名作フリーゲーム制作者が考える「ゲームの作り方」のコツとは? 小麦畑主宰 oumi氏インタビュー

多くのファンを持つフリーゲーム『デンシャ』、『冠を持つ神の手』、『マヨヒガ』…そのほかにも様々なアドベンチャーゲームを製作してきたサークル「小麦畑」。新作である『ダンス・マカブル』の公開も昨年10月に行われ、もぐらゲームスでも紹介を行った。そして、本作は2014年末に開催されたフリーゲームの人気投票『フリゲ2014』でも3位にランクインするという人気作となった。

image06
少女アルエットが、突然迷い込んでしまった大聖堂から脱出するという謎解きアドベンチャー『ダンス・マカブル』

『マヨヒガ』『オシチヤ』『デンシャ』…サークル小麦畑の名作を振り返りながら最新作フリーゲーム『ダンス・マカブル』をレビュー&攻略

今回は、そんな小麦畑の主宰であるoumi氏にインタビューを行った。oumi氏自身の制作経験や、ゲーム作りのこだわりはもちろんのこと、いま話題のフリーホラーゲームからコンシューマゲームを参考に出しての「ゲーム作りのコツ」「このゲームのデザインが良い!」という内容も語ってもらった。また「小麦畑の過去作は、どういう意図で作られたのか?」という自作の解説も一部行って頂いた。フリーゲーム好きや小麦畑作品のファンから、「面白いゲームを作りたい!」と考えている製作者の方にとっても興味深い記事となったと思うので、ぜひお読み頂きたい。

ib、青鬼以降の人気作「探索系ホラーゲーム」。その制作のコツは?

―――今回インタビューをお願いするにあたって、oumiさんから「探索ゲーム制作のコツ」をテーマのひとつとして話したい、というご提案を頂きました。さっそくそのお話をお聞きしたいと思います。

oumi
ib』や『青鬼』のようなドット絵の「探索系フリーホラーゲーム」が流行したことに影響を受けて、探索系ゲームの制作が増えてきたように感じます。その中で、もうひと工夫すればさらに面白くなるんじゃないか?と思う作品が多いのですよね。そこで、いきなり質問なんですけど、ああいった「探索ゲーム」を作成しようとします。まず何から作ろうと思いますか?

―――いきなりの質問ですか!なかなか難しいですね。物語、キャラクター、システム…色々あるとは思いますが…。

oumi
体感なんですが、創作のあるあるとして「キャラや物語から作りたい!」という動機でゲームを作る方が多いと感じています。でも、その場合って実は探索ゲームという形式はあまり向いてないように思えて、たとえば『Fate』や『ひぐらしのなく頃に』みたいなノベルゲーム形式がベストだと思うんです。もちろん「ノベルを作っても、ゲーム実況などであまり取り上げられないのでは…」というジレンマがあるのは分かりますが……。
ただまあ『ひぐらし』が出たころを思い返してみると、当時もいまのホラーゲームブームのように、猫も杓子も連作ノベルゲームを作ってた印象です(笑) それを『青鬼』が塗り替えて、ホラー探索ゲームがフリーゲームにおいて「主流」になってきた…というのが個人的な印象ですね。それまでは『コープスパーティー』、『囚人へのペル・エム・フル』、『いちろ少年忌憚』などねこふろしきさんの探索ゲーム…などなどが有名だったくらいだと思います。

まず決めるべきは「マップ」と「システム」

―――なるほど。たしかに探索系ホラーゲームの有名作は昔からあったのですが、急に作品数が増えたのは最近という感覚です。

oumi
それで、さきほどの質問の答えですが、私の中では、探索ゲームを作る時に最初に決めるべきは、「マップ」と「システム」だと思ってます。そのうちの「システム」は、そんなに説明はいらないですかね。例えば『月光妖怪』や『Doors』みたいな「脅かしもの」だったら、まずシステムが最初になるのは自然かなと思いますし。ただ、作るにあたっていきなり独創的なシステムを作れというのも難しい話で、最初は『青鬼』のような、追いかけっこで、アイテム探して、といったシンプルなもので全然構わないでしょう。自分の作品の例としては、『デンシャ』はシステム先行で作られています。

―――デジタル数字を回転させて号車を変えていくところ、とかですかね。

image12
電車の中にあるデジタル数字を回転させ別の数字にすることでマップが切り替わる、というシステムが印象的な小麦畑作品『デンシャ』。

oumi
そうですね。 ともあれ、システムはシンプルなものでも大丈夫、となったら、次に考えるべきは絶対に「マップ」なんです。どうしてマップが重要かというと、ごく単純に、プレイヤーが一番多く目にする画面だからです。そして「マップを作る上で何が重要なのか?」と言うと、それはマップのコンセプトですね。マップにも「物語」が必要なんです

ゲームのマップに必要となる「物語」の要素とは?

―――「マップにも物語が必要」という言葉はとても気になりますね!その部分をもう少し詳しく伺いたいです。

oumi
最近の物語技法からすると、「物語」とは「ストーリーそのものや、キャラクター同士の関係性だ」という認識をしますよね。キャラを考えるのはすごく楽しいです。でも制作において、ストーリーやキャラクターといった意味での「物語」をモチベーションにする場合、マップやギミックの作成が面倒に感じる部分があると思うんですよ。それで挫折してしまう。私もマップ造りはめんどい…、うまくいかない…、見栄え悪い…、みたいな感じですし。
で、そんな挫折ポイントで必要なのが、マップの物語性、必然性だろうと。たとえば『Ib』の美術館も、『ゆめにっき』の広大なマップも、たとえキャラたちや物語がなかったとしても、「何か出来事が起こりそうだ」という感じで、すごく想像力をかきたてられませんか?そういう意味では、『魔女の家』は個人的に完璧と感じました。

image05
『ib』

image10
『ゆめにっき』

image11
『魔女の家』。いずれも大きな人気となったフリーゲーム。意味が込められているように感じ取れるマップ造りや装飾の配置などから、想像力が刺激される作りになっている。

oumi
マップの必然性がないところから何かをひねりだそうとすると、ギミックが思いつかなくて挫折しがちです。もしくはひたすら鍵を拾ってドアを開けるだけのゲームになってしまいます。

―――なるほど(笑) 逆に言うと鍵だらけのゲームにしないためにも、「マップには必然性が必要」ということですね。

oumi
そうです。RPGでもそうなんですけど、必然性のあるマップはやっぱり印象に残るし、謎解きも分かりやすい。具体的には、「氷で出来た洞窟」なら、「床が滑ったり、壁が溶けたり」する。というように、マップとギミックの関係性があると非常に説得力があります。そういう「マップの必然性・物語性」という部分は、探索系のフリーゲームだけでなく、むしろRPGからも勉強できるのではと思っています。色々なジャンルから手法を学ぶことが大事と感じますね。

最新作『ダンス・マカブル』に込められた「マップの物語性」

―――「マップの物語性」という意味だと、例えば『ダンス・マカブル』では、アイテム「茨の冠」を手に入れるマップを一歩引いて見ると、マップの全体像がガイコツの形になっていたり、それぞれに意味を込められていたような印象がありました。

image01
『ダンス・マカブル』は、視点を変えると「マップの形の意味」に気付く場面が多いものとなっている。

oumi
そうですね、あそこで全体の仕掛けに気づくかなあ、と思ってました。『ダンス・マカブル』はマップの発想が先行したゲームなんです。あのマップと物語の対応を閃いたのがはじまりです。

―――『ダンス・マカブル』は、マップの全体図が「人間の体」の形になっていて、そのマップの上で謎を解くことが、病気の人間の体を治すこと繋がる…という「物語」になっている。具体的にはそういった結びつきかと思ったのですが。

oumi
その部分が、このゲームの核心です。逆に言えば、マップに乗せる上物、つまりリドル(謎解き)の部分があんまり出来よくなかったなー、というのが反省点でもあります。

―――『ダンス・マカブル』とは対照的に、『デンシャ』はシステム先行と言っていたのですが、「車両番号をひっくり返す」などのシステムは「電車」というマップに強く結びついてるように感じて、マップも同時に先行している、という印象もありますね。

oumi
電車はそれぞれマップの構成が似ていて、ミニマップいっぱいで構成できるので楽ですよね。車両番号はひっくり返して意味が通る数字に限りがあるので、抽出して年表と合わせて唸ってました。

―――「これからゲームを作りたい!」という製作者の方向けに、「マップ」と「物語」の結びつきをうまく発想するコツなどあったりしますか?

oumi
そればっかりは個々の経験で、自分が好きで興味あるものを題材にするのが一番じゃないかなあと。ただ、実用的な話として「同じ景色が続く」建物は不向きかなと思います。例えば学校とかホテルとかは工夫が必要かなと。特別教室とかはアクセントになるんですけど、景色が単調なのが難しいところです。身近な舞台だから使いやすいのは分かりますが。マップ作りには、こういった考えごたえのある部分があります。マップ作りを楽だと思うのは罠です。逆にマップのない「ノンフィールドRPG」は、数値やギミックの作りこみに注力できるのではと思います。

image02
『デンシャ』のマップ内装は、ジャングル、寝室、工場、和室…など、電車という形式ながらバラエティのある不思議な空間となっており、景色が次々と変わるものとなっている。

―――『ダンス・マカブル』は依頼制作、チーム製作とのことでしたが、これまでの製作と違ってよかった点や、逆に苦労した点はありましたか?

oumi
作ってる感覚としては、いつもと変わらなかったんですよね。企画段階での打ち合わせはあったけど、後はマイペースに作っただけという。良かった点は、もちろんあんな素晴らしいイラストやドットをいただけた点です。
苦労というか申し訳なかったのは、他人にイメージを伝えるノウハウが不足していて、素材の作成に気を遣っていただいたことでしょうか……。キャラ設定とか三行ぐらいですし。たとえば主人公の少女「アルエット」のイメージはパワポで一枚程度でしたね。年齢と、敬虔な信者であることと、髪は亜麻色かなー、普通のロングじゃない方がいいです、みたいな。あの可愛さは、イラスト担当の鈴羅木さんのおかげに他になりません。

image07
『ダンス・マカブル』の主人公である「アルエット」。活き活きとした2Dの立ち絵がとてもら可愛らしい。

―――なるほど。「E-mote Free Movie Maker」(以下、えもふり)による2D立ち絵演出もとても印象的でしたが、その導入理由もあるのでしょうか?

oumi
えもふりは、ツールが発表された頃に知りました。自分では使える絵が用意できないなあと思ってたのですが、鈴羅木さんの絵なら絶対映えるだろうと、こちらから提案しました。色々な表情が欲しくなる度に依頼していると大変だなあ、という制作上の都合もありましたね。
えもふりは、Photoshopでパーツごとにレイヤ分けしたデータを、疑似3Dで歪ませて組み合わせてアニメーションしてるんですよね。簡単に言うと、「元データとなる立ち絵一枚でキャラを動かせる」という部分にメリットがあると思います。

image08
場面によって豊かな表情や動きを見せてくれる『ダンス・マカブル』のキャラクター。

―――『ダンス・マカブル』だけに限らないと思いますが、マップやシステムを考えるときに、発想をメモにまず書いてみたり、図として描いてみたり、など進め方はありますか?

oumi
先ほどの意思伝達の問題でもあるんですけど、私あんまり資料とか書かないんですよね……。『デンシャ』は「どの年齢の時期に、どの出来事が起こったのか」という対応表だけでした。今回は、マップの図だけはExcel方眼紙で最初に作成しましたね。あとは作りながら考える。作りながら「これはいけるな」と感じたら、適当にピースが降ってくるだろうと。

プレイヤーが楽しみながらルールを覚える「チュートリアル」のコツ

―――過去作のアドベンチャーゲーム『オシチヤ』ではチュートリアルに凝っていた、ということを以前ブログに書かれていました。チュートリアル作成についてのコツはありますか?

oumi
チュートリアルは「どういうルールがあるか」を書き出してみるのがまず一番なんじゃないでしょうか。ルールの説明で、最初のギミックは必然的に決まるので。

―――「ルールの説明でギミックが必然的に決まる」というのは、例えば「武器は装備しなければ意味が無いぞ」というルールがあるとすれば、装備することでいいことがあるギミックをつくろう、といった感じですかね?

oumi
ですね。もしくは装備しないと進めないような場面を作らないと。装備できることを知らないまま進んでプレイに詰まるってのは良くある話で……。例えば『ダンス・マカブル』ではアイテムを使用するには、メニューから選択・指定することがゲーム全体を通して必須なので、進行に必要となるアイテムを最初に使わないと進めないようにしました。

image03
『ダンス・マカブル』のゲームスタート直後の場面。ここでメニューを開きアイテム「釘」を使うという一連の動作を自然と学ぶことが出来る。

―――なるほど。さいきんプレイしたゲームで「このチュートリアルがよかった!」などあれば聞いてみたいです。

oumi
丁寧に作られてると思ったのは、『Portal』かなあ。プレイヤーが体験したことのないルールを、ステージクリア形式で1つずつ覚えさせていくため、「このシチュエーションには、この解法だよ!」という感じで自然とギミックの解き方・思考方法が習得できます。『portal2』だとジョークも交えて面白いです。

―――過去作『マヨヒガ』、『オシチヤ』でも、持つアイテムを変えたりするシステムや、キャラクター交代システムのチュートリアルに丁寧なステップアップの設計があったと記憶してます。

oumi
作ってる当時はそんなに意識してなかったと思うんですけどね。結局それまでのゲームの経験かなあ。良く分かっているのは、「プレイヤーはテキストで説明されても読み流す」ということです。プレイしている中で、自然とルールを覚えられる構造がいいかなと。

image13
キャラクター交代というシステムが重要となるアドベンチャー『オシチヤ』

―――ゲームの経験と言うと、以前に『ico』や『スキタイのムスメ』といったアドベンチャーが好きだと書かれていた記憶があります。oumiさんの考えるゲーム観や、「ゲームとは何か?」という考えなどあれば聞いてみたいです。

oumi
私は基本的にADV色が強いのが好きなんですよね。反応速度を競うのが苦手というのもありますが…。「ゲームとは何か?」という考えについては、私は「プレイヤーの入力に応じた出力を、きちんと返すもの」と思ってます。

―――「プレイヤーの入力に対応した出力をきちんと返す」ということだと、「会話相手に対する好き・嫌いの印象を自由に決めることができ、それに応じた物語の分岐も用意されている」という『冠を持つ神の手』はまさにそうでしたね。システムやテキスト含め、製作をかなり苦労されたのでは…という印象がありましたが、どうなのでしょう?

image04
「いま会話している目の前の相手への印象を、自由に決められる」という特徴的なシステムを持つゲーム。主にアドベンチャーゲーム制作に用いられるソフト「吉里吉里」で制作された。

oumi
あれも基本的なところを決めたら、淡々とイベントを埋めていっただけですね。ドラマチックなエピソードはないです。吉里吉里にほぼ初挑戦だったので、色んな機能を発見しては継ぎ足し、みたいな。でも量が量だからさすがに三年かかってしまいました。

小麦畑の次回作は、Unity?そしてゲーム制作の「こだわり」とは

―――吉里吉里といえば、製作ツールについてoumiさんは製作ツールについてはかなりの数を触っている印象を受けます。ゲームの製作におけるツール選びのコツや、使いやすいツールなどはありましたか?

oumi
思いついたゲームに適していて、自分の能力の範囲内のツールを使用している感じですね。なので、自分としては探索ゲームの制作では、それに適したWOLF RPGエディターを使います。吉里吉里はやっぱり応用性がすごいですね、思いついたものはほぼ何でもできそうです。オンラインゲームだけは厳しいのかな。次は出来ればUnityを使いたいんですけど、うまくいくかなあ。Unityは環境を選ばないところが魅力ですよね。

―――Unityですか!やはり、作るのは3D探索ゲームになるのでしょうか?次回作にどういったものを作りたいか?というお話にもなりそうですが。

oumi
3Dもいいんですが、今のところ考えてるのは2Dです。Unityの3D素材は高品質なものがたくさんあるのですが、個人的にやりたいこと、こだわりを求めると少しずれてしまうかな、と。

―――こだわりと言えば、oumiさんは「妖怪」など、民俗学の要素をよくゲームに入れている印象があります。それに関してこだわりなどあるのでしょうか?

image09
妖怪の住む館に迷い込んだ女の子を無事に脱出させるアドベンチャーゲーム『マヨヒガ』

oumi
単純に好きで興味があるから、知識もそれなりにあるというだけですね。あとは、そういう要素を入れると「世界の嘘くささ」が和らぐという効果もありますよね。

―――実在の知識や要素を入れることで、作品が実体を持ってくるという。好きな知識でゲームを作るということだと、oumiさんの趣味である舞台演劇の鑑賞も製作に活きているのでしょうか?

oumi
舞台演劇を観たから何かに役立つとかいう効果は期待できないですけど、ジャンルごとに色々な表現方法とお約束と、そのお約束の破り方があるっていうことは知っていると便利かもしれません。結局閃きって、自分の中に蓄積してきたものに依存してしまうので、説教くさいけど学習って大事だと思います。「お勉強」とか気負わなくて、好きなことでいいんですよね。苦にならないところから広げていけばいい。好きこそものの上手なれということです

「面白いゲームシステム」のヒントはアナログゲームにあり

―――様々なお話をありがとうございました。oumiさんからは今回「探索ゲーム制作のコツを話したい」ということを提案頂いたのですが、最後に「これは話しておきたい!」という部分が残っていましたら、ぜひお願いします。

oumi
大体話せたので、もう大丈夫かなー。あ、アナログゲームは面白いゲームシステムの宝庫なので、みんな一度は体験しておくといいですよ!

―――アナログゲームやTRPGは、さいきん注目度がより高くなってきた印象ですね。

oumi
これからもっと盛り上がればいいと思いますね。私はゲームはファミコンから入ったんですが、その後TRPGなどアナログゲームも楽しむようになりました。フリーゲーム製作者の方だと、ノンフィールドRPGなどを作っていたステッパーズストップのポーンさんも、最近はアナログゲームの方面に行っている気がしますね。

―――今回お話を伺って、大きな土台やコンセプトをつくったあとは、チュートリアル含め、ある意味で仏像を掘り出すように必然的なゲーム制作されているところが印象的でした。マップ、システムなどの重要性も再確認できるものとなったと思います。ありがとうございました!


もぐらゲームスでは現在ライター・編集補助を募集しています。 フリーゲームやインディゲームの記事執筆・編集部作業等にご興味ある方はこちらよりお気軽にご連絡ください。