時代は色づく進化の道を歩む。懐かしむ気持ちを刺激する短編アドベンチャー『ドットピア』

アドベンチャー

とある小さな村。
自宅で眠りについていた「あなた」は、誰かの声によって目を覚ました。

声はどこかへと導こうとしており、それにつられるがまま、あなたは森の奥へと足を踏み入れる。そこには……


©1991 Nintendo

剣が刺さった台座があった。


©1991 Nintendo

しかし、剣は抜けない。
どうやら3つの紋章が無いとダメなようだ。
探しに行きましょう。

……って、これは違う森の台座だった。

本当の台座はこっちだ。
そんな訳で、声に導かれるがまま、あなたは剣を抜く。
すると、どうしたことでしょう。

妖精が現れた!
そして、妖精はあなたに対し、「ピコ」なる”げんきのみなもと”を集めて欲しいとお願いしてきた。拒否権はないとのこと。

そんな訳で村の中と外の土地で、あなたはピコ集めをすることになるのでした。

なんだか強引で、どこかで見覚えのある展開と共に始まる『ドットピア』は、当もぐらゲームスでも以前紹介した短編アドベンチャーゲーム『ちょっとび!』(参照記事)の作者・にわのこ氏の新作。2021年4月17日、Windows PC用フリーゲームとして創作物総合マーケット「BOOTH」、にわのこ氏の「pixivFANBOX」で公開された。「BOOTH」では有料版も販売中となっている。(※内容については無料、有料版共に差異はない)

不思議な結晶を集めて、世界を変えていくアドベンチャーゲーム

「ドットアドベンチャー」を称すその内容は、見下ろし視点(トップビュー)で展開される、若干のアクション要素を備えたアドベンチャーゲーム。プレイヤーは舞台となる村、その外に広がる土地を巡りながら、妖精が欲しがる「ピコ」集めに取り組んでいく。

「ピコ」は主に草むら、ツボやタルといった物の中に隠されている。回収は草むらなら、オープニングで手に入る剣を振って刈る、物ならば近づいて直接調べるだけでいい。そのようにしてコツコツと「ピコ」を集めていき、指定された数が貯まったら妖精の元へと出向いて、全部渡す。以上の流れを繰り返し、進めていく形となる。

いわゆる”おつかい”中心の構成である。ピコを集める際に行う事柄から由来して「草刈りゲーム」、もしくは「物色ゲーム」とも言える。
強引に双方をまとめてしまうなら”シバ・カーリー”である。なんだか少し前、そのような題名の伝説が語られたような無かったようなだが、気にせず行こう。

なお、本作の草刈りは純粋に剣を1回振るだけしかできない。身体ごと回転させながら斬ったり、走りながら刈ったりはできないので、あらかじめご注意いただきたい。

だが、ニワトリは斬れる。

とにもかくにも、プレイヤーのやることは自由に歩き回りながらのアイテム集め。たったそれだけの”シンプル・イズ・ザ・ベスト”のゲームになっている。

なお、集めたピコを妖精に渡した後には、再びピコ集めが始まる。そして、集める数も前回より増え、広範囲の探索と入念な調査、草刈りが求められる形になる。ただ、同時にひとつの大きな変化も起きる。グラフィックである。

始めて間もない頃は白黒(モノクロ)調になっている。ここからピコを指定数集め、妖精に手渡すと彼女の秘められし力が解放され……

カラーになるのだ。
そして、ここからさらにまたピコを集め、妖精に渡せば……

アドバンスな感じに。

このようにゲームを進める度、全体の様相が変わっていく仕掛けが凝らされているのだ。

それでもゲームとしてのやることは「ピコ集め」に終始するのだが、見た目が大きく変わるだけあって衝撃性は相応。シンプルな遊びを通し、世界が移り変わる様子を味わい、楽しむという、独特なコンセプトが光るアドベンチャーゲームに仕上げられている。

その特色からも分かる通り、任天堂の携帯ゲーム機『ゲームボーイ』の歴史を生で体験し、育ってきた世代狙い撃ちである。

進化のワクワク感と集める楽しさいっぱいの本編

魅力もまた、このグラフィックが進化する仕掛けに集約される。

秀逸なのが色が付くだけで終わらぬ、細かすぎるこだわり。カラーからのアドバンスが最も象徴的だが、色数が増えるだけに終わらず、台詞などのテキストのフォント、キャラクターのドット絵の頭身までもが、ネタ元のアドバンスに沿ったものへと刷新されるのだ。それだけに留まらず、同時に表示されるキャラクターや物の数も増加。村のマップを例に出すと、最初のモノクロからカラーの時にはなかった物が追加されるなどして、より賑やかで生活感が滲み出た雰囲気になるのだ。
さらにほんの少しだが、マップにも以前とは構造の違う箇所が現れたりする。

さながら「性能の進化と共にできることが増える」を体現した、分かりやすい変化とそれに伴う感動がよく描かれているのだ。
実際に同じようなことをゲームボーイの歴史を通して体験した人ならば、思わず「そうそう、これこれ」とニヤニヤしてしまうこと確実。家庭用ゲーム機、ファミリーコンピュータからスーパーファミコンの歴史を体験した世代もまた、「こういう変わり方にワクワクしたんだよな」と、感慨深くなってしまうかもしれない。

ちなみに進化はこれ以外にも用意されている。そちらは見てのお楽しみということで伏せるが、主に解像度周りの変化に分かる人ならばニヤリとしてしまうはず。正直、カラーからアドバンスの流れほどの驚きは無いのだが、細かい所で分かっている作りには要注目だ。

こういった大掛かりな仕掛けが存在するのもあって、本編進行に必須の「ピコ集め」にも精が出る。その「ピコ集め」も、作業感を何ら感じさせない作りになっているのが素晴らしい。お金のようなアイテムをコツコツ集め、貯めていく。第一印象からすれば、ものすごく地味で、面倒臭そうと思ってしまうだろう。

だが、意外にそんなことがない。遊びそのものの華の無さ、地味さはどうしようもないのだが、結構テンポ良く集めていけるのだ。それも随所に沢山のピコを獲得できるボーナスが隠されている。これを積極的に探していけば、そんなに長い時間を要せずに指定されたピコを集められてしまうのである。しかも、村の外に広がる土地にはより多くのピコを獲得できるチャンスがある。沢山動き回っている奇妙な生き物(無害)を倒したり、隠された宝箱を見つけ出すために謎を解くなど、早く集めるための選択肢が豊富に用意されているのだ。

なので、ゲームが進んで100個、200個と目標数が増えてもウンザリしにくい。また、ボーナス系のピコは一度手に入れてしまうと後から入手できなくなるが、他はマップの切り替わりの度にリセットされる。さらにグラフィックの進化を挟んだ後ならボーナス関連もリセット。コツコツ、地道に集めることが長く続かぬよう、配慮されているのだ。

こう言った作りをしているのもあり、作業感がほとんどない。過度な制約を敷かなかったゆえの賜物とも言える、適切な塩梅にまとめられているのだ。さながら、アイテム集めの遊び特有の難点、その退屈さの要因というものを作者のゲーム経験を基に反映したかのような調整で、これには件の遊びに悪い印象を持つ人ほど唸らされるはず。ちゃんと”集める楽しさ”というものが描かれているからだ。

正直、言葉で説明してもピンとこないかもしれないが、実際にプレイしてみれば、そのバランスの絶妙さというのがよく分かる。少しでも興味を持ったのなら、すぐにでも体験してみて欲しいところだ、きっとその意外な仕上がりにビックリ仰天……とまではいかないと思われるが、気を遣って作られていることをじわじわ実感させられるはずだ。


▲目標50個で集めたのは57個。よって、7個残るはずだが……(続)

ちなみにこの「ピコ集め」に対し、こんなことを考えるかもしれない。進行と同時に集める数が増えていくなら、直前に指定数よりも多くのピコを所持していれば、一気に本編を進められるのでは、と。確かにその通りだ。だがしかぁし!!


▲(続き)全部持っていかれました。

どんなに沢山集めても、妖精はその余分な分も含めて全部いただいちゃうのだ!ゆえにそんな作戦は一切通用しない!どんなに沢山集めようが、また0からやり直し!やはり世の中は甘くなかったのだ!

……などと、「アイテム集め」を根幹にしているなりの反則対策も万全。
ここもまた、集めやすさのバランス共々、気を遣っていることが察せるだろう。作戦を考えていた人には「余計なことをしおって……」と怒髪天かもしれないが、文句は依頼主の妖精にお願いいたします。全部、ヤツがいけないのだ。

隠されし”タルの世界”も見逃せない秀作

また、同じ作者の『ちょっとび!』はマップ上に置かれた物を調べるたび、固有の反応が返ってくる小ネタの豊富さが大きな魅力だったが、本作にもそれは健在。量的には『ちょっとび!』には劣るが、村人を剣で斬り付けた(!)時の反応にはクスリとしてしまうはず。

そして、タル。なぜかこれにだけ、異様な量の固有メッセージが設定されている。タルにはピコが隠されているため、大抵は壊してしまいがちなのだが、あえて何もせず近づいて調べてみて欲しい。秘められし「タルの世界」を知っちゃうかもしれない。

ボリュームはストーリーを中心に進めるだけならば大よそ40分~1時間。ただ、クリア後にも実績コンプリートのやり込み要素が用意されているので、そちらも含めればそれなりの時間を要するだろう。ストーリーもそれほど驚きの展開はなく、主人公も無口で会話パターンも少ないが、主犯……もとい。依頼主の妖精が相応に濃いキャラクターになっていて、節々で盛り上げてくれる。ピコ集めを繰り返すにつれ、彼女も最終的に本来の姿を取り戻すのだが、それもなかなかインパクトあり。実際に見てのお楽しみだが、人によってはドキッとしてしまうかもしれない。お見逃しなく、だ。

総じて雰囲気ゲームとしても、アイテム探し主体のアドベンチャーゲームとしてもソツなくまとまった仕上がりの本作。ただ、ゲームボーイ進化の歴史を生で体験してきた人間からすると一点、気になることがある。それはカラーからアドバンスの流れの狭間に”専用”のパターンが無いこと。これは可能なら用意してくれればと思ってしまった。あの”専用”にしかできない表現が存在したためだ。ボリューム的に水増しになりかねないことから削った可能性も考えられるが、できれば見てみたかったところである。

また、音楽の選曲に関してはアドバンスとそれ以降も、8ビットスタイルの楽曲になっていたのに大きな違和感を覚えた。かの進化は映像以外に音源もそのひとつだったので、できればそれを感じられるような楽曲を選んでくれればと思った次第だ。一応、アドバンスでもその種の音源を採用したタイトルは存在したので、完全に間違っている訳ではないが……。

最後の最後に面倒臭いことを書き連ねてしまったが、それだけ作り込みの深さに魅了させられるアドベンチャーゲームになっているということである。グラフィック以外にもバランス調整が絶妙なアイテム集め、その集め方の自由度の高さなど、魅力がいっぱいの本作。世界観を楽しむゲームとしても見事な出来なので、興味のある方はぜひ、プレイしてみて欲しい。世界の進化のため、コツコツと「ピコ」を集めていきましょう。

[基本情報]
タイトル:『ドットピア』
作者:にわのこ
クリア時間:約1時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料(有料版:100円~)

ダウンロードはこちら
※pixivFANBOX
https://niwanoco.fanbox.cc/posts/2066998

※BOOTH(要pixiv ID)
https://booth.pm/ja/items/2884958

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