新タナ遊戯生産者ヲ迎ヱ、当該地区”再開放”ス 「東京電脳特区 v1.0」レポート

イベントレポート,インディーゲーム

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「インディーゲーム作家達自身で主催し演出する」新機軸のインディーゲームイベントとして、2月23日に第1回目が開催され注目を集めた「東京電脳特区」。
6月15日、再び東京・渋谷のクラブ「青山蜂」を会場として、第2回目となる「東京電脳特区 v1.0」が開催された。会場ではインディーゲーム作家12組による12作品の展示が行われ、梅雨時の生憎の天候の中でも各タイトルに待ちの行列ができるほどの多数の来場者が訪れていた。

もぐらゲームスでは前回に引き続き「東京電脳特区」で見かけた注目作品をピックアップして紹介していくほか、会場内で実施されたゲーム大会の模様をリポートする。
また、イベント内で設けられた「試遊後のSNSでの情報拡散」の趣旨に基づき、弊誌記者陣が当日に現地より発信したtwitterのツイートをモーメントとしてまとめている。併せて閲覧頂き、イベントの様子を感じる一助としてほしい。

前回(v0.1)の記事はこちら

hako 生活『UNREAL LIFE』

2018年の「TOKYO SANDBOX」にも出展されていた、個人開発者のhako 生活氏制作による横スクロール型アドベンチャーゲーム。

昨年の時点ではパソコン(Steam)のほか、iOS、Android向けのリリースが告知されていたが、2019年5月27日、新たにNintendo Switch版が「UNTIES(アンティーズ)」からリリースされることが発表。今回のイベントでは、件のNintendo Switch版をプレイできた。

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PC版はマウスでカーソルを動かして怪しいポイントを調べ、左ボタン押しっぱなしで横にスライドするようにカーソルを動かし、主人公の少女「ハル」を移動させる特徴的な操作系になっていた。Nintendo Switch版は、コントロールスティックでハルを移動させ、Aボタンで対象を調べる操作系へと一新。当もぐらゲームスでもレビューを掲載している『返校 -Detention-』のNintendo Switch版に近い作りになった。さらにHD振動に対応。移動の際に足元の材質に合わせてコントローラが震えるようになった。

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他にテキストのフォントがドット調から、スタンダードなフォントへと一新。これはhako氏いわく、多言語対応(ローカライズ)の関係で改めたとのことだ。

また、ゲームエンジンも「Unity」へと変更し、ほとんど作り直したとのこと。当初、昨年内の配信が予定されていた本作だが、イベント出展の時にパブリッシャーとの出会いがあり、その経緯を経て今回の新バージョンが作られることになったようだ。現時点での開発度は50%で、配信時期は2019年秋頃を目標にしているという。
ミステリアスなストーリー、雰囲気満点のグラフィック、信号機が案内役というユニークな設定はSANDBOXの時から健在で、今回の出展では、新エリアの海が見えるアパートも探索でき、世界観の広がりを感じられた。仕上がりの時が待ち遠しい一本だ。

(シェループ)

Website:http://www.unreal-life.net/

KSYM『寿司が走るやつ』

寿司が走るゲームである。数にして50個。

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……と、作品名、内容だけでも強烈な関心を抱いてしまうこと止むなしのハイスピードレースゲーム。2019年1月15日頃、作者のKSYM氏が自らのTwitterに動画と共に公開し、大きな反響を呼んだ作品でもある。

肝心のゲームは見た目とは裏腹にとてもシビア。タッチ操作で左右の曲がる方向を調節、長押しでブレーキをかけたりしながら自走する寿司を制御し、サーキット上を進んで上位を目指すのだが、当の寿司がとんでもなく速い。他のゲームで例えるなら『F-ZERO』並。さらにガードレールに一度でも接触すれば寿司は大破。コースアウトした時も同様で、最初からやり直しになる。サーキット上にも寿司をブースト状態にする(※注:言葉通り)「醤油」、大ジャンプさせる「ワサビ」が設置されていて、プレイヤーに瞬時の制御を求めてくる。カーブも多く、ブレーキをかけ、適切な方向に調節しなければ……ご想像の通り。

本作はスマートデバイス向けアプリとして制作されているが、出展されていたのはPC版で、イクラ軍艦(※注:フィギュア)のコントローラでプレイできた。

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操作もやることも簡単だが、とにかく寿司があり得ないほど速く走るので、常に迅速な方向調整が要求されては脳がパニック状態になる。実際に試遊中は何度もリタイアしては、やり直しを繰り返した。結局、筆者は一周もできずに終わってしまったが、リタイア後の高速リトライ、やり直す度に上達を実感できるバランスも相まって、非常に高い中毒性がある。グラフィックも美しく、特に寿司が大破する時にはちゃんとシャリも粒になって飛び散るなど、(妙な)こだわりと気迫に溢れている。具体的な時期は不明ながら、2019年内の配信予定しているとのこと。色んな意味で見逃せない新進気鋭のレースゲームだ。

(シェループ)

Website:http://ksym.jp/sushi/

イリリ『ReversEstory』

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前回、探索型アクションゲームの『RuinsStory』を出展されていた個人開発者イリリ氏制作による、ローグライク・アクションシューティング。弓矢を装備したネコ耳少女の「ナナ」を操作し、機械的な魔物がはびこる遺跡を探索していく。丁度、イベント開催当日の2019年6月15日より、iOS、Android用無料アプリ(※アイテム課金あり)として配信を開始した。

特徴はスマートフォン及びタブレットのタッチスクリーンに最適化された、爽快、且つ軽快な操作性。スリングショット(パチンコ)の感覚でキャラクターを引っ張って飛ばす感覚で移動させ、タッチ操作で弓矢を放ちながら、襲い来る敵を攻撃していく。最初は戸惑いやすいが、全方向縦横無尽に移動、ジャンプも連続して実施できる自由度の高さも相まって、意外にすぐ馴染め、簡単操作で華麗なアクションを繰り出せる気持ちよさから、思わず熱中して遊び込んでしまう魅力に秀でている。

本編も自動生成された遺跡内のエリアを順に巡り、敵の全滅を目指す、ローグライクらしい構成。ただ、次のエリア開始前に二枚のタロットカードの内、一枚を引く場面が挟まれ、選んだカードによって次のエリアがそれに応じた構造になる、特徴的なシステムが組み込まれている。また、敵を全滅させる度に様々な武器・アイテムが散らばり、現在の装備との入れ替えが実施可能。各武器の性能も様々で、組み合わせによっては矢が属性を帯びた攻撃に変化したり、追加効果で毒が加わるなどの凶悪化を遂げたりもする。

操作は簡単、キャラクターも可愛らしいが、アクションシューティング、ローグライクどちらのジャンルが好きなプレイヤーの琴線を刺激する、遊び応え抜群のゲームに完成されている。先の通り、既にゲームは配信中。少しでも興味のある方はぜひ、ストアページよりダウンロードしてみていただきたい。

(シェループ)

Website:https://clorlles.wixsite.com/ilili-world/reversestory
App Store(iOS版):https://apps.apple.com/jp/app/reversestory/id1463740223
Google Play(Android版):https://play.google.com/store/apps/details?id=ililiworld.ReversEstory

生高橋『ELEC HEAD』

生高橋氏の制作した『ELEC HEAD』は、ロボットの体から流れる電流を使ってステージ内の仕掛けを動かしつつ先へと進んでいくパズルアクションゲーム。
仕掛けには「電流が流れている間だけ現れる足場」や「放電する電球」などがあり、ロボットが接触している床や壁を伝って電流が流れて動作するようになっているため、ジャンプなどによってON・OFFを切り替えていく必要がある。
加えてステージが進むとロボットの頭を投げ飛ばすアクションが追加され、距離が離れたところにも電流を流すことができるようになるが、10カウント以内に頭を拾いなおさないとロボットが爆発してしまう。

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本作は2016年の日本ゲーム大賞・アマチュア部門において優秀賞を受賞した作品で、受賞当時に弊誌にてゲームレビューおよび制作者インタビューを掲載している。ゲーム内容については当該記事も併せて参照してほしい。

開発者の生高橋氏によれば「当時とほぼ変わらない」とのことだが、すっきりとした操作とルールに、ともすれば意地の悪さも感じられる巧みなステージ構成は見事の一言。
初公開から時間が経過していることに際してなるべく早くリリースを行いたいとしており、現在は1~2か月以内のリリースを目標に開発を進めているとのこと。本作が手元に届く日がいよいよやってくることになりそうだ。

(真野 崇)

Website:https://hyaku1128.wixsite.com/gorillarigo

FortyWorks『Binary.』

サークルFortyWorksが制作中の『Binary.』はウェーブクリア型の3Dアクションゲーム。
電脳世界を舞台に主人公のクラッカーの女性が防御プログラムと戦いつつネットワークの奥地へと侵入していく。
自キャラクターの繰り出せるアクションが豊富に用意されており、ウェーブ(敵集団)を突破するたびに新たなアクションを入手して装備することができる点が主な特徴となっている。

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敵のロックオンやアクションの使い分けのために多数のボタンを使用し操作にやや煩雑さがあるものの、二挺マシンガンを乱射しつつ敵に近づき、剣を召喚して斬り付けつつ打ち上げ、すかさず瞬間移動の「ブリンク」で追いかけて空中追撃、とどめは”指パッチン”からの衝撃波…というように、数々のアクションを使いこなせるようになればなるほど空間を自在に跳躍しヒロイックなコンビネーションを描くことができるようになる

「ブリンク」にはテレポートした先の敵を短時間のあいだ釘付けにする「ブリンクジェイル」という特性が付与されているほか、「ハッキングツール」を展開して攻撃のリーチを強化するなど、主人公には自由なコンボの組み立てを強力にアシストする様々な能力が備わっている。自分なりの連係を考え、格好良くキメられるようになったときの快感は格別だ。

(真野 崇)

Website:https://forty.hatenadiary.jp/

避雷『BOOSTER BOOTS』

避雷氏が制作中の『BOOSTER BOOTS』は、そのタイトルの通りロケットブースター付きブーツを駆使して戦う最大4人対戦のバトルロイヤルアクションゲーム。1レバー1ボタンのシンプルな操作が特徴となっている。

本作では対戦相手を上から踏みつけることで得点となる。そのため、バトルは基本的にジャンプとブーストで対戦相手の上空を取り合う動きになるが、ブーストで移動する場合にはビームのような移動予告が表示される。この移動予告をチェックして、対戦相手を踏みやすく、かつ踏まれにくいポジションを考える必要がある。視認性がやや気になるところだが、いわゆる「立ち回り」に主眼を置いた駆け引きの熱さが片鱗を覗かせていた。

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逆転要素として独走状態のプレイヤーには「クラウン」がセットされ、クラウンを被ったプレイヤーを踏むことで高得点を得ることができる。
それ以外にも爆弾やミサイルがランダムに配置され、踏みつけることでスイッチが入ったり、ステージによっては画面奥のトーテムポールがビームを放ち、地面を燃やしてくるなどギミックも満載。今後はキャラクターにも性能差を持たせてより個性付けを行っていくとのことで、更なる進化に期待したい。

(真野 崇)

Website:https://www.betheentertainment.com/

『シューフォーズ』バトルトーナメント「電脳杯」

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会場3階では展示タイトルのひとつ、ブイブイラボ『シューフォーズ』を用いたゲーム大会が開催された。
『シューフォーズ』は1対1形式でUFOを操作して対戦する「対戦型クレーンゲーム」。上から降ってくる木箱をパンチで破壊してターゲットとなるアイテムを探し出し、吸引ビームで自分のゴールまで引っ張って落とすと得点となる。対戦相手をパンチで直接妨害したり吸引ビームでアイテムの横取りを狙うことも可能で、ポップな絵柄と合まったドタバタ感が楽しめる作品となっている。

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大会は総勢12名によるトーナメント方式で行われた。
試合は吸引力・パンチ力の高いパワータイプキャラ「アダムス」が猛威を振るう一幕や、ゴール手前に用意されたワープホールを絡めた攻防、サイズが大きいためゴールにたびたび引っかかるシャチホコ、準決勝以降はゴールチャンスがお邪魔キャラクターによる妨害で潰えるハプニングも起きるなど、一進一退かつ波瀾の展開の連続。本作が未だ開発中の作品であることを忘れてしまいそうになるほどの熱戦が繰り広げられた。
ちゃっかり大会にエントリーした弊誌真野は3位決定戦にて敗退。激戦を制し優勝を果たした「フォルス」選手にはトロフィーと書き下ろしイラストが贈呈された。

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。