おとめ座の女王はキュートでハード。ピクセルアートRPG『Virgo Versus The Zodiac』

RPG,インディーゲーム

夜の空に浮かぶ数多の星を線で結び、人や動物や神々の姿をそこへと見出す「星座」の世界。とりわけ古代ギリシャにおける星座にまつわる神話の数々は現代に至るまで語り継がれており、日常生活の中でもっとも身近な所にある「物語」のひとつといえる。創作においては、大ヒットした少年漫画『聖闘士星矢』を代表格に、星座の世界を下敷きとした更なる物語も生まれている。今回紹介するのもまた、そうした星座をモチーフとした作品だ。

『Virgo Versus The Zodiac』はブラジルのデベロッパーMoonanaが開発したピクセルアートスタイルのロールプレイングゲーム。STEAMにてWindows PC版が2019年12月13日より配信されている。配給はDEGICAが担当し、日本語表示にも対応している。

処女宮の女王の御成り!

https://www.youtube.com/watch?v=tfpkOehIjNI

かつて絶対者達によって支配されていた銀河の世界。絶対者達の統治の下で栄華を誇った黄金時代も遥か昔のこととなり、いつしか銀河は黄道十二宮に分かたれ、十二宮の星座を司る者「ゾディアック」(Zodiac)により別々に統治されるようになりました。

さて、こちらに御出でますはゾディアックの一柱、「おとめ座」の象徴たる少女「ヴァーゴ」(Virgo)。その名が背負うものに恥じないワガママ女王様である彼女は、ゾディアック達がそれぞれ好き勝手に銀河を支配している無秩序な現状が我慢なりません。自身を頂点とした新たな黄金時代を築くため、自分以外のゾディアック達をブチのめし、支配者の証たる12の王冠を集めるべく行動を始めます。

旅の道連れは、生きる人型クッキーのジンジャーブレッドマン、ヴァーゴの従者を自称する優男スピカ、旅の途中でなにやら暗躍を繰り広げる仮面の魔女、そしてアルパカ。かくしてここに銀河をめぐる征伐の旅が始まりを迎えるのです。

血濡れの正義の意義を問う「アンチ・ヒーロー・ファンタジー」

『Virgo Versus The Zodiac』ではプレイヤーはヴァーゴとなり、ゾディアック達が支配している地域を旅して目的となる王冠を集めていくことになる。地域はそれぞれ「資ホーン主義」に支配されたカプリコーン(やぎ座)、コロセウムで日夜闘いが繰り広げられているるレオ(しし座)、魚人たちが陸で暮らすパイシーズ(うお座)など、その支配者であるゾディアック達の信念が反映された一癖も二癖もあるものになっている。

本作では人々や物事の性質を表す属性として「野心(青)」「柔軟(緑)」「不動(赤)」の3つの属性が存在している。これらの属性はゲーム内で登場する武器や防具の他、選択肢にも色付けがされており、選択肢を選んでいく中で物語の展開、ひいては迎える結末が変化することになる。たとえば、瀕死となった敵と相対した時、容赦なくとどめを刺すのか、あるいは情けをかけるのか?またあるいは、冠を入手するにあたって、武力行使で事にあたるのか、あるいはゾディアックとの交渉の道を探るのか?

ヴァーゴが突き進むのは己の覇道の為であり、決して勇者として悪党を誅し人々を救うようなものではない。可愛らしい見た目に反し、その旅路は選んだ選択肢によっては苛烈で過酷な道にもなり得る物で、時として自身の選択と、それが招く結果の重みを突きつけられることにもなるだろう。

また、ストーリーの本筋からはやや逸れるが、箱や街灯といった道端にあるオブジェひとつひとつに周到にテキストが用意されている点も見逃せない。周囲をくまなく調べて回ってみるのもちょっとした楽しみになる。




▲箱ひとつ取っても、この反応の多さである

バトルはタイミングが命!決して気を抜くな

『Virgo Versus The Zodiac』のもう一つの特徴が手強い戦闘シーンだ。
基本は味方と敵が交互に攻撃・防御などのコマンドを選択していくターン制で進んでいくが、攻撃を行うときや受けるときにQTE(クイックタイムイベント)が発生し、キャラクターの行動に合わせて様々なゲージやマーカーが出現し、指示されたボタンをタイミング良く押すことでダメージが増減するようになっている。QTEをパーフェクトに入力できた場合と入力をミスした場合ではダメージに2倍近い差が出るため、特に敵から攻撃を受ける際にボーっとしていると大ダメージを受けてアッという間に倒されてしまう。

防御系の行動を行うとガードの耐久力となる「純潔」が溜まり、攻撃を受ける際にHPの替わりになる他、「純潔」が残っている状態で攻撃を受けると「カウンターターン」が発生してカウンター技を繰り出すことができる。敵のHPへダメージを与えるためにはまず「純潔」を削りきる必要があるが、無暗に攻撃を仕掛ければカウンター技による手痛い反撃を受けるリスクもあるため、いかに自分のガードを維持しながら相手のガードをかいくぐって攻める事ができるか、「純潔」とカウンター技を巡る攻防が勝利の鍵を握ることになる。

加えて「野心」「柔軟」「不動」の3属性は戦闘時における3すくみの属性にもなっており、敵の弱点やパーティ内のバランスを考慮しての装備の編成も重要となる。
総じて本作のバトルは雑魚との戦闘であっても漠然と攻撃しているだけでは勝利はおぼつかないようになっている。本作はRPGで緊張感のあるバトルを楽しみたいという人にオススメできるタイトルになっていると言えるだろう。

なお、デフォルトの設定では戦闘中のコマンドの決定やQTEの入力がキャラクターごとにボタンが割り振られており、いざという時に混同・混乱してしまいやすい。もしも操作しにくいと感じたら、オプション画面から「戦闘時ボタンモード」の設定を「ワンボタンモード」に変更することを強くお勧めする。

[基本情報]
タイトル: Virgo Versus The Zodiac
制作者: Moonana
クリア時間:  15時間~
対応OS: Windows
価格: ¥2000

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  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。