SF短編ノベル『Eternal』17歳の女性宇宙飛行士と人工知能の地球帰還までの退屈で静寂な30日間の記録

宇宙開発が発展し、人類の宇宙進出が一般的なものになったという時代。SF作品定番の設定で、今日もそれを題材にした娯楽作品は続々と誕生している。現実の宇宙開発は有人宇宙飛行や旅行が実現するほどに及んではいないが、それらの作品が描いた未来を現実にするための動きは世界規模で進んでいる。

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そんな宇宙開発が進んだ未来を舞台とした作品で、昨今出て間もないSF短編ノベルゲーム『Eternal』を今回は紹介する。2019年4月26日にWindows PC、Android用フリーゲームとして公開された作品だ。前者はフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」で、後者はGoogle Playストアよりダウンロードできる。開発環境はUnityで、ビジュアルノベルゲーム作成ツール「宴」を用いて制作されている。

地球帰還までの30日間、彼女は退屈な日々を過ごす。

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2102年の未来。主人公で宇宙飛行士の「ハル」は、史上最年少となる17歳で有人惑星探査を達成。降り立った惑星「ロールド」でのサンプル採取ミッションに従事し、瞬く間に遂行した。その後、彼女は宇宙船「アムリッタ」へと戻り、地球への帰路に着く。ロールドから地球までの距離は平均30日。それまでの間、彼女は宇宙船の人工知能「テラ」と共に、ミッションの成果をまとめたレポートを書きまとめ、時に今後の人生のことも考えながら、30日間の日々を送っていく。

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物語のあらましはこの通りだ。手短にまとめれば、少女と人工知能しかいない、宇宙船内での30日間の模様を眺めていくだけ。宇宙飛行士の設定から、未開の惑星に降り立って探査する展開を想像するかもしれないが、その目的はオープニングで早々に終了。以降の”帰り道”が本編という、やや意表を突いた内容になっている。

なので、全体的に起伏のない展開が大半を占める。というか、ほぼ同じことの繰り返しである。レポートを作ったり、テラと会話したり、食事したり、就寝したり……。退屈、と言われても仕方がない日々の様子が続いていく。

ゲームシステム周りでも特筆すべき機能、要素はない。基本的に会話を読み進め、時々現れる選択肢を選んで物語を追っていくだけ。ノベルゲームとしては至って普通の作りだ。

退屈な日々の先に待つ、思わぬ”仕掛け”と増えていく”謎”

本当にそれだけなの、と言われれば”イエス”だ。
特に登場人物はハルとテラ以外にいない。厳密にはオープニングに「コバヤシ」と呼ばれる上官が出てくるが、それっきりで、以降は登場しなくなる。ついでに言うなら、テラは人工知能なので、人間のキャラクターもハルだけだ。まさに”ひとりぼっち宇宙船”である。なんだか、どこかで聞き覚えのある表現だが、気にしてはならない。

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なので、率直に言って物語としては非常に退屈。起伏のない展開が続くので、プレイヤーの根気が試される内容になっている。実際にハルもこの何ら変化のない日常に退屈する素振りを見せる場面があるので、思わず共感してしまうほどだ。

しかし……である。選択肢が登場するようになってから、次第に物語全体に不穏な空気が立ち込めてくる。少しネタバレするが、最初に登場する選択肢は大したものではない。単に思ったことを素直に選ぶだけのものだ。

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だが、次の選択肢からはプレイヤーの好奇心を刺激するものに。同時に本編でも、ある”疑念”が生まれる。ハルもそれに気付き、どのようにするかを考え、選択肢という形で決めることになる。

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選んだ末に何が起きるのか。それは実際にその目でご覧いただきたい。一つ言うならば、物語全体の”退屈さ”が吹き飛ぶ。特にハルの考えに同調し、思うがままに該当する選択肢を選べば、確実にそうなるはずだ。

そして以降、”30日目への到達”に尽力するだろう。だがその間、序盤で生じた疑念はどんどん膨れ上がる。物語に対しても”退屈さ”以上に”謎”が増していく。

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一体、それらを重ねに重ねた末の30日目に何が待つのか?
いや、そもそも地球に着くのでは?
退屈な日々から解放されるんじゃ?
詳しくは伏せるが、そこからは本作の目的意識が大きく変わって、プレイスタイルまでもが今までと違うものになるだろう。プレイヤーによっては、先ほどの同調を機に変わるかもしれないが。

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そんな具合に実は意外に特徴的な物語になっている。中でもエンディングへの到達には、予想外の試行錯誤をしてしまうはず。それを乗り越えた先にも、プレイヤーに”三つの決断”が求められ、思いもしなかった結末に向かって進む。例によって、それも実際に見てのお楽しみだ。ハルとテラはどうなるのかを”自らの選択”で目撃して欲しい。

ただ、一つ厳しく言わせていただくと、本作の題名にはもっと捻る必要があったように思われる。正直、プレイヤーによっては先の二番目に現れる選択肢の時点で、仕掛けが分かってしまう。実の所、筆者もとても好きな某SF映画を思い出し、まさかと思ったら若干外れた所はあれど、ほぼその通りの展開になって、少し興ざめしてしまった。

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それでも一連の過程、結末に至る流れは楽しませてもらったが、こういう物語を作るなら、徹底的に騙して欲しかったところだ。全体の作りと構成が悪くないだけに、その辺の甘さが筆者としては残念に感じてしまった。

詰めの甘さもあるが、独特な余韻を残す短編ノベル

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また、所々で「シュミレーション(シュミレーター)」、「人口知能」と言った残念な誤字が散見されるのも萎える。ちゃんと表記されている箇所もあるので、純粋に打ち間違いなのだと思うが、可能ならアップデートで修正していただきたいところである。

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ボリュームは短編ということで、エンディングまで最長でも1時間半程度。しかし、件の選択肢に翻弄されれば、二倍に膨れ上がる、少しユニークな物量になっている。特にエンディングまでの試行錯誤には手間取るかもしれない。その際は、作中で語られる宇宙船内の”弱点”に注目、とだけ言っておこう。

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その他、グラフィックは高解像度表示による鮮明、且つ数も豊富な一枚絵(スチル)が異彩を放つ。ストーリーの設定に沿った静寂、それでいて不気味な音楽も雰囲気作りに一役買っている。ウィンドウの透過率設定を始め、昨今のノベルゲームに欠かせないオプションもほぼ網羅しているほか、操作は基本的にマウス主体なので煩わしさは皆無。スマートフォン版もタッチ操作なので快適だ。ただ、メニューインターフェースがPC版と共通で、ややタッチしにくいのが難点(タブレットの場合は除く)。この辺はツールの事情もあるのかもしれないが、できればサイズを大きくするなり、工夫を凝らして欲しかったところだ。

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それらの不備と題名を始めとする詰めの甘さ、序盤の退屈さが惜しくもあるが、全体的には何とも言いがたい余韻を残す短編ノベルゲームに完成されている。少しベタさもあるが、静寂で微かな不気味な空気感が印象を残す一本。短時間で遊べて、適度に刺激を得られるノベルゲームをお求めなら、プレイいただきたい良作だ。退屈な日々の裏に隠された真実を探ってみよう。

[基本情報]
タイトル:『Eternal』
制作者: kunsina
クリア時間: 1~1時間半(※状況によっては2~3時間)
対応OS: PC(Windows)、Android
価格: 無料

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/20066

※Google Play(Android版)
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.kunsina.etr

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