2XXX年の平和な世界の記録を綴ったエッセイ風SF百合ノベル『CODA』 厳重なプロテクトの先に待つ”真実”との対峙

エッセイ……日本語で「随筆」。もしくは「随想」
自由な形式で筆者の体験や意見をまとめた散文を指す。

その起源にして先駆的存在は、16世紀ルネサンス期の哲学者で思想家のミシェル・ド・モンテーニュが1580年に発表した『エセー』と言われる。自らの身辺で起きた事象、人間の様子などを考察し、綿密に考えを巡らせて書きまとめる。それこそが本来のスタイルで、昨今の自由に、且つ気楽な表現を用いてまとめるのとはやや異なるものと言われる。

だが、自由に考察、感想を綴る点は今も昔も違いはない。
恐らくそれは……2XXX年の未来も。

coda_01

2019年9月29日、件の時代より送られてきたエッセイが公開された。名は『CODA』。このテキストをクリックした先にあるWEBサイトにて公開されている。
しかしながら、表現形式は文章ではない。

SF百合ノベルゲームである。

全ては処刑の”あの日”から始まった

本エッセイは、先のWEBサイトよりダウンロードすれば読むことができる。また、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」、「フリーゲーム夢現」、「ノベルゲームコレクション」ではそれぞれ、ブラウザ版の形式限定で公開されている。

coda_02

エッセイを綴った主は「コーダ」。2XXX年の未来で暮らす大学生の女性である。

当の時代の海内都市東京では、過去の戦火を二度と起こさぬよう、個人の行動を逐一観察する超監視社会になったとエッセイ内にて綴られている。ゲームや映画などの娯楽も大幅に制限。家庭においても、”家族関係”そのものが解体され、子供達は初等教育までの記憶を抹消され、以降は親を持たずに生活するのが一般化しているという。

そんな社会でも人々は幸せに日々を過ごしているが、書き手たるコーダは馴染めずにいた。友人の「レガート」、趣味嗜好が合わずにギクシャクしているパートナーの「リフ」にだけ顔を合わせ、日々を送っている。また、たまに「プラチト」という暗くて寡黙、時に不思議な一言を発する女子学生にも会うことがあり、その態度や考え方に微かなシンパシーを感じていた。

coda_03

「File1」と記されたエッセイには、このような未来の様子、彼女を取り巻く人間模様が綴られている。なお、社会にあだなす行為を働いたものは、東京は新宿において反逆罪の名の下に公開処刑される。

処刑は未来における大きなイベントとされており、常に大勢の人で賑わう。また、その手法も処刑者を粒子レベルで”なかったことにする”瞬間的なもので、実施直前に特有の”風”が吹くようになっている。

ある日、コーダは友人のレガートと共に公開処刑の場へと来ていた。なんでも大学で初の処刑者が出たとの発表があったのだ。それが誰なのか一目見ようと、彼女たちは足を運んだ。そして、会場に姿を現した処刑者。それはプラチトだった。

あまりにも意外な人物にコーダは驚愕。そして、衝動的に処刑執行への反抗の意を示す行動に出る。だが、彼女は警備員に取り押さえられ、後に件の”風”が吹き、プラチトは”なかったことにされた”。同時に観衆からは喝采が沸き起こる。

coda_04

なぜ、プラチトは処刑されたのか。この出来事を機にコーダの身の回りでは”おかしなこと”が起き始め、やがてそれは未来の社会全体に大きな影響を及ぼすものになっていく。その一連の出来事を体験し、自らの考えや思うがままを綴ったもの。それが本エッセイとなる。よって、プレイヤーのすることは書かれたことをそのまま読み進めるだけだ。

言うなれば、このエッセイはコーダの記憶データで、それをゲームへと変換させたものである。
同時にそのデータは複数の「File」に分割されている。
ひとつのデータに全部が入っていないのだ。

厳重なプロテクトとそれを潜り抜けた先に待つもの

なので、コーダのエッセイ全てを読むならば、ファイル別にダウンロードする必要がある。しかも、普通にダウンロードできるのは「File2」まで。「File3」以降はWEBサイトでアカウントを作り、「Sign in」しなければならない。

coda_05

このようなWEBサイト側とも絡んだ独特、且つ入り組んだ構成が本エッセイ最大の特徴にして見所となる。おまけにアカウント作成で、全Fileが読めるようになる訳でもない。各Fileを読むにはパスワードが必要になるのだ。そのパスワードはそれぞれのFile最後の場面で一瞬だけ表示される。これをテキストエディタ、或いは紙のメモ帳に書くか、もしくはスクリーンショットを撮るなりして記録し、WEBサイトに置かれたFileごとのフォームに入力。そうすることでダウンロード及び閲覧の権利が得られ、続きが読めるようになるのだ。

しかし、なぜこうも厳重なプロテクトがかけられているのか。理由はWEBサイトにも書かれている通り、「公にしていい記録ではないから」だ。

coda_06

また、Fileごとに記録された出来事にも多くの欠落箇所が存在。所詮、これは”エッセイ”だ。書き手が自由に考察、感想を綴ったものでしかない。よって、得られる情報はコーダの視点から見た2XXX年のありのまま。全Fileを読み終えたとしても、あの処刑の日以降、どんなおかしなことが起きたのかは部分的にしか分からないのである。

ただ、WEBサイト上にはその後の答えに繋がるかもしれない入力フォームが残る。だが、そのパスワードはコーダのエッセイを読み終えても分からない。どうすればいいのか。WEBサイト側を構造面も含めて調べるのだ。

すると、残るFileに繋がる手がかりが見つかる。
また、さらなる隠されたFileの存在に気付くことになる。それらを繰り返すにつれ、最終的には2XXX年に起きた本当の出来事などが判明する。

coda_07

まさにWEBサイトとゲーム……エッセイ側が複雑に絡み合う展開を見せるのだ。そのため、本作は謎解きゲームとも言える2つ目の顔を持つ。また、WEBサイトはインターネット上に存在するもの。つまり、ネットに接続された状態でエッセイを読み続ければ、そちらにも何かの”反応”が生じるようになっている。

どんな反応が出るかは見てのお楽しみである。
ただ、これだけは申しておきたい。反応が出ることは真実に近づくこととイコールではない。そもそも、このエッセイに綴られた真実、2XXX年の全容は容易に解明できるものではない。
繰り返しになるが、これはエッセイだ。書いた主の思うがままの記録なのだ。

coda_08

さらに言うなら、この記事の紹介も筆者というエッセイを読んだ主が思うがままに書いただけのものである。実は勘違いしているだけかもしれない事柄が混じっているのだ。どこのことかは言わないでおくが。

まるで『真昼の暗黒』みたいじゃないかと思ったかもしれないが、それもそのはず。本エッセイを2019年の現代で配信している主は『真昼の暗黒』の作者、隷蔵庫氏である。つまりはこの時点にも”思うがまま”の何かがある疑いがあるのだ。

coda_09
それが本当のことなのか、まやかしなのか。言及はしない。
ただ、このエッセイ全体の構成、そこで語られている出来事、コーダの思いが気になるのなら、まずはFile1と2で当時の状況を確かめ、続く3以降を全Fileが格納されたWEBサイトに場を移して読んで行っていただきたい。

どこに真実があるのか、四六時中悩まされる日々を送るようになることを保証する。

そこに”答え”はあるのだろうのか。

これから本エッセイを読み、真実へと迫る覚悟を決めた方へ、最後に幾つか注意事項を綴る。念のためだが、これは単に事実を書き連ねただけだ。

coda_010

まずアカウント。これは件のWEBサイトでしか使われないものになる。よって、他のWEBサービスや貴重品に関係するようなID、パスワードを設定するようなことはしないようご注意いただきたい。

また、WEBサイト上ではJava Scriptが用いられている。これが時折動作しなくなり、何の変化も起きない現象が起こるかもしれない。その場合はブラウザかPCを再起動、もしくは設定が誤っていないかチェックすることを推奨する。

そして、本作は複数のFileに分けられて情報が記されている。ダウンロード版の場合、容量面のみならず、起動ファイルも増える形になるので、事前にディスク残量の再確認、専用フォルダ準備をしよう。雑にやれば、見栄えも悪くなる。そういうのが嫌であれば、ブラウザ版で行こう。ただ、起動に多少、時間を要するので広い心で待つように。

coda_011

監視社会の未来に起きた出来事が断片的に綴られた、本エッセイことSF百合ノベルゲームの『CODA』。その感じるがままに綴られたコーダの文章、彼女が隷蔵庫氏に依頼する形で用意されたWEBサイトのからくりを読み解いて、2XXX年の真実、このエッセイを2019年の時代へとゲームにして送り届ける行動に出たコーダの真意を辿るのだ。

coda_012

だが、それはもしかしたら、永遠に解けない謎という悪夢との直面かもしれない。
文章を自由に綴る怖さを知るきっかけになるかもしれない。
エッセイとは何なのか、哲学的な議題に行き着くことになるかもしれない。

そして完全な答えを知るのは………2XXX年かもしれない。

[基本情報]
タイトル:『CODA』
執筆者: コーダ(※協力:隷蔵庫)
読了時間: 20~30分(※全File:合計6~7時間)
対応OS: Windows、Mac
価格: 無料
備考: 推奨年齢15歳以上(※暴力、出血、セクシャル表現あり)

※WEBサイト(エッセイ本データ格納場所)
http://summertimeinblue.net/System/Coda/Coda_site/index.html

※ブラウザ版&PCダウンロード版(File1+2)(ノベルゲームコレクション)
https://novelgame.jp/games/show/2457

※ブラウザ版(ふりーむ!)
https://www.freem.ne.jp/win/game/21184

※ブラウザ版(フリーゲーム夢現)
https://freegame-mugen.jp/adventure/game_8238.html

VR体験施設の検索サイト「taiken.tv」
  • image09

    シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence
    ブログ:Box Diary