生きる屍と奇妙な人々の待つ崩壊世界を巡る探索アドベンチャー、ここに再臨。その名は『再編 瓦礫の魔女は。』

アドベンチャー,フリーゲーム

記憶喪失の女性が真実を求め、「アノミー」と呼ばれる生ける屍が徘徊する崩壊世界を巡る探索型アドベンチャーゲーム『瓦礫の魔女は。』。2018年7月にWindows PC用フリーゲームとして公開され、当もぐらゲームスでもその後、レビュー兼紹介記事を掲載した。

そんな最初の『瓦礫の魔女は。』誕生から3年後の2021年8月下旬。なんと、リメイク版が誕生。フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて公開された。

その名も『再編 瓦礫の魔女は。』。オリジナルの『瓦礫の魔女は。』と同じ、「WOLF RPGエディター」製のWindows PC用フリーゲームである。

グラフィックの一新、遊びやすさの改善に振りきったリメイク

基本的な内容はオリジナル版と変わりない。若干のホラー要素を取り入れた、マップ探索型のアドベンチャーゲームである。

プレイヤーは記憶喪失の女性に扮し、瓦礫だらけの崩壊世界を巡り、その過程で出会う様々なキャラクターたちとの交流を重ねつつ、失った記憶の手がかりを探っていく。

「アノミー」なる生ける屍が徘徊する外、それらが居ない安全地帯に当たる建物内という、差別化が図られたマップもオリジナル版から変わらず健在。

「アノミー」に接触すると主人公がダメージを受け、計3回触れるとゲームオーバーになってしまうシステム(ペナルティ)もまた然りだ。リメイク版でも外では長居せず、建物へと逃げ込んでセーブするという、保険をかけつつのプレイが基本となる。

全体的にゲームの根幹、ストーリーはオリジナル版を踏襲している。
逆にオリジナル版から変わった部分は以下に列挙する通りとなる。

マップ構造及びデザイン

オリジナル版のマップは全て、RPGでお馴染みの見下ろし視点(俯瞰視点)で統一されていた。リメイク版は一部のマップが斜め上方から見下ろした視点(クオータービュー)、横視点(サイドスクロール)で描写されたマップに変更され、見下ろし視点以外の種類も登場するようになった。

また、マップ上のキャラクターグラフィックも一新。オリジナル版は「WOLF RPG エディター」の定型に則っていたが、リメイク版は全て独自のグラフィックに差し替えられている。

さらに構造も外、建物内共に全て一新。なるべく一画面内に収まるように再設計されている。このため、外では比較的スピーディに建物内へと到達できるように。いわゆる”回避ゲーム”部分に抵抗のあったプレイヤーには嬉しい変更点と言えるかもしれない。

グラフィック全般

前述のマップとキャラクターとも絡むが、グラフィックは全てオリジナル版から変更。キャラクターの立ち絵も新規に描き書き起こされたものになっている。ちなみにオリジナル版の立ち絵はイラスト調だったが、リメイク版はドット絵風の新しいものに改められている。マップ、キャラクター側のデザインとの統一を図った感じだ。


▲ちなみにテキストの文字フォント、タイトルロゴもドット絵風に一新されている。

「アノミー」の回避

マップが一画面に収まるサイズに変更されたため、突破に要する時間は短縮された。また、これは通常マップとも共通することだが、斜め移動が可能になっている。

演出全般

登場人物たちとの交流イベントに新しい動きが追加されたり、音楽がオリジナル版とは別の曲に差し替えられるといった変更が行われている。特に音楽はタイトル画面など、本作独自の楽曲が採用された部分がある。さらに非常に細かい変更点だが、マップを移動している際に足音が鳴り響くようになっている。

他に台詞内の重要な部分が色付きで表示されるようになったり、メニュー画面内に現在の目標を教えてくれるコマンドが新規に追加されたといった変更点もある。イベントの一部にも、オリジナル版よりも僅かながら長く再構成されたものが用意されている。

方向性としては遊びやすさと独自性を重視した感じで、初めてプレイする人には取っつきやすく、オリジナル版経験者ならば細かい変化を楽しむという売りを備えた作りになっている。まさに「再編」の言葉通りのリメイクだ。

根幹たるストーリーとゲーム部分は共通。だが、魅力は色あせない。

今回のリメイク版の中で、最も大きな見所はグラフィック全般とマップの刷新だろう。

グラフィックは背景からキャラクターまで、全てが独自ものに置き換えられたことで、本来の崩壊した世界の様子や雰囲気がより分かりやすくなった。中でも「アノミー」たちが徘徊する外のマップは、元の荒れ果てた様子や血生臭さが際立ち、一刻も早く安全な建物内へと移動したい気持ちを煽るものに一変している。それとは対照的に、妙に可愛らしく改められた彼らの容姿も、いい意味で違和感があって面白い。危険な存在のはずなのにそう見えない、その矛盾した雰囲気には、作中で巡り会うエキセントリックなキャラクターたちに通ずる、本作特有の個性を強く感じさせられるかもしれない。

マップの刷新も主に遊びやすさの向上に貢献している。なるべく1画面内に収まるように作り直されたのもあり、スムーズに目的地への移動や探索を進めていける。「アノミー」たちの登場する外マップも同様の作りに一新されたことで、目的地に到達しやすくなった。それにより、ストーリーを先に進めたいのに突破で時間を取られるというストレスも軽減。特に中盤に訪れる「警察委員会」、「放送委員会」の2ヶ所はその辺りが際立っていて、遊びやすさを重視した本作の方向性を強く意識させられるだろう。

前述の通り、斜め移動が可能になって、アノミーが回避しすくなったのも秀逸な改善点。ただ、それで難易度が下がった訳ではなく、特定の場所では相手の動きをちゃんと読んで動くことが試されるなど、手応えは失われていない。また詳細は省くが、例外的にアノミーが登場する屋内マップはオリジナル版とは構成が一新され、彼らと不意に接触しやすくなっている。それは返って理不尽ではと思うかもしれないが、マップ縮小の恩恵もあり、不思議とそのようには感じさせない。

さらにストーリー側から見ても、その後の展開と辻褄が合うものになっている。オリジナル経験者にしか分からない部分ではあるが、実際に体験してみれば「そう言えばあの時は何のために?」と、ハッとさせられるかもしれない。本作の中では唯一、オリジナル版との違いが(地味ながらも)現れた場面でもあるので、経験者に限られてしまうが、ぜひ確かめてみていただきたいところだ。

裏を返せば、ここまで紹介した事柄以外にオリジナル版から劇的に変わった箇所はない。ストーリーも大筋はまったく変更されていないほか、新たに追加されたイベントもないので、経験者なら周回プレイ感覚を強く抱くことになるだろう。

ただ、決してその作りがよくないという訳ではない。「再編」のタイトル名を思えば、至って適切なリメイクにまとまっている。

またストーリー、とりわけ最大の売りたるエキセントリックなキャラクターたちは最初のオリジナル版登場から3年が経過した現在で見ても、色褪せぬ存在感がある。底抜けに明るい調子で描かれる彼らとのやり取り、そして中盤から徐々に狂気が増幅していくストーリー展開のインパクトもまた然り。その末に訪れる”とてもつらい”としか表し様のないエンディングと、その後の余韻も唯一無二だ。何より、演出面で本作のために書き下ろされた楽曲が追加されたのもあり、真のエンディングはより印象深いものになっている。遊びやすさに振り切ったことにより、それらを体験しやすくなっているのも特筆すべきところだ。

確かに少し追加イベントがあれば、と思う部分はあれど、より洗練された作品に進歩しているのは事実。中でもマップとアノミー関連の改善は優れたものになっているので、一度オリジナル版を経験した人でもどのように変わったかを確かめてみていただきたいところだ。もちろん、オリジナル版の未経験者もこの唯一無二の世界観は一見の価値あり。おぞましくもどこか明るく、切ない雰囲気は刺さる人ならば刺さること間違いなしだ。

いま一度、狂気と切なさに満ちた御伽噺の世界へ

本編のボリュームもオリジナルから特に増えてはおらず、大よそ3~4時間ほどの適切な量に収まっている。ただ、目的地への到達がスムーズにできるようになったため、進め方によっては大幅な短縮も見込める。メニュー画面に設けられた次の目的地を教えてくれる機能が加わったこともまた、影響している感じだ。ただ、いくらスムーズになったからといって、密度が薄くなった訳にあらず。その辺は豊富なマップとストーリーの会話イベントの多さ、エンディング分岐の3要素を体験すれば、おのずとよくわかるはずだ。

そのほか、細かい所ではグラフィックと並行するが、オリジナル版から一新されたキャラクターたちの容姿も見逃せない。中にはオリジナル版以上に可愛くなったり、不気味さがプラスされた進化(?)を遂げた人物もいるので要チェックだ。あえてどう変わったかを見比べるため、オリジナル版に遡ってみるのも一興である。

総じて適切なアレンジ具合でまとめられている今回のリメイク版。ただ、オリジナル版同様、中盤のアノミー襲撃イベントは、初見殺しの色が濃いままといった惜しい箇所もある。一応、若干の猶予が生まれるようになり、不意打ち度合いは抑えられたほか、斜め移動の追加で回避はしやすくなってはいるが。
また、アノミー絡みでは「墓場」の構造が密集気味で、時折、一部の個体がダメージ確定な位置付けになることがあったのが気になった次第だ。

それ以外にゲームプレイに深刻な影響を及ぼす類の難点はない。全体的には主にマップ周りの改善で、より遊びやすくなった作品に完成されている。一通りオリジナル版を遊び通した経験者も、初めて知った未経験者の方にも広くお薦めできる出来。多少のホラー要素と残酷な描写を含むため、苦手意識のある人には注意が必要だが、少しでもこの世界観とグラフィックの雰囲気に惹かれたのならプレイいただきたい1本だ。

より印象深く、遊びやすくなった新しい『瓦礫の魔女は。』の世界にようこそ。


▲『箱庭の妖精は。』より

なお、オリジナル版の記事を書いた当時は『廃屋の姫君は。』なるスピンオフ作品も一緒に紹介した。あれから数年後、現在では同作以外にも『病的な彼女は。』、『銀鏡の神は。』、『箱庭の妖精は。』といったスピンオフ、『怪異探偵委員会』なる番外編が誕生し、より世界観に広がりが出ている。本作をプレイし、その魅力をより深く味わってみたくなったら、ぜひそれらもチェックいただきたい。(シリーズの紹介ページはこちら

また、さらなる次回作も予定されている。こちらは本作を最後の最後までプレイした時、その一端を知れるので、気になれば”奥”まで踏み込んでみよう。

[基本情報]
タイトル:『再編 瓦礫の魔女は。』
作者:茸の里
クリア時間:3~4時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/26448

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