フリーホラーゲーム『虚白ノ夢』。運命に囚われた少女の物語と、巧みな恐怖演出が味わえる

今回は、フリーホラーゲーム『虚白ノ夢』を紹介する。本作は、墓荒らしダンジョン探索RPG『積層グレイブローバー』や、選択系恋愛ADV『Leanan-Sidhe』などの特色ある作品を送り出してきたサークル「てりやきトマト」の新作だ。
本作の魅力としては、まず『青鬼』『魔女の家』といった名作フリーホラーゲームに見られるような「おどろかし」のホラー描写が巧みであることが挙げられるだろう。しかし、本作の魅力はそういった演出面だけではない。運命に囚われた人間たちが織り成す物語自体にも恐ろしさがあり、読みごたえのあるものとなっている。3時間ほどで終わる短編ながらも、恐怖と物語がギュッと詰め込まれた濃密な作品だ。

セカイに絶望した少女の死から始まる物語

本作は、主人公である「ミシロ」が、暗闇に包まれた謎の世界に迷い込んだところから始まる。目の前に現れたのは、ひとつの鏡。その鏡を覗き込むと、かつてミシロが暮らしていた部屋にたどり着く。そこでナイフを見つけたミシロは、その刃を自分の体に…。

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暗闇の世界に迷い込んだミシロの前に出現する謎の鏡

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鏡の力で、自分の部屋とおぼしき場所にやってきたミシロは…

ゲームの序盤では、ミシロが現実の世界で自ら命を絶ったという事実を突きつけられる。しかし、ミシロはこの世界に来るまでの記憶をなくしており、その具体的な背景は分からない。鏡から聞こえる声によれば、この世界に存在する「鏡」を見つけ、それを割ることで、ミシロは記憶を取り戻し、そしてミシロの「望み」が叶うのだという。そのため本作は、暗闇に満ちた世界の存在の謎を解きつつ、鏡を見つけ、そして割ることでミシロの記憶を取り戻していくことが目的となる。

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鏡の世界では、ミシロの生前の記憶のようなものが描かれる。一緒に話している青年はどういう関係なのだろうか

世界には、ミシロ以外にも人が迷い込んでいる。女子学生の「ユズ」、会社員風の男「リョウタロウ」だ。二人はミシロと同じく記憶を失いこの世界に迷い込んでおり、世界の探索をしていく中で、ユズやリョウタロウの姿の映る鏡も発見することができる。二人の鏡を発見することで彼らにも記憶が戻っていき、彼らの事情、そして世界の秘密についても段々と事情が明かされていく。

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女学生風の少女「ユズ」

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会社員風の男「リョウタロウ」

ホラー演出・謎解き・シナリオの優れたバランス

本作は、ホラー描写・謎解き・シナリオの各要素がバランスよく作りこまれ、ゲームとして総合的に楽しめる作品となっている。ホラーゲームでのホラー描写とは「恐ろしい風貌をした存在の、視覚的な恐怖」もそうだと思うが、本作ではプレイヤーの心の隙間を付いてくるホラー描写が印象的なものとなっている。

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世界の行く先々でミシロを捕まえようとする謎の「黒い影」。捕まってしまうと即ゲームオーバーとなる。果たしてその正体は…

恐ろしい外見をした怪物という恐怖だけでなく、探索する世界の「雰囲気」、「音」、「演出」、そして一安心した後に襲いかかる恐怖の「タイミング」…。それら全ての合わせ技でプレイヤーを怖がらせに来ているという点で、ゲームという形式をフルに活用した作品となっているのだ。
作りこまれた恐怖演出の一つの例としては、探索中に何回か訪れる通路のマップでも、特定の状況によって様子が変化する場面だ。そこでは通常とはBGMを変えて「なにかおかしいぞ…?」と感じさせ、プレイヤーに不安な気持ちを喚起させるなど、恐怖へのフックがうまく機能している。

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ひとつの危機を脱したあと、プレイヤーが安心した絶妙なタイミングで襲いかかるホラー演出の数々には驚かされる

探索する世界の中には「緑ノ間」「愛ノ間」など、それぞれ趣向の異なったエリアが存在する。エリアの中で謎を解き進んでいくことで、その最深部にある鏡にたどり着けるというものだ。最初のうちは探索できる範囲が限られているが、ひとつのエリアを攻略すると、他のエリアを空けるための鍵を入手することもできる。世界に存在する全てのエリアを攻略しよう。

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鍵を入手することで、ミシロの探索できる範囲が広がる

ミシロの行く末に待つ物語の結末とは…?

本作は、丁寧に作りこまれたホラー描写だけでなく、シナリオ面への注力も感じられる。恐怖を乗り越えた先に待つ物語、それを味わう楽しみを奪ってしまわない程度に紹介したい。

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記憶の中でミシロに話しかける老人。生前に関係があったのだろうか?

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世界の探索を進めるごとに、リョウタロウやユズも記憶を取り戻していく

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ユズの記憶の中に現れる少女。物語にはどう関わってくるのか?

本作を一通りクリアして感じたのは、ゲーム内のホラー演出も恐ろしいが、運命に囚われてしまった人間たちの織り成す物語もまた恐ろしいということだ。作りこまれたホラー演出、そして何より読ませるシナリオが魅力の本作。恐怖と物語の両方を楽しみたい方はぜひともプレイしてほしい。

[基本情報]
タイトル 『虚白ノ夢』
制作者 てりやきトマト(制作者様サイトはこちら
クリア時間 3時間~
対応OS Windows XP/VISTA/7/8
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/9116


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    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。