アナログゲームもデジタルゲームも!ホッカイドウシュピールフェスト2で見つけた注目インディーゲーム4選

イベントレポート

2023年11月23日、「ホッカイドウシュピールフェスト2~パーティ~」が北海道の札幌市民交流プラザSCARTSスタジオにて開催された。「ホッカイドウシュピールフェスト」はMIDLUSが主催している自主制作ゲーム展示即売会であり、昨年2022年の初開催に続いて今回が2回目の開催となる。会場ではのべ22組が展示を行っていた。

会場は札幌の名所である時計台や大通公園のテレビ塔にほど近い場所。本イベントの特徴としてはアナログゲームとデジタルゲームの両方が同じ場所で展示されていることが挙げられる。出展者側にとってはデジタルゲームの展示において電源の使用が可能であることも注目点と言えるだろう。イベント名の「シュピール」とはドイツ語で「遊び」を意味する単語であり、ボードゲームの本場であるドイツで開催される世界最大級のボードゲームイベントの通称としても使われている、という流れからか、出展作品の傾向としてはアナログゲームが主体という印象を受けた。

学生証の提示で入場が無料になる点や出展者による壇上PR、有志企画として会場を使った謎解きという一風変わった出展を行っていたサークルがあった点など独特色も豊富で、会場内は熱量に溢れていた。
本記事では取材陣が気になった作品を4点紹介するので、気になった作品があればチェックしてみてほしい。

KitanoStudio『ザクザクダンジョン』

サークルKitanoStudioが開発中の『ザクザクダンジョン』は、冒険で得たアイテムを販売して自身のショップを大きくしていくシミュレーションゲーム。会場では試遊の他、ダウンロードカード形式による体験版の配布が行われていた。

探索パートでは配られたカードの中から使用するカードを選択して、探索や戦闘などプレイヤーが取る行動を決めていく。敵との戦闘はリアルタイムになっており、時間に応じて溜まるマナを消費して攻撃カードを繰り出していく。小刻みな攻撃を連打するか、溜めたマナで強力な一撃を放つかの選択がポイントだ。

探索から戻ってきたあとは店でアイテムを出品することでお金へと変え、稼いだお金で更に店を大きくしていくことになる。出品したアイテムは時間経過によって売れるようになっており、一種の放置ゲーム的な要素を取り込んでいる。小さな時間の合間を縫ってコツコツとプレイを楽しめる作品になりそうだ。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/kitanostudio

#AKANUMA『AIおじさん』

近年様々な形で話題となっている画像生成AI。その画像生成AIが個人制作ボードゲームの分野においても活用が進んでいることを伺わせたのが、赤沼俊幸氏が制作したカードゲーム『AIおじさん』だ。

ルールとしては出されたお題カードに対し、各プレイヤーがそのお題のイメージに一致する画像生成AIの生成による非実在性おじさんを出し、プレイヤー全員が同じおじさんカードを出すことを目指す協力型のゲームとなっている。テーマからイメージされるおじさん像を相談する時間も設けられているが、外見や衣服など直接的な特徴に言及することはNGであるため、全員の回答をすり合わせるためにはトーク力も重要だ。

壇上PRでは「偏見を我慢していませんか」というパワーワードも飛び出すなど、様々な方向に一石を投じるインパクトある作品となっていた。また、会場企画として「#推しおじさん総選挙」が開催され、投票結果からは「笑顔」と「清潔感」が大事であると結論付けられていた。リアルおじさんとして背筋が伸びる限りである。
(真野 崇)

Website: https://akanuma.red/aiojisan/

P.C.I.P『METAL JACK』

サークルP.C.I.Pが出展していた『METAL JACK』はオリジナルトランプを使用する2人対戦用の戦略型ボードゲーム。同サークルが刊行している同人コミックを原作としており、少年マンガ風のSDロボット達のキャラクターデザインが特色となっている。会場ではゲームだけでなくコミックも購入可能になっており、ルール説明もコミック形式で展開されていた。

ゲーム内容は3枚の手札を3✕5のフィールド上に裏向きで配置したのち移動するのを繰り返していき、相手のカードとぶつかりあった際にバトルが発生する。バトルではお互いのカードを表向きにして数値の大小を比べあい、勝利した場合は相手カードを「エナジーゾーン」へと獲得できる。そしてエナジーゾーン内で数値が21になるカードの組み合わせを3つ作れれば勝利となる。21の数値を作るトランプの「ブラックジャック」に駒の兵種を伏せて戦う「軍人将棋」を混合したような形をイメージしてもらうのがわかりやすいだろう。

ポイントとなるのが「ぶつかりあったカードのスート(ハートやスペード等の柄)が同じだった場合、数値の低い方が勝つように判定が逆転する」という点と、「エナジーゾーン内でバースト(21超え)が発生した際にバーストしたカードに応じた能力を発動できる」という点のふたつ。どちらも決まれば戦局を大いに覆すことになり、相手の裏を掻くための読み合いが熱い。ついブースで対戦に白熱してしまう魅力を持つ作品となっていた。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/xps1513

雷華&シメリウス『からあげ!』

見てください、この美味しそうなパッケージ。雷華氏とシメリウス氏のコンビが制作した『からあげ!』はタイトル通り唐揚げをモチーフとしたカードゲーム。同コンビとしては1作目の作品で、2作目である『ねこかつ!』と共に販売が行われていた。北海道の名物料理である「ザンギ」を意識した…のかどうかは不明である。

本作では裏向きにして広げたカードを各プレイヤーでめくっていき、得点となるからあげを集めて全てのカードをめくり終えた時点で獲得したポイントが多かったプレイヤーが勝者となる。通常のからあげカードを引けた場合はもう1枚引くことができ箸が進む一方で、ネットミームになったからあげに見せかけた爆発カードを引いてしまうと0点に逆戻りとなる。ただし爆発は全カード中1枚だけ存在しているからあげに見せかけた忠犬プードルによって防ぐことが可能だ。

内容としては神経衰弱や坊主めくりに似た感覚でシンプルかつライトに楽しめる作品となっている。ハウスルールとして予めカードを何枚か抜いておき、カードの種類ごとの枚数を分からなくする、という遊び方も例示されていた。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/simeraiusu

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。