バトルも物語もBGMもアツい!作曲家が作った本格アクションRPG『天翔のマーキナリエ』

RPG,アクション,フリーゲーム

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ゲーム制作のツールの充実などもあり、昨今ではアーティストが自らの世界観を表現する手段としてゲームを制作することも増えている。今回紹介するアクションRPG『天翔のマーキナリエ』は、プロの作曲家であるけんせい氏が、企画・ゲームデザイン・シナリオ、そしてもちろん音楽を手がけたフリーゲーム。BGMに力が入っているだけでなく、純粋にアクションRPGとしても完成度の高い作品だ。

なお、本作はRPGツクールMV製で、執筆時現在はRPGアツマールにてブラウザゲームとして公開されている。ブラウザ動作だがゲームパッドにも対応、逆にスマートフォンでのプレイは対応してはいるもののPCでのプレイが強く推奨されている。(そのくらいアクションゲームとして本格的な内容ということでもある。)

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秘宝を求めて迷宮に挑む、機械人形とそのマスターの冒険活劇

本作の舞台となるのは、「願いを叶える秘宝」があるという絶海の孤島。「マーキナリエ」と呼ばれる自我を持つ機械人形のアイリスと、そのマスターである技師の少女マリアが秘宝を求めて島を訪れることから物語は始まる。

秘宝があるとされるのは「願望の塔」、しかし塔は封印され姿を消してしまっていた。アイリス達は塔を出現させるための鍵が隠されるという5つの迷宮を巡っていき、やがて塔そのもの謎にも迫っていく。ゲームの流れとしては島の各地にある5つのダンジョンを、自由な順番で攻略していくという形だ。5つのダンジョンは森や遺跡などバラエティに富んでおり、ダンジョンごとのギミックなどによっても特徴付けられている。

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地形もギミックもバラエティに富んだダンジョンを攻略していく

アイリスのアクションは斬り→突き→特殊攻撃「エナジーバースト」と三段階に派生する攻撃や、ジャンプやダッシュ、ニュートラル状態で敵の攻撃を受けると発生するガードおよびそこからのカウンター攻撃など多彩。操作のレスポンスがよく各アクションの繋がりも滑らかで、短距離を高速移動するダッシュとは別に移動し続けていると自然に走り出して移動速度が上がるなど、細かい手触りまで練り込まれた気持ち良い操作感に仕上がっている。

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エナジーバーストはダンジョンを攻略してボスを倒すことで新たなものを習得可能

ドット絵で描き込まれたモーションやエフェクトなどによる演出も小気味よいもので、総じて2Dアクションゲームとしては90年代のコンシューマゲーム相当のクオリティに仕上がっている印象だ。

そのほか、寄り道的な場所にあったり隠されている「拝殿」でプレイヤーの腕が試されるというサブクエスト的な要素もあり、これをクリアすると能力強化用のアイテムを入手可能。能力強化用のアイテムは他にも入手手段があり、拝殿のクリアはゲーム進行に必須ではないが見付けることも含めてプレイのちょっとしたアクセントになっている。

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拝殿ではさまざまな趣向でプレイヤーの腕が試される

アクションもシナリオも充実、その魅力をさらに引き出す珠玉の音楽達

本作は公称プレイ時間約2~3時間の短編だが、キャラクターやストーリーの表現にも力が入っている。剣士型の機械人形でありながら家事全般も得意、優しくて健気でマスター想いのアイリスはとても可愛らしい。そんなアイリスを最高の機械人形にするという願いにまっしぐらなマリアとの掛け合いは賑やかで楽しく、ときには二人の強い絆を感じられる熱い展開も。

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剣士型の機械人形ながらのほほんとした雰囲気のアイリスだが、マリアとの絆を感じさせる熱い場面も

マリアのライバルで同じく島へとやってきたメルとマリアの喧嘩しつつもどこかお互いを気遣うような関係性や、アイリスの前にたびたび立ち塞がる謎の少女もストーリーを牽引する。

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アイリス達の前にたびたび立ち塞がる謎の少女。彼女もマーキナリエのようだが……

これらが絡み合い、「塔の先に待ち受けるもの」へと収束していくシナリオは切なくも心温まるもので、クリア後には一つの冒険をやり遂げたという充足感と余韻に浸れることだろう。シナリオはフルボイスで、民安ともえさんなどプロの声優を起用。それぞれの人物像や感情がより臨場感を持って表現されているのも見どころだ。

そしてやはり見逃せないのが、ダンジョン攻略やシナリオを盛り上げるBGM。これについては試聴があるので何はともあれまずは1曲目の「平原を駆ける」を聴いてみてほしい。この曲は拠点となる街を出て、島の各地にあるダンジョンへ向かうまでの平原でかかる曲である。

勇ましく軽妙ながらどこか切なさも感じさせるメロディに、跳ねるようなベースライン。まさに「アクションRPGの平原曲かくあるべし」という曲であり、往年の名作へのリスペクトも感じさせられる。冒険の第一歩を飾る曲がこれとはテンションも上がるというものだ。

もちろん各ダンジョンの専用曲やボス戦曲、イベント曲など他の曲も名曲揃いで、全31曲と短編の枠を越えた豪華な内容となっている。本作はゲーム自体はフリーゲームだがサウンドトラックが有料配信されており、購入者は自分の作品にも楽曲を利用可能と音楽素材集を兼ねているのも作曲家らしい粋な計らいだ。

難易度は3段階から選択可能。気軽に爽快感を味わいつつストーリーを堪能するもよし、多彩なアクションを駆使してバトルをとことん極めるもよし。ぜひ、心優しい機械人形とそのマスターの冒険活劇を、素敵な音楽と共に楽しんでみてほしい。

[基本情報]
タイトル:天翔のマーキナリエ
制作者:けんせい
公称プレイ時間:約2~3時間
対応環境:ブラウザ(RPGアツマールの対応環境に準ずる)
価格:無料

プレイはこちらから

サウンドトラック(有料配信)

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2021年6月11日追記:ブラウザ版から約1年を経て、に『天翔のマーキナリエ』のSteam版(ダウンロード版)の配信が開始された。Staem版は価格1,100円の有料配信となる。ゲーム内容は基本的にブラウザ版と同様だがビジュアル・演出の調整といったアップデートが施されている。変更は順次ブラウザ版にも適用されるとのこと。

  • 中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。運営型ゲームはメギド72をPvPメインで、あとは原神など。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。