本的な題材ですが、開発元はブラジルのBehold Studiosというインディースタジオ。スーパー戦隊シリーズは海外でも放映されているので、遠く海を隔てた南米においても、少年たちの心に火をつけていたのですね。Kickstarterで4,000人弱のバッカーから$97,000を集めて生まれたことからも、世界中に多くのファンがいることがわかります。

参考:Chroma Squad – manager game with japanese-style super heroes by Saulo Camarotti — Kickstarter

戦隊モノへの深い愛情にあふれた本作ですが、権利問題のため、残念ながら日本を含むアジア圏での販売がストップしています。権利問題の解消とともにリリースされたはずだったのですが、世界中で広く配信されている戦隊モノなので、地域によっては解消しきれていなかったのかもしれません。

いわゆる"おま国"(※お前の国では売ってやらん)状態なわけですが、その辺りの事情と現状における購入方法については、ボクのブログで書いておりますので、参考にどうぞ。

【Chroma Squad】特撮な戦隊モノのSRPGが”おま国”になった理由を調べてみた あと購入方法の紹介とか

Steamのストアページは日本からのアクセスができなくなっていますが、海外のHumble StoreやGoG.com、または『Chroma Squad』の公式サイトから購入は可能です。といっても、もともと日本語には対応しておらず、英語とブラジルポルトガル語のみなのでご注意を。

では、ゲームの内容について紹介していきましょう。

本作は、戦隊モノとして悪の組織と戦うだけではなく、「戦隊モノ」のTV番組を作る、という一風変わった設定になっています。なので、ただ戦うだけではいけません。視聴者の心に火をつける、アツイ勝利が求められるのです。

タクティカルなSentai RPG

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5人の戦隊で悪の怪人に立ち向かうバトルは、ターン制のタクティカルなSRPGとなっています。描き込まれたドット絵にチップチューン風味なサウンドと、一見するとレトロなスタイルですが、「戦隊モノ」と組み合わさることで、まったく新しいプレイ感覚を生み出しています。しかし、この組み合わせが実にうまくハマっており、特撮の戦隊ヒーローがキレイにゲームへ落とし込まれているのです。

ゲームシステムは、ユニットを移動させて敵を攻撃する、というオーソドックスなもの。操作もマウスのみでシンプルかつお手軽です。iOSやAndroidへの移植も予定されているので、スマートデバイスにも適用できそうな画面レイアウト。難易度は3段階から選択制。今回は真ん中の難易度でプレイしましたが、程よい難易度でサクサクと快適に進めました。

ちなみに、ゲームの概要については主題歌(※日本語)の中で歌われているので、以下の動画をみてみるとよいかも。

戦略バトルで敵を粉砕

バトルパートは変身前の状態からはじまります。変身前は格闘攻撃のみですが、ザコ戦闘員くらいなら撃退できるでしょう。しかし、多勢に無勢。生身のままでは限界があります。タイミングを見計らって変身しましょう。

変身のタイミングは視聴者を惹きつけたとき。視聴率をあらわす「Audience」ゲージが貯まったら「CHROMATIZE」コマンドが使用可能になります。「Lights, Camera, Chromatize!」の掛け声とともに、全員集合して変身!

ちなみに、変身の演出中は敵の戦闘員や怪人がちょっと下がって離れてくれます。変身中のヒーローに手を出すようでは悪の怪人は務まりませんからね。納得。

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変身後は武器やスキルによる攻撃ができるようになって一気にパワーアップ。5人のユニットはそれぞれ性能が異なり、リーダーのレッドは味方を集合させたり能力を高めたり、ブルーは遠距離攻撃、ブラックは近距離攻撃、イエローは隠密行動を得意とし、ピンクは回復スキルに長けています。

ちなみに、カラーで説明しましたが、メンバーのカラーリングは任意に設定できるため、これはデフォルトの場合です。なので、全員レッドにして「アカレンジャイ!」なんてことも。

変身したら強力なスキルと武器で敵を撃退!と、いきたいところですが、戦隊ヒーローとは1人で戦うものではありません。技や武器がいかに強力であろうととも、戦隊ヒーローは隊員たちが協力して戦ってこそ、ですよね。

隊員の共闘は「Teamwork」システムとして表現されています。待機させたユニットと一緒に攻撃することで威力が格段にアップするシステムです。ありがちなシステムかもしれませんが、複数人によるシンクロ攻撃が「戦隊モノ」という題材と見事にマッチしているのです。

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ユニットを待機させて叩くシステムだと、ボス怪人を囲んでしまえばチェックメイトでは?と思われるかもしれません。しかし、攻撃を食らうと数セル押し出されてしまうため、囲んだ状態を維持できなくなっています。

かつて戦隊モノで物議を醸した「5人で1人を叩くなんて卑怯じゃないか」という問題も、これなら解決。といいますか、ボス怪人は行動回数が多かったり広範囲の攻撃をもっていたりと、戦隊よりも断然卑怯なので問題ないでしょう。

ヒーローならば視聴者のハートを掴んでみせよ

「Teamwork」での協力攻撃は、2人よりも3人、3人よりも4人と、人数が増えれば増えるほど威力も上がっていきます。そして、5人全員が揃うことで「Finishing Move」が発動。めちゃくちゃ強力な必殺技になるのですが、トドメ以外で使ってしまうと視聴者がマイナスされるペナルティとなります。

必殺技で怪人を倒せない戦隊ヒーローなんて、そりゃあダメですよね。戦隊ヒーローとして、TVの前の視聴者を魅了しなくてはなりません。本作には視聴者数をあらわす「Audience」ゲージが存在しており、単独で攻撃するよりも協力攻撃の方が上昇しやすくなっています。視聴者が多ければ多いほど、放映後の報酬もアップするという仕組みなのです。

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また、エピソードごとに与えられるディレクターからの指示をこなすことでもボーナスが入ります。たとえば、ザコ戦闘員を10体倒せ、とか、ボス怪人を「Finishing move」で倒せ、とか。バトルに勝つこと自体はそこまでムズかしくないのですが、すべての条件を満たそうとすればなかなか大変。でも、苦労に見合った報酬はあるので、ぜひとも狙っていきたいところです。

巨大メカバトルはキミの手にかかっている

ボス怪人を倒すと巨大化して決戦パートに突入。こちらも巨大メカに乗り込んで応戦です。「Mecha Power, Activate!!」

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巨大メカバトルはシンプルなコマンド形式になっています。連続で攻撃すると威力は上がるものの命中率が下がっていき、攻撃をはずしてしまうと敵のターンにチェンジ。敵のターンではタイミングよくクリックして防御力を高めてダメージを抑える、というルールです。

正面からの真っ向勝負なので実にシンプルですが、命中率が低下しているけどもう1発殴らなければいけない!という場面では、思わず「当たれぇぇぇ!!」とクリックに力を込めてしまうことうけあい。

巨大メカはやられてしまったとしても、視聴者の力で復活できます。「TVの前のみんな!力を貸してくれ!一緒に世界を守るんだ!」というわけですね。

こうして、無事に怪人を倒せばエピソードが終了。しかし、次なる驚異に向けて、『Chroma Squad』の戦いは続く。

スタジオ経営もヒーローのお仕事

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『Chroma Squad』のお仕事は悪の怪人と戦うだけではありません。スタントマンたちが独立してスタジオを立ち上げてTV番組を作っている、という設定なので、スタジオの経営までがお仕事。普通のSRPGではイベント間の準備パートとなるところが、本作ではスタジオ経営になっているのです。

怪人を倒してエピソードが終了すると、SNSに投稿された視聴者の声とともに、獲得したファンと収入が報告されます。どちらもバトル中の「Audience」ゲージによって増加量が変化します。こうしてゲットした利益を装備や設備に投資して、次なるエピソードに備えましょう。

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戦隊の装備品はショップで買うだけでなく、バトル中に敵から得た素材アイテムで製作することもできます。巨大メカのパワーアップパーツも素材から作ることに。インディーなスタジオなのでDIYで手作りなわけです。装備品や巨大メカのアップグレードはちゃんとグラフィックに反映されるのがうれしいところ。

本作で特徴的なのは、スタジオの拡張やマーケティングのシステム。お金を消費してスタジオの設備をアップグレードしたり、広告会社と提携してマーケティングすることで、バトル中のHPが増えたり視聴者が増加したりと、さまざまな恩恵を受けられるようになります。たとえば、玩具メーカーと契約してグッズ販売による利益を得たり、ネットメディアに宣伝してもらってファンを増やしたりと、いかにもそれっぽくなっています。

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TV番組を制作するものとして、ファンの声にも応えなければいけません。エピソードの間に届くメールをチェックするのもヒーローの大事なお仕事です。メールの中には純粋なファンレターもあれば、怪しいスパム広告もありますが、返信の選択肢によってはイイことがあるかも。

なかには、「Chroma Squadのショートストーリーを作っているんだけど、公式なカップリングはピンクxレッド?それともブラックxピンク?」なんて質問を30GBの添付ファイルとともに送りつけてくる剛の者も。

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こうして準備を整えたら次のエピソードの撮影へ。本作はレベル制ではないため、装備品やスタジオの拡張、マーケティング戦略がそのままバトルを左右します。つまり、ファンの力が文字通りの意味で戦隊の力になっているわけです。ここでも、「TVの前のみんな!一緒に地球を守ろう!」というテーマなのですよね。

歴史を作れ!キミのマルチエンド

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戦隊モノをうまくゲームに落とし込んだ本作ですが、注目すべきはなんといってもストーリーです。スタントマンが独立してTV番組を作る、という設定こそ変化球ですが、戦隊モノとしてのストーリーは直球そのもの。それはもうアツイ物語が展開されます。

エピソードごとに登場する怪人、友情に裏切り、かつてのライバルとの共闘、出会いと別れ…。エピソードによっては6人目のゲストキャラクターとの共闘もあり、10時間以上におよぶキャンペーンはプレイヤーを飽きさせないでしょう。笑いあり、涙ありの物語は戦隊ヒーローのお約束がてんこ盛りで、開発者の愛の深さを感じずにはいられません。

また、本作はシナリオが分岐するマルチエンドとなっています。実は、Kickstarterのストレッチゴールだった孤独なライダーのエピソードも分岐するシナリオの1つ。レジェンドなライダーの登場にめっちゃ燃える展開が待ち受けています。

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ネタバレになるので書きませんが、衝撃の展開をむかえる後半から終盤にかけてのシナリオはマジで激アツ。ボクの稚拙な英語力でも伝わってくるくらいのアツさなので、ぜひともプレイしていただきたいですね。

“みんな"の力で地球の平和を守れ!

インディーなスタジオでTV番組を作り、獲得したファンと収入でパワーアップして戦う戦隊ヒーローは、まさに「TVの前のみんな!力を貸してくれ!一緒に世界を守るんだ!!」というお約束そのもの。考えてみれば、Kickstarterから"みんな”の力で生まれたわけですから、実に映えるテーマではないでしょうか。

『Chroma Squad』は戦隊モノを題材としただけでなく、日本の特撮への深い愛情が込められたタイトルです。タイトル画面の地球が日本を中心にした構図になっていることからも、ヒシヒシと感じられます。

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これほど情熱的なブラジルからのラブコールに対して、われわれ日本人が"おま国"を前に指をくわえてみていることしかできないのは、非常に悲しいことです。願わくば、日本向けの販売が再開されることを。できれば、日本語化されると尚よし。

小規模なインディー開発者にとって、法的な問題は宇宙からの侵略者と同じか、それ以上に強大な障害なのでしょう。権利問題は悪ではありませんが、彼らが戦いに勝利するためには、やはり"みんな”の力が必要なのかもしれません。

ボクは『Chroma Squad』をプレイできた1人の日本人として、彼らに最大の賛辞とエールを送りたい。ありがとう、Behold Studios。彼らの戦いはまだ、続く!(はず)

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[基本情報]
タイトル
 Chroma Squad(日本語版なし)
制作者 Behold Studios
クリア時間 12時間くらい
対応OS Win XP以降/Mac OS X 10.4以降
価格 15.00ドル

購入・ダウンロードはこちらから
http://www.chromasquad.com/

  • シバ山(@ShibayamaCoffee

    ゲームおじさん。ゲームばかりやっていてはいけないとブログを作ってみたら結局ゲームの話題ばかり書いているおじさんでもあります。おかげさまで今日もゲームが楽しいです。
    ブログ:シバ山ブログ