そのゲームは命を量る。ゲームジャム「Ludum Dare 44」作品ピックアップ

インディーゲーム

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あるテーマを題材に限られた時間の中でゲームを制作するイベント「ゲームジャム」。日夜様々なゲームジャムが開催され、その中から数多の作品が誕生している。限られた時間の中から生まれた作品は荒削りながらも発想がダイレクトに反映され、一部はボリュームアップを経て本格的な作品として改めてリリースされることもある。そうしたゲームジャムの中でも長い歴史を持っているのが、2002年より開催が続いている「Ludum Dare」(ルドゥム・ダレー/ルーダム・デア)だ。

本記事では直近の2019年4月27日~30日にかけて開催された第44回Ludum Dareより、作品を5点ピックアップして紹介する。第44回のテーマは「your life is currency」(”命は貨幣”)となっており、このテーマにそったユニークなゲームがいくつも登場している。イベント結果はLudum Dare公式サイトから確認できるほか、itch.ioより多数の作品がダウンロード・プレイ可能だ。
なおテーマの特質上、残虐描写を含む作品も多いため、そうした作品が苦手な人は注意の上で閲覧してほしい。

『ミンナガFX』

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junt74氏制作の『ミンナガFX』(WE:FX)は、60秒以内で稼いだスコアを競うタイムトライアル形式の全方位シューティングゲーム。

本作では敵を倒してもスコアを得ることができない。ではどうするかというと、敵を倒して資金を得て、自機を画面上部のコインに突撃させてスコアに変換し、enterキーで資金を消費して自機を復活させるというサイクルを繰り返すことでスコアを稼いでいくことになる。また、自機は敵の出現ポイントに突撃させて敵を増殖させるのにも使用できる。
さらに厄介なのが自機の価格(兼入手スコア)や敵から得られる資金が相場のごとく変動するということ。「安く買って高く売る」ができればもちろん理想的だが、リアルタイムに変動するためタイミングを測るのがなんとももどかしい。

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開発者ブログでは今回のLudum Dare44の参加記録が掲載されており、どのような発想の過程で本作が作られていったかを見ることができる。合わせて読んでおくとより理解が深まるだろう。

URL: https://junt74.itch.io/wefx

『What’s your lifetime value?』

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BlackLambert氏制作の『What’s your lifetime value?』はゆりかごから墓場までをタイムラインでシミュレートしたクリッカーゲーム。

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乳児の頃は抱いてもらったり離乳食を食べたりしかできないが、幼児、ティーンエイジャー、そして成人へと成長していくごとに実行できるアクションが増えていく。そしてクリックした行動を通じて、家族との絆(familial bonds)や収入(wealth)、学業(education)、恋愛(love life)、趣味(self fillfullment)といった人生の諸要素を充実させていく。
アクションの実行には一定の時間が必要となるが、人生の時間は有限なので、何を為すのかはよく考えて行動しよう。

そして寿命を迎えた折には諸要素が点数化され、その合計点…すなわち、いかに”リア充”であったかが表示される。
ゲームに人生の価値を量られるなど下世話だと捉えるか、それとも自身の人生を省みて、その価値について考えを巡らてみるのかはあなた次第だ。

URL: https://blacklambert.itch.io/whats-your-lifetime-value

『Slice of Scythe』

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高校生のcnnmon氏による『Slice of Scythe』はキュートな死神見習いの女の子の物語。
ある日通販サイトを見ていると、イケてる帽子が魂4つ+送料の大セール中!しかしお金がなかった彼女は、ダディから贈られた鎌を片手におこづかい稼ぎを画策します。

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掲示板に張り出された困りごと相談は4人分。それぞれ「おつかい」「バイク便」「計算問題」「部屋の片づけ」の4種類のミニゲームになっていて、ミニゲームを成功させる事でお金を手に入れることができます。
計算問題にはちょっとした引っかけもあるので要注意。

…が、人間界のお金はいくら稼いでも送料にしかなりません。彼女が取る行動は常にひとつです。
なんといっても”命は貨幣”なのですから。

URL: https://cnnmon.itch.io/slice-of-scythe

『Piggy Butchery』

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豚さんズ、精肉工場から大脱走!Reality Blind制作の『Piggy Butchery』は強制スクロールタイプのアクションゲーム。
いわゆるランゲームに近い構成の作品だが、本作では逃走中の豚さんを直接操作することはできず、行く手を阻む丸ノコなどの障害はジャンプ台や爆弾を矢印キーの入力で購入して設置して回避させることになる。

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しかし最初は購入資金はゼロ。ではどうするか?というと、豚さんがお肉になることでお金を稼ぐのである。

豚さんの残数がゼロになるとゲームオーバーとなるため、際限なく資金を稼ぐことはできない。うまく先へ進むためにはジャンプ台などの無駄置きをしないようにするほか、途中で捕まっている豚さんを救出して残数を増やしていく事が重要となる。
ブラックな味わいと見た目に反した戦略性が魅力の作品だ。

URL: https://realityblind.itch.io/piggy-butchery

『Lousy Life Lessons』

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Awesome Alliternation Allianceによる『Lousy Life Lessons』は、プレイヤーは猫のスタントマン、もといスタントキャットとなって映画のシーンの数々を演じていく2Dアクションゲーム。
高所から飛び降りた場合、着地する前にジャンプボタンを改めて押して着地姿勢をとる必要があり、地味ながらも猫らしさやアクション性を強調している。

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「あー、あったま痛ってえ」

「猫に九生あり(a cat has nine lives)」のことわざに由来するのか、スタントキャットは剣山に落下してバラバラになるなどの致命傷を受けてもケロリとした顔で独白を続ける。
そんな主演男優賞もののニヒルさを見せる彼も、映画の主演女優に一目惚れ。彼女の気を惹くべく奮闘することになる。

そして映画のラストシーン、命を削り続けたスタントキャットはある決断を迫られることになる。しかしその決断を迷うことは恐らくないだろう。
いつだって男が命を懸けるのは女の為と相場は決まっているのだから。

URL: https://alliterationalliance.itch.io/lll

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。