和紙で作られた幻想日本――David Wise の楽曲が息づく絵本風アドベンチャー 『Tengami』

スマートフォンゲームのムーブメントと『Tengami』

『Tengami』は、iOSでプレイできる絵本風アドベンチャーゲームだ。リリース後、世界109ヶ国のAppStoreで1位を獲得するという勢いを見せている。

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『Tengami』冬の五重塔

最近のスマートフォンゲームでは、テキストベースで物語を伝えるのではなく、「ビジュアル」と「システム」、そして「短い挿話」を織り交ぜることで、視覚的な面から物語を想起させる作品が人気となっている印象がある。

たとえば、視点を変えることでゲームを進めるトリックアート作品『Monument Valley』も、視覚的に訴えかける要素が含まれたゲームだ。ロンドンの開発会社「ustwo」の生み出したこの作品は、世界各国のApp Storeの1位を飾っており、日本でも7位にランクインしている。

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『Monument Valley』4章。この直後、プレイヤーに衝撃を与えるシーンがある。

また、同じく世界のApp Storeで1位を飾った、ストーリーのついた音楽ゲーム『Deemo』もその傾向がある。これは台湾の開発会社「Rayark」がリリースした作品で、楽曲をクリアしていくと、数枚のキャライラストが出てきて物語性を演出する。楽曲はFFで有名な植松伸夫氏のバンドも提供している。

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『Deemo』植松伸夫氏のバンド「EARTHBOUND PAPAS」の楽曲。

こういった中で紹介したいのが、冒頭で触れたイギリスの開発会社「Nyamyam」が制作した『Tengami』だ。

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Nyamyam 公式サイト『Tengami』ページ

『Tengami』は2012年の東京ゲームショウのコンテスト「Sense of WonderNight」で注目を集めて以降、数々の賞にノミネートされた作品。以下で魅力をお伝えしたい。

幻想日本の探索と、スマホならではの謎解き。

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『Tengami』は、日本のようでどこか遠い、幻想の日本を探索する絵本風アドベンチャー。日本の伝統美である和紙で作られたかのような世界を「めくる」ことで物語を進行させることが特徴だ。そこには「飛び出す絵本」のような楽しみがある。

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例えば、上のマップは良い例だろう。一見、道がとぎれているところでも、画面左下の光る円をタップし、

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引き上げるように指でスライドしていくことで…

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道ができ、進むことが出来る。

本作では、キャラを動かして美麗な風景を見るだけでなく、こういった謎解きがくりかえし挿入される。そこではプレイにほどよい緩急が生まれている。適切な間隔で適切な障壁(謎解き)を配置することで、ゲームのリズムを調節し、プレイヤーに快適な体験をしてもらうレベルデザインを感じることの出来るゲームだと思う。

『ドンキーコング』シリーズの音色が息づく楽曲群

『Tengami』の音楽を担当しているDavid Wise氏と言えば、日本では『スーパードンキーコング』シリーズの作曲者として有名だろう。ちなみに、今年は1994年の『スーパードンキーコング』の発売からちょうど20周年である。『Tengami』の楽曲は、たとえるなら『スーパードンキーコング2』で人気の「とげとげタルめいろ」の曲調のような、落ち着いたものとなりつつも、密かな情熱を感じる楽曲となっている。先日、サウンドトラックも発売された。

余談だが、David Wise氏ご本人も参加されているスーパードンキーコングの楽曲アレンジプロジェクト「Serious Monkey Business」のクオリティが、非常に高い。
しかも、これらは無料で公開されている。かつて耳に焼きついた名曲の新生を、ぜひ聴いてみて欲しい。

Serious Monkey Business

『Tengami』はゲームなのか?

本作のプレイヤー数名に話を聞いてみると、「これは「ゲーム」なのか?」という感想がいくつか見られた。
『Tengami』にとって、「タップしてキャラを動かす」「世界に触れて謎を解く」というシステムとは、ゲームシステムとしての意味もそうだが、純粋に「ゲームに触れて、世界に入り込むための手段」という意味も持っているのではないかと感じた。
「謎を解いて楽しみを得る」という知的な報酬は、本作でも機能している。しかしそれ以上に、謎を解く過程で、『Tengami』の世界の細部にまで触れることが重要となっている。

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ページをめくり移動するシーン。
ある場面では、ページの細部を見ることが謎解きのヒントとなる。

『Tengami』は、テキストベースで物語を伝えるのではなく、「ビジュアル」と「システム」、そして「短い挿話」を織り交ぜるという要素が見えながらも、プレイヤーに与える体験を新しいものにするべく、細部のこだわりがうかがえるものとなっている。そういった意味では、スマートフォン/iOSゲームの新しい体験を提供している作品だと感じた。
このような新しいゲームの形を、今後も楽しみにしたい。

参考記事:

ゲームの域を超えた芸術アプリ『Tengami』が世界109ヵ国で売上No.1達成 [ファミ通app]

ustwo、パズルADV『Monument Valley』が北米を含む14ヵ国で有料ランキング1位を獲得。さらに59ヵ国で「ベスト新着ゲーム」に選定 | Social Game Info

数字で見る幻想的な音楽ゲーム『Deemo』の力強さ…有料ランキングで堂々の首位、売上でも50位に迫る勢い | Social Game Info

※記事内の画像には、矢印等加工を加えてあります。

[タイトル]
Tengami

[ソフトウェアタイプ]
有料ソフト

[対応OS]
iOS 7以降
(Wii U、Win PC、OS Xは2014年に対応予定とのこと)

[購入]

(iOS版)

[制作者]
Nyamyam

[プレイ時間]
2時間~3時間


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    poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。