青の世界と白の魚が織りなす夢。フリーゲーム『UTOPIA 幻想ホラーアドベンチャー』

病院、夢、水族館、ホラー……といった要素だけでも、食指がピクリと動いた方はいらっしゃいませんか? つい先日公開されたばかりの『UTOPIA 幻想ホラーアドベンチャー』をご紹介。

人気フリゲと肩を並べる、期待の新作ADV

さて、今日は先週の週刊もぐらニュースでピックアップしたフリーゲーム『UTOPIA 幻想ホラーアドベンチャー』を紹介したい。

本作は今年の6月13日に公開されたばかりだが、フリゲ配信サイト「ふりーむ!」の週間ダウンロード数ランキング9位とかなりの高ランキングをキープしている。同じく10位以上にはフリゲファンおなじみ『魔女の家』やコミック化もした『霧雨が降る森』、そして六ヶ国語に訳されるほどの人気を誇る『Alice mare』といったそうそうたる顔ぶれ。いかに期待されていたか分かるというものだ。

また、『不死鳥の棲む街』『神様症候群。』等のガンアクションゲームを制作している晋太郎氏の新作であることも付記しておこう。長編である上記二作品とは打って変わって、アクション要素の小さいホラーADVとなっている。ちなみに、フリゲとしては珍しいことに公式トレーラーが存在する(!)。

様々な要素が織りなす、幻想的な青の世界

主人公の「あかね」と現実では昏睡状態の少女「ゆい」。ゆいの夢にあかねが入り込んでしまうところから物語は始まる

高校生の「あかね」と昏睡状態の少女「ゆい」の二人が本作の主役。基本的には「あかね」を操作して夢の世界を探索し、その奥底にいるらしい「ゆい」の『おかあさん』を探すことが目的だ。ゆいの夢の中を探索する過程で、徐々に彼女の来歴や現実における意外な事実が明らかになってゆく。ちょっと聞いただけでも先が気になる展開だ。実際にプレイしてみると、ストーリー上の謎を小出しにしてゆくのも上手いし、様々な演出も(驚きも泣きも)きちんと練られている……といったところ。

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海辺と思しき場所で、あかねがゆいを助けるシーンも。全然関係ないが、筆者は『タオルケットをもう一度2』のラストを思い出した

本作をしばらくプレイして気づくのは、グラフィックが「青」でほぼ完全に統一されていることだ。これがゲーム全体に夜の静けさやまるで海底施設のような趣きを加えている。 病院を探索する際のBGMもほぼピアノの音だけで構成されたアンビエントなものであり、そうした雰囲気をより強く感じさせる。上述のグラフィックと音楽、そしてストーリーや設定が調和し、静謐な世界観を作り出すことに成功している。

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シルエットが特徴的なこの魚は(おそらく)シュモクザメ。こちらに襲いかかってくる。変わり種だとアンボイナガイなんかも登場

作中では大半のマップに白いシルエットだけで構成された魚が数多く泳いでいることも特徴だ。宙を悠々と泳ぐ大小様々な魚たちは、水族館の水槽にそのまま入り込んでしまったかのような「幻想的」イメージそのもの。水族館の海底トンネルを歩いているときの感覚も近いかもしれない。余談だが、水族館好きである筆者としては嬉しいビジュアルだった。

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ダメージを受けた際の演出。見た目にも痛いし、派手なので結構ビビる

ちょっとシステムの話もしておこう。本作はライフ制を取っており、襲いかかってくる魚や棘のある生物に触れるとダメージを受けてしまう。もちろんライフがゼロになればゲームオーバーだ。また、時々恐怖感を煽るBGMとともに出てくるホオジロザメに食べられると即座にアウト。急にBGMが変わったり、マップ移動が出来なくなるのはホオジロザメ登場の前兆なので注意しよう。

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サメが血の匂いに敏感であることを利用し、輸血パックを投げて離れた場所に誘導する

もちろん、魚や水棲生物は単なる雰囲気付けのために存在しているわけではない。ダメージを与えてくる敵としてだけではなく、その習性をうまく使う形で謎解きギミックの方にも絡んでくる。それに加えて、シルエットだけであることにもきちんとした理由が存在する……つまり見た目やイメージだけが先行しているわけではなく、きちんとシステムやシナリオとの整合性や統一が図られている。魚であるのにも、きちんと意味がある。当たり前と言えば当たり前だが、そこは大事。

そのコンパクトさをどう考えるか?

さて、ここまで『UTOPIA』の様々な見どころを紹介してきた。
……が、実は一点だけ、筆者がまだ触れていない個所がある。

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本作がおそらく『世界初のイルカの出産を手伝うシーンが存在するゲーム』だということ? いいえ違います

身も蓋もない話かもしれないが、それはボリュームだ。本作のプレイ時間は公式の見解では1時間程度とかなり短い。それゆえ長さの不足を嘆く声もちらほら聞こえてくる。筆者の場合は初回プレイが30~40分と、さらに短時間でクリアしてしまった。

正直を言うと、筆者も本作はそこが弱点であるように思う。作られたゲーム内の世界をもう少し歩き回りたい、もう少し仕掛けを解きたい……というのはよくある意見だが、後半の演出(団地のアレは本当に冷や汗ものだ)や、設定・グラフィックetcから来る幻想的・静謐な空気作り等が好感触だったがゆえに、本作は特にそう感じた。追加ルートやシナリオ自体の延長等が望まれるのもうなずける。

ただ、その短さが本ゲームの魅力を致命的に損なっているかというと、決してそうではない。私たちが抱くのは、「もっとプレイしたい!」といった感覚に近い。もっと長くその世界に浸っていたいと思わせるような、印象的・幻想的な世界を体験させてくれるコンパクトな作品だと言える

余計な部分を削ぎ落とした、シンプルでファンタジックなアドベンチャーゲームである『UTOPIA』。暑い日の続くこの季節、涼しげなカラーを持った本作をプレイしてはいかがだろうか?

[基本情報]
タイトル UTOPIA 幻想ホラーアドベンチャー
制作者 晋太郎 (lab.
クリア時間 およそ45分〜1時間(全シーンを見たい場合は約3〜4時間ほど)
対応OS Windows XP/Vista/7/8(RPGツクールVX RTPが必要)
価格 フリーウェア

ダウンロードはこちらから
ふりーむ! → http://www.freem.ne.jp/win/game/6963

VR体験施設の検索サイト「taiken.tv」
  • 20140328135231

    水原由紀(@mizuharayuki

    読みは「みずはらゆき」。ゲーム業界のはしっこに勤めつつ、色々書いてます。思い入れの強いゲームは初代『.hack//』や『風ノ旅ビト』、『Dear Esther』『ゆめにっき』『Ruina 廃都の物語』などなど。2015年マイベストははむすたさんの『ざくざくアクターズ』。美学と工学の交差するゲームを求め、今日も片道切符。Narrative関係勉強中。