あのヒーローの苦悩が味わえる?「眼からビーム」のパズルアクション『Laserboy』

アクション,パズル,フリーゲーム

マーベル社によるアメリカンコミックの長寿シリーズ『X-MEN』。スーパーパワーを授かった新人類「ミュータント」によるヒーローチーム「エックスメン」が、人々を害する悪のミュータントや、時にミュータントを取り巻く「偏見」や「差別」とも戦うという内容で、ゲーマー諸氏にもカプコン社の格闘ゲームとのコラボレーションで馴染みがあるだろう。その中の主要登場人物の一人「サイクロップス」は眼から破壊光線を放つ能力を持つが、本人ではその能力をコントロールできず、特殊なバイザーによって制御を行っている。今回紹介するのはそんな『X-MEN』の「サイクロップス」を思い起こさせる作品だ。

『Laserboy』はUniversal Entitiesが制作したパズルアクションゲーム。2021年11月23日よりSTEAMにて配信が開始されている。また、2022年3月17日よりItch.ioにてそれまでの全アップデートを反映した完全版の配信が開始されている。価格は無料。

眼からビームも一苦労

『Laserboy』は(架空の)1980年代に発売されていたレトロゲームをリマスターしたという体裁を取っており、ネオンカラーの目に眩しいビジュアルに加え、ブラウン管風に見せる画面エフェクト、フラッシュやグリッチ(画面が乱れる表現)が多様されている。エフェクトはON/OFFが可能で、ゲーム起動時にも光過敏性てんかんについての警告があるため、予め注意のうえでプレイしてほしい。

ゲームの目標は至ってシンプルで、研究所内で目覚めた主人公を操作し、出口へと辿り着くことにある。全13ステージを潜り抜ければゲームクリアとなる。操作も上下左右への移動のみで特別難しいものを要求されるわけではない。

そう、定期的に眼から強烈なレーザーが発射される以外は!

レーザーは強烈な反動を伴い、発射されている間はまともに動くことが難しい。ゲームパッド使用時は強烈な振動も伴うため、初回は面食らうこと間違いなしだろう。このレーザーとうまく付き合いながら、迷路のような研究所から脱出できるかが問われることになる。

不自由な力を御してこそ

定期的に放たれるレーザーは触れた物を容赦なく破壊して周囲に損害をまき散らすことになる。破壊してしまった物品はゴール時に被害額という形で生々しく算出される。より素早く、そして被害額を抑えてクリアすることでゴール時に貰える評価が高くなるので、高評価を目指して繰り返し挑戦しよう。

レーザーは自分の意志では発射できないためとにかく不便だが、脆くなっている壁を壊すのに使用するなど、レーザーを駆使しなければ先に進めないシーンも存在している。また、レーザーの強烈な反動はそのまま推進力としても機能するため、ゴールタイムを短縮するためには的確に位置と向きを合わせたうえでのレーザー発射が欠かせない。レーザーの発射サイクルをつかみ、不自由で強大な力を徐々に自分のものとしてコントロールできるようにしていく過程が本作の面白さのポイントといえるだろう。

それ以外にもコレクションアイテムであるカセットテープを探すという楽しみ方もあり、奇抜な見た目や設定に反するような形で遊び込める作品となっている。

レーザーボーイの悲哀

本作をプレイしていて筆者の胸を打ったのは、作中に登場する研究員たちの反応だ。白衣の研究員達は主人公が近付くと遠巻きに距離を取ろうとする。ただそれだけなのだが、その動作が筆者にはひどく物悲しく映ったのだ。彼らの立場からしてみれば、自身が焼き殺されかねない危険な存在にみすみす近寄りたくはないだろう。しかしこちらとしてもレーザーの扱いに窮しているなかで、彼らは決して苦しむ自分のことを助けてはくれないのだ、という隔絶をそこからは感じとってしまった。

そして先へと進んでいくごとに現れるのは、机などの傍らに置かれた眼に付いているものと同じパーツ、こちらを取り押さえようとする防護服の集団、ゆがむ視界、果ては自分と同じ姿をした存在。決して言葉多くにして語られるわけではないが、そこからは入り込む余地のあるストーリーを見出すことができるはずだ。

全てを焼き尽くす瞳が進んでいく先で果たして何を見るのか、それはぜひ皆さんの目でも確かめてみてほしい。

[基本情報]
タイトル: Laserboy
制作者:Universal Entities
クリア時間:  40分~
対応OS: Windows , Macintosh , Linux
価格: 無料

↓ダウンロードはこちらから
(STEAM)

(itch.io)
https://unient.itch.io/laserboy

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。