お祭り前日の小さな町の日常とお手伝い奮闘記を描くファンタジーADV『ラシュイットリーテ』

王国辺境の町「ラシュイット」。
間もなくこの町では、百年に一度の大きなお祭りが開かれる。
珍しいお祭りだけあって、宿屋の予約はどこも満室。
商店街も最大の稼ぎ時に向け、大忙しになっている。
しかし、これからが準備の本番を迎える所も存在していた。

町長の子供である主人公は、町の人々、外からやってきた人達と協力しながら、準備本番を迎える所の手伝いに従事することになる。
果たして、お祭り当日までに役割を果たせるのだろうか?

『ラシュイットリーテ』は、そんな小さな町の日常を描いたファンタジーアドベンチャーゲームである。2020年7月18日より、Windows PC用フリーゲームとして「ふりーむ!」、「BOOTH」で公開されている。

計画的な行動と判断が成否を握る、攻略性の高いアドベンチャーゲーム

プレイヤーの目的は前述のオープニングストーリーを読んで字のごとく。これからお祭りの準備などを始めようとしている4人(4箇所)を手伝って、開催前日までの完了を目指すことだ。

本編は基本的に「タウンマップ」なるメニュー画面から手伝う相手がいるエリアを選び、それぞれのエピソードを読み進めながら準備を進めていく形になる。前日までの完了を目指す目的から察せる通り、日数期限もある。7日間だ。その間に4人全員の手伝いを完了させることが最終的な目標になる。

ただし、1日の内に4人全員を手伝うのは不可能。というのも、行動回数が設定されており、通常は1日の内に2回しか手伝えない。言い方を変えれば、4人の内の2人しか回れないのだ。しかし、上手くいけばさらに1回、行動できるようになる。

そのカギとなるのが話の途中に現れる4つの選択肢。これで最良の決断を下せば、手伝いの経過時間が短縮され、3回目の行動が発生。通常よりも多くの人を手伝えるのである。逆にそれ以外の選択肢だと、追加の行動は発生しない。

また、3回目の行動において、選択肢で悪いものを選んでしまうと主人公が疲弊。翌日の行動が2回で固定されるペナルティが課せられる。そのため、3回目の行動時は特に慎重な判断が試される。

その選択肢にも「ステータスアイコン」が付いた奇妙なものが紛れ込むことが。
これは主人公の能力値によって結果が分岐する、特別な選択肢となっている。

主人公の能力値は「体力」、「知力」、「器用」、「幸運」の4つがあり、いずれもゲーム開始時に行われる「質問」の回答によってABCのランク付けが行われる。このランクが高い時に件の選択肢を選ぶと良い結果が、逆に低い時に選ぶと悪い結果が出るという仕組みになっている。逆に平均的なランクでも、選択肢に設定された難易度(★で表示)が高い場合、悪い結果に繋がることもある。まさに”イチかバチか”を体現した作りで、文章を読み進めるのが主となる本編にアクセントを与えるユニークなシステムになっている。

なお、能力値は最初に決めたら以降は固定となる。各ステータスのランク付けは本編を始めるまでは何度かやり直せるので、納得行くまでやり直してみるのも一興だ。
そのほか、主人公の性別も開始前に設定可能。

しかも、どちらを選んだかで登場人物たちとのやり取りも変化。大筋のストーリーはどちらも共通だが、クリア後も少し異なるトーンで楽しめるので、キャラクターのやり取りを楽しみたい人にはたまらない要素と言えるだろう。

このように根っ子はストーリーを追うことに徹するアドベンチャーゲームだが、日数と行動制限、それらに大きな影響を及ぼす要素を備えた選択肢、ステータスの概念などの意欲的なシステムが備わっており、非常に攻略し甲斐のある内容に完成されている。限られた制約の中、試行錯誤するシミュレーションゲームが好きな人の琴線をも刺激する作品になっているのだ。

お祭りの準備という目的を果たした後に……?

しかし、本作の魅力兼屈指の見所はストーリーだったりする。
その内容はいわゆる日常系と呼ばれるもの。来たる大きなお祭りのため、主人公が様々なハプニングに対して奮闘したり、時にいじられたりしながら懸命に手伝いに従事していく様子が愉快かつ、ほのぼのとした雰囲気の中で描かれていく。

手伝うことになる4人の登場人物たちも個性豊か、それでいて好感の持てる面々揃い。主人公も女性、男性共に頑張り屋さん、かつユニークな一面を持っていて、思わずクスッとしてしまう魅力を秘めたキャラクターになっている。

人のぶつかり合いや事件もそれほどなく、まさに日常系の題材に相応しい穏やかなストーリーである。厳密にはある人物のエピソードにて事件は起きるのだが、これと言って重苦しさは皆無で、愉快な調子で描かれるものになっている。

そんな平和的なストーリーが魅力にして見所と言われても……と思うかもしれない。確かにここまで紹介した内容は、日常系の王道や基本を踏まえた感じだ。好感の持てる面々が揃った登場人物たちも、題材的にはありがちに見える。

そう言った王道が抑えられているからこそ、終盤に向けての展開が意外性に富んだものになっているのである。具体的には4人の手伝いを成功させてからのストーリーだ。その詳細の言及は避けるが、思わず「え?」と声が出る展開になる。ほのぼの日常系ストーリーと思えた本作の印象がひっくり返る事態が起き、思いもしない結末に向けて進んでいくのだ。

特にそこに至るまでの日常系らしいストーリー展開、雰囲気を堪能していた人ほど面食らうだろう。4人全員の手伝いを完了させると辿り着けるものなので、試行錯誤という名の攻略が事前に求められるのだが、それを乗り越えたなりの驚きに満ちている。筆者は最初こそ困惑したものの、徐々に明らかになる実態に「なるほど!」と思わず手の平を叩く納得感を覚え、以降は結末まで食い入るように見入ってしまった。その途中、思いもしない罠が用意されているのにも、してやられた気分にさせられたほどだ。

一体、4人の手伝いを完了できた時、何が起きるのか。なぜ、納得感を覚えたのか。これらの真相は定番の決め文句「続きは本編で!」の一言で締めさせてもらう。あまり細かい見所などは紹介したくない。この意外性は何の情報を得ていない状態だからこそ味わえるものなのだ。気になったのなら、すぐにでも公開されているページ経由でダウンロードを。やればわかるのです。

とは言え、攻略性のある内容だと辿り着くまで大変そうと思うかもしれないが、その辺のフォローも万全。4人の手伝いを完了できず結末を迎えても、現在のステータスをボーナス込みで引き継げる周回要素が備わっているので、再チャレンジの度に攻略は楽になっていく。会話のスキップ機能もデフォルトで備わっているほか、選択肢も直前にオートセーブが行われる仕様なので、もし間違ったものを選んだとしても、すぐに挽回可能だ。さらにメインストーリーのボリュームは大体3~5時間ほど。各エピソードも10分ほどで読み終えられる内容なので、繰り返しプレイが苦にならない設計だ。

こう言った遊びやすさへの配慮が徹底されているので、気兼ねなく4人の手伝い完了へと挑める。むしろ、そうしているからこそ、際立った見所になっているとも言える。果たしてお祭りの日を迎えた先に何があるのか。私(筆者)は何を見たのか。

続きはCM……じゃなくて、ゲーム本編で。

主人公の愉快さも見所の意外性十分の良作

ストーリー絡みでは、主人公を始めとする登場人物たちの愉快さも目が離せない。特にインパクトあるのが主人公、男性の「カミル」である。

一見、可愛らしい少年なのだが、その見た目からは想像もつかない闇の一面を持ち合わせている。それがどんなものなのかは、4人の内のひとり「ノエ」のやり取りを通してお確かめいただきたい。人によっては恐らく引く。

登場人物たちと関連して、キャラクターのイラスト、イベントごとに挿入される一枚絵(スチル)、背景グラフィックも総じて完成度が高く、ファンタジー色のある独特な世界観を作り出している。メニューウィンドウなどにも独自色を出す工夫が凝らされており、細部まで丹念に作り込まれている。演出も日常系らしい穏やかな調子にまとまっているのが印象的だ。

構成的に止む無い点でもあるが、周回プレイを繰り返していると、どうしても作業臭が強くなってしまうこと、一部もう少し人物像と関係性、過去の掘り下げが欲しいキャラクターがいるのが惜しいが、それを日常系と”見せかけた”ストーリーがいい感じに帳消しにしてくれる。

システム周りの凝り方も面白く、遊び応えも申し分ないなど、総じて高い完成度を誇る本作。アドベンチャーゲーム、日常系の作品が好きな人はぜひ、お試しいただきたい1本だ。このほのぼのとした雰囲気を味わい、手伝いの攻略に悩まされながら、お祭りの日を迎えよう。その時、あなたは本作の正体を知る……?

[基本情報]
タイトル:『ラシュイットリーテ』
作者:笹見 観(蜜柑煮box)
クリア時間:3~5時間
対応OS:Windows
価格:無料
備考:12歳以上推奨(※多少の猟奇的、同性愛描写を含む)

ダウンロードはこちら
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/23397

※BOOTH
https://mikanni.booth.pm/items/2225464


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