空気を「共有」しつつ宝探しで競うアナログゲーム『海底探険』。デザインが光るOink Gamesの期待作!

アナログゲーム,ボードゲーム

大盛況のうちに終了したアナログゲームの祭典「ゲームマーケット2014秋」。来場者数は過去最高の7,200人と発表された。会場では壁際に位置し、ひときわの盛り上がりを見せていたのがOink Games(オインクゲームズ)のブースだ。

Oink Gamesは、美しいデザインのアナログゲームを多く制作している。過去には『小早川』『薮の中』などがあるほか、I was gameが制作した『ダンジョンオブマンダム』の新装版の販売なども手掛けている。

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いずれの作品もデザインはもちろん、ゲームのルールとしてもシンプルながら奥深い。最近ではスマホ向けのパズルゲーム『MUJO』をリリースし、こちらも非常に好評を博していたのが記憶に新しいところだ。

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今回紹介するのは、そんなOink Gamesがゲームマーケット2014秋で販売した新作、『海底探険』だ。

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美しく世界観を反映したコンポーネントのデザイン

今回の『海底探険』の箱を開けてまず目を引くのがコンポーネントだ。コンポーネントとは、アナログゲームにおける付属品。『モノポリー』には家のコンポーネントやプレイヤーそれぞれが使用する駒、『小早川』であれば家紋のようなデザインのコインなどのことを言う。

これまでのOink Gamesが作ってきたゲームは、最近のアナログゲームの主流と同様にカードが主体となるものが多かったが、今回の『海底探険』では下の写真のようなコンポーネント。

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一目で分かるように、本作はカードが一切入っていないのが特徴の一つだ。ただ大きな盤面を使うタイプのボードゲームでもなく、過去作と同じくタバコの箱二つ分ぐらいのサイズの箱に収まるサイズで遊べるセットに仕上がっている。Oink Gamesのゲームは、いずれもパッケージの統一されたサイズ感とデザインが美しさを際立たせていると感じる。また、本作ではOink Gamesとしては初めてダイスを使う。コンポーネントでも新たな挑戦が試みられているというわけだ。

コンポーネント単体でみても、とてもユニークで興味をそそるものに仕上がっている。特に、潜水艦を思わせるデザインのコンポーネントは、『海底探険』というゲームタイトルとぴったりマッチするし、これからこの潜水艦を舞台にどんなゲームが展開されるのかと、思わずワクワクしてしまう。カラフルな木製のコマも視覚的に楽しい。正直、これほどユニークなコンポーネントを使用していると、「制作コストは大丈夫だろうか……」と余計な心配をしてしまうほどだ。

ゲームマーケットの会場では、その美しいデザインに惹かれてか外国人の方も足を止めてエキサイ卜していたのが印象的だった(ちなみに英語版の説明書も入っているため、英語圏の方とも一緒に楽しめるようになっている)。

ユニークな世界観に支えられたゲームルール

今回の『海底探険』の世界観は次の通り。

貧乏な探険家たちが一攫千金を目指して海底遺跡に財宝を取りに行きます。全員がライバル同士ですが、予算のために仕方なく1つの潜水艦を共同で借りることになりました。このオンボロ潜水艦では全員で1つの空気タンクを共有しなければなりません。空気がなくなる前に潜水艦に帰らないと、すべての財宝を落としてしまいます。さあ、誰が一番たくさんの財宝を持ち帰ることができるでしょうか。

(『海底探険』遊び方説明書より)


というわけで各プレイヤーは潜水艦の限られた空気を共有しながら、宝探しを進めていくことになる。深海の幻想的な空間が目に浮かぶようでもある。これまでのゲームにも増してユニークな世界観は、ゲームのルールを説明していく上でも説得力がある。

ゲームのルールを少し紹介しておこう。

まず、「遺跡チップ」というチップがレベル1~レベル4まで各8枚ある。遺跡チップには裏表があり、それぞれに数字が書かれている。

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レベル1は0~3、レベル2は4~7、レベル3は8~11、レベル4は12~15……というように、レベルが高くなるほど、数字が大きくなっていく。これを、裏を向けてこのように潜水艦の下に並べていく。

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プレイヤー達は、この潜水艦の下にある遺跡を探索していくことになる。ストーリーにもあったように、潜水艦に残る空気がカギとなる。

プレイヤーはサイコロを2個同時に振り、出た目の数だけ、遺跡チップをすごろくのように移動していく。ただし、サイコロを振る前に「進む」か「引き返す」かを選択することができる。この判断が実は非常に重要になる。

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2つのサイコロを振り、2+2=4が出て、先へ進んだ結果が上の写真。ここでは、遺跡チップを拾うか、そのままにしておくかも選択できる。一度遺跡チップを拾った場所には、上の写真のようにブランクチップを代わりとして置いておく。プレイヤーのいずれかがこのブランクチップのマスに止まったときには、ここに手持ちの遺跡チップを置くこともできる。

さて、遺跡チップを拾ってからがこのゲームの本番。次のターンからは、まず引き返すか進むかを宣言したあと、自分の持っている遺跡チップの枚数だけ、潜水艦ボード上の空気マーカーを下の写真の様に動かす。つまり、全員で共有している空気が、各プレイヤーの持っている財宝に応じてどんどん減っていくわけだ。

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持っている遺跡チップは1枚なので、1マス動かした。今後各プレイヤーが遺跡チップを持つと空気の減り具合は加速していく。

そしてその後先ほどと同様にサイコロを振り、コマを進めよう。ただし、この時遺跡チップを持っている枚数の分だけ、サイコロの出た目を減らさなければならない。本作のサイコロは1-3までの目しかない特殊なサイコロのため、最大でも出る目は6。つまり、遺跡チップを6枚持っていると身動きがとれなくなるほど重い縛りなのだ。遺跡チップを沢山持っていればいるほど動きが鈍くなる

全員が潜水艦まで帰るか、空気がなくなってしまったらラウンド終了。潜水艦まで帰れたプレイヤーは遺跡チップを獲得できるが、帰れなかったプレイヤーはそのラウンドで持ち帰れなかった遺跡チップを、潜水艦から一番離れている遺跡チップの場所に重ねて置く。これを3ラウンド繰り返し、3回で持ち帰った遺跡チップの表に書いてある数字すべての合計が大きいプレイヤーの勝ちとなる。

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コマを置くだけでなんとなく活気にあふれて楽しくなってくる

このゲームのポイントは、レベルが高くなるほど、すなわち奥に行けば行くほど高得点の遺跡チップが獲得できる一方、奥に進みすぎると、空気が減り始めたとき帰れなくなってしまうジレンマがある点だ。逆に言えば、敢えて大量の遺跡チップを抱えることによって空気を早く減らし、相手の邪魔をすることも可能。

うまく全体で共有する空気の管理をしながら、なるべく奥へ潜ってレベルの高い遺跡チップを発掘できるかが勝負となる。このあたりのジレンマデザインは、『海底探険』の世界観ともマッチしており、秀逸だ。

アナログゲームの粋が尽くされた作品

今回の『海底探険』は、近年次第に競争が激しくなり、レベルの高い作品が次々と生まれているアナログゲーム界を象徴するような非常に意欲的な作品だ。コンポーネントの美しさ、ユニークなストーリー・世界観、そしてシンプルだが奥深いゲームデザインが高度な次元で融合している。とくにコンポーネントに関してはオリジナリティの高さと、パッケージを開けた時の「こうきたか!」という、驚きの体験のレベルが高い。このあたりはなかなかデジタルゲームでは味わえない独特の感慨でもある。

アナログゲームならではの粋が尽くされた作品といえる『海底探険』。プレイしながら今後のアナログゲームに想いを馳せてみるのは如何?

[基本情報]
タイトル 海底探険
制作者 Oink Games(佐々木隼氏、佐々木吾朗氏)
プレイ人数 3~6人
プレイ時間 30分程度
価格 すごろくや、Roll&Roll Station秋葉原、書泉グランデなど各ショップで販売中。

  • Noah(@powerofgamesorg

    通称のあP。「もぐらゲームス」エグゼクティブプロデューサー&共同編集長。ゲームをする人。「ゲームのちからで世界を変えよう会議」の中の人。経営戦略(ゲーム産業)と金融が一応専門分野。 MMORPG「リネージュ」の元プレイヤー(8年ぐらい、10,000時間ほどプレイ)。長らく一つのゲームをやりこむ派でしたが、最近は雑食気味にいろんなゲームをプレイしています。思い出に残っているゲームはリネージュ、ティアリングサーガ、勇者のくせになまいきだ。or2など