カエルの為に胸高鳴る ―『Kero Blaster』レビュー(HayanieMozu)

過去の恋愛体験について「男は別名保存、女は上書き保存」といったような与太話を聞いたことがある。なんの話かって、もちろん『Kero Blaster』の話である。

悲しいかな、俺は『洞窟物語』に想像以上に惚れ込んでしまっていたようだ。フラグ管理の詳細こそ忘れてしまえども、『洞窟物語』のゲームプレイは脳裏だか胸の奥だかにしっかりと焼きついており、「ラストバトル」や「圧迫するチカラ」を耳にすればすぐさまかつての死闘を思い浮かべられるし、「迷宮ファイト」に耳を傾けているあいだは背中を誰かに任せているようで何やら気持ちが高揚する。

過去の恋人、『洞窟物語』

俺が『洞窟物語』をプレイしたのはつい最近で、その熱も冷めやらぬうちに同じ開発である開発室Pixelの新作『Kero Blaster』が手元に届いたということになる。しかし、『Kero Blaster』をプレイすればするほど、過去の女、もとい『洞窟物語』が俺の頭をよぎるのだ。『メトロイド』みたいな探索要素も、もうひとつのエンディングを目指す分岐要素も今の彼女には求めてはいないのに。1.5Mに圧縮された『Kero Blaster』が秘めた熱量を、しっかりと抱きとめることはできなかった。

ゲームファンの端くれである俺が思うに「『洞窟物語』はゲームファン好みするゲームであった」ように思う。触れることが楽しく、ともに紡ぐ体験はかけがえがない。ありきたりな言い方だが、心に残るゲームであった。そして『洞窟物語』と『Kero Blaster』との違いで最たるものは、『洞窟物語』の武器の強化・弱化システムだ。経験値蓄積による武器強化と被ダメージによる武器弱化。そのコントラストが生み出す程よい緊張感は甘美であった。とは言え、アクションゲームが苦手だったら、投げ出してしまいたくなるようなシステムだったかもしれない。そういう意味では、『洞窟物語』はじゃじゃ馬、おてんば、あるいは気分屋といった塩梅であり、よく言えば「加減を知り、互いがフィットしていく」のが楽しい相手だったのだ。

新しい恋人、『Kero Blaster』

対する『Kero Blaster』はと言うと、いかにもモダンと形容したくなるような丸いデザインをしている。いわゆる今風の子だ。チェックポイント制、一度倒したらゲームオーバーになっても復活しない中ボス、購入できる蘇生&自動回復アイテムなど、その気遣いはたくさんある。『洞窟物語』のようなフィットはあまりいらず、ありのままに接してよいゆるさがある。もっともこれはモダンというよりかは、プラットフォームとそこにいるプレイヤーに合わせた変更と捉えるのが妥当だ。しかし、裏を返せば、PCでプレイするアクションゲームとして物足りなさを感じるプレイヤーが多数だろうとも思う。『洞窟物語』を好きだった人であればなおさらのことだろう。

とは言え、やはり『Kero Blaster』は素直な子、ゲームデザイン自体にひねくれた部分はない。新しい武器にはちゃんとすぐに生かされる場面が用意されているし、あまり死に武器のようなものはない。すっきりとしたレベルデザインでプレイもしやすい。PC版でプレイしたためか、序盤は引き撃ちの操作に戸惑ったが、慣れで解決するレベルだった。

では一体何が不満なのかと問われれば、ビジュアルと効果音である。

これに関しては明確に『洞窟物語』に軍配が上がる(ただし、『Kero Blaster』のキャラクターは謎のかわいらしさがある)。ビジュアルは好みもあるかも知れないので置いておくとして、効果音は「好み」で割り切れないレベルで不満を覚えた。弾を撃ち込んで対象を破壊する感覚や、アイテムを取る気持ちよさなど、効果音は手応えやゲームの感触の中枢に及ぶと思っているので、非常に残念でならない。

こうして振り返ってみると「やはり『洞窟物語』と比較してしまうな」というのが率直な感想である。数多のレビューで触れられている通り、『Kero Blaster』は決してつまらないアクションゲームではない。だが、先に生まれた『洞窟物語』があまりに偉大すぎた。あとに現れた『Kero Blaster』は、古典でもある先輩にパッと見が似ているがゆえに、些細なことまで俺は気にしてしまうのだ。

『Kero Blaster』のトレーラーを初めて見たとき、「これはどれくらい『洞窟物語』なんだろう。新鮮な体験なのだろうか?」と心配に思った。実際に触れてみると、武器とかジャンプの感じとか、キャラクターたちの掛け合いとかどこか近い感じはするのだけれども、やはり『洞窟物語』とは違っていた。これは喜ぶべき結果だったのに、あとになってみるとそこを比較してばかりいる自分がいるのだ。

終盤に姿を現した「求めていた『Kero Blaster』」

しかし、始終『Kero Blaster』を好きになれなかったかと言うとそうでもない。それは人工的な気配のするステージが現れる終盤だ。この頃には武器もかなり強化され、そのうえ登場する敵も多くなっているため、画面がかなり賑やかになる。溢れる弾丸と敵とがプリミティブな快楽を満たしてくれるのだ。

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また、横スクロールの2Dアクションとアイコン化された街という組み合わせは、ファミコン時代のような珍妙さがありながらも、『Kero Blaster』の奇っ怪な世界観とマッチしていてとてもよかった。俺はそこに「天谷ワールド」とでも言うべき不可思議な世界と言い回し、それと『洞窟物語』で見せたような派手さと爽快感を垣間見た。それこそが俺が彼女に求めていた姿であった気がしてならない。

なぜだか『Kero Blaster』には、『洞窟物語』よりもみんなに好かれそうな全方位性を見てしまう。ゆえに私が愛すべきタイトルではないような気がしてしまった。『洞窟物語』を「上書き保存」しようと躍起になって、『Kero Blaster』のその姿を見ようとしなかったのかもしれない。それが過ちかどうかはともかく、終盤に見せた彼女の素顔をちゃんと見てみたい気もやはりあって、私は何か罪深いことをしたような気持ちに襲われるのだ。

[タイトル]
Kero Blaster

[ソフトウェアタイプ]
シェアウェア
windows 720円
iOS版 500円

[対応OS等]
Windows,iOS

日本語版、英語版

[ダウンロード]
PC版

Playism

iOS版

[制作者」
開発室Pixel

[プレイ時間]
2~3時間

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    HayanieMozu(@HayanieMozu

    ポエムじみたことを書くのが好きなゲーム好き。NYDGamerというブログをやっており、TwitterとHOTLINE TOKYOという集まりによく出現する